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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 今週、うちの施設でサイバーナイフの運用を開始いたしました。

 実は数年前にもサイバーナイフを2台導入する予定だったそうなのですが、(知る人ぞ知る)たまたま薬事法違反があった時でガンマナイフに変更した経緯があったそうなのです。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/03/h0328-4.html
 で今回ようやく、元々導入する予定だったもう一つの部屋にサイバーナイフの最新機種M6を設置いたしました。これまでは倉庫状態でした(笑)。
http://www.innervision.co.jp/expo/products/accuray_radiotherapy_cyberknife

 当面はこれまでガンマナイフで治療を行っていた小さな脳腫瘍を中心に定位放射線治療を行う予定ですが、いずれは頸部リンパ節転移や肺や肝臓などの体幹部の小腫瘍にも適応範囲を拡大予定しています。高価なコバルト線源の問題で稼働は終了しますが既存のガンマナイフ装置はしばらくそのまま残します。
 定位照射装置の展示場化しています。(事務手続きは必要ですが)医療関係者なら基本いつでも見学可能です。陽子線治療装置もBNCT装置もあります。お待ちしております。


 サイバーナイフは全国的に脳外科の先生方も積極的に治療に関わっていて、学会や研究会でもいろいろな部位への治療報告がなされています。脳転移など「小さな」脳腫瘍で何カ所もサイバーナイフで放射線治療を行ってもあまり大きな後遺症が出てこないからか、体幹部でも同じように複数カ所のサイバーナイフ治療を行ったり、分割照射が可能だからか結構大きめの腫瘍に対しても脳と同様に数回の小分割照射を大胆に行ったりしているようです。

 一般に放射線腫瘍医は、通常のライナックで広い範囲を何週間かかけて正常組織のダメージを気にしながら分割照射を行っていますが、サイバーナイフは主に脳外科の先生は手術で切除するのと似た感覚で組織を叩き潰すような短期間の放射線治療を体幹部腫瘍でも行っているようです。双方の「感覚」は異なる気がします。

 小さな腫瘍の場合は容積効果も大きく関係しているのでしょうか、サイバーナイフは神経とか粘膜など危険臓器が高線量域に含まれていなければ体幹部であっても意外に重篤な後遺症は(少)ないらしいです。これは(うちの)陽子線治療でも同様で、再照射だとしても意外に大丈夫みたいです。けっこう人間の身体って強いなと感じています。
 だからといってもちろん安全性を担保しているわけでは全くありません。発症確率が少なくても(ご本人の事前承諾なくして)後遺症を発症した場合は大きな問題になります。主治医だからと言って何をしてもいいというものではありません。当然ですが充分慎重に対処することが基本です。動物実験とは違います。

 特に肺に関しては低線量域が多いと致命的な放射性肺炎を発症することがあります。当初はかなり安全と考えられていた小さな肺腫瘍に対する定位放射線治療でも致死的肺炎を起こす場合がまれにあります。特に元々間質性肺炎だった方の発症率は高いようです。
 肺の患者さんを自分で入院管理を含め最後まで経過観察しない脳外科系のサイバーナイフ施設で、そこそこ大きな数カ所の肺腫瘍にサイバーナイフを行ってしまい致死的な肺炎を発症させてしまったというまことに良くない事例もあったようです。
 もっともサイバーナイフに限らず、全肺に回転で低線量被ばくをさせてしまうトモセラピーなどでも同様の報告を学会などで聞くことがあります。特に抗がん剤をすでに投与されていたりする場合の肺の低線量被ばくは要注意です。あっけらかんと「肺炎起きちゃいました」と学会発表していた放射線腫瘍医もいたというとんでもない話を又聞きしたこともありました。

 その点、陽子線や炭素イオン線といった粒子線治療はブラッグピークという特徴を活かして肺などの低線量被ばくを激減できるため、高リスク患者さんでも大きな問題なく治療ができるようです。間質性肺炎を併発している肺腫瘍患者さんに対して安全に陽子線治療ができたという論文が最近報告されました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27090216

 粒子線治療は高額であることを除けばやっぱり優れた放射線治療だと思います。もちろん100%安全であることを担保しているわけではありませんが。
 ちなみに陽子線治療は今年度から全国統一プロトコールで治療が行われます。


 せっかく導入したばかりのサイバーナイフなのに今回のブログでは負の側面ばかりを強調してしまった感はありますが、適した病状に対しては優れた威力を発揮することはこれまでの報告からも間違いありません。(保険適応の問題はありますが)脊髄があって充分な放射線治療がしにくい脊椎骨転移などにも大いに役立ちそうです。

