母校である大学病院での定期診療支援が昨日で終わり、4月からは調べ物をする時などたま〜にしか大学病院に行かなくなります。業務内容は放射線治療計画支援が主体だったので、医学生さんと接する機会は正直あまりなかったのですが、来月からは若くて元気な医学生さんに会うことすら激減するので少しだけさみしい気もします。
私は一昨年まで数年間、別の某大学の教官として医学生さんの実習指導をしてきました。そもそも大学教官は「教師」として雇用されていて、また「研究者」としても業績を重ねることが求められ、「医者」はついでにという感が正直なきにしもあらずの所があります。
まあ、今日その話はさておいて…。
医学部は卒業まで順調でも6年の学業期間を要しますが。最近の医学生さんは4年生で共用試験 (CBT:Computer Based Testing)なるものをクリアしてから、病院実習に入ることが一般的です。俗に「ポリクリ」とか「クリクラ(クリニカル・クラークシップ)」とかいうやつです。
最初はグループ全員で現場「見学」的な要素が強い実習ですが、5年生の半ばからは希望の診療科を中心に個別の「体験」実習が主体となります。私が某大学在職の時は、医学生さんは4週間/講座、合計6ヶ月の期間で実習があり、我々の指導も連日続きました(さらに1学年下のグループも定期的に実習に来ます)。毎月5〜6人回ってくる医学生さんたちを放射線科は診断と治療に分けて、各教官が(治療部門は「治療スタッフ全員で」)個別指導をしていました。
医者の教官にとっては病院の臨床(や、きっと普通の先生は当然研究も)しながらなので、これは結構長くて大変だった…最初に書いた通り、これが本来の業務なのですが…某大学着任当初はもう少し短かったのですが、いつの間にやら6ヶ月…。
当時の私のBossの指導方針で、2週間のみ治療部門に回ってくる医学生さんには、放射線治療の面白さの一端を体感していただくため、実際の放射線治療で用いる放射線治療計画コンピュータ(以下、治療計画PCと仮称)を操作してもらうことを実習の主体にしていました。具体的には、放射線治療用に撮像されたCT画像を治療計画PCに転送し、専用の放射線治療計画用アプリケーション(以下、計画アプリ)を使って、我々が業務として行っている以下の操作を学生さんにもシミュレーションしてもらっていました。
1. まずは計画アプリに取り込まれ写し出されたCT画像に、がん病巣はどれか、がんのありそうな危険範囲はどこか、また放射線治療を行う上で危険な正常臓器がどれか、お絵描きツールを使って各々を区別できるように色分けした線などで囲む(絵を書く)作業を行います。これは世に出回っている描画ソフトでの「お絵かき」と技術的には大して変わりませんし、(世界中の施設で主力として汎用されている計画アプリが入っただけで1台数百万〜数千万円もするPCなのに)フリーウェアのほうが操作性が優っていたりします。
2. 続いて、「囲った絵」をみて、どの方向からどの範囲に放射線を照射したら、治療すべき範囲に充分な線量があたり、また危険臓器を極力被曝保護できるか、を計画アプリ上でいろいろとシミュレーションします。別の例えをするなら、地図の等高線(「山頂」は放射線がたくさん照射される高線量域で、「山裾」や「平野部」は正常臓器が主となる低線量域)を製作するといった感じです。これはPC好きの医学生さんなんかには(たぶん日本の放射線腫瘍医も少なからず)、ゲーム感覚で面白く結構ハマる要素を持っているようです。
まず最初の数十分で治療計画PCの一連の取扱いについて、我々指導教官側がいっしょに見せて聞かせて触らせるのですが、その後は用意してある計画アプリの学生さん用マニュアル(研修医用に作成したものをさらに簡易にしたVersion)で、ある程度自由に操作をしてもらってました。もちろん医学生さんの行う計画はあくまでもシミュレーションです。当然実際の患者さんの放射線治療計画は、医局員である放射線腫瘍医が中心に行い、さらに複数の放射線腫瘍専門医や医学物理士さんのチェックも受けて決定しています。
昨今の医学生さんたちは(当たり前なのかもしれませんが)アプリの操作に手馴れていて、早い学生さんだとたった半日で定型的な治療計画を仕上げ、2週間後の実習終了時には結構高度な「全脳全脊髄照射」や「マントル照射」なんかも作り上げてしまいました。また明らかにPC操作が得意ではなさそうな女学生さんでも、2週間もすれば「乳房温存照射」程度の計画でもそこそこ仕上げることができるようになります。
