2012年7月の日経メディカル ブログ:東京医療センター臨床研修科医長の尾藤誠司氏「ヒポクラテスによろしく」より『医者はなぜお互いを「先生」と呼ぶのか?』より抜粋引用させていただきました。
『医師の世界では同業者の他人を「先生」と呼ぶことが多いですが、(医師として20年以上のキャリアを持つ尾藤氏は)『先生』である自分や、同僚を『先生』と呼ぶ自分になんだか気持ち悪さを感じるようになってきました。簡単に言うと、“相手をバカにしているような感じ”を覚えるようになってきたのです。 有名なことわざに「先生とよばれるほどのばかでなし」があります。巷のことわざ辞典によると、「『先生』と呼ばれても、いい気になってはいけないよ、ということ。教師をはじめ、医師・弁護士など、普通『先生』と呼ばれる人以外に使う『先生』 には必ずしも敬意が含まれていないことから言う」という意味のようです。はい、まさにそういう感じですね。お互いを「先生」と呼び合っている人たちの中には、ある種の“勘違い”があるのではないか。。。(以下、略)。』(全文が読めるのは「日経メディカル オンライン」に会員登録後です)
**************************
私が医師を「○○先生」と呼ぶのは、心からそう呼べるすばらしいお方も多数おりますが、その境界がはっきりせず、ぶっちゃけ使い分けが『めんどくさい』からです。
恩師はもちろん「先生」と呼びますが、恩師の同級生の医師も同じなのか?10歳以上ならば皆「先生」と呼んだほうがいいのか?1歳上はどう?医学部では同級生でも年齢的に先輩や後輩がいるなんてことはざらです。同じ高校で在学中は下級生だった奴が大学に入ったら上級生だったなんてのもよくあります。後輩でもいろいろな偉い「先生」はいます。心の底から馬鹿にしたことは(たぶん)ありませんが、医師として敬意を感じない方も少なからずいます。実際、高校の先輩や後輩などに「○○さん」と呼ぶこともありますが(あと、尾藤氏(あ、尾藤「先生」だった…)の意見とは逆によっぽど頭にきた時とか、あえて馴れ馴れしく呼ぶ時)、基本的にどの医師にも分け隔てなく「○○先生」を使用し、もうすっかり慣れました。
いろいろな「先生」が一同に会した場で使い分けなどしようものなら最悪です。私の右の方は「先生」、左の方は「さん」。しかもその相手同士が、大学の先輩後輩だったりすると、私と違う関係で「先生」と「さん」。各々の会話の中で「先生」と「さん」が飛び交います。気が狂いそうで、不器用な私にはとても出来ません。
これからもきっと当面はこのスタイルを自分の精神衛生上のためにも続けると思います。別に問題はないと思っていますが…ダメ?
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/bito/201207/525624.html
(2012.7.xx facebookより加筆修正)
『医師の世界では同業者の他人を「先生」と呼ぶことが多いですが、(医師として20年以上のキャリアを持つ尾藤氏は)『先生』である自分や、同僚を『先生』と呼ぶ自分になんだか気持ち悪さを感じるようになってきました。簡単に言うと、“相手をバカにしているような感じ”を覚えるようになってきたのです。 有名なことわざに「先生とよばれるほどのばかでなし」があります。巷のことわざ辞典によると、「『先生』と呼ばれても、いい気になってはいけないよ、ということ。教師をはじめ、医師・弁護士など、普通『先生』と呼ばれる人以外に使う『先生』 には必ずしも敬意が含まれていないことから言う」という意味のようです。はい、まさにそういう感じですね。お互いを「先生」と呼び合っている人たちの中には、ある種の“勘違い”があるのではないか。。。(以下、略)。』(全文が読めるのは「日経メディカル オンライン」に会員登録後です)
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私が医師を「○○先生」と呼ぶのは、心からそう呼べるすばらしいお方も多数おりますが、その境界がはっきりせず、ぶっちゃけ使い分けが『めんどくさい』からです。
恩師はもちろん「先生」と呼びますが、恩師の同級生の医師も同じなのか?10歳以上ならば皆「先生」と呼んだほうがいいのか?1歳上はどう?医学部では同級生でも年齢的に先輩や後輩がいるなんてことはざらです。同じ高校で在学中は下級生だった奴が大学に入ったら上級生だったなんてのもよくあります。後輩でもいろいろな偉い「先生」はいます。心の底から馬鹿にしたことは(たぶん)ありませんが、医師として敬意を感じない方も少なからずいます。実際、高校の先輩や後輩などに「○○さん」と呼ぶこともありますが(あと、尾藤氏(あ、尾藤「先生」だった…)の意見とは逆によっぽど頭にきた時とか、あえて馴れ馴れしく呼ぶ時)、基本的にどの医師にも分け隔てなく「○○先生」を使用し、もうすっかり慣れました。
いろいろな「先生」が一同に会した場で使い分けなどしようものなら最悪です。私の右の方は「先生」、左の方は「さん」。しかもその相手同士が、大学の先輩後輩だったりすると、私と違う関係で「先生」と「さん」。各々の会話の中で「先生」と「さん」が飛び交います。気が狂いそうで、不器用な私にはとても出来ません。
これからもきっと当面はこのスタイルを自分の精神衛生上のためにも続けると思います。別に問題はないと思っていますが…ダメ?
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/bito/201207/525624.html
(2012.7.xx facebookより加筆修正)
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「ビデ研」といういささか怪しげな名前で、日本放射線腫瘍学会の有志の先生方が集まって、通算4年ほど患者さんのための放射線治療説明ビデオの制作に向けて活動したことがありました。メンバーで分担して総論・臓器別ビデオコンテンツのたたき台を作り、メールでやり取りしたり、学会会期中の早朝にメンバーが集まって総合討論をしたりしました。
メンバー間でいつから略していたかは定かでないのですが、学会場などでも「ビデ研」と全く違和感なく大きな声で結構連呼していた気がします。周りの人達はどう思われていたのだろう…考え過ぎ?
平成19-20年度研究課題「放射線治療の患者説明ビデオの作成」研究班代表者だった九州大学の中村和正先生がホームページを作成され、成果(総論・臓器別の説明ビデオ)を現在も一般公開しています。
ちなみに、ビデオ内にあるアニメーションの多くは中村先生オリジナルです。秀作ばかりですので、是非一度ご覧下さい。
http://plaza.umin.ac.jp/rt-video/
以下、中村先生が公開しているHP上での紹介文を転載させていただきます。
「放射線治療を受けて下さい」と主治医から告げられたら、放射線治療はどのように受けるのだろう、どのような副作用があるのだろう、などと、もしかしたら心配に思う方も多いかもしれません。
このホームページは、そのような方のために、放射線治療をよりよく理解していただくことを目的として作成いたしました。なるべく動画・映像やナレーションを中心としたコンテンツを掲載し、少しでもわかりやすいように工夫したつもりです。
もし、このホームページを見て、放射線治療に対するご理解が深まり、患者さんのご不安の解消に少しでも役立つのであれば、望外の幸せです。」
これらの説明ビデオを利用することで、医療者側としては何度も同じ説明をする手間が省けて個々の患者さんに必要な診療に時間を多く割くことができますし、漏れが少なくてより正確な情報伝達をすることが可能です。患者さん側としても、わからなければ何度でも見直すことができます。診察待ち時間のお茶にごしにもなりえます。私の施設でも利用していますが、とても助かっています。
しかし、当時の相場ですが、まともに業者さんにビデオ制作を委託すると10分程度の内容で100万円以上もかかると聞いた時は、とてもびっくりしました。
メンバー間でいつから略していたかは定かでないのですが、学会場などでも「ビデ研」と全く違和感なく大きな声で結構連呼していた気がします。周りの人達はどう思われていたのだろう…考え過ぎ?