 安全性には充分配慮しつつ、次はうちの施設における優れたサイバーナイフの治療成果をブログでも報告させていただくつもりです。



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【2016/04/24 00:50】 | 放射線治療:機器・技術
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 来年度早々にうちの施設でサイバーナイフが稼働します。現在、頭の定位放射線治療は隣の部屋にあるガンマナイフが稼働中ですが、サイバーナイフに移行したら運用停止する予定です。

 でも、装置そのものは設置したままです。つまり、うちの施設へいらしていただければサイバーナイフとガンマナイフが同時に見物できます。実はリニアック(=ライナック)も増設で最新のTrueBeam™がそのうち入ります。他にもいろいろな放射線治療装置があります。
 MRリニアックもいずれ??


 今年に入って私もサイバーナイフの座学研修と施設研修をしてきました。座学研修は東京駅近くの研修室で連続5日間(私は病院業務で1日抜けましたが…)、施設研修は神戸低侵襲がん医療センターさんで2日間でした。

 『サイバーナイフシステムとはロボットマニピュレータと軽量の小型直線加速器を用いて設計され、高線量をサブミリメートルの精度で照射することができる初のロボット放射線手術システムとして世界的に認知されています。…以下、略』という説明文が、座学研修をさせていただいた日本アキュレイ社さんHPに掲載されています。
http://www.accuray.co.jp/products-overview-cyberknife

 専門用語が羅列した説明文って自分の専門分野でないと医療者でも何のことかわかりにくいことって少なくありません。定位放射線治療とサイバーナイフってどう違うの?といったご質問を受けることも稀ならずあります。
 ちなみに、定位放射線治療は高精度放射線治療「技術」の一つ、サイバーナイフやガンマナイフは定位放射線治療(やIMRT)を行える高精度放射線治療「装置」です。

 ガンマナイフ(もどんな装置かご存じない?)しかなかった時代は頭の定位放射線治療「技術」=ガンマナイフ「装置」が同じ意味(表現)でもまあよかったのですが、今はいろいろなタイプの装置が登場してきましたのでそうはいかなくなってきました。一昔前、Xナイフという定位放射線治療専用製品がありました。ガンマナイフとネーミングが似ていたから覚えやすかったのでしょうか、201個の小さなコバルト線源から焦点を合わせてガンマ線を照射するガンマナイフでなくX線を照射するリニアックで行う定位放射線治療のことをXナイフと誤表現していた脳外科の先生が多数いた時期もありました。
 そのXナイフも今や販売されておらず、過去の産物となりつつあります(まだ稼働しているご施設はある様ですが…)。

 ガンマナイフって息の長い装置ですよね。


 一般の方にとっては医学用語が並んだだけで難しく感じられてしまうことが少なくないと思います。そんな時は、こちらがわかりやすい言葉にしたつもりの普通の説明よりも、例え話の方が相手の方に「なるほど」と納得していただけることが多いようです。

 ということで、今回はいろいろな放射線治療装置をあの有名なウルトラマンシリーズの必殺技で例えてみることにします。画像があると視覚的によりわかりやすいと思うので、以下のサイトをご参照いただければと思います。
http://middle-edge.jp/articles/I0000218
 ところでこのサイト、円谷プロさんから画像使用許諾は得ているのだろうか…?
http://m-78.jp/

 世に普及している通常のリニアック装置から繰り出されるX線は、やっぱり初代ウルトラマンの腕から出される超有名なスペシウム光線ってイメージでしょうね。

 装置の先端から細いビームを発射するサイバーナイフは、ウルトラセブンの額から首を振りながら狙いを定めて出される極細のエメリウム光線って感じでしょうか。頭上に装着しブーメランのように攻撃するアイスラッガーとともにウルトラセブンの代表的な必殺技です。ちなみにエメリウム光線には、両手でピースサインを額につけるAタイプと左手を水平に折り曲げてあごの下に置く(志村けんさんのアイーン光線の鏡像のようなポーズの)Bタイプがあるそうです。ご存じでしたか?
 ちなみに新しいタイプのサイバーナイフ(M6)は小型マルチリーフコリメータ(MLC)も付くそうです。というか、実はそれが売りらしいです。エメリウム光線がスペシウム光線のように少し広がってウルトラセブンの口から出てくるといったイメージでしょう。

