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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
5年以上も中断したままになっておりました本ブログですが、引っ越しリニューアルする(と仮面を外す)ことにいたしました。

新しいブログですが、「がんコーディネートくりにっく院長Blog」で仮面を外した院長が以下のURLでよそおいも新たにスタートしております。
https://www.ccc8jin.life/blog
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

PS:この仮面放射線腫瘍医の思いつき日記ブログも、FC2ブログさんが消滅させない限り残すことにいたしました。
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【2021/12/07 23:00】 | 重要
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 今日、4月から大学に戻られるうちの若手女医さんに、照射範囲決定のため入院中の食道がん患者さんの食道造影検査をしてもらったのですが、とても上手に撮影していただきました。

 もちろんバリウムを使って…


 食道がん患者さんの病状を確認するために食道造影検査を行うことがあります。胃の検診と同じようにバリウムを飲んでいただくのですが、病気が進行して食道と気管に穴(瘻孔)ができ常に肺に誤飲してしまう患者さんにバリウムの代わりにガストログラフィン(以下ガストロ)という水溶性の造影剤を用いられるお医者さんが時々いらっしゃいます。胃腸が詰まったり穴が開いているとバリウムだと吸収されずに体内に残ってしまうのですが、ガストロだと水溶性であり漏れても腹腔内で吸収され尿中に排泄されるので安全だという理由から、食道病変にも同じように扱っていいと思いこんでいらっしゃるからのようです。
 私の知る限り、特に消化器科(内科も外科も)の先生方に目立つ印象です。使用理由を問うと「先輩から言い伝えられてきたから」とお答えになる先生ばかりです。十年以上前のことですが、私もある放射線診断の先生にこのことを聞くまで「言い伝え」を鵜呑みにしていました。


 あまり知られていないようですが、ガストロは高浸透圧性イオン性造影剤に分類され、その浸透圧は1700 mosm/L、生理食塩水に対する浸透圧比は約9と非常に高い検査薬です。そんな薬剤が肺に大量に流れこんだら、身体の水分が薬剤を希釈するため肺胞の中に引っ張られて水浸し=肺水腫になり、水に溺れたのと同じような状態になってしまいます。投与量が少なければ症状的にはあまり問題になりにくいのかもしれませんが、瘻孔があるからと調子に乗って検査で飲ませ続けると危険です。
 多くはないのですが、小児系を中心に肺への誤飲によるガストロの危険性を報告した医学論文は散見します。

 ガストロの添付文書の(重要な基本的注意)には、4.高張液であるので、水代謝異常又は電解質代謝異常のある患者に投与する場合は、あらかじめ水・電解質代謝を正常にするなど適切な処置を行う[脱水症や水・電解質代謝異常を起こしやすい]。5.誤嚥により、呼吸困難、肺水腫等を引き起こす恐れがあるので、誤嚥を引き起こす恐れのある患者(高齢者、小児、嚥下困難、意識レベルが低下した患者等)に経口投与する際には観察を十分に行い注意する。また、術前造影を実施した場合には、麻酔導入時の嘔吐等による誤嚥に留意する。と明記されています。

 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の嚥下造影の標準的検査法(詳細版)にも、「消化管造影剤には硫酸バリウムとガストログラフィンがあるが,ガストログラフィンは誤嚥した場合の肺毒性が報告されており,嚥下障害での使用は不適切である」と明記されています。つまりここでは通過障害のある進行食道がん(+頭頸部がん)自体で使用を勧めていないことになるようです。
 HP最下部にPDFがありダウンロードできますので、他の対処法を含めてご参考まで。
http://www.jsdr.or.jp/news/news_all/

 最近では食道気管支瘻はCTなどでも発見できることがあり、また食道がん症例に対して食道造影検査自体を施行する先生が減ってきているようですが(これはこれでいかがなものか?)、誤飲検査を含め上部消化管造影を施行される際は是非ご留意いただいたほうがよろしいかと思っています。


 お医者さんはあまりご覧いただいていないブログかもしれませんが、ご参考になれば…田舎の町医者より



(2012.5.xx facebookより加筆修正)



【2013/03/18 22:45】 | 重要
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勉強になります
りり
来月、言語聴覚士の国家試験を受験する者です。

ガストロについて調べておりこちらを見つけましたが、大変参考になります。ありがとうございます。

言語聴覚士の先生の授業で、臨床現場で「ガストロ使いますか?」と聞かれることはよくあるので覚えておきなさいと言われましたが、やはりまだあまり医療関係職の間でも浸透していない知識なのですね。



JIN
りりさん、コメントありがとうございます。私の知る限り、医療関係者でもいまださほど浸透していないような気がします。不用意にガストロを使用しようとする偉そうな医療関係者に対しても、根拠をもって説得していただければと思います。

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 「ビデ研」といういささか怪しげな名前で、日本放射線腫瘍学会の有志の先生方が集まって、通算4年ほど患者さんのための放射線治療説明ビデオの制作に向けて活動したことがありました。メンバーで分担して総論・臓器別ビデオコンテンツのたたき台を作り、メールでやり取りしたり、学会会期中の早朝にメンバーが集まって総合討論をしたりしました。
 メンバー間でいつから略していたかは定かでないのですが、学会場などでも「ビデ研」と全く違和感なく大きな声で結構連呼していた気がします。周りの人達はどう思われていたのだろう…考え過ぎ?