これを体験してもらうと、我々のお仕事って「実は簡単?」と思われがちですが(正直私も学生さんたちの覚え方の早さには最初びっくりしました)、実は全然そうではないのだということが臨床経験を積めば積むほどほどわかってきます。放射線治療計画は、コンピューターゲームとは全く違うので…。とはいえ、医学生さんの関心を引くにはとても有効な実習法であったと今でも思っていますし、もしかすると某大学の放射線治療科に回ってきた医学生さんたちの実習直後のレベルは、そこらの研修医より上なのではないかとたまに思うこともありました。
ただ、人間、時が経つとすぐに忘れてしまうというのは皆同じようで、すごいな〜と思っていた医学生さんでも改めて研修医になって修練に回ってきた時にはすっかり忘れていて、放射線治療計画の一連の指導を改めてその時に回ってきた医学生さんと一緒に教えなければいけないなんてこともよくありましたけれど…
(2012.8.xx facebookより加筆修正)
私は一昨年まで数年間、別の某大学の教官として医学生さんの実習指導をしてきました。そもそも大学教官は「教師」として雇用されていて、また「研究者」としても業績を重ねることが求められ、「医者」はついでにという感が正直なきにしもあらずの所があります。
まあ、今日その話はさておいて…。
医学部は卒業まで順調でも6年の学業期間を要しますが。最近の医学生さんは4年生で共用試験 (CBT:Computer Based Testing)なるものをクリアしてから、病院実習に入ることが一般的です。俗に「ポリクリ」とか「クリクラ(クリニカル・クラークシップ)」とかいうやつです。
最初はグループ全員で現場「見学」的な要素が強い実習ですが、5年生の半ばからは希望の診療科を中心に個別の「体験」実習が主体となります。私が某大学在職の時は、医学生さんは4週間/講座、合計6ヶ月の期間で実習があり、我々の指導も連日続きました(さらに1学年下のグループも定期的に実習に来ます)。毎月5〜6人回ってくる医学生さんたちを放射線科は診断と治療に分けて、各教官が(治療部門は「治療スタッフ全員で」)個別指導をしていました。
医者の教官にとっては病院の臨床(や、きっと普通の先生は当然研究も)しながらなので、これは結構長くて大変だった…最初に書いた通り、これが本来の業務なのですが…某大学着任当初はもう少し短かったのですが、いつの間にやら6ヶ月…。
当時の私のBossの指導方針で、2週間のみ治療部門に回ってくる医学生さんには、放射線治療の面白さの一端を体感していただくため、実際の放射線治療で用いる放射線治療計画コンピュータ(以下、治療計画PCと仮称)を操作してもらうことを実習の主体にしていました。具体的には、放射線治療用に撮像されたCT画像を治療計画PCに転送し、専用の放射線治療計画用アプリケーション(以下、計画アプリ)を使って、我々が業務として行っている以下の操作を学生さんにもシミュレーションしてもらっていました。
1. まずは計画アプリに取り込まれ写し出されたCT画像に、がん病巣はどれか、がんのありそうな危険範囲はどこか、また放射線治療を行う上で危険な正常臓器がどれか、お絵描きツールを使って各々を区別できるように色分けした線などで囲む(絵を書く)作業を行います。これは世に出回っている描画ソフトでの「お絵かき」と技術的には大して変わりませんし、(世界中の施設で主力として汎用されている計画アプリが入っただけで1台数百万〜数千万円もするPCなのに)フリーウェアのほうが操作性が優っていたりします。
2. 続いて、「囲った絵」をみて、どの方向からどの範囲に放射線を照射したら、治療すべき範囲に充分な線量があたり、また危険臓器を極力被曝保護できるか、を計画アプリ上でいろいろとシミュレーションします。別の例えをするなら、地図の等高線(「山頂」は放射線がたくさん照射される高線量域で、「山裾」や「平野部」は正常臓器が主となる低線量域)を製作するといった感じです。これはPC好きの医学生さんなんかには(たぶん日本の放射線腫瘍医も少なからず)、ゲーム感覚で面白く結構ハマる要素を持っているようです。
まず最初の数十分で治療計画PCの一連の取扱いについて、我々指導教官側がいっしょに見せて聞かせて触らせるのですが、その後は用意してある計画アプリの学生さん用マニュアル(研修医用に作成したものをさらに簡易にしたVersion)で、ある程度自由に操作をしてもらってました。もちろん医学生さんの行う計画はあくまでもシミュレーションです。当然実際の患者さんの放射線治療計画は、医局員である放射線腫瘍医が中心に行い、さらに複数の放射線腫瘍専門医や医学物理士さんのチェックも受けて決定しています。
昨今の医学生さんたちは(当たり前なのかもしれませんが)アプリの操作に手馴れていて、早い学生さんだとたった半日で定型的な治療計画を仕上げ、2週間後の実習終了時には結構高度な「全脳全脊髄照射」や「マントル照射」なんかも作り上げてしまいました。また明らかにPC操作が得意ではなさそうな女学生さんでも、2週間もすれば「乳房温存照射」程度の計画でもそこそこ仕上げることができるようになります。