 他にもいろいろな高精度放射線治療装置がありますが、いずれもウルトラマンシリーズの必殺技で例えることができそうなものばかりです。
 1.ガンマナイフはウルトラマン80のバックルビーム。
 2.トモセラピーはウルトラマンのウルトラアタック光線。
 3.陽子線はウルトラマンレオのエネルギー光球。
 4.重粒子線はウルトラマンタロウのウルトラダイナマイト。

 ウルトラマンシリーズの必殺技での例え話って結構使えると思いませんか!?私の思い込みですか…? 私は決してウルトラマンマニアではない(つもり)です。

 なお、これらのウルトラマンシリーズ例え話はあくまで一般の方々向けにこんな感じとしているものなので、同業のご専門の先生方におかれましては「それって正確な表現といえるの?」などという厳しいツッコミはぜひ不問でお願いしたく存じます。私個人的には先ほど例に出したXナイフでもイメージさえつかんでいただけるならばそれで良しとするスタンスの医療者なもので…。

 まあ課題があるとすれば、そもそもウルトラマンシリーズを知らない方々(若い世代とか女性とか)にはやっぱりわからない例え話なのだろうなということでしょうか?(私の子供世代だと)セーラームーンとかのほうがいいのかも…。参考までに北斗の拳がご専門の先生もいらっしゃいます(笑)

 来週の看護セミナーでも紹介してみようと思っています。


 今回のサイバーナイフ座学研修ですが、正直いって5日間は長かったです。以前は外国に行っての研修だったそうです。英語で聴講したら放射線腫瘍医でも難しすぎる放射線物理を含めた専門用語ばかりですし、ゆっくり説明を受けないとなかなかわからないかもしれませんが(5日かけてもわからないかも…?)、今回は日本語での研修でしたし内容的にはテキパキと半分の日程でも良かったような気がします。

 先日の神戸実地研修では先生方から貴重な(裏)情報をいろいろ伺えましたし、かゆい所に手が届いた部分もいくつかありました。忙しい通常診療の最中をご指導いただき、どうもありがとうございました。


 利用者さんたちの病状やご要望も踏まえ、いろいろな放射線治療装置をこれからどのように上手く使い分けさせていただくか、これからの課題ではありますが楽しみでもあります。


エメリウム光線

【2016/03/09 00:25】 | 放射線治療:機器・技術
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 先日、福島県郡山市の総合南東北病院さんを見学させていただける機会がありました。

 国内で民間初となる粒子線治療施設として平成20年10月に開院した併設の南東北がん陽子線治療センターさんは以前にも一度見学させていただいたことがあるのですが、今回は噂のホウ素中性子補足療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)装置を設置したホウ素中性子補足療法研究センターさんの施設見学もちらっと兼ねて。

 南東北病院さんのHPからBNCTの説明文を『』内に引用させていただきます。
『BNCTはエネルギーの低い中性子とがん細胞・組織に集積するホウ素化合物の反応を利用して、がん細胞をピンポイント で破壊する、身体への負担が少ない最先端の放射線がん治療法です。正常な細胞への影響を極力抑えつつ、外科手術や既存のX線治療では難しい再発がんや進行 がんにも有効とされています。当財団では、京都大学と住友重機械工業株式会社(東京都品川区)が共同開発し、間もなく京都大で実際の患者を対象とする臨床 試験(以下、治験)を開始する段階にある、「サイクロトロン」という加速器を用いたBNCT装置を導入することとしています。
 今年度(=平成24年度)中に建屋の建設とBNCT装置の設置を開始し、装置の安全性や性能向上試験を経て、平成26年度後半より治験を開始する予定です。そして平成30年度には厚生労働省の認定する先進医療として治療の開始を目指します。計画が実現すると、病院でBNCT治療を行うのは世界で初めてとなります。』
http://www.minamitohoku.or.jp/infobox/bnct.html

 BNCT装置のすごさはもとより、研究センター内には温泉も付いた格安宿泊施設やレストランも併設されていて、利用者さんにも快適そうな環境だと思いました。


 お隣にある陽子線治療センターさんも民間施設として初導入の陽子線装置はもちろんCT、MRI、PET装置などが勢ぞろいでした。陽子線治療センター内には19床の温泉付き入院施設や広々したラウンジなどがあるうえ、総合病院の一般病室やBNCTセンターの宿泊施設も利用できるそうです。
http://www.southerntohoku-proton.com/