平成19-20年度研究課題「放射線治療の患者説明ビデオの作成」研究班代表者だった九州大学の中村和正先生がホームページを作成され、成果(総論・臓器別の説明ビデオ)を現在も一般公開しています。
ちなみに、ビデオ内にあるアニメーションの多くは中村先生オリジナルです。秀作ばかりですので、是非一度ご覧下さい。
http://plaza.umin.ac.jp/rt-video/
以下、中村先生が公開しているHP上での紹介文を転載させていただきます。
「放射線治療を受けて下さい」と主治医から告げられたら、放射線治療はどのように受けるのだろう、どのような副作用があるのだろう、などと、もしかしたら心配に思う方も多いかもしれません。
このホームページは、そのような方のために、放射線治療をよりよく理解していただくことを目的として作成いたしました。なるべく動画・映像やナレーションを中心としたコンテンツを掲載し、少しでもわかりやすいように工夫したつもりです。
もし、このホームページを見て、放射線治療に対するご理解が深まり、患者さんのご不安の解消に少しでも役立つのであれば、望外の幸せです。」
これらの説明ビデオを利用することで、医療者側としては何度も同じ説明をする手間が省けて個々の患者さんに必要な診療に時間を多く割くことができますし、漏れが少なくてより正確な情報伝達をすることが可能です。患者さん側としても、わからなければ何度でも見直すことができます。診察待ち時間のお茶にごしにもなりえます。私の施設でも利用していますが、とても助かっています。
しかし、当時の相場ですが、まともに業者さんにビデオ制作を委託すると10分程度の内容で100万円以上もかかると聞いた時は、とてもびっくりしました。
ここ数日、病院機能評価審査で、何となく落ち着かない空気が院内に漂っています。
日本医療機能評価機構のHPによると、病院機能評価とは医療を見つめる第三者の目がはいること、つまり病院が組織的に医療を提供するための基本的な活動 (機能) が適切に実施されているかどうかを評価する仕組みだそうです。評価調査者 (サーベイヤー) が中立・公平な立場にたって、所定の評価項目に沿って病院の活動状況を評価し、一定の水準を満たしていると認められた病院が「認定」となります。認定病院は、地域に根ざし、安心・安全、信頼と納得の得られる医療サービスを提供すべく常日頃努力している病院であると言え、すでに全国の病院の約3割が認定されているんだそうです。
http://jcqhc.or.jp/works/evaluation/advantage.html
今日は午後一番からうちの病棟で審査があるというので、私もいろいろな業務を前倒ししたり先送りしたりで、少しドキドキしながら待機していました。いざ始まると、病棟内の設備関係のチェックやら書類の確認やらで私の出番は無し。続いて行われたカルテチェックも同じ病棟の外科系がターゲットで私の出番は無し。約2時間、審査を傍から眺めてました。
ある審査官の方が「ゴミ箱が多いですね」とか「看護目標の張り紙は医師などとの多職種共同という記載のほうがいいですね」とかいろいろ指摘されていて、「なるほど、そういうチェックも大事なんだ」と教えていただきました。看護師さんたちもティッシュボックスの置き場所とか、カルテの配置とか、顔マスクのつけ方とか、かなり気を使っていました。見た目は大事ですから。
結局、私は何もすることがなく、暇でしたがホッとしました。でも、この審査で落とされるべきなのは、外見ではなく、指示やらカルテ記載やらシステムやらがあまりに不備だったりではないのかな?
ちなみに、私が以前非常勤で診療支援した施設で、入院してから退院するまで手術記録以外「全く」カルテ記載がないという某診療科がありました。放射線治療の診療をするのに看護記録だけが頼りでした。入院してから初めての記載が「患者死亡」だった(1ヶ月以上入院している患者さんのカルテ)診療科もありました。
そういう施設が落とされるなら納得できますが、実際はどうなのでしょう?
病院機能評価って、取得していたからといって今のところは病院の収益向上には直接つながらず、経営面では「あります」と標榜することで世間的に病院のステータス≒コマーシャルになる(だけの)ようです。この前FBやブログで触れた専門医や学位(医学博士)のように、足の裏の米粒≒食えないけど取らないと気持ち悪いものといったのと近いことなのかもしれません。
ただ、第3者の体系的な審査が入ることで、現状の病院を客観的に把握できたり、具体的な改善目標の設定をすることで自己反省や改善の良ききっかけづくりになったりはします。以前所属した施設で受けたISO審査の時も、審査官の方々に「こういうのを、うまく利用して病院を改善すればいいんですよ。それが目的なのです」と直接アドバイスを受けたことがあります。
学生の時の試験勉強のような駆け込み詰め込み準備をするのではなく、本質的なシステム改善につなげるように活用すべきなのでしょう。
日本医療機能評価機構のHPによると、病院機能評価とは医療を見つめる第三者の目がはいること、つまり病院が組織的に医療を提供するための基本的な活動 (機能) が適切に実施されているかどうかを評価する仕組みだそうです。評価調査者 (サーベイヤー) が中立・公平な立場にたって、所定の評価項目に沿って病院の活動状況を評価し、一定の水準を満たしていると認められた病院が「認定」となります。認定病院は、地域に根ざし、安心・安全、信頼と納得の得られる医療サービスを提供すべく常日頃努力している病院であると言え、すでに全国の病院の約3割が認定されているんだそうです。
http://jcqhc.or.jp/works/evaluation/advantage.html
今日は午後一番からうちの病棟で審査があるというので、私もいろいろな業務を前倒ししたり先送りしたりで、少しドキドキしながら待機していました。いざ始まると、病棟内の設備関係のチェックやら書類の確認やらで私の出番は無し。続いて行われたカルテチェックも同じ病棟の外科系がターゲットで私の出番は無し。約2時間、審査を傍から眺めてました。
ある審査官の方が「ゴミ箱が多いですね」とか「看護目標の張り紙は医師などとの多職種共同という記載のほうがいいですね」とかいろいろ指摘されていて、「なるほど、そういうチェックも大事なんだ」と教えていただきました。看護師さんたちもティッシュボックスの置き場所とか、カルテの配置とか、顔マスクのつけ方とか、かなり気を使っていました。見た目は大事ですから。
結局、私は何もすることがなく、暇でしたがホッとしました。でも、この審査で落とされるべきなのは、外見ではなく、指示やらカルテ記載やらシステムやらがあまりに不備だったりではないのかな?
ちなみに、私が以前非常勤で診療支援した施設で、入院してから退院するまで手術記録以外「全く」カルテ記載がないという某診療科がありました。放射線治療の診療をするのに看護記録だけが頼りでした。入院してから初めての記載が「患者死亡」だった(1ヶ月以上入院している患者さんのカルテ)診療科もありました。
そういう施設が落とされるなら納得できますが、実際はどうなのでしょう?