これを体験してもらうと、我々のお仕事って「実は簡単?」と思われがちですが(正直私も学生さんたちの覚え方の早さには最初びっくりしました)、実は全然そうではないのだということが臨床経験を積めば積むほどほどわかってきます。放射線治療計画は、コンピューターゲームとは全く違うので…。とはいえ、医学生さんの関心を引くにはとても有効な実習法であったと今でも思っていますし、もしかすると某大学の放射線治療科に回ってきた医学生さんたちの実習直後のレベルは、そこらの研修医より上なのではないかとたまに思うこともありました。
ただ、人間、時が経つとすぐに忘れてしまうというのは皆同じようで、すごいな〜と思っていた医学生さんでも改めて研修医になって修練に回ってきた時にはすっかり忘れていて、放射線治療計画の一連の指導を改めてその時に回ってきた医学生さんと一緒に教えなければいけないなんてこともよくありましたけれど…
(2012.8.xx facebookより加筆修正)
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ふと思い立って週末、何年かぶりに家族全員で京都まで旅行に行ってきました。
日曜の早朝、私は去年からこれまた何年かぶりに再開したランニングで京都駅前から祇園付近を散策。桜の見頃は来週以降らしいのですが、何故か五条~七条の鴨川沿いはそこそこ咲いていました。京都の気温をなめていた私は無謀にも短パンだったため、ホテルに戻る頃には身体が冷え切って足がつりそうでした…。
シャワーで体を温め直しホテルの朝食会場に向かうと、妻が「貸切タクシーを半日予約したから」と。当初の予定ではバスと電車を駆使するつもりだったのですが、私とは別行動でホテルから西本願寺に向かって散歩している時に個人タクシーの運転手さんに「半日1万X千円でどう?」と声をかけられ、比較的お値打ちのお誘いだったこともあり予約したらしいのです。
朝食後、ホテルのロビーで待ち合わせをしたキャリア40年のベテラン個人タクシー運転手さんに連れられ、運転手さん一押しという枯山水庭園のある東福寺や、これまでなかなか行くことのできなかった大原の三千院など、名解説付きで京都市内をいろいろ案内していただきました。
道中、運転手さんに「比較的良心的なタクシー料金設定ですね」って話しかけたら、「実は京都のタクシーって沖縄に次いで安いんです。年間延5000万人も観光客が訪れるから、業界全体で安め設定でサービスしてるんですよ。」と教えてくれました。
お昼ご飯も、太秦で撮影をしている芸能人もちょくちょく訪れるという金閣寺近くの穴場の湯豆腐屋さんをその運転手さんが紹介してくださいました。「タクシー料金据え置きでいいから、少し遅くなってもゆっくりおくつろぎ下さい」と、また。お店の雰囲気自体ものんびりしていて、普通に食事(+ビール)をしただけなのですが予想通り時間を少しオーバーしてしまいました。
で、昼食後の車内で運転手さんから突然「私もずっと地元の人間なんですけど、京都の人って実は腹黒いんですよね」と振られました。「例えば、初対面のお客さんに『家へお上がりください』って言ってもそれは本音じゃなくって、そのお方がそのまま家の中に入ったりすると裏で『まともに受け取りおった』って皮肉るんですよ」ともおっしゃってました。
京都人の心の裏表の噂については二十年くらい前に京都の旅館に嫁いだ親戚の方から似たような話を聞いていて、(運転手さん、これってもしかしてさりげない間接的な賃上げ交渉ですか?)と少し思いつつ、(性悪の)私は会話を少し楽しむため「そうなんですか〜?私の住んでいる地域の人たちだったら、素直に『失礼します』って普通にお邪魔する人ばかりですよ。むしろ家に入らないほうが失礼にあたりますからね」と返してみました。
でも、その話はそこで終わり、運転手さんは再び観光名所の案内を車内で続けてくれました。
そして、到着点の祇園に一時間ほど遅れて到着しお会計となった時、運転手さんが妻に向かって改めて「乗車時間もオーバーしてるから本当はもう少しお高い料金なのですけど、いいですから」ってまたリップサービス?をしてくださったので、妻が当初予定額より少し上乗せしてお支払し、さらに手土産もつけてお渡ししました。運転手さん、妻に「おおきに」って言ってたみたいです。
タクシーが見えなくなってから、息子が「京都の人ってなんか損してるよね」と、ぼそっとつぶやいてました(これは妻から聞いた話)。
運転手さん、まさかご希望の料金にはまだ足りなかったですか…?