 陽子線+BNCT…あまり詳しくありませんが、最先端の粒子線装置を両方兼ね備えた施設は世界的にも(ほとんど)ないのではないでしょうか?すごすぎます。


 さらにお隣の南東北医療クリニックさんには、頭部のピンポイント放射線治療として有名なガンマナイフ装置や、個人的には昔からとても気になっているがん治療の一つである局所温熱療法装置(サーモトロンRF-8)が2台もありました。
 温熱療法は20年近く前に某病院で私も治療にたずさわった経験があり、その時の治療効果などは今でも忘れられません。その時の経験談や思い出話はまた改めて別のブログにしようと思います。

 クリニックさんの正面玄関前には温泉の足湯もあり、これもかなり気になりました(笑)
http://www.minamitohoku.or.jp/up/news/minamitouhoku/topnews/200512/topic.htm


 もちろん総合南東北病院さんの本院にも通常のX線治療装置などがあり、そちらでIMRTをはじめとする高精度放射線治療を積極的に行われていました。本院にも放射線治療科としての入院患者さんが20名以上いて、クリニックさんの19床と合わせてなんと常時40床以上も放射線治療科で入院患者さんを診ていらっしゃるとのことでした。

 スタッフは非常勤を含めると総勢10名を超える放射線腫瘍医が在籍され、若くて元気そうな先生も多いようでした。放射線治療科で40床越えというのは全国の大学病院ですらほとんどありません。中央管理部門ということで病床を持たないことがなぜか正当化されつつある全国の放射線腫瘍医さんたちの傾向・風潮の中で珍しいご施設さんだと思いました。特に若い先生方には貴重な経験の時期だろうなと、その点も感心してきました。

 多く在籍しておられる医学物理士さんや診療放射線技師さんたちも治療部門専属だそうです。これも多くの大学病院レベルを超える規模ですね。


 田舎の放射線腫瘍医にとって、月並みですがとにかく「すごい」の一言でした。

 2年前に都立駒込病院さんを見学した時の様々な放射線治療装置やスタッフの充実度はすごかったですが、南東北病院さんも。


【2015/03/22 13:32】 | 放射線治療:機器・技術
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 先週末、数年間所属していた某大学の放射線科医の会という勉強会に久しぶりに参加してきました。あの大雪の日です。

 毎年、放射線治療&診断の分野で著名な講師をそれぞれお招きして、特別講演2題を拝聴します。大学同門の放射線科医限定の勉強会なのですが、いつも大変お勉強になるご講演が多いです。
 で、今年はというと、治療が東京大の中川恵一准教授による「画像誘導高精度放射線治療の歴史と現状」、診断が藤田保健衛生大の片田和広教授による「面検出器CTの新たな話題」というご講演でした。お二方とも、放射線装置の開発・研究に長年携わってこられ、その労苦も垣間見させていただき、期待通りの内容でした。


 中川先生が主にご講演された画像誘導放射線治療(Image-Guided RadioTherapy: IGRT)というのは、放射線治療装置に内蔵あるいは併設されたCTやX線透視などを使い、がん病巣を直接画像表示しながらより正確に放射線照射を行う技術です。
 「照射直前または最中に病巣を直接表示できる」という点では優れものの技術なのですが、現実には身体の動きをリアルタイムに制御する点など、まだまだ改良の余地が多々ある領域で、今も世界中の専門家・企業がいろいろな研究・開発を行っています。

 どの領域も同じでしょうが、放射線治療装置・技術の開発にも産学連携、つまり企業の協力が必要です。一時期、放射線治療の国産企業がパッとしなくなり、外国産装置のシェアがどんどん拡大していました。やっぱり日本人なので、少し寂しい部分がありました。
 最近また、粒子線治療装置やVero 4DRTという高精度X線装置など、国産の優れた放射線治療装置が市場を賑わわせてきています。海外にも販売されているようで、これからが楽しみです。
 と書いたものの、実はうちにある放射線治療装置、全部外国産です。申し訳ございません…


 片田先生のお話も、興味深く拝聴しました。面検出器CTとは、脳や心臓の全域が1秒未満であっという間に撮影できる320列CTを指すそうです。国産企業との共同開発で普及し、最近ではその技術を有名外国企業も採用したとのこと。
 このCTを使うと、体内の動きも綺麗な動画で瞬時に撮像・可視化できるそうです。片田先生がスライドで紹介された、マウスが水分を飲み込んで口から胃腸に流れる体内の様子はリアルそのものでした。これは放射線治療にも利用できそう(?)
 実はうちにある放射線治療計画用CT、同じ国産メーカーです。機種が違うので、面検出器CTではないらしいのですが…