病院機能評価って、取得していたからといって今のところは病院の収益向上には直接つながらず、経営面では「あります」と標榜することで世間的に病院のステータス≒コマーシャルになる(だけの)ようです。この前FBやブログで触れた専門医や学位(医学博士)のように、足の裏の米粒≒食えないけど取らないと気持ち悪いものといったのと近いことなのかもしれません。
ただ、第3者の体系的な審査が入ることで、現状の病院を客観的に把握できたり、具体的な改善目標の設定をすることで自己反省や改善の良ききっかけづくりになったりはします。以前所属した施設で受けたISO審査の時も、審査官の方々に「こういうのを、うまく利用して病院を改善すればいいんですよ。それが目的なのです」と直接アドバイスを受けたことがあります。
学生の時の試験勉強のような駆け込み詰め込み準備をするのではなく、本質的なシステム改善につなげるように活用すべきなのでしょう。
20世紀末くらいまで、放射線治療装置は初期導入費用が億単位と高額にもかかわらず、放射線治療の診療単価自体はあまり恵まれず、また医療者と患者さん双方の放射線治療に対する理解度不足もあって放射線治療患者数が少なかったため、正直いって放射線治療部門は病院のお荷物的存在だったと思います。
しかし、最近の10年で放射線治療の診療単価は上昇し(これは健保委員の先生方のご尽力の賜物です)、身体に優しいがん治療という世間の認知度上昇に伴う放射線治療患者数の増加があり(それでもまだ先進諸外国と比べると少ないのですが…)、また2010年4月以降は地域がん診療拠点病院の指定を受けるために放射線治療が実施できることが必須になったことも重なって、最近ではようやく名実ともに病院の売りになりつつある分野に変貌してきました。
そんな時代を反映してか、先月および今月号の「新医療」という雑誌に「放射線治療は病院の“看板”になるか」という興味深い特集があり、病院経営者や放射線治療専門医の方々がそれぞれの視点でご投稿されていました。
総じて、経営者の目線では「がん患者さんは増加の一途だからこれからの放射線治療は儲かりそう」というご意見、一方で放射線治療(すなわち現場)の先生方の目線は「ちょっと、少し待って」といった慎重論的なご意見と、若干温度差があったような印象を受けました。
特に個人的に関心を引いたのが、聖隷三方ヶ原病院放射線治療科部長の山田和成先生のご投稿記事でした。要旨は以下の通り、『放射線治療棟建設に当たっては、将来の拡張性、アメニティを考慮しなければならない。最新医療機器の更新は必須であるが、真の施設の「看板」に育てるためには放射線治療に関わる専門スタッフ養成・教育システムの構築が最も重要である』。
特に要旨後半の記載は極めて重要だと私も思いますし、安易にシステム導入してしまいがちな経営者の方々には是非ご理解いただきたい部分でしょうか。
昨今のX線治療装置は単体で2-5億程度、システムとして導入すると(ピンキリですが)その約1.5倍〜2倍。箱モノ(施設)も含めると10億以上かかることはざらです。また箱は巨大コンクリート&分厚い金属板の塊なので一度出来上がると簡単にリフォームできません。
それでも(5年以上経過した「どんな人でもいいから」放射線治療専門医一人いればサイコーな)放射線治療担当常勤医がいて1日25名程度の患者さんを照射していれば、普通の施設で十分採算が取れるようになりましたし、がん拠点病院の指定をはじめとする病院の生き残り面でも鍵となる診療部門になってきました。
一方、粒子線治療装置(陽子線、炭素イオン線など)は初期導入費用として数10億〜100億以上かかるといわれます。兵庫県立粒子線医療センターの不破院長先生によると「陽子線は年間450人以上、炭素線に至っては800人以上の患者数が必要」との試算だそうです。
X線治療は原則保険診療なので、患者負担は1〜3割であり実費30万以上かかることはまずありません(放射線治療「だけ」の場合です)が、粒子線治療はいまだ先進医療(公的に認められた保険「外」診療)なので臨床試験でもない限り全額実費、250〜300万円以上の自己負担になってしまいます。一施設あたりの年間X線治療患者数ですら平均300人強なので(2009年JASTRO構造調査より)、全額自費を支払う患者さんをその倍以上「集める」こと自体かなりの労力を要しますし、集客の仕組みをうまく構築しないと相当大変です。
民間施設ですと「売上」が経営をモロに直撃しますので集客により一層力を入れるでしょう。しかし公的病院ではぶっちゃけ儲かろうが暇だろうが個人の給与には大きく変化がないため、医療スタッフの放射線治療に対するマンパワーとモチベーションが患者数に大きく関与してきます。
前述の山田和成先生は、『病院の「看板」にしようと高額な最新鋭の治療機器を無理に導入しても5年ほどですぐに旧式化することが避けられない。(中略)専門スタッフの要請もないまま高額な放射線治療機器を導入し、十分に稼働していない施設は枚挙に暇がない。』と本文内で表現されています。行政のおかげでせっかく優れた放射線治療装置が血税から大枚はたいて導入されても、それを動かすスタッフが(やる気を含めて)きちんと整備されていなければ「宝の持ち腐れ」になってしまいます。
これについては私の体験談も交えて(天から怒られなければ)また改めて触れようかなと考えてますが、あまりにもったいないと思いませんか?
でもね、持ち腐れてる施設ってまれではないんですよ。私が見聞きしただけでも…きっと全国的にはもっと…?
**************************
付記
いろいろな内容を混ぜすぎて、話のまとまりがない投稿になってしまいました。申し訳ありません。改めて自分なりに整理して、それぞれについて思いついたことをまた別の機会にブログで独り言したいと思ってます。
しかし、最近の10年で放射線治療の診療単価は上昇し(これは健保委員の先生方のご尽力の賜物です)、身体に優しいがん治療という世間の認知度上昇に伴う放射線治療患者数の増加があり(それでもまだ先進諸外国と比べると少ないのですが…)、また2010年4月以降は地域がん診療拠点病院の指定を受けるために放射線治療が実施できることが必須になったことも重なって、最近ではようやく名実ともに病院の売りになりつつある分野に変貌してきました。
そんな時代を反映してか、先月および今月号の「新医療」という雑誌に「放射線治療は病院の“看板”になるか」という興味深い特集があり、病院経営者や放射線治療専門医の方々がそれぞれの視点でご投稿されていました。
総じて、経営者の目線では「がん患者さんは増加の一途だからこれからの放射線治療は儲かりそう」というご意見、一方で放射線治療(すなわち現場)の先生方の目線は「ちょっと、少し待って」といった慎重論的なご意見と、若干温度差があったような印象を受けました。
特に個人的に関心を引いたのが、聖隷三方ヶ原病院放射線治療科部長の山田和成先生のご投稿記事でした。要旨は以下の通り、『放射線治療棟建設に当たっては、将来の拡張性、アメニティを考慮しなければならない。最新医療機器の更新は必須であるが、真の施設の「看板」に育てるためには放射線治療に関わる専門スタッフ養成・教育システムの構築が最も重要である』。
特に要旨後半の記載は極めて重要だと私も思いますし、安易にシステム導入してしまいがちな経営者の方々には是非ご理解いただきたい部分でしょうか。
昨今のX線治療装置は単体で2-5億程度、システムとして導入すると(ピンキリですが)その約1.5倍〜2倍。箱モノ(施設)も含めると10億以上かかることはざらです。また箱は巨大コンクリート&分厚い金属板の塊なので一度出来上がると簡単にリフォームできません。
それでも(5年以上経過した「どんな人でもいいから」放射線治療専門医一人いればサイコーな)放射線治療担当常勤医がいて1日25名程度の患者さんを照射していれば、普通の施設で十分採算が取れるようになりましたし、がん拠点病院の指定をはじめとする病院の生き残り面でも鍵となる診療部門になってきました。
一方、粒子線治療装置(陽子線、炭素イオン線など)は初期導入費用として数10億〜100億以上かかるといわれます。兵庫県立粒子線医療センターの不破院長先生によると「陽子線は年間450人以上、炭素線に至っては800人以上の患者数が必要」との試算だそうです。
X線治療は原則保険診療なので、患者負担は1〜3割であり実費30万以上かかることはまずありません(放射線治療「だけ」の場合です)が、粒子線治療はいまだ先進医療(公的に認められた保険「外」診療)なので臨床試験でもない限り全額実費、250〜300万円以上の自己負担になってしまいます。一施設あたりの年間X線治療患者数ですら平均300人強なので(2009年JASTRO構造調査より)、全額自費を支払う患者さんをその倍以上「集める」こと自体かなりの労力を要しますし、集客の仕組みをうまく構築しないと相当大変です。
民間施設ですと「売上」が経営をモロに直撃しますので集客により一層力を入れるでしょう。しかし公的病院ではぶっちゃけ儲かろうが暇だろうが個人の給与には大きく変化がないため、医療スタッフの放射線治療に対するマンパワーとモチベーションが患者数に大きく関与してきます。
前述の山田和成先生は、『病院の「看板」にしようと高額な最新鋭の治療機器を無理に導入しても5年ほどですぐに旧式化することが避けられない。(中略)専門スタッフの要請もないまま高額な放射線治療機器を導入し、十分に稼働していない施設は枚挙に暇がない。』と本文内で表現されています。行政のおかげでせっかく優れた放射線治療装置が血税から大枚はたいて導入されても、それを動かすスタッフが(やる気を含めて)きちんと整備されていなければ「宝の持ち腐れ」になってしまいます。
これについては私の体験談も交えて(天から怒られなければ)また改めて触れようかなと考えてますが、あまりにもったいないと思いませんか?
でもね、持ち腐れてる施設ってまれではないんですよ。私が見聞きしただけでも…きっと全国的にはもっと…?
