大量のヨウ素-131を内服直後の数日間は、使用した食事用容器などにも患者さんの体液(唾液や汗など)が付着するため、使い捨て(紙)容器を使用するなどして、放射性物質汚染に対するしかるべき廃棄処理が必要となってきます。着衣なども残留放射線の量が減るまで、しばらくの間管理区域内にお預かりしたりします。
甲状腺癌の放射性ヨード内用療法に関するガイドラインでは、「放射性ヨード(131I)の体内残存量を測定器で直接測定し、退出基準(500MBq、1m の距離で30μSv/h)を越えていないことを確認した上で、アイソトープ病室からの退出を許可してください。 持ち帰る所有物はそれぞれ直接測定し、放射線量が汚染のないレベルであることを確認します。」と記載されています。なお、退室基準は法的に決められた数値です。
で、以前勤務した病院で経験したことなのですが、ある時ヨウ素-131カプセル剤内服直後の患者さんが「水を飲みたい」とナースコールしてきました。たまたまディスポ容器(紙コップ)がなかったようで、新人の看護師さんがその代用としてついうっかりハルンカップに水を入れて、患者さんのところに持って行ってしまったんですね...。ハルンカップを出されたことに患者さんは激怒され、担当医だった私と病棟看護師長と二人で平謝りしに行きました。
信じられない方も多々いらっしゃると思いますが、病棟などで「普通の」コップがない時にハルンカップにインスタントコーヒーとか入れて飲んだ経験がある医療者は、私を含めて少なくありません。最近はあまりないかな?実際に未使用ならもちろん清潔ですし、意識しなければほとんど普通の紙コップです。すぐ近くにあるし、ストックもあるからこれが結構便利なんですよね。だからあの新人看護師さんもいつもの感覚で(?)使用してしまったのでしょう。
新聞報道などでいろいろな記事が出たこともあり最近は見聞きしなくなりましたが、昔は病院内で御用納めなどの宴会をすることがたまにありました。その時にはビールや日本酒、ジュースを入れて飲むなどということは(少なくとも私の知っている所では)日常茶飯事でした。患者さんと病院内で杯を酌み交わすなんてこともあった良き(?)時代でした。
胃のX線造影検査の時に使うバリウムコップを使ったこともあります。まあ、こっちは元々「飲むための」コップだから、ハルンコップと比べれば違和感はいささか少ないのかもしれませんが…。
写真は「未使用の清潔な」ハルンカップにビールを注いでみました。ご覧の方で不快な気分を感じる方がいらっしゃったら申し訳ございません。もちろん美味しいビールに変わりはありません。
仮にですが「しびん」にビールを注いだらピッチャーのようにもなりえます。噂によるとそんなピッチャーを客に出す居酒屋もあるらしいです(笑)。どう感じるかは別として、清潔ならきっと十分使えるでしょう。私はさすがにしびんをピッチャー代わりにしたことはありませんが...。
とはいえ、一般の方からしたらハルンカップもしびんもきっと五十歩百歩でしょう。
「医療界の常識、社会の非常識」と聞いたことがあります。私を含めて医療者ってたぶん、やっぱり変ですよね?

(2012.9.xx facebookより加筆修正。前回ブログ「ハルンカップって知ってますか?(1)」も若干修正)
甲状腺癌の放射性ヨード内用療法に関するガイドラインでは、「放射性ヨード(131I)の体内残存量を測定器で直接測定し、退出基準(500MBq、1m の距離で30μSv/h)を越えていないことを確認した上で、アイソトープ病室からの退出を許可してください。 持ち帰る所有物はそれぞれ直接測定し、放射線量が汚染のないレベルであることを確認します。」と記載されています。なお、退室基準は法的に決められた数値です。
で、以前勤務した病院で経験したことなのですが、ある時ヨウ素-131カプセル剤内服直後の患者さんが「水を飲みたい」とナースコールしてきました。たまたまディスポ容器(紙コップ)がなかったようで、新人の看護師さんがその代用としてついうっかりハルンカップに水を入れて、患者さんのところに持って行ってしまったんですね...。ハルンカップを出されたことに患者さんは激怒され、担当医だった私と病棟看護師長と二人で平謝りしに行きました。
信じられない方も多々いらっしゃると思いますが、病棟などで「普通の」コップがない時にハルンカップにインスタントコーヒーとか入れて飲んだ経験がある医療者は、私を含めて少なくありません。最近はあまりないかな?実際に未使用ならもちろん清潔ですし、意識しなければほとんど普通の紙コップです。すぐ近くにあるし、ストックもあるからこれが結構便利なんですよね。だからあの新人看護師さんもいつもの感覚で(?)使用してしまったのでしょう。
新聞報道などでいろいろな記事が出たこともあり最近は見聞きしなくなりましたが、昔は病院内で御用納めなどの宴会をすることがたまにありました。その時にはビールや日本酒、ジュースを入れて飲むなどということは(少なくとも私の知っている所では)日常茶飯事でした。患者さんと病院内で杯を酌み交わすなんてこともあった良き(?)時代でした。
胃のX線造影検査の時に使うバリウムコップを使ったこともあります。まあ、こっちは元々「飲むための」コップだから、ハルンコップと比べれば違和感はいささか少ないのかもしれませんが…。
写真は「未使用の清潔な」ハルンカップにビールを注いでみました。ご覧の方で不快な気分を感じる方がいらっしゃったら申し訳ございません。もちろん美味しいビールに変わりはありません。
仮にですが「しびん」にビールを注いだらピッチャーのようにもなりえます。噂によるとそんなピッチャーを客に出す居酒屋もあるらしいです(笑)。どう感じるかは別として、清潔ならきっと十分使えるでしょう。私はさすがにしびんをピッチャー代わりにしたことはありませんが...。
とはいえ、一般の方からしたらハルンカップもしびんもきっと五十歩百歩でしょう。
「医療界の常識、社会の非常識」と聞いたことがあります。私を含めて医療者ってたぶん、やっぱり変ですよね?