付記:とても良い運転手さんでした。少なくとも見た目と実際のサービスは間違いなく!ありがとうございました
日曜の早朝、私は去年からこれまた何年かぶりに再開したランニングで京都駅前から祇園付近を散策。桜の見頃は来週以降らしいのですが、何故か五条~七条の鴨川沿いはそこそこ咲いていました。京都の気温をなめていた私は無謀にも短パンだったため、ホテルに戻る頃には身体が冷え切って足がつりそうでした…。
シャワーで体を温め直しホテルの朝食会場に向かうと、妻が「貸切タクシーを半日予約したから」と。当初の予定ではバスと電車を駆使するつもりだったのですが、私とは別行動でホテルから西本願寺に向かって散歩している時に個人タクシーの運転手さんに「半日1万X千円でどう?」と声をかけられ、比較的お値打ちのお誘いだったこともあり予約したらしいのです。
朝食後、ホテルのロビーで待ち合わせをしたキャリア40年のベテラン個人タクシー運転手さんに連れられ、運転手さん一押しという枯山水庭園のある東福寺や、これまでなかなか行くことのできなかった大原の三千院など、名解説付きで京都市内をいろいろ案内していただきました。
道中、運転手さんに「比較的良心的なタクシー料金設定ですね」って話しかけたら、「実は京都のタクシーって沖縄に次いで安いんです。年間延5000万人も観光客が訪れるから、業界全体で安め設定でサービスしてるんですよ。」と教えてくれました。
お昼ご飯も、太秦で撮影をしている芸能人もちょくちょく訪れるという金閣寺近くの穴場の湯豆腐屋さんをその運転手さんが紹介してくださいました。「タクシー料金据え置きでいいから、少し遅くなってもゆっくりおくつろぎ下さい」と、また。お店の雰囲気自体ものんびりしていて、普通に食事(+ビール)をしただけなのですが予想通り時間を少しオーバーしてしまいました。
で、昼食後の車内で運転手さんから突然「私もずっと地元の人間なんですけど、京都の人って実は腹黒いんですよね」と振られました。「例えば、初対面のお客さんに『家へお上がりください』って言ってもそれは本音じゃなくって、そのお方がそのまま家の中に入ったりすると裏で『まともに受け取りおった』って皮肉るんですよ」ともおっしゃってました。
京都人の心の裏表の噂については二十年くらい前に京都の旅館に嫁いだ親戚の方から似たような話を聞いていて、(運転手さん、これってもしかしてさりげない間接的な賃上げ交渉ですか?)と少し思いつつ、(性悪の)私は会話を少し楽しむため「そうなんですか〜?私の住んでいる地域の人たちだったら、素直に『失礼します』って普通にお邪魔する人ばかりですよ。むしろ家に入らないほうが失礼にあたりますからね」と返してみました。
でも、その話はそこで終わり、運転手さんは再び観光名所の案内を車内で続けてくれました。
そして、到着点の祇園に一時間ほど遅れて到着しお会計となった時、運転手さんが妻に向かって改めて「乗車時間もオーバーしてるから本当はもう少しお高い料金なのですけど、いいですから」ってまたリップサービス?をしてくださったので、妻が当初予定額より少し上乗せしてお支払し、さらに手土産もつけてお渡ししました。運転手さん、妻に「おおきに」って言ってたみたいです。
タクシーが見えなくなってから、息子が「京都の人ってなんか損してるよね」と、ぼそっとつぶやいてました(これは妻から聞いた話)。
運転手さん、まさかご希望の料金にはまだ足りなかったですか…?