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付記
いろいろな内容を混ぜすぎて、話のまとまりがない投稿になってしまいました。申し訳ありません。改めて自分なりに整理して、それぞれについて思いついたことをまた別の機会にブログで独り言したいと思ってます。
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ありがとうございます
山田 和成 駄文を読んでいただき、汗顔のいたりです。
宝の持ち腐れにならないように、また高額機器の減価償却が無事できるように日々追われております。
JIN 山田先生、こちらこそ駄文ブログにご訪問いただき、恐縮です。無断引用、申し訳ございませんでした。
山田 和成 駄文を読んでいただき、汗顔のいたりです。
宝の持ち腐れにならないように、また高額機器の減価償却が無事できるように日々追われております。
JIN 山田先生、こちらこそ駄文ブログにご訪問いただき、恐縮です。無断引用、申し訳ございませんでした。
先日、SMAP中居正広さんが番組で片まゆ毛剃りをするかも?という記事がありました。
『テレビ放送開始から60年を迎えるNHKと日本テレビが特別番組「60番勝負」を共同制作することになり、15日に都内で会見を開き、司会の「SMAP」中居正広(40)、NHK武内陶子(47)、有働由美子(43)両アナ、日テレ桝太一アナ(31)が登場した。
「テレビの未来」をテーマに両局が60個の企画で勝負する内容で、中居は「負けた局の責任者が右の眉毛をそるのはどう?」と罰ゲームを提案。すかさず武内アナが「有働がそります」と言い放ち、笑いを誘った。
NHK総合で2月2日午前0時58分、日テレで3日午前0時50分から、2夜連続で生放送。視聴者投票で勝者を決める。
(スポニチアネックス 2013年1月16日記事より引用)』
北村ヂンさんというライターの方の投稿記事を見て、私も昔を思い出して昨年5月facebookに***以下の投稿をしたことがあります(一部修正)。まゆ毛を両方剃るというのは女性ではよくある事かもしれませんが、(経験上)男性の片まゆ毛は結構目立ちます。
あくまで興味本位で有名芸能人の片まゆ毛状態というのを見てみたい気もして、少しだけ注目している番組です。まさか片まゆ毛剃りが妙なブームになることはないでしょうが…?(笑)
北村ヂンさんの記事のURLです。http://portal.nifty.com/kiji/120410154836_1.htm
**************************
世の中には面白いことをする方がいるものです。しかし『空手バカ一代』のモデルのあの大山倍達氏も片まゆ毛剃りをしていたとは。かくいう私も穴があったら入りたかった経験が昔々にあります…。
それは田舎の某病院で私が内科研修医だった時のことです。当時、私は外科の先生達とほぼ毎晩のように夜の会合をしていました。ホウジョウというそれはそれは酒も肴も美味しいお店でした。
ある会合でいささか度が過ぎた私は記憶を失ってしまい、目が覚めると翌朝、自宅の官舎。完全に遅刻でした。外来担当日だった私は慌てて着の身着のまま病院に駆け込み、こそこそと内科外来に入り、何もなかったかのように外来診療を始めました。
と、なにやら患者さんの態度がいつもと違う??なんだかけげんそうな表情の方もいれば微笑んでおられる方も。皆なんとなく上目線。変だな?と思いつつも診療を続けていたのですが、ある指示を出そうと外来看護師さんの方を向いたとき、彼女にプッと笑われ「先生、鏡見た?」と一言。近くにあった鏡を覗きこむと、片方のまゆ毛がない…。
前夜、記憶を失った後に外科の先生方に仕込まれたことに気づくのは間もなくのことでした。
まゆ毛はすぐには生えません。
これは仕事をする上でも結構つらいです。しばらくの間、患者さん目線は私の目よりも上向きでした…。面と向かい合う外来診療が特に恥ずかしかったことを今でもよく覚えています。
今そんなことをしたらアルコールハラスメントなんていうものに該当してしまうでしょうか?二度と体験したくはありませんが、古き良き時代だったような気もします。
ちなみに、Bの鉛筆が私にはちょうどよい濃さでした。
『テレビ放送開始から60年を迎えるNHKと日本テレビが特別番組「60番勝負」を共同制作することになり、15日に都内で会見を開き、司会の「SMAP」中居正広(40)、NHK武内陶子(47)、有働由美子(43)両アナ、日テレ桝太一アナ(31)が登場した。
「テレビの未来」をテーマに両局が60個の企画で勝負する内容で、中居は「負けた局の責任者が右の眉毛をそるのはどう?」と罰ゲームを提案。すかさず武内アナが「有働がそります」と言い放ち、笑いを誘った。
NHK総合で2月2日午前0時58分、日テレで3日午前0時50分から、2夜連続で生放送。視聴者投票で勝者を決める。
(スポニチアネックス 2013年1月16日記事より引用)』
北村ヂンさんというライターの方の投稿記事を見て、私も昔を思い出して昨年5月facebookに***以下の投稿をしたことがあります(一部修正)。まゆ毛を両方剃るというのは女性ではよくある事かもしれませんが、(経験上)男性の片まゆ毛は結構目立ちます。
あくまで興味本位で有名芸能人の片まゆ毛状態というのを見てみたい気もして、少しだけ注目している番組です。まさか片まゆ毛剃りが妙なブームになることはないでしょうが…?(笑)
北村ヂンさんの記事のURLです。http://portal.nifty.com/kiji/120410154836_1.htm
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世の中には面白いことをする方がいるものです。しかし『空手バカ一代』のモデルのあの大山倍達氏も片まゆ毛剃りをしていたとは。かくいう私も穴があったら入りたかった経験が昔々にあります…。
それは田舎の某病院で私が内科研修医だった時のことです。当時、私は外科の先生達とほぼ毎晩のように夜の会合をしていました。ホウジョウというそれはそれは酒も肴も美味しいお店でした。
ある会合でいささか度が過ぎた私は記憶を失ってしまい、目が覚めると翌朝、自宅の官舎。完全に遅刻でした。外来担当日だった私は慌てて着の身着のまま病院に駆け込み、こそこそと内科外来に入り、何もなかったかのように外来診療を始めました。
と、なにやら患者さんの態度がいつもと違う??なんだかけげんそうな表情の方もいれば微笑んでおられる方も。皆なんとなく上目線。変だな?と思いつつも診療を続けていたのですが、ある指示を出そうと外来看護師さんの方を向いたとき、彼女にプッと笑われ「先生、鏡見た?」と一言。近くにあった鏡を覗きこむと、片方のまゆ毛がない…。
前夜、記憶を失った後に外科の先生方に仕込まれたことに気づくのは間もなくのことでした。
まゆ毛はすぐには生えません。
これは仕事をする上でも結構つらいです。しばらくの間、患者さん目線は私の目よりも上向きでした…。面と向かい合う外来診療が特に恥ずかしかったことを今でもよく覚えています。
今そんなことをしたらアルコールハラスメントなんていうものに該当してしまうでしょうか?二度と体験したくはありませんが、古き良き時代だったような気もします。
ちなみに、Bの鉛筆が私にはちょうどよい濃さでした。
日本がん治療認定医機構「がん治療認定医」という資格がありまして、私も所有しています。5年ごとに更新手続きが必要ですが、昨年が制度発足5年ということで初の更新年でした。資格更新のためにはWeb試験なるものを受ける必要「も」あり、私も該当者でしたので重い腰を上げ挑戦した結果、(昨年10月の話ですが)無事合格いたしました。\(^o^)/
Web試験の受験期間は数ヶ月あり、その間であればいつ受験してもOKです。出題はがん治療に求められる基盤的知識と各臓器のがん治療の基本原則、とても広範囲です。
とはいっても、くまなく調べればどこかにおよその解答が記されている専用テキストを手に入れ、かつ問題をプリントアウトしてからどんな調べ物をしても良い試験ではあります(選択を迷わせるような設問もいくつかありましたが…)。

そもそも全てのがんを広く診療対象とする放射線治療科(とたぶん化学療法科)の先生方にとってはなじみの薄い領域があまりないので有利なのですが、逆に落とせないプレッシャーもなんとなくあり黙って受けられるWeb形式試験は正直言って気分的に助かりました。受験料が1回1万円かかるので(落ちたら再度1万円必要)、合否確認ボタンを押す時は少しだけ緊張しましたが。
同じように合否判定ボタンを押すのにドキドキされた方は私の知る限りでも何人かいたようです(笑)
世の中には様々な資格がありますが、医者の世界にも学会等の○○認定医とか××専門医という非国家資格がいろいろあり、コレクターのように多種多様の資格をお持ちの先生もいらっしゃいます。ほとんどの△△医資格は取得する時に試験がありますが、私の知っている範囲では資格更新の時も試験を実施しているのは今回の「がん治療認定医」以外では日本臨床腫瘍学会の専門医更新試験しかありません(持ってませんけど)。たいていは、①論文または学会報告、②学会・研究会出席単位、③症例経験数、④とても大事な登録料お支払い、くらいで資格更新が可能です。