(2012.9.xx facebookより加筆修正。前回ブログ「ハルンカップって知ってますか?(1)」も若干修正)
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ラーメン好き技師141 いやぁ、確かに普通に当放部でも、コップ代わりに活躍してます。検査中等も水飲みたい患者さんいらしゃいますので、無地のコップ用意しておかなくてはいけませんね。慌てて探した経験アリです(^_^;)
JIN 放射線部にあるバリウム用のコップなら許容されるかも?でも、やっぱりさすがにハルンカップはNGですよ。
「ハルンカップ」ってご存知ですか?ハルンとはドイツ語Harnのことで尿を意味します。つまり尿検査の時に一時的におしっこを貯める容器のこと。普通の使用法はそうです。写真のような擬似検尿カップもネット販売されているようですが…

話は少しそれますが、甲状腺分化がんの再発危険度が高い、もしくはすでに手術困難な転移を発症してしまった患者さんに対し、甲状腺を全摘出した後に放射性同位元素のヨウ素-131を投与してベータ線やガンマ線による「内部被曝」でがんを治療するという方法があります。放射性ヨウ素内用療法(あるいは放射性ヨード内用療法)、ともいい放射線治療の一つです。
海藻など特に海産物に多く含まれるヨウ素という物質は、腸から体内に吸収された後に甲状腺ホルモンの原料として血中から甲状腺にとりこまれます。
実は甲状腺分化がんも正常の甲状腺と同じようにヨウ素を細胞内に取り込む性質があります。その特徴を利用して、放射線の一種であるベータ線とかガンマ線が出るヨウ素-131カプセル剤を内服して甲状腺がんの放射線治療を行うのです。ヨウ素-131取り込みがある(これは必須条件)甲状腺がん細胞ならば、転移にもスポット爆撃のように放射線治療ができるので、狙い撃ちがん治療として大変有効です。
ヨウ素-131が体内に入ると甲状腺分化がんになりやすいのに(福島原発で有名に…)、そのがんを治療するにも大量のヨウ素-131を使うなんて、なにか不思議な気がしませんか?
がん治療に必要な大量のヨウ素-131を内服すると、しばらくの間は体内に滞留します。そこで他人への不必要な被曝を避けるために、放射線管理区域という特別室に患者さんを内服直前から「監禁」することになります。体内から放射線が出るだけでなく、便や唾液や汗などからも大量のヨウ素-131が排出されるために必要な法的措置です。ヨウ素-131の半減期はおよそ6日であり、また尿を主として体外へ速やかに排出されるので、多くの場合は数日程度の監禁で済みます…とは医者目線で書いたものの、およそ6〜12ヶ月ごとに繰り返し治療を受けられる患者さんなどからは、治療に関連するいろいろな身体や生活の制限があり「個室監禁がつらくて受けたくない」とお話される方もいました。
今後、福島原発事故による影響が甲状腺がん発症にどの程度影響を及ぼすのか、多くの方々が心配されていることと思います。放射性ヨウ素内用療法を行うにあたっては前述のように放射線管理区域という分厚いコンクリートに囲まれた特殊な病室が必須となりますが、その設備投資や行政認可は容易ではありません。私の知る範囲で、東北地方にその設備を有する病院は非常に限られています。関係各位のご尽力により、最近の診療報酬改定でこの治療に対する価格設定がようやく見直され引き上げられましたが、新規参入施設を増やすにはまだまだ物足りないようです。
もちろん甲状腺がん患者さんが増えないのが一番いいことなのですが、悪い事態を想定するならば今のうちから放射性ヨウ素内用療法が可能となる特殊病室を増やす準備やさらなる診療報酬での「優遇」を考慮すべきかもしれません。
(今日はここまでにします。ハルンカップとほとんど関係ない内容でしたね…)

話は少しそれますが、甲状腺分化がんの再発危険度が高い、もしくはすでに手術困難な転移を発症してしまった患者さんに対し、甲状腺を全摘出した後に放射性同位元素のヨウ素-131を投与してベータ線やガンマ線による「内部被曝」でがんを治療するという方法があります。放射性ヨウ素内用療法(あるいは放射性ヨード内用療法)、ともいい放射線治療の一つです。
海藻など特に海産物に多く含まれるヨウ素という物質は、腸から体内に吸収された後に甲状腺ホルモンの原料として血中から甲状腺にとりこまれます。
実は甲状腺分化がんも正常の甲状腺と同じようにヨウ素を細胞内に取り込む性質があります。その特徴を利用して、放射線の一種であるベータ線とかガンマ線が出るヨウ素-131カプセル剤を内服して甲状腺がんの放射線治療を行うのです。ヨウ素-131取り込みがある(これは必須条件)甲状腺がん細胞ならば、転移にもスポット爆撃のように放射線治療ができるので、狙い撃ちがん治療として大変有効です。
ヨウ素-131が体内に入ると甲状腺分化がんになりやすいのに(福島原発で有名に…)、そのがんを治療するにも大量のヨウ素-131を使うなんて、なにか不思議な気がしませんか?