 平成19-20年度研究課題「放射線治療の患者説明ビデオの作成」研究班代表者だった九州大学の中村和正先生がホームページを作成され、成果(総論・臓器別の説明ビデオ)を現在も一般公開しています。
 ちなみに、ビデオ内にあるアニメーションの多くは中村先生オリジナルです。秀作ばかりですので、是非一度ご覧下さい。
http://plaza.umin.ac.jp/rt-video/

 以下、中村先生が公開しているHP上での紹介文を転載させていただきます。
「放射線治療を受けて下さい」と主治医から告げられたら、放射線治療はどのように受けるのだろう、どのような副作用があるのだろう、などと、もしかしたら心配に思う方も多いかもしれません。
 このホームページは、そのような方のために、放射線治療をよりよく理解していただくことを目的として作成いたしました。なるべく動画・映像やナレーションを中心としたコンテンツを掲載し、少しでもわかりやすいように工夫したつもりです。
 もし、このホームページを見て、放射線治療に対するご理解が深まり、患者さんのご不安の解消に少しでも役立つのであれば、望外の幸せです。」

 これらの説明ビデオを利用することで、医療者側としては何度も同じ説明をする手間が省けて個々の患者さんに必要な診療に時間を多く割くことができますし、漏れが少なくてより正確な情報伝達をすることが可能です。患者さん側としても、わからなければ何度でも見直すことができます。診察待ち時間のお茶にごしにもなりえます。私の施設でも利用していますが、とても助かっています。


 しかし、当時の相場ですが、まともに業者さんにビデオ制作を委託すると10分程度の内容で100万円以上もかかると聞いた時は、とてもびっくりしました。



【2013/01/26 09:01】 | 重要
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 昨日、いきなり重い投稿から開始させていただきましたが、今回はこのブログにつけたタイトルの意味について少しだけ触れさせていただきます。


 「仮面放射線腫瘍医」というのは、匿名化するために顔や名前を隠すつもりでつけました。まあ、私をよくご存知の方が見たらいろいろな解釈が可能になるかもしれませんし、きっとすぐにバレバレのブログになるとは思いますが(笑)。

 また「思いつき日記」とはしていますが、一応はな〜んも考えずに投稿するわけではないつもりです。でも賢い人がみたら「こいつ、考えてね〜な〜」と思われる文章が多々あるかもしれません。とりあえず、細かいことは適当に見逃していただければ幸いです。最近はあまり気にならない齢になりました(目に余る場合はかなり気にしますが…)。
 ただ、やっぱり病院勤務医という少しは場をわきまえる必要がある仕事をしておりますので、なるべく今の職場にご迷惑をかけないようにはしたいと考えております(お酒に酔って書くときがとても不安です…)。


 個人的には数年ぶりに再開したブログで、とある地方病院で放射線治療を専門にしているオヤジによる、仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新していこうと思っています。また、約1年前からfacebookもしているのですが、結構投稿ストックが増えていて、自分の頭の整理を兼ねてそちらからの転載も公開用に修正して適宜アップいたします。
 
 自分の備忘録を兼ねているので、読んだことがある人にはたぶんくどい内容だろうと思いますが、なにとぞご容赦くださいませ。


【2013/01/09 00:57】 | 重要
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 私がこのブログを継続していくうえで、最初に示さねばならないと思っていることがあります。


 私は医師になってから、その時その時に自分なりに良かれと判断して診療を行ってきました。医療者として当たり前のことではございましょうが、これからもそのスタンスは変えません。
 ただ、私がこれまでかかわらせていただいたなかで、残念ながら亡くなられた方々、病が進行してしまった方々、副作用やアクシデントなど治療の悪影響で苦しまれてしまった方々も多くおられました。また、私以外の医療者であれば治せた、苦しみを和らげることができた方々もおられたと思います。「ベストな治療だったのか?」の問いに「はい」と言い切れないケースもあったと思います。
 自分が存じ上げている方々もいれば、気づかずにいる大変申し訳ない方々も多くいらっしゃることと存じます。ご迷惑をおかけしてしまった医療関係者の方々も多々おられます。そのような方々に対し、この場をお借りして改めておわび申し上げます。

 自分の経験不足、勉強不足、知識不足を補うためにブログやfacebookは有効な手段になると今のところ考えており、できれば今後もこれまでに感じた疑問やいろいろな問いかけ、反省などについての投稿をさせていただきたく存じます。
 謝れば許されるというものでもないとは重々自覚しておるつもりですし、言うは易しとのご批判もございましょうが、私の反省や痛い経験(患者さんは本当に辛く痛いのですが)などを他の方とも共有していただき、少しでもこれからの診療の一助になればという思いで投稿をと思っています。

 ブログやfacebookという手段以外でも可能では?というご意見もあろうかと思いますが、そのような場合はもちろん自分なりに別の形をとらせていただく所存です。今までに、そしてこれからもブログやfacebook上での私の投稿やコメントに気分を害される方も当然おられると思います。患者さんやお知り合いの方々、医療機関の方々などにご迷惑のかかる投稿は控えるよう自分なりに極力配慮する所存ではございますが、もしお気づきの点や問題点がある、修正あるいは削除をご希望される場合は、コメントやメッセージなどでご連絡ください。可能な限り対応させていただきます。

 また医療関係以外の趣味や関心を引いたことなども、記事として交える所存です。こちらもいろいろなご意見があるかもしれませんが、なるべく節度を守った投稿を心がけたいと思っております。


 今後ともよろしくお願い申し上げます。


(2012.6.xx facebookから加筆修正)


【2013/01/08 03:09】 | 重要
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かいどう
応援していますよ。
頑張ってください!

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