認定される先生方や事務局のお立場を考えれば資格更新制度の手間暇は甚大なるものがありましょうから、私ごときが偉そうに語ってはいけないのですが、①「論文または学会報告」は②や③など他で基準を満たしていれば無くてもよいことがほとんどで、普通に仕事をし学会に参加「だけ」する時間とお金さえあれば、資格更新はまずクリアできます。
最初の資格取得時にはある程度お勉強しても、極端な話その後に新しい知見を頭に入れなくても現状ではいつまでも「専門医」「認定医」を標榜できちゃいます。実際に何(十)年も全く学会報告をしたことのない方や、(ご自身の専門ではない分野の)学会で参加証だけゲットして即会場を立ち去り観光旅行なんていう秘技をしばしば使われる方も知ってます。
まあ最近は、一般の方もネットなどでいろいろな情報が手に入るようになりましたから、あまりに知識不足だと厳しい時代になってきているとは思うのですが…。
医師免許と違って法的に必須ではありません。
持っていなくてもきちんとした診療をしている先生がたももちろんいらっしゃいます。何年もかけて結構苦労して取得する医学博士(学位)も同様で、実際無くても診療で大きく困ることはありません。病院によっては学位有無が給与に反映している所もあるようですが少なく、学位のことを「足の裏の米粒」(=取っても喰えない)なんて表現することもあります。
本当はそうじゃないんでしょうけどね…。
ちなみに国家資格である医師国家試験も、一度合格するとその後は更新試験がありません。よっぽどとんでもないことをしない限り、勉強しようがしまいが医者安泰です。いろんな意味でこっちこそ定期的な更新試験をした方がいいような気もしますけれど、高齢者が少なくない日本医師会は反対するでしょうねぇ、きっと。
(2012.10.xx facebookから加筆修正)
Web試験の受験期間は数ヶ月あり、その間であればいつ受験してもOKです。出題はがん治療に求められる基盤的知識と各臓器のがん治療の基本原則、とても広範囲です。
とはいっても、くまなく調べればどこかにおよその解答が記されている専用テキストを手に入れ、かつ問題をプリントアウトしてからどんな調べ物をしても良い試験ではあります(選択を迷わせるような設問もいくつかありましたが…)。

そもそも全てのがんを広く診療対象とする放射線治療科(とたぶん化学療法科)の先生方にとってはなじみの薄い領域があまりないので有利なのですが、逆に落とせないプレッシャーもなんとなくあり黙って受けられるWeb形式試験は正直言って気分的に助かりました。受験料が1回1万円かかるので(落ちたら再度1万円必要)、合否確認ボタンを押す時は少しだけ緊張しましたが。
同じように合否判定ボタンを押すのにドキドキされた方は私の知る限りでも何人かいたようです(笑)
世の中には様々な資格がありますが、医者の世界にも学会等の○○認定医とか××専門医という非国家資格がいろいろあり、コレクターのように多種多様の資格をお持ちの先生もいらっしゃいます。ほとんどの△△医資格は取得する時に試験がありますが、私の知っている範囲では資格更新の時も試験を実施しているのは今回の「がん治療認定医」以外では日本臨床腫瘍学会の専門医更新試験しかありません(持ってませんけど)。たいていは、①論文または学会報告、②学会・研究会出席単位、③症例経験数、④とても大事な登録料お支払い、くらいで資格更新が可能です。
認定される先生方や事務局のお立場を考えれば資格更新制度の手間暇は甚大なるものがありましょうから、私ごときが偉そうに語ってはいけないのですが、①「論文または学会報告」は②や③など他で基準を満たしていれば無くてもよいことがほとんどで、普通に仕事をし学会に参加「だけ」する時間とお金さえあれば、資格更新はまずクリアできます。
最初の資格取得時にはある程度お勉強しても、極端な話その後に新しい知見を頭に入れなくても現状ではいつまでも「専門医」「認定医」を標榜できちゃいます。実際に何(十)年も全く学会報告をしたことのない方や、(ご自身の専門ではない分野の)学会で参加証だけゲットして即会場を立ち去り観光旅行なんていう秘技をしばしば使われる方も知ってます。
まあ最近は、一般の方もネットなどでいろいろな情報が手に入るようになりましたから、あまりに知識不足だと厳しい時代になってきているとは思うのですが…。
医師免許と違って法的に必須ではありません。
持っていなくてもきちんとした診療をしている先生がたももちろんいらっしゃいます。何年もかけて結構苦労して取得する医学博士(学位)も同様で、実際無くても診療で大きく困ることはありません。病院によっては学位有無が給与に反映している所もあるようですが少なく、学位のことを「足の裏の米粒」(=取っても喰えない)なんて表現することもあります。
本当はそうじゃないんでしょうけどね…。
ちなみに国家資格である医師国家試験も、一度合格するとその後は更新試験がありません。よっぽどとんでもないことをしない限り、勉強しようがしまいが医者安泰です。いろんな意味でこっちこそ定期的な更新試験をした方がいいような気もしますけれど、高齢者が少なくない日本医師会は反対するでしょうねぇ、きっと。
(2012.10.xx facebookから加筆修正)
前回のブログで膠原病患者さんの放射線治療について、アルコールアレルギーと関連して少し話題にあげましたが、今回はそれをメインテーマにしています。
ごくたまに慢性関節リウマチなど膠原病の持病がある癌患者さんに対する放射線治療を依頼されることがあります。膠原病患者さんに放射線治療を行うと皮膚や粘膜、肺などにひどい後遺症が比較的起きやすいということで、一般に「相対禁忌」とされます。
しかし他の科の先生方の認知度は必ずしも高いとは言えず(放射線腫瘍医側のアピール不足と言われればそうかもしれないのですが…)、放射線治療依頼書に「膠原病の有無」というチェック項目を作成していても主治医に無視されてしまうことがあります。
なので、我々放射線治療医のほうでもアンテナを立てて既往歴のチェックをする必要があります。今年うちにはいる病院情報システムでは主治医側のチェックが必須となる縛りを入れる予定ですが、他院からの紹介となると効果が及びませんし。
この「相対禁忌」という言葉は、患者さん(と私)を非常に悩ませます。先日も、ずっと確定診断されていない慢性関節リウマチ様の患者さんへの説明の際に、この相対禁忌がらみで相当な時間を費やし、最終的には現在の病状を優先し患者さんもご了承の上で放射線治療を行ったケースがありました。
医療禁忌マニュアル第3版(医歯薬出版株式会社)の記載によると、絶対禁忌とは「その医療行為によって患者さんが死、もしくは不可逆的な障害を招くもの」、相対禁忌とは「それほどの危険性はないものの,医療上通常行ってはならないこと」とあります。膠原病の中でも強皮症などは絶対禁忌に近いのですが、患者数が比較的多い慢性関節リウマチはさほど危険性はないとも報告されていて温度差があります。膠原病による間質性肺炎がある患者さんへの胸部照射では、数ヶ月以内に命を脅かす放射線肺臓炎がとても起きやすいので、放射線治療を行わないことが原則だと思います。
とはいえ、癌そのものも放置すれば生命や苦痛を脅かすため、「命がけの」放射線治療をするかしないか患者さんに究極の選択を提示せざるをえない場合もあります。
多くの方が元気に長生きされる早期乳がんの場合、乳癌診療ガイドラインでは膠原病患者さんに対して術後照射が原則必要となる「乳房温存療法の適応にならない」と記載されています。にもかかわらず、すでに乳房温存手術が終わり術後照射をするだけとなって紹介された患者さんもたまにいらっしゃって(最近は滅多にありませんが)、その場合はいささか困ってしまいます。
患者さんおよび主治医にガイドラインなどに記載されている膠原病によるリスクを一通りご説明の上で、①線量や照射範囲などに配慮し照射期間中はもちろん終了後も慎重な対応のもと予定通り術後照射を施行する、②リスク(後遺症)を考慮して照射しないで経過観察をする、③再手術(乳房全摘術)をご検討いただく、のいずれかを選択することになるかと思います。③はなかなか難しい部分もありますが、顕微鏡的な取り残しが明らかでなければ照射をしなくても80-90%程度の患者さんは局所再発しないので、無理して照射すべきでないと主張される先生方もいらっしゃいます。主治医と相談した上で患者さんがご了承されるのであれば私も②を選択する場合があります。
実際、私自身はこれまで特にリスクの少なめな慢性関節リウマチの患者さんなどに放射線治療をご提供したことも何度かあるのですが、今のところ幸運にも膠原病患者さんでの悲しい副作用の経験はないようです。ただ単に知らないだけだとしたら大変申し訳ございません。
患者さんへの説明の時、(私)「強い後遺症が出るかもしれず原則として照射してはいけないとなっています。ただ大丈夫なことのほうが多いです。」→(患者さん) 「やっていいのか悪いのか、どっちなんだ?!」となります。患者さんの立場からすれば当然湧く疑問です。私の説明の仕方に問題があるのかもしれませんが、「いけない」と「大丈夫」の順番を変えただけで患者さんの受け止め方は違う印象もあります。また、ダイレクトに「命がけの照射」と表現することはよっぽどリスクが高くない限りたぶん少ないですが、オブラートに包んだ表現だと誤解されてしまう可能性があるため、患者さんの側からすれば脅迫まがいの説明に受け取られてしまう場合もありえます。