がん治療に必要な大量のヨウ素-131を内服すると、しばらくの間は体内に滞留します。そこで他人への不必要な被曝を避けるために、放射線管理区域という特別室に患者さんを内服直前から「監禁」することになります。体内から放射線が出るだけでなく、便や唾液や汗などからも大量のヨウ素-131が排出されるために必要な法的措置です。ヨウ素-131の半減期はおよそ6日であり、また尿を主として体外へ速やかに排出されるので、多くの場合は数日程度の監禁で済みます…とは医者目線で書いたものの、およそ6〜12ヶ月ごとに繰り返し治療を受けられる患者さんなどからは、治療に関連するいろいろな身体や生活の制限があり「個室監禁がつらくて受けたくない」とお話される方もいました。
今後、福島原発事故による影響が甲状腺がん発症にどの程度影響を及ぼすのか、多くの方々が心配されていることと思います。放射性ヨウ素内用療法を行うにあたっては前述のように放射線管理区域という分厚いコンクリートに囲まれた特殊な病室が必須となりますが、その設備投資や行政認可は容易ではありません。私の知る範囲で、東北地方にその設備を有する病院は非常に限られています。関係各位のご尽力により、最近の診療報酬改定でこの治療に対する価格設定がようやく見直され引き上げられましたが、新規参入施設を増やすにはまだまだ物足りないようです。
もちろん甲状腺がん患者さんが増えないのが一番いいことなのですが、悪い事態を想定するならば今のうちから放射性ヨウ素内用療法が可能となる特殊病室を増やす準備やさらなる診療報酬での「優遇」を考慮すべきかもしれません。
(今日はここまでにします。ハルンカップとほとんど関係ない内容でしたね…)
先週、うちの病院の院内セミナーで薬剤師さんから薬剤処方に関する疑義照会関連の発表があったのですが、うちでは処方全体の約3%の照会率だったそうです。
デジタル大辞泉によると、疑義照会とは『医師の処方箋に疑問や不明点がある場合、薬剤師が処方医に問い合わせて確認すること。薬剤師法第24条に「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と規定されている。』とあります。
昨年公表された厚生労働省がん対策推進協議会資料の中に、国立がん研究センター中央病院薬剤部長山本弘史先生による「がん医療における薬剤師の役割」の11ページに『処方箋の疑義紹介等状況調査との比較』というのがあるのですが、この報告によると疑義照会率は図のように徐々に増加していて、全体の3%以上とのことです(つまりうちの病院はほぼ全国平均ですね)。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002f210.html
処方変更割合はその約2/3(全体の2%)で、およそ医師1日50人の処方で1回は処方の変更をしている単純計算になります。さらに健康被害(どの程度なのかは不明ですが)が推測されるのは約20%と、(50x20%=)250人に1人は薬剤師さんのチェックが入らないと医療事故が起きる可能性が潜在していることになります。少なからず前回同様の処方というのもあるはずなのに、これって多すぎ?
ちなみにパチンコをしたことのある方ならわかっていただける(不謹慎な?)例えですが、3%≒1/30の確率というのは確率変動=「超大当たり」モード状態に該当します。またアクシデントの起こりうる誤処方確率1/250というのも通常モードレベルで、全く当たる気のしない数億円の宝くじとは全然違い1回転目で当たる可能性はそれなりにあるものです。また毎月通院していたら 20年に1度(250≒年12回x20年)、つまり誰しも人生で1度は危険な誤処方をされる可能性があることになります。
全国の病院で電子カルテ化が進んでますし、医者の処方箋入力もコンピュータ管理で負担軽減、ミスも軽減では?と思っていたのですが、どうもそう簡単なことではないらしいです。その辺に詳しい某先生からお聞きししたのですが、コンピュータでガチガチに処方チェックをすると警告や制限が出まくって業務が滞るし、甘めにすると今度は医者がメッセージを見て見ぬふりをするらしく、なかなかうまくいかないとのこと。結局、人による確認に頼らざるを得ない部分が多いらしいのです。
院外のお知り合いの薬剤師さんたちにも実情をお伺いしたのですが、印象としては特に違和感なく、しかもそのほとんどがやはり医者の薬剤的内容の不注意だそうです。ある薬剤師さんの話では、「分包数の間違いぐらいであればまだ良いですが、薬品名間違いも結構ある」とのことでした。
また、ある薬剤師さんからは、「疑義照会はあまりしたくないのが本音。医師によっては電話をするだけで不機嫌な応対をされることがあるので・・。 忙しいのはわかっているので、こちらも電話したくはないのですが、間違っている以上しょうがないですよね。」なんていうお話も伺いました。たしかに外来などは忙しいとはいうものの(私を含めて)医者って横柄ですからね…。でも、患者さんと我々誤処方した医者を救ってくださっているわけですから、どうぞ遠慮なくこれからもお電話をくださいませ。
しかし、『薬剤師のほうでも、調剤後別の薬剤師が監査をしても間違いが起こることがある』らしいですが、正直それは想像したくありませんね。間違ったお薬が患者さんに手渡されるわけですから…。
患者さん自身も自衛手段を持たなければいけないということになるのかなぁ?
(2012.8.xx facebookより加筆修正)

デジタル大辞泉によると、疑義照会とは『医師の処方箋に疑問や不明点がある場合、薬剤師が処方医に問い合わせて確認すること。薬剤師法第24条に「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と規定されている。』とあります。
昨年公表された厚生労働省がん対策推進協議会資料の中に、国立がん研究センター中央病院薬剤部長山本弘史先生による「がん医療における薬剤師の役割」の11ページに『処方箋の疑義紹介等状況調査との比較』というのがあるのですが、この報告によると疑義照会率は図のように徐々に増加していて、全体の3%以上とのことです(つまりうちの病院はほぼ全国平均ですね)。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002f210.html
処方変更割合はその約2/3(全体の2%)で、およそ医師1日50人の処方で1回は処方の変更をしている単純計算になります。さらに健康被害(どの程度なのかは不明ですが)が推測されるのは約20%と、(50x20%=)250人に1人は薬剤師さんのチェックが入らないと医療事故が起きる可能性が潜在していることになります。少なからず前回同様の処方というのもあるはずなのに、これって多すぎ?