付記:とても良い運転手さんでした。少なくとも見た目と実際のサービスは間違いなく!ありがとうございました
今日、4月から大学に戻られるうちの若手女医さんに、照射範囲決定のため入院中の食道がん患者さんの食道造影検査をしてもらったのですが、とても上手に撮影していただきました。
もちろんバリウムを使って…
食道がん患者さんの病状を確認するために食道造影検査を行うことがあります。胃の検診と同じようにバリウムを飲んでいただくのですが、病気が進行して食道と気管に穴(瘻孔)ができ常に肺に誤飲してしまう患者さんにバリウムの代わりにガストログラフィン(以下ガストロ)という水溶性の造影剤を用いられるお医者さんが時々いらっしゃいます。胃腸が詰まったり穴が開いているとバリウムだと吸収されずに体内に残ってしまうのですが、ガストロだと水溶性であり漏れても腹腔内で吸収され尿中に排泄されるので安全だという理由から、食道病変にも同じように扱っていいと思いこんでいらっしゃるからのようです。
私の知る限り、特に消化器科(内科も外科も)の先生方に目立つ印象です。使用理由を問うと「先輩から言い伝えられてきたから」とお答えになる先生ばかりです。十年以上前のことですが、私もある放射線診断の先生にこのことを聞くまで「言い伝え」を鵜呑みにしていました。
あまり知られていないようですが、ガストロは高浸透圧性イオン性造影剤に分類され、その浸透圧は1700 mosm/L、生理食塩水に対する浸透圧比は約9と非常に高い検査薬です。そんな薬剤が肺に大量に流れこんだら、身体の水分が薬剤を希釈するため肺胞の中に引っ張られて水浸し=肺水腫になり、水に溺れたのと同じような状態になってしまいます。投与量が少なければ症状的にはあまり問題になりにくいのかもしれませんが、瘻孔があるからと調子に乗って検査で飲ませ続けると危険です。
多くはないのですが、小児系を中心に肺への誤飲によるガストロの危険性を報告した医学論文は散見します。
ガストロの添付文書の(重要な基本的注意)には、4.高張液であるので、水代謝異常又は電解質代謝異常のある患者に投与する場合は、あらかじめ水・電解質代謝を正常にするなど適切な処置を行う[脱水症や水・電解質代謝異常を起こしやすい]。5.誤嚥により、呼吸困難、肺水腫等を引き起こす恐れがあるので、誤嚥を引き起こす恐れのある患者(高齢者、小児、嚥下困難、意識レベルが低下した患者等)に経口投与する際には観察を十分に行い注意する。また、術前造影を実施した場合には、麻酔導入時の嘔吐等による誤嚥に留意する。と明記されています。
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の嚥下造影の標準的検査法(詳細版)にも、「消化管造影剤には硫酸バリウムとガストログラフィンがあるが,ガストログラフィンは誤嚥した場合の肺毒性が報告されており,嚥下障害での使用は不適切である」と明記されています。つまりここでは通過障害のある進行食道がん(+頭頸部がん)自体で使用を勧めていないことになるようです。
HP最下部にPDFがありダウンロードできますので、他の対処法を含めてご参考まで。
http://www.jsdr.or.jp/news/news_all/
最近では食道気管支瘻はCTなどでも発見できることがあり、また食道がん症例に対して食道造影検査自体を施行する先生が減ってきているようですが(これはこれでいかがなものか?)、誤飲検査を含め上部消化管造影を施行される際は是非ご留意いただいたほうがよろしいかと思っています。
お医者さんはあまりご覧いただいていないブログかもしれませんが、ご参考になれば…田舎の町医者より
(2012.5.xx facebookより加筆修正)
もちろんバリウムを使って…
食道がん患者さんの病状を確認するために食道造影検査を行うことがあります。胃の検診と同じようにバリウムを飲んでいただくのですが、病気が進行して食道と気管に穴(瘻孔)ができ常に肺に誤飲してしまう患者さんにバリウムの代わりにガストログラフィン(以下ガストロ)という水溶性の造影剤を用いられるお医者さんが時々いらっしゃいます。胃腸が詰まったり穴が開いているとバリウムだと吸収されずに体内に残ってしまうのですが、ガストロだと水溶性であり漏れても腹腔内で吸収され尿中に排泄されるので安全だという理由から、食道病変にも同じように扱っていいと思いこんでいらっしゃるからのようです。
私の知る限り、特に消化器科(内科も外科も)の先生方に目立つ印象です。使用理由を問うと「先輩から言い伝えられてきたから」とお答えになる先生ばかりです。十年以上前のことですが、私もある放射線診断の先生にこのことを聞くまで「言い伝え」を鵜呑みにしていました。