結局、いつも通りに癌が良くなる確率と重篤な副作用の危険度を両天秤にかけて、我々と患者さんとが共に腹をくくって選択するしかない、というスタンスで相談させていだたくのですが、いまだ難しい課題です。
(2012.5.xx facebookから加筆修正)
ごくたまに慢性関節リウマチなど膠原病の持病がある癌患者さんに対する放射線治療を依頼されることがあります。膠原病患者さんに放射線治療を行うと皮膚や粘膜、肺などにひどい後遺症が比較的起きやすいということで、一般に「相対禁忌」とされます。
しかし他の科の先生方の認知度は必ずしも高いとは言えず(放射線腫瘍医側のアピール不足と言われればそうかもしれないのですが…)、放射線治療依頼書に「膠原病の有無」というチェック項目を作成していても主治医に無視されてしまうことがあります。
なので、我々放射線治療医のほうでもアンテナを立てて既往歴のチェックをする必要があります。今年うちにはいる病院情報システムでは主治医側のチェックが必須となる縛りを入れる予定ですが、他院からの紹介となると効果が及びませんし。
この「相対禁忌」という言葉は、患者さん(と私)を非常に悩ませます。先日も、ずっと確定診断されていない慢性関節リウマチ様の患者さんへの説明の際に、この相対禁忌がらみで相当な時間を費やし、最終的には現在の病状を優先し患者さんもご了承の上で放射線治療を行ったケースがありました。
医療禁忌マニュアル第3版(医歯薬出版株式会社)の記載によると、絶対禁忌とは「その医療行為によって患者さんが死、もしくは不可逆的な障害を招くもの」、相対禁忌とは「それほどの危険性はないものの,医療上通常行ってはならないこと」とあります。膠原病の中でも強皮症などは絶対禁忌に近いのですが、患者数が比較的多い慢性関節リウマチはさほど危険性はないとも報告されていて温度差があります。膠原病による間質性肺炎がある患者さんへの胸部照射では、数ヶ月以内に命を脅かす放射線肺臓炎がとても起きやすいので、放射線治療を行わないことが原則だと思います。
とはいえ、癌そのものも放置すれば生命や苦痛を脅かすため、「命がけの」放射線治療をするかしないか患者さんに究極の選択を提示せざるをえない場合もあります。
多くの方が元気に長生きされる早期乳がんの場合、乳癌診療ガイドラインでは膠原病患者さんに対して術後照射が原則必要となる「乳房温存療法の適応にならない」と記載されています。にもかかわらず、すでに乳房温存手術が終わり術後照射をするだけとなって紹介された患者さんもたまにいらっしゃって(最近は滅多にありませんが)、その場合はいささか困ってしまいます。
患者さんおよび主治医にガイドラインなどに記載されている膠原病によるリスクを一通りご説明の上で、①線量や照射範囲などに配慮し照射期間中はもちろん終了後も慎重な対応のもと予定通り術後照射を施行する、②リスク(後遺症)を考慮して照射しないで経過観察をする、③再手術(乳房全摘術)をご検討いただく、のいずれかを選択することになるかと思います。③はなかなか難しい部分もありますが、顕微鏡的な取り残しが明らかでなければ照射をしなくても80-90%程度の患者さんは局所再発しないので、無理して照射すべきでないと主張される先生方もいらっしゃいます。主治医と相談した上で患者さんがご了承されるのであれば私も②を選択する場合があります。
実際、私自身はこれまで特にリスクの少なめな慢性関節リウマチの患者さんなどに放射線治療をご提供したことも何度かあるのですが、今のところ幸運にも膠原病患者さんでの悲しい副作用の経験はないようです。ただ単に知らないだけだとしたら大変申し訳ございません。
患者さんへの説明の時、(私)「強い後遺症が出るかもしれず原則として照射してはいけないとなっています。ただ大丈夫なことのほうが多いです。」→(患者さん) 「やっていいのか悪いのか、どっちなんだ?!」となります。患者さんの立場からすれば当然湧く疑問です。私の説明の仕方に問題があるのかもしれませんが、「いけない」と「大丈夫」の順番を変えただけで患者さんの受け止め方は違う印象もあります。また、ダイレクトに「命がけの照射」と表現することはよっぽどリスクが高くない限りたぶん少ないですが、オブラートに包んだ表現だと誤解されてしまう可能性があるため、患者さんの側からすれば脅迫まがいの説明に受け取られてしまう場合もありえます。
結局、いつも通りに癌が良くなる確率と重篤な副作用の危険度を両天秤にかけて、我々と患者さんとが共に腹をくくって選択するしかない、というスタンスで相談させていだたくのですが、いまだ難しい課題です。
(2012.5.xx facebookから加筆修正)
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Mさんへ
JIN 本日、その(2)をブログにしてみました。ご参考になれば幸いです。
momokomama 膠原病と放射線治療の記事を読み投稿しました。
2年前、強皮症と診断され、主な症状はレイノーと手足先や指関節の痛み、むくみです。1年半プレドニンを服用し、現在、我慢できる痛みならと、経過観察中です。先日、市の乳がん検診を受けたところ、乳腺X線検査で悪性の疑いとの結果が届きました。検査を受けた病院でも治療は可能なのですが、やはり、膠原病の方の先生に相談する方がよいでしょうか。
momokomamaさんへ
JIN 私は(かかりつけの)膠原病専門の先生に事前にご意見を伺い、病状を確認いたします。その上で放射線治療をするか患者さんと相談します。
ただ外科の先生が知らずに温存術を施行しあとは放射線をするだけという状態でご紹介されることもあり、その際は困ってしまいます。強皮症ですし、放射線治療をしない選択肢を考える必要がありますでの、膠原病の先生に相談(受診)されたほうがいいと思います。
Re: momokomamaさんへ
JIN > 私は(かかりつけの)膠原病専門の先生に事前にご意見を伺い、病状を確認いたします。その上で放射線治療をするか患者さんと相談します。
> ただ外科の先生が知らずに温存術を施行しあとは放射線をするだけという状態でご紹介されることもあり、その際は困ってしまいます。強皮症ですし、放射線治療をしない選択肢を考える必要がありますでの、膠原病の先生に相談(受診)されたほうがいいと思います。
膠原病と放射線治療(2)もご参考になれば幸いです。
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-60.html
momokomama ありがとうございます。
強皮症と乳がん、全く関係ないので膠原病の先生に相談してご迷惑では…でも治療過程で注意が必要かもと悩んでいました。
おっしゃるとおり、膠原病の先生に相談してみます。幸い大きな病院に所属されている先生なので、同じ病院の乳腺外来を紹介して頂ければと思います。
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Mさんへ
JIN 本日、その(2)をブログにしてみました。ご参考になれば幸いです。
momokomama 膠原病と放射線治療の記事を読み投稿しました。
2年前、強皮症と診断され、主な症状はレイノーと手足先や指関節の痛み、むくみです。1年半プレドニンを服用し、現在、我慢できる痛みならと、経過観察中です。先日、市の乳がん検診を受けたところ、乳腺X線検査で悪性の疑いとの結果が届きました。検査を受けた病院でも治療は可能なのですが、やはり、膠原病の方の先生に相談する方がよいでしょうか。
momokomamaさんへ
JIN 私は(かかりつけの)膠原病専門の先生に事前にご意見を伺い、病状を確認いたします。その上で放射線治療をするか患者さんと相談します。
ただ外科の先生が知らずに温存術を施行しあとは放射線をするだけという状態でご紹介されることもあり、その際は困ってしまいます。強皮症ですし、放射線治療をしない選択肢を考える必要がありますでの、膠原病の先生に相談(受診)されたほうがいいと思います。
Re: momokomamaさんへ
JIN > 私は(かかりつけの)膠原病専門の先生に事前にご意見を伺い、病状を確認いたします。その上で放射線治療をするか患者さんと相談します。
> ただ外科の先生が知らずに温存術を施行しあとは放射線をするだけという状態でご紹介されることもあり、その際は困ってしまいます。強皮症ですし、放射線治療をしない選択肢を考える必要がありますでの、膠原病の先生に相談(受診)されたほうがいいと思います。
膠原病と放射線治療(2)もご参考になれば幸いです。
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-60.html
momokomama ありがとうございます。
強皮症と乳がん、全く関係ないので膠原病の先生に相談してご迷惑では…でも治療過程で注意が必要かもと悩んでいました。
おっしゃるとおり、膠原病の先生に相談してみます。幸い大きな病院に所属されている先生なので、同じ病院の乳腺外来を紹介して頂ければと思います。