ちなみにパチンコをしたことのある方ならわかっていただける(不謹慎な?)例えですが、3%≒1/30の確率というのは確率変動=「超大当たり」モード状態に該当します。またアクシデントの起こりうる誤処方確率1/250というのも通常モードレベルで、全く当たる気のしない数億円の宝くじとは全然違い1回転目で当たる可能性はそれなりにあるものです。また毎月通院していたら 20年に1度(250≒年12回x20年)、つまり誰しも人生で1度は危険な誤処方をされる可能性があることになります。
全国の病院で電子カルテ化が進んでますし、医者の処方箋入力もコンピュータ管理で負担軽減、ミスも軽減では?と思っていたのですが、どうもそう簡単なことではないらしいです。その辺に詳しい某先生からお聞きししたのですが、コンピュータでガチガチに処方チェックをすると警告や制限が出まくって業務が滞るし、甘めにすると今度は医者がメッセージを見て見ぬふりをするらしく、なかなかうまくいかないとのこと。結局、人による確認に頼らざるを得ない部分が多いらしいのです。
院外のお知り合いの薬剤師さんたちにも実情をお伺いしたのですが、印象としては特に違和感なく、しかもそのほとんどがやはり医者の薬剤的内容の不注意だそうです。ある薬剤師さんの話では、「分包数の間違いぐらいであればまだ良いですが、薬品名間違いも結構ある」とのことでした。
また、ある薬剤師さんからは、「疑義照会はあまりしたくないのが本音。医師によっては電話をするだけで不機嫌な応対をされることがあるので・・。 忙しいのはわかっているので、こちらも電話したくはないのですが、間違っている以上しょうがないですよね。」なんていうお話も伺いました。たしかに外来などは忙しいとはいうものの(私を含めて)医者って横柄ですからね…。でも、患者さんと我々誤処方した医者を救ってくださっているわけですから、どうぞ遠慮なくこれからもお電話をくださいませ。
しかし、『薬剤師のほうでも、調剤後別の薬剤師が監査をしても間違いが起こることがある』らしいですが、正直それは想像したくありませんね。間違ったお薬が患者さんに手渡されるわけですから…。
患者さん自身も自衛手段を持たなければいけないということになるのかなぁ?
(2012.8.xx facebookより加筆修正)

放射線治療科には、脳転移を発症した患者さんや治療を受けた患者さんも受診されます。
てんかん患者さんによる交通事故が報道されることがありますが、一部の脳転移の患者さんもてんかん(≒けいれんや意識消失)発作を起こすことがあります。そのような脳転移患者さんに対しても、てんかん発作を抑えたり予防するために抗けいれん剤が投与されます。しかし、抗けいれん剤を使ったからといっててんかん発作を完全に抑えることができるとは限りません。
私のお知り合いのてんかんご専門の先生方にお話を伺ったりする限り、脳転移の患者さんに脳波検査などの精密検査をしても、必ずしもてんかん発症を予見できるわけではないようです。また不幸にして他の脳転移が出現したりして病状が変化する可能性がありますから、検査当時は異常がなかったからといってその後に発作が出てこない保証はありません。脳転移に対する放射線治療を行ったからといって完全に再発を防げるかというと、残念ながらそうではありません。
ピンポイント治療として知られる脳の定位照射では、てんかん発作が数%ですが治療後の副作用(?)にあり、予防するために抗けいれん剤の適正な投与が考慮されます。定位照射後数日以内の発症が多いと報告されています。非侵襲的で短期間入院(施設によっては外来治療も)というのが売りの定位照射ですが、治療1-2日後に患者さん自らが自家用車で帰宅、というのは時期的に危険を伴う恐れがあります。
一方、(たぶん全部の)抗けいれん剤の添付文書にも、「重要な基本的注意」として「眠気、めまい、注意力低下で運転をさせないよう注意すること」と記載があります(禁忌とは別枠)。うちの施設では原則として入院で脳転移の放射線治療を行いますが、たまに外来通院を希望される患者さんや主治医がいらっしゃいます。その場合、私からも患者さん自らの運転による通院照射をしないようには指導しますが、本当にしていないかの確認というのはなかなか難しい部分があります。
てんかん患者さんの自動車運転については、日本てんかん学会から「てんかんのある人の運転適性について」の学会意見表明がでています。しかし、てんかん発作を起こすかどうかはっきりしない脳転移患者さんに対する運転許可に関しては明確な指針が(たぶん)ないようです。MRIを撮影して脳転移が消えていれば大丈夫なのか、脳波を調べて異常なければ大丈夫なのか?学会表明のある期間に発作がなければいいのか?