 中川先生も片田先生も、簡単に書くと放射線装置を使って体内の動きをどう画像化するかというお話でした。ここは放射線治療も放射線診断も未知なことが多き領域ですが、今後の技術開発が進めばこれまでにない画期的な放射線装置が出てきそうな気がします。

 私が定年を迎えるまでのあと10数年でどこまで進歩するだろう? …他力本願ですね。


 すでに市販されている放射線装置やアプリケーションを使って臨床あるいは基礎研究をすることだってやる気や興味(やお金)がなければ簡単にはできませんが、装置・ソフトそのものから創り上げるというのは並大抵のことではないと思います。「大学というのはそういう所だ」というご意見もありましょうが、(普通の)大学病院のお医者さんというのは、学生さんたちの教育・指導や日常臨床業務や様々な会合もあり、それだけでも大変です。
 もちろんヒト、カネ、モノがある程度そろわないといけませんが、それをそろえる努力も当然必要なわけで。

 ご講演の質疑応答では、上司の某先生が「言われるままの仕事(=研究や臨床)をするだけじゃなく、君たちも見習うように!」と、若い医局の先生方に一喝して…いや、プレッシャーをかけて…いや、檄を飛ばしていらっしゃいました。 みんな、頑張ってね~!

 って、大学から離れて負担がいくつも取り除かれた生活を送る私が偉そうに書けることではありませんかね?



 この会ですが、見渡すと参加者がすっかり若返っていました。約10年前、私が初めてこの会に参加した時の少数医局員はほとんど不在。きくりん、あっちゃん、はなわさん、ほんませんせ、みんな外の病院に出たのですねぇ。

 時が経つのは早いものです。

 あの時代はとっても大変でしたね。



【2014/02/11 23:28】 | 放射線治療:機器・技術
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 放射線治療で利用する放射線の種類にはいろいろありますが、主流はX線です。そして大半の病院に設置されている放射線治療装置をLinear accelerator(日本語で直線加速器)といいます。原理を簡単に書くと、直線の特殊な磁石の中で加速した電子を金属にぶつけてがん治療用のX線を発生させる装置です。
 「Lin」ear 「ac」celeratorの両者の頭をとってLinacと略し、一般にライナックと呼んでいます。

 また、別の呼び方として「リニアック」とも呼んでいます。教科書や全国の有名病院放射線治療科のHPなどでもLinacのことを「リニアック」と普通に紹介しています。

 ところでLinacって「リニアック」と英語で読めるのでしょうか?


 ライナックはそのまま読めそうです。(私の周りの日本の先生にはあまりいないのですが)リーナックと呼んでいる先生も多いそうです。まあ、Linacですからリーナックとも読めますね。
 Wikipediaの加速器の説明で『リニアック(lineac)とも呼ばれることがある』と書いてありましたが、これは正しい?? ちなみにlineacだとGoogle検索では見つかりません。医学論文検索サイトのPubmedではlineacという単語でも論文が僅かにありますが、linacで見つかる論文数の比ではありませんでした。Linearの耳(ear)を隠しつつ読むなら、リニアックでいいのかも?


 少し調べたところ、「実を言うとライナック又はリニアックというのは各々直線加速器製造会社の商品名なのです。しかし略称としては言い易く、他にピッタリした言い方もないので、どの会社の装置も全部ライナックなどと呼んでいるのが現状」という、当時名古屋大学医療技術短期大学部教授の小畑康範先生による報告がありました(1994年10月発刊の健康文化)。
http://www.kenkobunka.jp/kenbun/kb10/obata10.pdf

 また、私のお知り合いの(元?)業者さんからは、『昭和30年代後半にNECがVarian製品を輸入・販売した時に装置の名称を”リニアック”としたのがはじまりだと思います。もう一昔も二昔も前の話になってしまいますが、三菱マシンをお使いの施設は”ライナック”と呼んでおられました。NECや東芝のマシンをお使いの施設は”リニアック”と呼んでおられました。その名残だと思われます。』という情報もいただきました。


 繰り返しになりますが、ライナック・リニアック両方の呼称があることはたしかです。でも「Linacがリニアックという呼び方で正しいのかどうか」は、知識不足の私はいまだによくわかりません。海外の書籍や○×歴史館とかに何か記録があるのかもしれません。(ご年配の)先生方で知っておられる方がいるかもしれません。
 
 もしご存知の方がいらっしゃったら、私のためにいつかどこかで教えてください。どうでもいいことと言われれば、その通りかもしれませんが(笑)