私の同級生(あえて匿名…)のFacebookに「酒の有効成分はエタノールでしょうか。それなら日本酒もワインもスコッチもテキーラもバーボンも老酒だってエタノールです。燗酒も冷や酒も湯で割った焼酎も生のスコッチもバーボンも赤ワインも白ワインもアルコール度数さえ同じにしたら飲んだ人に与える効果は同じでしょうか?同じだといった馬鹿丸出しの肝臓専門医が私が学生時代に講義してました。…(以下、略)」という投稿が以前ありました。
お酒と同様に放射線治療も、吸収線量(ある場所のある物質中に吸収された放射線量:グレイ≒アルコール量)さえ同じにしたら治療効果や副作用も同じになるかというと決してそうではありません。日本酒やビール、ワインなどアルコール度数の違う多種のお酒があるように、治療に用いる放射線にもX線、粒子線(陽子線、炭素イオン線)、β線やγ線(ヨウ素-131、ストロンチウム-89)などがあります。
また、放射線の線質によって人体への影響が変わる線量当量(吸収線量に法令で定められた係数---放射線の種類ごとに定められた人体の障害の受けやすさ---を掛けたもの:シーベルト≒酔いの程度)があることは、昨今の内部被曝問題からご存知の方も多数いらっしゃると思います。
また通常用いられるX線治療で同じグレイを照射しても、副作用や腫瘍の縮小程度は患者さんによって異なります。一部の膠原病患者さんでは通常では起きにくい少量の放射線被曝でも皮膚炎など強い副作用(≒アルコールアレルギー)が現れることがあります。同じ臓器の同じタイプの癌でも放射線治療による腫瘍縮小の程度や速さはかなりばらつきます。
放射線治療に関する生存率を中心とした臨床試験の報告は世界中に数多くありますが、同じ照射法の個人差(患者と医者の両面)についての言及は、私の知る限りさほどなされていません。人種格差や治療する国や病院の実力差(≒ワインにおけるブドウの銘柄や土壌の差)を示した論文はいくつかありますし、今後は遺伝子解析などによるオーダーメード放射線治療がどんどん進みそうです。
しかし放射線腫瘍医の腕や知識、経験の差(≒酒の造り手の技や経験の差)を示した臨床試験はほとんどないと思います。実際のところ、数が少なすぎて個々の放射線腫瘍医の限られた診療経験数ではなかなか統計学的有意差は出にくいのでしょう。また偉大な神の創造物である人間の治癒力や、逆にがんという極めて手ごわい相手(これも不死を避けるための神の創造物≒遺伝子プログラム)の致死力の前では、個々の放射線腫瘍医の「こだわり」という小細工(?)はまだまだ通用しきれない所があるのかもしれません。素材が良ければ醸造場所や造り手が異なってもそれなりに美味しいお酒ができるのと同じように。
ただ、放射線治療計画における医師のちょっとした「こだわり」で、放射線口内炎の出かたなどは医者からみたら「ちょっとした」、しかし患者さんからしたら「とんでもない」程度の副作用の違いになることは少なくないと思います。CTで見えている(はずの)腫瘍の囲み一つだけとっても「長々細々とした数ページものルールがきちんと定義され」かつ「有名施設の放射線腫瘍専門医」が行う「きちんとした臨床試験ですら」担当する医師によって違い(ずれ)が出てしまうと聞きます。
ワインの場合など、その微妙な違い≒「こだわり」が区別できるプロがいるので、隣同士のワイナリーなのに味も値段も全然違うワインが存在するのでしょう。酒と違って、個々の患者さん側からすれば放射線治療は人生で何度も味わう(?)ものではなく、また同じ場所を治療することは原則ありませんので、個々の放射線腫瘍医の医療レベルの違いを比較体験することはまずできません。まあ、5大シャトーのファーストラベルなどは一生のうち滅多に飲めるものではありませんが…普通の人ならば。
しかし味(≒診療行為のレベル)のわかる専門の放射線腫瘍医側からみれば、生存率という数字だけでは語れない個々の治療計画内容や患者説明の「こだわり」の違いは、自分との対比などである程度判るはずです。同じ放射線治療「専門医」でも、ソムリエのような達人もいれば、赤白ワインの違いしかわからないような方もいるのでしょうが…と書いている自分がどの程度なのかが一番気になりますけど。
画像は私が勤務する病院の平成15年時の照射位置設定X線写真です。今はほぼ全例コンピュータ上のCT画像の病巣を「直接見て囲んで映し出して」放射線治療計画をしているのですが、21世紀に入ってからもこんな設定を多くの施設で普通にしていました。今でも一部施設では行われているでしょうが、X線写真上がん病巣は「見えません」。
放射線治療レベルの国別の格差、施設の格差、放射線腫瘍医の格差は、一般の方が想像している以上にあるのではないかと(勝手に)思っています。セカンドオピニオン外来は近いものがあるのかもしれませんが、医師の実力や医療内容の本質的「鑑別診断」ができる仕組みが世にあると患者さんには便利なのだろうなと、たまに思ったりします。
何か作れないかな〜?

お酒と同様に放射線治療も、吸収線量(ある場所のある物質中に吸収された放射線量:グレイ≒アルコール量)さえ同じにしたら治療効果や副作用も同じになるかというと決してそうではありません。日本酒やビール、ワインなどアルコール度数の違う多種のお酒があるように、治療に用いる放射線にもX線、粒子線(陽子線、炭素イオン線)、β線やγ線(ヨウ素-131、ストロンチウム-89)などがあります。
また、放射線の線質によって人体への影響が変わる線量当量(吸収線量に法令で定められた係数---放射線の種類ごとに定められた人体の障害の受けやすさ---を掛けたもの:シーベルト≒酔いの程度)があることは、昨今の内部被曝問題からご存知の方も多数いらっしゃると思います。
また通常用いられるX線治療で同じグレイを照射しても、副作用や腫瘍の縮小程度は患者さんによって異なります。一部の膠原病患者さんでは通常では起きにくい少量の放射線被曝でも皮膚炎など強い副作用(≒アルコールアレルギー)が現れることがあります。同じ臓器の同じタイプの癌でも放射線治療による腫瘍縮小の程度や速さはかなりばらつきます。
放射線治療に関する生存率を中心とした臨床試験の報告は世界中に数多くありますが、同じ照射法の個人差(患者と医者の両面)についての言及は、私の知る限りさほどなされていません。人種格差や治療する国や病院の実力差(≒ワインにおけるブドウの銘柄や土壌の差)を示した論文はいくつかありますし、今後は遺伝子解析などによるオーダーメード放射線治療がどんどん進みそうです。
しかし放射線腫瘍医の腕や知識、経験の差(≒酒の造り手の技や経験の差)を示した臨床試験はほとんどないと思います。実際のところ、数が少なすぎて個々の放射線腫瘍医の限られた診療経験数ではなかなか統計学的有意差は出にくいのでしょう。また偉大な神の創造物である人間の治癒力や、逆にがんという極めて手ごわい相手(これも不死を避けるための神の創造物≒遺伝子プログラム)の致死力の前では、個々の放射線腫瘍医の「こだわり」という小細工(?)はまだまだ通用しきれない所があるのかもしれません。素材が良ければ醸造場所や造り手が異なってもそれなりに美味しいお酒ができるのと同じように。
ただ、放射線治療計画における医師のちょっとした「こだわり」で、放射線口内炎の出かたなどは医者からみたら「ちょっとした」、しかし患者さんからしたら「とんでもない」程度の副作用の違いになることは少なくないと思います。CTで見えている(はずの)腫瘍の囲み一つだけとっても「長々細々とした数ページものルールがきちんと定義され」かつ「有名施設の放射線腫瘍専門医」が行う「きちんとした臨床試験ですら」担当する医師によって違い(ずれ)が出てしまうと聞きます。
ワインの場合など、その微妙な違い≒「こだわり」が区別できるプロがいるので、隣同士のワイナリーなのに味も値段も全然違うワインが存在するのでしょう。酒と違って、個々の患者さん側からすれば放射線治療は人生で何度も味わう(?)ものではなく、また同じ場所を治療することは原則ありませんので、個々の放射線腫瘍医の医療レベルの違いを比較体験することはまずできません。まあ、5大シャトーのファーストラベルなどは一生のうち滅多に飲めるものではありませんが…普通の人ならば。
しかし味(≒診療行為のレベル)のわかる専門の放射線腫瘍医側からみれば、生存率という数字だけでは語れない個々の治療計画内容や患者説明の「こだわり」の違いは、自分との対比などである程度判るはずです。同じ放射線治療「専門医」でも、ソムリエのような達人もいれば、赤白ワインの違いしかわからないような方もいるのでしょうが…と書いている自分がどの程度なのかが一番気になりますけど。
画像は私が勤務する病院の平成15年時の照射位置設定X線写真です。今はほぼ全例コンピュータ上のCT画像の病巣を「直接見て囲んで映し出して」放射線治療計画をしているのですが、21世紀に入ってからもこんな設定を多くの施設で普通にしていました。今でも一部施設では行われているでしょうが、X線写真上がん病巣は「見えません」。
放射線治療レベルの国別の格差、施設の格差、放射線腫瘍医の格差は、一般の方が想像している以上にあるのではないかと(勝手に)思っています。セカンドオピニオン外来は近いものがあるのかもしれませんが、医師の実力や医療内容の本質的「鑑別診断」ができる仕組みが世にあると患者さんには便利なのだろうなと、たまに思ったりします。
何か作れないかな〜?