あまり知られていないようですが、ガストロは高浸透圧性イオン性造影剤に分類され、その浸透圧は1700 mosm/L、生理食塩水に対する浸透圧比は約9と非常に高い検査薬です。そんな薬剤が肺に大量に流れこんだら、身体の水分が薬剤を希釈するため肺胞の中に引っ張られて水浸し=肺水腫になり、水に溺れたのと同じような状態になってしまいます。投与量が少なければ症状的にはあまり問題になりにくいのかもしれませんが、瘻孔があるからと調子に乗って検査で飲ませ続けると危険です。
多くはないのですが、小児系を中心に肺への誤飲によるガストロの危険性を報告した医学論文は散見します。
ガストロの添付文書の(重要な基本的注意)には、4.高張液であるので、水代謝異常又は電解質代謝異常のある患者に投与する場合は、あらかじめ水・電解質代謝を正常にするなど適切な処置を行う[脱水症や水・電解質代謝異常を起こしやすい]。5.誤嚥により、呼吸困難、肺水腫等を引き起こす恐れがあるので、誤嚥を引き起こす恐れのある患者(高齢者、小児、嚥下困難、意識レベルが低下した患者等)に経口投与する際には観察を十分に行い注意する。また、術前造影を実施した場合には、麻酔導入時の嘔吐等による誤嚥に留意する。と明記されています。
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の嚥下造影の標準的検査法(詳細版)にも、「消化管造影剤には硫酸バリウムとガストログラフィンがあるが,ガストログラフィンは誤嚥した場合の肺毒性が報告されており,嚥下障害での使用は不適切である」と明記されています。つまりここでは通過障害のある進行食道がん(+頭頸部がん)自体で使用を勧めていないことになるようです。
HP最下部にPDFがありダウンロードできますので、他の対処法を含めてご参考まで。
http://www.jsdr.or.jp/news/news_all/
最近では食道気管支瘻はCTなどでも発見できることがあり、また食道がん症例に対して食道造影検査自体を施行する先生が減ってきているようですが(これはこれでいかがなものか?)、誤飲検査を含め上部消化管造影を施行される際は是非ご留意いただいたほうがよろしいかと思っています。
お医者さんはあまりご覧いただいていないブログかもしれませんが、ご参考になれば…田舎の町医者より
(2012.5.xx facebookより加筆修正)
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勉強になります
りり 来月、言語聴覚士の国家試験を受験する者です。
ガストロについて調べておりこちらを見つけましたが、大変参考になります。ありがとうございます。
言語聴覚士の先生の授業で、臨床現場で「ガストロ使いますか?」と聞かれることはよくあるので覚えておきなさいと言われましたが、やはりまだあまり医療関係職の間でも浸透していない知識なのですね。
JIN りりさん、コメントありがとうございます。私の知る限り、医療関係者でもいまださほど浸透していないような気がします。不用意にガストロを使用しようとする偉そうな医療関係者に対しても、根拠をもって説得していただければと思います。
りり 来月、言語聴覚士の国家試験を受験する者です。
ガストロについて調べておりこちらを見つけましたが、大変参考になります。ありがとうございます。
言語聴覚士の先生の授業で、臨床現場で「ガストロ使いますか?」と聞かれることはよくあるので覚えておきなさいと言われましたが、やはりまだあまり医療関係職の間でも浸透していない知識なのですね。
JIN りりさん、コメントありがとうございます。私の知る限り、医療関係者でもいまださほど浸透していないような気がします。不用意にガストロを使用しようとする偉そうな医療関係者に対しても、根拠をもって説得していただければと思います。
放射線腫瘍医側に関しても「主治医(各診療科の専門の先生)のご依頼だから」と安易に同時併用を承認している話を聞くことがあります。でも実は、相手の診療科の先生も「放射線腫瘍専門医もOKしてくれているし」とか「たぶん大丈夫でしょう」という意識を持っている恐れがあったりします。ちなみに、これまで私が化学療法の内容照会でお問い合わせし、そうお答えになった先生は何人かいらっしゃいました。そのような確認をしなければ、両者ともに責任転嫁状態で抗がん剤という猛毒が根拠あいまいなまま患者さんに投与されたことになっていたわけで…。