自家用車がないと移動もままならない田舎の患者さんには大変な問題です…これは他のてんかん患者さんも同じでしょうけれど。もちろん交通事故は相手にも危害を加える心配がありますから、第一にそこを忘れてはいけないわけで…繰り返しですが。「永久に駄目」と確定診断するなら、医療者側はすっきりしますけれど…。
こちらも難しい問題です。
今回の投稿内容は、学会などでの共通認識では(たぶん)なく、あくまで地方の町医者である私がただ勉強不足、確認不足なだけかもしれません。不透明な部分が少なからずあるところです。何とぞご容赦いただけますと幸いです。また、ここをご覧になって情報やご意見をお持ちのご専門の方がいらっしゃったら、なんなりとご教示お願い申し上げます。
(2012.8.xx facebookから加筆修正)
てんかん患者さんによる交通事故が報道されることがありますが、一部の脳転移の患者さんもてんかん(≒けいれんや意識消失)発作を起こすことがあります。そのような脳転移患者さんに対しても、てんかん発作を抑えたり予防するために抗けいれん剤が投与されます。しかし、抗けいれん剤を使ったからといっててんかん発作を完全に抑えることができるとは限りません。
私のお知り合いのてんかんご専門の先生方にお話を伺ったりする限り、脳転移の患者さんに脳波検査などの精密検査をしても、必ずしもてんかん発症を予見できるわけではないようです。また不幸にして他の脳転移が出現したりして病状が変化する可能性がありますから、検査当時は異常がなかったからといってその後に発作が出てこない保証はありません。脳転移に対する放射線治療を行ったからといって完全に再発を防げるかというと、残念ながらそうではありません。
ピンポイント治療として知られる脳の定位照射では、てんかん発作が数%ですが治療後の副作用(?)にあり、予防するために抗けいれん剤の適正な投与が考慮されます。定位照射後数日以内の発症が多いと報告されています。非侵襲的で短期間入院(施設によっては外来治療も)というのが売りの定位照射ですが、治療1-2日後に患者さん自らが自家用車で帰宅、というのは時期的に危険を伴う恐れがあります。
一方、(たぶん全部の)抗けいれん剤の添付文書にも、「重要な基本的注意」として「眠気、めまい、注意力低下で運転をさせないよう注意すること」と記載があります(禁忌とは別枠)。うちの施設では原則として入院で脳転移の放射線治療を行いますが、たまに外来通院を希望される患者さんや主治医がいらっしゃいます。その場合、私からも患者さん自らの運転による通院照射をしないようには指導しますが、本当にしていないかの確認というのはなかなか難しい部分があります。
てんかん患者さんの自動車運転については、日本てんかん学会から「てんかんのある人の運転適性について」の学会意見表明がでています。しかし、てんかん発作を起こすかどうかはっきりしない脳転移患者さんに対する運転許可に関しては明確な指針が(たぶん)ないようです。MRIを撮影して脳転移が消えていれば大丈夫なのか、脳波を調べて異常なければ大丈夫なのか?学会表明のある期間に発作がなければいいのか?
自家用車がないと移動もままならない田舎の患者さんには大変な問題です…これは他のてんかん患者さんも同じでしょうけれど。もちろん交通事故は相手にも危害を加える心配がありますから、第一にそこを忘れてはいけないわけで…繰り返しですが。「永久に駄目」と確定診断するなら、医療者側はすっきりしますけれど…。
こちらも難しい問題です。
今回の投稿内容は、学会などでの共通認識では(たぶん)なく、あくまで地方の町医者である私がただ勉強不足、確認不足なだけかもしれません。不透明な部分が少なからずあるところです。何とぞご容赦いただけますと幸いです。また、ここをご覧になって情報やご意見をお持ちのご専門の方がいらっしゃったら、なんなりとご教示お願い申し上げます。
(2012.8.xx facebookから加筆修正)
リリカの添付文書に記載されている重大な副作用として、「めまい(20%以上)、傾眠(20%以上)、意識消失(0.3%未満)」とあります。眠気より強いうたたね状態を指す傾眠が20%以上もあるという調査結果が出ているリリカを内服後の車の運転は駄目、というのは誰しも納得かもしれません。
他の薬は?
風邪で鼻水がつらかったり花粉症がひどかったりすると、耳鼻科や内科の先生は抗ヒスタミン剤という薬を普通に処方します。いや、放射線治療科の医者だって精神科の医者だって処方しますし、医師免許を持っていれば誰でも薬を出せちゃいます。また、市販の風邪薬にも成分として混ざっていることがあります。
製薬会社から出ている病院薬剤師と保険薬局薬剤師のための情報誌GSKファーマシストジャーナル2012年3月号の「患者と向き合う抗ヒスタミン薬の上手な服薬指導を考える」からの引用を転載します。
『眠気の発現頻度については、添付文書では約2~7%と記載されている。しかし、今回の患者アンケート調査では、実際の服用経験では「毎回眠くなる」および「時々眠くなる」を合わせると約30~40%に達することが示された。「毎回眠くなる」、「時々眠くなる」、「以前は眠くなったが、今は眠くならない」と回答した患者に眠気の程度を尋ねた結果、全ての薬剤において「我慢できないほど」の眠気を感じる患者がいることがわかった。なお、こうした眠気の発現に年齢や服用期間による差は見られなかった。
眠気の発現頻度については、添付文書記載の数値と実際の服用経験による数値とでは乖離していることが示されたが、これは治験では軽度な症状よりも重篤な症状が評価されやすいことや、評価者の違い(医療者であるか患者本人であるか)にもよると考えられる。私たち薬剤師にとっては添付文書の記載情報は非常に重要であるため、患者への情報提供も“添文どおり”となりがちである。しかし、添付文書上の情報のみにとらわれることなく、どの薬剤についてもまず「抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなることがある」と伝えるべきだろう。』
つまりリリカ並み(以上?)の眠気出現率。副作用の強さは、薬の種類や投与量によって、また人によって異なりますが。
http://glaxosmithkline.co.jp/medical/e_library/bn/pdf/pj/35.pdf
他にも、眠気を引き起こす可能性がある薬は多々あり、「ときに」とか「まれに」というくくりで添付文書に載っています。一般に「ときに」は0.1~5%未満の頻度を指し、「まれに」は0.1%未満の頻度を指すそうです。
「ときに」程度だったら車の運転は許容されるものなのか?「まれに」は1000人に1人未満とごくわずかで、医者が得意の統計学的有意差が文句なく出るレベルだから大丈夫と見なせるのか?やっぱり副作用の記載があったら車の運転は全部駄目なのか(基本、そうだと思います)? その場合も、内服からどの程度時間がたてば許されるようになるのか?