昨日、いきなり重い投稿から開始させていただきましたが、今回はこのブログにつけたタイトルの意味について少しだけ触れさせていただきます。
「仮面放射線腫瘍医」というのは、匿名化するために顔や名前を隠すつもりでつけました。まあ、私をよくご存知の方が見たらいろいろな解釈が可能になるかもしれませんし、きっとすぐにバレバレのブログになるとは思いますが(笑)。
また「思いつき日記」とはしていますが、一応はな〜んも考えずに投稿するわけではないつもりです。でも賢い人がみたら「こいつ、考えてね〜な〜」と思われる文章が多々あるかもしれません。とりあえず、細かいことは適当に見逃していただければ幸いです。最近はあまり気にならない齢になりました(目に余る場合はかなり気にしますが…)。
ただ、やっぱり病院勤務医という少しは場をわきまえる必要がある仕事をしておりますので、なるべく今の職場にご迷惑をかけないようにはしたいと考えております(お酒に酔って書くときがとても不安です…)。
個人的には数年ぶりに再開したブログで、とある地方病院で放射線治療を専門にしているオヤジによる、仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新していこうと思っています。また、約1年前からfacebookもしているのですが、結構投稿ストックが増えていて、自分の頭の整理を兼ねてそちらからの転載も公開用に修正して適宜アップいたします。
自分の備忘録を兼ねているので、読んだことがある人にはたぶんくどい内容だろうと思いますが、なにとぞご容赦くださいませ。
「仮面放射線腫瘍医」というのは、匿名化するために顔や名前を隠すつもりでつけました。まあ、私をよくご存知の方が見たらいろいろな解釈が可能になるかもしれませんし、きっとすぐにバレバレのブログになるとは思いますが(笑)。
また「思いつき日記」とはしていますが、一応はな〜んも考えずに投稿するわけではないつもりです。でも賢い人がみたら「こいつ、考えてね〜な〜」と思われる文章が多々あるかもしれません。とりあえず、細かいことは適当に見逃していただければ幸いです。最近はあまり気にならない齢になりました(目に余る場合はかなり気にしますが…)。
ただ、やっぱり病院勤務医という少しは場をわきまえる必要がある仕事をしておりますので、なるべく今の職場にご迷惑をかけないようにはしたいと考えております(お酒に酔って書くときがとても不安です…)。
個人的には数年ぶりに再開したブログで、とある地方病院で放射線治療を専門にしているオヤジによる、仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新していこうと思っています。また、約1年前からfacebookもしているのですが、結構投稿ストックが増えていて、自分の頭の整理を兼ねてそちらからの転載も公開用に修正して適宜アップいたします。
自分の備忘録を兼ねているので、読んだことがある人にはたぶんくどい内容だろうと思いますが、なにとぞご容赦くださいませ。
私がこのブログを継続していくうえで、最初に示さねばならないと思っていることがあります。
私は医師になってから、その時その時に自分なりに良かれと判断して診療を行ってきました。医療者として当たり前のことではございましょうが、これからもそのスタンスは変えません。
ただ、私がこれまでかかわらせていただいたなかで、残念ながら亡くなられた方々、病が進行してしまった方々、副作用やアクシデントなど治療の悪影響で苦しまれてしまった方々も多くおられました。また、私以外の医療者であれば治せた、苦しみを和らげることができた方々もおられたと思います。「ベストな治療だったのか?」の問いに「はい」と言い切れないケースもあったと思います。
自分が存じ上げている方々もいれば、気づかずにいる大変申し訳ない方々も多くいらっしゃることと存じます。ご迷惑をおかけしてしまった医療関係者の方々も多々おられます。そのような方々に対し、この場をお借りして改めておわび申し上げます。
自分の経験不足、勉強不足、知識不足を補うためにブログやfacebookは有効な手段になると今のところ考えており、できれば今後もこれまでに感じた疑問やいろいろな問いかけ、反省などについての投稿をさせていただきたく存じます。
謝れば許されるというものでもないとは重々自覚しておるつもりですし、言うは易しとのご批判もございましょうが、私の反省や痛い経験(患者さんは本当に辛く痛いのですが)などを他の方とも共有していただき、少しでもこれからの診療の一助になればという思いで投稿をと思っています。
ブログやfacebookという手段以外でも可能では?というご意見もあろうかと思いますが、そのような場合はもちろん自分なりに別の形をとらせていただく所存です。今までに、そしてこれからもブログやfacebook上での私の投稿やコメントに気分を害される方も当然おられると思います。患者さんやお知り合いの方々、医療機関の方々などにご迷惑のかかる投稿は控えるよう自分なりに極力配慮する所存ではございますが、もしお気づきの点や問題点がある、修正あるいは削除をご希望される場合は、コメントやメッセージなどでご連絡ください。可能な限り対応させていただきます。
また医療関係以外の趣味や関心を引いたことなども、記事として交える所存です。こちらもいろいろなご意見があるかもしれませんが、なるべく節度を守った投稿を心がけたいと思っております。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
(2012.6.xx facebookから加筆修正)
私は医師になってから、その時その時に自分なりに良かれと判断して診療を行ってきました。医療者として当たり前のことではございましょうが、これからもそのスタンスは変えません。
ただ、私がこれまでかかわらせていただいたなかで、残念ながら亡くなられた方々、病が進行してしまった方々、副作用やアクシデントなど治療の悪影響で苦しまれてしまった方々も多くおられました。また、私以外の医療者であれば治せた、苦しみを和らげることができた方々もおられたと思います。「ベストな治療だったのか?」の問いに「はい」と言い切れないケースもあったと思います。
自分が存じ上げている方々もいれば、気づかずにいる大変申し訳ない方々も多くいらっしゃることと存じます。ご迷惑をおかけしてしまった医療関係者の方々も多々おられます。そのような方々に対し、この場をお借りして改めておわび申し上げます。
自分の経験不足、勉強不足、知識不足を補うためにブログやfacebookは有効な手段になると今のところ考えており、できれば今後もこれまでに感じた疑問やいろいろな問いかけ、反省などについての投稿をさせていただきたく存じます。
謝れば許されるというものでもないとは重々自覚しておるつもりですし、言うは易しとのご批判もございましょうが、私の反省や痛い経験(患者さんは本当に辛く痛いのですが)などを他の方とも共有していただき、少しでもこれからの診療の一助になればという思いで投稿をと思っています。
ブログやfacebookという手段以外でも可能では?というご意見もあろうかと思いますが、そのような場合はもちろん自分なりに別の形をとらせていただく所存です。今までに、そしてこれからもブログやfacebook上での私の投稿やコメントに気分を害される方も当然おられると思います。患者さんやお知り合いの方々、医療機関の方々などにご迷惑のかかる投稿は控えるよう自分なりに極力配慮する所存ではございますが、もしお気づきの点や問題点がある、修正あるいは削除をご希望される場合は、コメントやメッセージなどでご連絡ください。可能な限り対応させていただきます。
また医療関係以外の趣味や関心を引いたことなども、記事として交える所存です。こちらもいろいろなご意見があるかもしれませんが、なるべく節度を守った投稿を心がけたいと思っております。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
(2012.6.xx facebookから加筆修正)
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