 似たような話をついでに…

 放射線治療の準備をする装置のことをシミュレーターといいます。これをシュミレーターと呼ぶ方がいらっしゃいます。シュミのほうが日本語として言いやすいけど(?)、さすがにこれは間違いでしょう。最近は減ったとは思うのですが(?)、病院内の掲示などに堂々とシュミレーター室と記されている施設もあります。

 整形外科領域ですが、ギプス(Gips)をギブス(Gibs)と間違える方もいらっしゃいますね。

 かなり昔に私が勤務した病院で、吸入器(ネブライザー:nebulizer)のことをネ「プ(pu)」ライザーと多くの看護師さんが呼び、公式文書のカルテにもたくさん記されていましたこともありました。私が「違う」と言っても頑として変わらず、途中からどうでもよくなりました。もちろん私はネブライザーと書いてましたが。
 どの病院かは忘れましたが、その後直ったのかなぁ?


 ま、シュミでもギブスでもネプでも「わかればいい」と言われればそれまでです。仮に誤表現だったとしても、みんなが呼べばいつしか正しくなってしまう(≒一般的になる)のが言葉というものなのでしょうし?

 あと、言葉尻をとらえ過ぎると(特に看護師さんたちに)嫌われます……経験談です。



【2013/08/16 16:58】 | 放射線治療:機器・技術
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 少し前のことになりますが、うちの病院に今度導入予定している特殊な高精度放射線治療装置の実習のために、東京都立駒込病院さんを数日間訪問し実りある研修(といろいろな懇親会)をさせていただきました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。
 駒込病院さんには、Vero 4DRT/MHI-TM2000、CyberKnife、TomoTherapyといった最先端のX線治療装置がいろいろ設置されていて、まるで学会展示場のよう。もちろん見学(そして記念撮影も)させていただきましたけれど、同業者としては何ともうらやましい限りでした。

 これらの高精度放射線治療装置はみな、治療台の上でCTなどを撮影してがん病巣を画像で「直接」確認しながらより正確に放射線を照射できる優れもの技術を搭載しています。画像誘導放射線治療(Image-Guided RadioTherapy: IGRT)って表現しています。
 IGRTについては、私もそのうち気が向いたら何かブログに投稿するかもしれませんけど、とりあえずきちんとした内容はネットや書物などでご確認ください。


 普通の(という表現が良いかは不問で…)放射線治療を行う際には、ほとんどの患者さんに対して治療位置確認のため、事前に治療位置近傍の皮膚面にマジックやインクなどで線などの印を書かせていただき、治療期間中その印を保持します。頭や首などの治療ではお面をつけたりするので直接身体に印をつけなくても済むのですが、やはりお面には書きます。

 昨年のうちの病院での出来事なのですが、元々の皮膚病などの影響があって放射線治療に必要な皮膚の印がすぐに消えてしまうため、毎日の放射線治療に苦労していた患者さんがいらっしゃいました。何か良い工夫はないものかと全国他施設の放射線治療の諸先生にメーリングリストなどでお問い合わせをしましたところ、刺青(いれずみ=皮膚への色素注入)はどうかとのアドバイスもいただきました。

 私がまだ放射線腫瘍医になりたての頃、とある病院で当時の上司に指示を受け言われるがまま注射器を使って皮膚に色素注入をした経験はありました。ただ最近は、下手に人様の身体へ「勝手なこと」をするのはいけないと指摘されそうなご時世ですし、医療行為として大丈夫なのかいささか不安があったので、去年受け持った患者さんに関しては、日々のこまめな注意で従来の皮膚マークのままでなんとか治療を乗り切りました。


 その後、私の友人のFacebookでたまたま刺青の話題があり、そこで関西のある先生から、すでに平成13年に「医師でなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反するものとして『針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為』がある」との厚生労働省からの通達(医政医発第105号)が出ているという情報を教えていただきました。
 つまり、医師なら合法的に他人の身体に刺青をいれてよいと国が認めているということになるようです。照射範囲の印しつけに関しても同様に。
 もし解釈が間違っていたら何とぞ教えてください。m(_ _)m


 IGRT技術はどんどん進化していますので、将来は皮膚に刺青はおろか、マジックなどの印をあえてつける必要などなくなる時代が来るのかもしれませんが、今の所は残念ながらまだのようです。あの駒込病院さんですら、必要に応じて印を身体に書いていましたし。


 しかし、刺青って医者の資格もっている人なら他人につけてもOKとはね~~~。副業になるかな?(冗談です)



刺青厚労省通知

【2013/05/24 19:56】 | 放射線治療:機器・技術
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