飲酒と似たような話ですし、医薬品についても車の運転についてはっきりした基準を設けてもらったほうが対応しやすいと思います。ただ、あまり厳密に制限し過ぎると、今度は非常に多くの患者さんが車の運転ができないという事態になってしまいます。花粉症が大量発生している今の日本では甚大な社会問題になりそうです。リリカに似た系の薬に関しても、緩和ケアで重宝されている様々な鎮痛補助剤の使用の足かせになってしまう危惧もないとはいえません。
とはいえ、絶対に忘れていけないのは居眠り運転による交通事故は他人にも甚大な危害を加える心配がある、ゆゆしき問題なわけで…。
法的規制をかけようにも、アルコールと違って日本で認可されている薬だけでも山のようにあるから、簡便にドーピング検査ができるものではないのかもしれません。
難しい問題…。
(さらに続く。今度は放射線治療に関係して…長くてすみません)
【付記2013.6.14】
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」ができたのですね。
******************************
【Q10】睡眠薬を服用した翌朝に運転しても大丈夫ですか?
【勧告】
睡眠薬を服用した翌朝に自動車運転を行うことは推奨できない。
睡眠薬を処方する際には、運転をしないように適切に指導する必要がある。
【推奨グレードD】(以下、略)
【患者向け解説】
ほとんどの睡眠薬の説明書に共通して記載されている基本的注意事項として「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する」ことが上げられます。このことからも分かるように、睡眠薬を服薬した翌朝には自動車等の運転を控えていただく必要があります。(以下、略)
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130611.html
他の薬は?
風邪で鼻水がつらかったり花粉症がひどかったりすると、耳鼻科や内科の先生は抗ヒスタミン剤という薬を普通に処方します。いや、放射線治療科の医者だって精神科の医者だって処方しますし、医師免許を持っていれば誰でも薬を出せちゃいます。また、市販の風邪薬にも成分として混ざっていることがあります。
製薬会社から出ている病院薬剤師と保険薬局薬剤師のための情報誌GSKファーマシストジャーナル2012年3月号の「患者と向き合う抗ヒスタミン薬の上手な服薬指導を考える」からの引用を転載します。
『眠気の発現頻度については、添付文書では約2~7%と記載されている。しかし、今回の患者アンケート調査では、実際の服用経験では「毎回眠くなる」および「時々眠くなる」を合わせると約30~40%に達することが示された。「毎回眠くなる」、「時々眠くなる」、「以前は眠くなったが、今は眠くならない」と回答した患者に眠気の程度を尋ねた結果、全ての薬剤において「我慢できないほど」の眠気を感じる患者がいることがわかった。なお、こうした眠気の発現に年齢や服用期間による差は見られなかった。
眠気の発現頻度については、添付文書記載の数値と実際の服用経験による数値とでは乖離していることが示されたが、これは治験では軽度な症状よりも重篤な症状が評価されやすいことや、評価者の違い(医療者であるか患者本人であるか)にもよると考えられる。私たち薬剤師にとっては添付文書の記載情報は非常に重要であるため、患者への情報提供も“添文どおり”となりがちである。しかし、添付文書上の情報のみにとらわれることなく、どの薬剤についてもまず「抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなることがある」と伝えるべきだろう。』
つまりリリカ並み(以上?)の眠気出現率。副作用の強さは、薬の種類や投与量によって、また人によって異なりますが。
http://glaxosmithkline.co.jp/medical/e_library/bn/pdf/pj/35.pdf
他にも、眠気を引き起こす可能性がある薬は多々あり、「ときに」とか「まれに」というくくりで添付文書に載っています。一般に「ときに」は0.1~5%未満の頻度を指し、「まれに」は0.1%未満の頻度を指すそうです。
「ときに」程度だったら車の運転は許容されるものなのか?「まれに」は1000人に1人未満とごくわずかで、医者が得意の統計学的有意差が文句なく出るレベルだから大丈夫と見なせるのか?やっぱり副作用の記載があったら車の運転は全部駄目なのか(基本、そうだと思います)? その場合も、内服からどの程度時間がたてば許されるようになるのか?
飲酒と似たような話ですし、医薬品についても車の運転についてはっきりした基準を設けてもらったほうが対応しやすいと思います。ただ、あまり厳密に制限し過ぎると、今度は非常に多くの患者さんが車の運転ができないという事態になってしまいます。花粉症が大量発生している今の日本では甚大な社会問題になりそうです。リリカに似た系の薬に関しても、緩和ケアで重宝されている様々な鎮痛補助剤の使用の足かせになってしまう危惧もないとはいえません。
とはいえ、絶対に忘れていけないのは居眠り運転による交通事故は他人にも甚大な危害を加える心配がある、ゆゆしき問題なわけで…。
法的規制をかけようにも、アルコールと違って日本で認可されている薬だけでも山のようにあるから、簡便にドーピング検査ができるものではないのかもしれません。
難しい問題…。
(さらに続く。今度は放射線治療に関係して…長くてすみません)
【付記2013.6.14】
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」ができたのですね。
******************************
【Q10】睡眠薬を服用した翌朝に運転しても大丈夫ですか?
【勧告】
睡眠薬を服用した翌朝に自動車運転を行うことは推奨できない。
睡眠薬を処方する際には、運転をしないように適切に指導する必要がある。
【推奨グレードD】(以下、略)
【患者向け解説】
ほとんどの睡眠薬の説明書に共通して記載されている基本的注意事項として「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する」ことが上げられます。このことからも分かるように、睡眠薬を服薬した翌朝には自動車等の運転を控えていただく必要があります。(以下、略)
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130611.html
今日、某製薬会社の担当者の方のプレゼンによる睡眠薬の説明会が院内でありました。私は睡眠薬の専門医ではありませんが、最初に少しだけ…
患者さんが眠れないと訴えると比較的気軽にお医者も睡眠薬を処方しがちですが、ベンゾジアゼピン系など実際は決して安全とは言いきれない薬ばかりのようです。他のいろいろな薬との相互作用(増強効果や減弱効果)が指摘されていたり、依存性が指摘されていたり。依存性についてははっきりした証拠がありませんと製薬会社さんからは説明を受けるのですが…?