○○大学病院だから大丈夫とか××センターの先生だからと鵜呑みにせず、自分自身であまり知識のない、あるいは経験のない薬剤と組み合わせで放射線治療を依頼された場合には、(当たり前だろと言われそうですが)可能な限り過去の報告を確認すべきだと思います。「その論文って改ざんでは?」とかまで考え出すと、何を信じていいのか全くわからなくなりますが。
重鎮のような有名な先生が意外にくせ者(自分の思いつき指示)だったりすることもあります。もちろん実臨床では、臨床試験のような細かな規定に合致して治療を行うことばかりではなく、臨機応変に対応せざるを得ないケースも正直ありえます。これについてはまた別の機会に独り言を…。
今は分子標的薬剤が次々と承認されるご時世です。これらも放射線治療の併用、特に臨床試験などで安全性の確認が充分になされていないものは仮に緩和照射であったとしても特に同時併用は慎重を期すべきです(と偉い先生方もよく言っておられます)。
本当は、どの施設・どの診療科でも個々のがん診療内容のダブルチェックがなされるべきなのでしょうが、必ずしも全例に行われているとは言えないのが現状です。運用面など課題は多々ありますが、本質的な診療内容確認に関する第三者機関の関与があってもいいのではないかと個人的には思っています。
繰り返しますが、プロとして仕事をしている(≒それなりのお金をいただいている)放射線腫瘍専門医ならば、「相手の言いなり」「なんとなく」の治療は避けるべきかと。よくわからない方針で依頼された症例がいたら、せめて要約だけでもいいから過去の報告を確認したほうがいい。たとえ依頼相手が各診療分野の専門医だとしても患者さんのために、そして自分のためにも。
ついでにあえて書くと、たとえ患者さんであっても自分の治療方針を医者に全て丸投げ任せきりというのはいかがなものかと思っています。素人だからわかるわけがないという意見はもちろんあるでしょうが、上記のようにいいかげんな医者に「なんとなく」設定されてしまうケースは少なくありません(たぶん)。
このご時世、セカンドオピニオン外来を利用する、自分でネットなど診療内容を自分なりに確認する、など自ら動いて確認を試みる手段はいろいろあります。もちろんセカンドオピニオンはあくまで参考意見で主治医に対する強制力はありませんし、ネット情報は過多で真偽もはっきりしないのが難点ではあります。とはいえ、がん治療というのは命がかかった人生の選択であるわけですから、治療をするかしないかという大きな選択を含めて、わかりにくいなりにも可能な限り自分で納得のいく調査をしたほうがいいと思っています。
申し訳ありませんが、かくいう私も最初からそんな風に考えていたわけではありません。これまで多くの患者さんや先生方から学ばせていただいた経験や知識を今の自分なりにブログとしてまとめたに過ぎません。また、「では、今お前は充分な対応ができているのか?」の問いに「はい」と言い切れる自信もぶっちゃけありません。
ただ、もしこれまでそう気づいていなかった、あるいは思っていても「なんとなく」続けてしまっていた医療者や患者さんがおられて、このブログが何らかの参考になるのであれば本望と思い、投稿いたしました。
忌憚なきご意見、お待ちしております。
○○大学病院だから大丈夫とか××センターの先生だからと鵜呑みにせず、自分自身であまり知識のない、あるいは経験のない薬剤と組み合わせで放射線治療を依頼された場合には、(当たり前だろと言われそうですが)可能な限り過去の報告を確認すべきだと思います。「その論文って改ざんでは?」とかまで考え出すと、何を信じていいのか全くわからなくなりますが。
重鎮のような有名な先生が意外にくせ者(自分の思いつき指示)だったりすることもあります。もちろん実臨床では、臨床試験のような細かな規定に合致して治療を行うことばかりではなく、臨機応変に対応せざるを得ないケースも正直ありえます。これについてはまた別の機会に独り言を…。
今は分子標的薬剤が次々と承認されるご時世です。これらも放射線治療の併用、特に臨床試験などで安全性の確認が充分になされていないものは仮に緩和照射であったとしても特に同時併用は慎重を期すべきです(と偉い先生方もよく言っておられます)。
本当は、どの施設・どの診療科でも個々のがん診療内容のダブルチェックがなされるべきなのでしょうが、必ずしも全例に行われているとは言えないのが現状です。運用面など課題は多々ありますが、本質的な診療内容確認に関する第三者機関の関与があってもいいのではないかと個人的には思っています。