すぐ効果が薄れる短時間作用型の睡眠薬でも、特にご高齢者など代謝の低下した人では、数時間後までは血中濃度でそれなりの量が身体に残るようです。つまり翌朝起きてからも、まだ睡眠薬の効果が続いているわけです。アルコールを飲もうものなら、その効果(脳の活動低下)はさらに上乗せされます。寝れないからお酒も飲んじゃえってなんとなくありがちですが、それなりに危険のようです。
では、朝、車の運転って大丈夫?
実は、製薬会社さんから出ている(たぶん)全ての睡眠薬の使用上の注意には、『小さな文字で』重要な基本的事項として『本剤の影響で翌朝以降に及び、眠気、注意力、集中力、反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること』とさりげなく書いてあります。
だから、睡眠薬を飲んだら翌朝は自動車の運転はしてはいけないのです。
飲酒に関しては、十分にアルコールが身体から抜けていない「二日酔い」状態の取り締まりも最近はなされます。しかし睡眠薬による眠気などの影響については、簡易的に血中濃度を測れる仕組みはまだないようです。警察などによる運転の取り締まりは(たぶん)なく、不幸な暴走事故があった時にマスコミ報道されるくらいかもしれません。
ちなみに日本は世界でも傑出した睡眠薬大量処方国です。
昨年、厚生労働省から「リリカという帯状疱疹後の痛み改善用の薬で2年間に10人が車の事故を起こしたので、内服中は運転しないでください」という勧告が(珍しく)あり、マスコミ報道もされました。この薬、基本的に脳や脊髄以外の末梢神経に関係する痛みに効くようなので、麻薬が効きにくいがんによる神経痛やしびれの治療にも用いられます。主な副作用は眠気やふらつき、めまいです。
がんの疼痛緩和でWHOが推奨するモルヒネなどの麻薬は、過量投与になると眠気が出ることはよく知られています。また、リリカ以外にも他の抗けいれん薬や抗精神病薬など、がんの鎮痛補助薬(麻薬の効きにくい痛みに用いられる薬群)の多くは、眠気やふらつき、めまいが主たる副作用になっています(いずれもかなり高頻度のよう)。ざっくり言うと、神経の電気信号伝達をマヒさせるからボーっとしたり眠くなったりするようです。
鎮痛補助薬の中で不眠(興奮作用)で困るのはステロイドくらいでしょうか。しかしこれも、まれですが副作用として眠気があるらしいです。
リリカだけが突出して眠気が出る頻度が多いのか、たまたま調査したら多かった(つまり、他の薬との違いはよくわかっていないだけな)のか。
たぶん後者だろうな…?
(まだ続くのですが、本日はとりあえずここまでにします…)
患者さんが眠れないと訴えると比較的気軽にお医者も睡眠薬を処方しがちですが、ベンゾジアゼピン系など実際は決して安全とは言いきれない薬ばかりのようです。他のいろいろな薬との相互作用(増強効果や減弱効果)が指摘されていたり、依存性が指摘されていたり。依存性についてははっきりした証拠がありませんと製薬会社さんからは説明を受けるのですが…?
すぐ効果が薄れる短時間作用型の睡眠薬でも、特にご高齢者など代謝の低下した人では、数時間後までは血中濃度でそれなりの量が身体に残るようです。つまり翌朝起きてからも、まだ睡眠薬の効果が続いているわけです。アルコールを飲もうものなら、その効果(脳の活動低下)はさらに上乗せされます。寝れないからお酒も飲んじゃえってなんとなくありがちですが、それなりに危険のようです。
では、朝、車の運転って大丈夫?
実は、製薬会社さんから出ている(たぶん)全ての睡眠薬の使用上の注意には、『小さな文字で』重要な基本的事項として『本剤の影響で翌朝以降に及び、眠気、注意力、集中力、反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること』とさりげなく書いてあります。
だから、睡眠薬を飲んだら翌朝は自動車の運転はしてはいけないのです。
飲酒に関しては、十分にアルコールが身体から抜けていない「二日酔い」状態の取り締まりも最近はなされます。しかし睡眠薬による眠気などの影響については、簡易的に血中濃度を測れる仕組みはまだないようです。警察などによる運転の取り締まりは(たぶん)なく、不幸な暴走事故があった時にマスコミ報道されるくらいかもしれません。
ちなみに日本は世界でも傑出した睡眠薬大量処方国です。
昨年、厚生労働省から「リリカという帯状疱疹後の痛み改善用の薬で2年間に10人が車の事故を起こしたので、内服中は運転しないでください」という勧告が(珍しく)あり、マスコミ報道もされました。この薬、基本的に脳や脊髄以外の末梢神経に関係する痛みに効くようなので、麻薬が効きにくいがんによる神経痛やしびれの治療にも用いられます。主な副作用は眠気やふらつき、めまいです。
がんの疼痛緩和でWHOが推奨するモルヒネなどの麻薬は、過量投与になると眠気が出ることはよく知られています。また、リリカ以外にも他の抗けいれん薬や抗精神病薬など、がんの鎮痛補助薬(麻薬の効きにくい痛みに用いられる薬群)の多くは、眠気やふらつき、めまいが主たる副作用になっています(いずれもかなり高頻度のよう)。ざっくり言うと、神経の電気信号伝達をマヒさせるからボーっとしたり眠くなったりするようです。
鎮痛補助薬の中で不眠(興奮作用)で困るのはステロイドくらいでしょうか。しかしこれも、まれですが副作用として眠気があるらしいです。
リリカだけが突出して眠気が出る頻度が多いのか、たまたま調査したら多かった(つまり、他の薬との違いはよくわかっていないだけな)のか。
たぶん後者だろうな…?
(まだ続くのですが、本日はとりあえずここまでにします…)
最近、セツキシマブ(以下、セツ)という分子標的薬剤が頭頸部がん治療に保険適応となりました。数年前に放射線治療との組み合わせでも有効だという海外の臨床試験が報告されて以来、うちの業界(日本放射線腫瘍学会)でもすごく注目されていたお薬です。日本でも放射線治療との組み合わせがOKです。
で、昨夜、病院の医局新年会で某先生と二人で酔っぱらいながら「照射とセツの併用ってどう?」というお話をしました。そこで話題にしたお医者的な疑問ばかりを以下に挙げました。同業者以外の方、よくわからないところがあったらゴメンナサイ。
1. 放射線治療とセツいっしょがイイって示した有名なBonner先生たちの臨床試験の報告(NEJM2006、Lancet2010)って、照射のみとの比較なんだよね。今の標準治療って抗がん剤(シスプラチン、以下シス)との同時併用だしね。
2. 照射とシス併用標準治療にセツありなしのRTOGの臨床試験は、セツ上乗せ効果なかったよね。製薬会社さんの説明(HP)にはなかったけど。
3. 照射にシスまたはセツ併用を比較したトランポリン(TREMPLIN)試験って、最初に強い抗がん剤治療やってるから、単純にシスとセツの比較じゃないよね。そもそも最初の強い抗がん剤できる人が結構限られるよね。
4. 放射線治療との組み合わせ国内治験は20例ちょっとだけで超高齢者ほとんどいなさそうだけど、シス使いにくくてセツにしたいじーちゃんばーちゃんでも大丈夫なのかな?すでに大腸がんでは高齢者でもセツ使い慣れてそうだけど放射線治療との組み合わせじゃないし。
5. シスより安全でシス照射の併用ができなさそうな病院に向いてるって話をしてた人もいるけど、セツってアレルギーや皮膚炎もあるみたいだし、ちゃんと管理できない病院で安易に使われるのも何となくちょっと心配だよね。
6. 国内治験は後半1日2回照射を採用してるけど、入院だとDPC絡みでセツのお金の問題って大きいよね、きっと。でも外来1日1回照射での効果、国内ではまだはっきりしてないよね。朝夕通うの大変だし、後半だけ入院してもらう?
7. 他にすごく信用できる臨床試験ってなさそうだよね。照射にシスとセツの比較臨床試験ってまだ外国でもやってる最中らしいけど、どういう結果がでるのかな?
セツ使ってみたい高齢照射患者さんでどうなのか、抗がん剤なしで1日1回照射でも大丈夫なのか、まだわかってないこと多いよね、ということで宴会でのぶっちゃけ話は終わりました。患者さんはもちろん、みんなが待ってたせっかくのお薬に対して揚げ足取るばかりで恐縮なのですが…無茶高価だけどそんなに気軽で期待できる薬なの、っていう疑問は個人的にはまだぬぐい去れてません。
なにぶんにも経験&勉強不足なので、間違ってたりおかしな部分があったら、なにとぞ教えてくださいませ。
追記:6ですが、その後にセツは入院しながら投与することも(病院にとって)問題なく可能となりました。
で、昨夜、病院の医局新年会で某先生と二人で酔っぱらいながら「照射とセツの併用ってどう?」というお話をしました。そこで話題にしたお医者的な疑問ばかりを以下に挙げました。同業者以外の方、よくわからないところがあったらゴメンナサイ。
1. 放射線治療とセツいっしょがイイって示した有名なBonner先生たちの臨床試験の報告(NEJM2006、Lancet2010)って、照射のみとの比較なんだよね。今の標準治療って抗がん剤(シスプラチン、以下シス)との同時併用だしね。
2. 照射とシス併用標準治療にセツありなしのRTOGの臨床試験は、セツ上乗せ効果なかったよね。製薬会社さんの説明(HP)にはなかったけど。
3. 照射にシスまたはセツ併用を比較したトランポリン(TREMPLIN)試験って、最初に強い抗がん剤治療やってるから、単純にシスとセツの比較じゃないよね。そもそも最初の強い抗がん剤できる人が結構限られるよね。
4. 放射線治療との組み合わせ国内治験は20例ちょっとだけで超高齢者ほとんどいなさそうだけど、シス使いにくくてセツにしたいじーちゃんばーちゃんでも大丈夫なのかな?すでに大腸がんでは高齢者でもセツ使い慣れてそうだけど放射線治療との組み合わせじゃないし。
5. シスより安全でシス照射の併用ができなさそうな病院に向いてるって話をしてた人もいるけど、セツってアレルギーや皮膚炎もあるみたいだし、ちゃんと管理できない病院で安易に使われるのも何となくちょっと心配だよね。
6. 国内治験は後半1日2回照射を採用してるけど、入院だとDPC絡みでセツのお金の問題って大きいよね、きっと。でも外来1日1回照射での効果、国内ではまだはっきりしてないよね。朝夕通うの大変だし、後半だけ入院してもらう?
7. 他にすごく信用できる臨床試験ってなさそうだよね。照射にシスとセツの比較臨床試験ってまだ外国でもやってる最中らしいけど、どういう結果がでるのかな?
セツ使ってみたい高齢照射患者さんでどうなのか、抗がん剤なしで1日1回照射でも大丈夫なのか、まだわかってないこと多いよね、ということで宴会でのぶっちゃけ話は終わりました。患者さんはもちろん、みんなが待ってたせっかくのお薬に対して揚げ足取るばかりで恐縮なのですが…無茶高価だけどそんなに気軽で期待できる薬なの、っていう疑問は個人的にはまだぬぐい去れてません。
なにぶんにも経験&勉強不足なので、間違ってたりおかしな部分があったら、なにとぞ教えてくださいませ。
追記:6ですが、その後にセツは入院しながら投与することも(病院にとって)問題なく可能となりました。
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