繰り返しますが、プロとして仕事をしている(≒それなりのお金をいただいている)放射線腫瘍専門医ならば、「相手の言いなり」「なんとなく」の治療は避けるべきかと。よくわからない方針で依頼された症例がいたら、せめて要約だけでもいいから過去の報告を確認したほうがいい。たとえ依頼相手が各診療分野の専門医だとしても患者さんのために、そして自分のためにも。
ついでにあえて書くと、たとえ患者さんであっても自分の治療方針を医者に全て丸投げ任せきりというのはいかがなものかと思っています。素人だからわかるわけがないという意見はもちろんあるでしょうが、上記のようにいいかげんな医者に「なんとなく」設定されてしまうケースは少なくありません(たぶん)。
このご時世、セカンドオピニオン外来を利用する、自分でネットなど診療内容を自分なりに確認する、など自ら動いて確認を試みる手段はいろいろあります。もちろんセカンドオピニオンはあくまで参考意見で主治医に対する強制力はありませんし、ネット情報は過多で真偽もはっきりしないのが難点ではあります。とはいえ、がん治療というのは命がかかった人生の選択であるわけですから、治療をするかしないかという大きな選択を含めて、わかりにくいなりにも可能な限り自分で納得のいく調査をしたほうがいいと思っています。
申し訳ありませんが、かくいう私も最初からそんな風に考えていたわけではありません。これまで多くの患者さんや先生方から学ばせていただいた経験や知識を今の自分なりにブログとしてまとめたに過ぎません。また、「では、今お前は充分な対応ができているのか?」の問いに「はい」と言い切れる自信もぶっちゃけありません。
ただ、もしこれまでそう気づいていなかった、あるいは思っていても「なんとなく」続けてしまっていた医療者や患者さんがおられて、このブログが何らかの参考になるのであれば本望と思い、投稿いたしました。
忌憚なきご意見、お待ちしております。
今日、某科とのミーティングで、某がんに対する抗がん剤と放射線治療の同時併用について、これまでの治療内容と今後の方針についていろいろと議論をする機会がありました。だからというわけでは決してないのですが、抗がん剤と放射線治療の併用で患者さんも気をつけたほうがいいかな、と私が思ってることについて、書いてみます(厳密には以前のFB投稿の書き換えですが…笑)。
最近の抗がん剤治療は、各がん別に標準的な投与メニューが院内登録されることが一般的になり、普通の(まともな)病院での不注意な薬剤投与量ミスというのは激減してきたと思います。
一般に抗がん剤治療のメニューというものは、多くの専門の先生が集まって大がかりで厳しい規定をいろいろと作成し、人への投与に対する安全性や有効性を確認する臨床試験などで何年もかけて治療および経過観察をし、出てきた結果を国内外の学会や医学誌に発表するという、それはそれは大変な労苦を要する作業をいろいろと行って、ようやく新しい患者さんのために利用できるようになります。
また、放射線治療関連では、がんに対する治療効果をより高めるため、放射線治療をする期間にいろいろな抗がん剤を一緒に投与することがあります。最近では、いろいろながん診療ガイドラインで、抗がん剤と放射線治療の同時併用(同時化学放射線療法)が標準治療と評価されています。
ただそこで、以前から個人的に気になっていることがあります。同時化学放射線療法をどんな内容でもいいと拡大解釈してしまっている先生が、学会や院内カンファレンスなどでたまにいらっしゃるということです。
抗がん剤治療も放射線治療も、がんであろうと正常組織であろうとどちらも細胞に相当なダメージを与えます。そして、抗がん剤単独治療で保険承認されている投与量であっても、放射線治療との同時併用では細胞のダメージが単純な足し算以上の上乗せ効果が出る恐れがあり、放射線治療との組み合わせOKと気軽に言えるものではありません。照射範囲が大きいとなおさらです。
また、複数薬剤を組み合わることでより効果を高める有名な抗がん剤治療メニューもいろいろあります。たとえば、子宮がんにおけるTC(パクリタキセル:タキソール+カルボプラチン)療法、直腸がんにおけるFOLFIRI療法、膀胱がんにおけるGC(ジェムシタビン+シスプラチン)療法、などなど。そんな有名メニューでも、放射線治療との同時併用に関しては(最近まで)あまりきちんとした臨床試験報告がなされていなかったものが意外にあったりするので(しかも外国人仕様だけの報告)、注意が必要だと思います。
実際のところ有名ながん関連学会ですら、証拠が乏しくも「勇気ある」同時併用治療を単施設の数少ない症例数でご発表というのをちらほらとお見受けすることがあります。
海外ですら出ていない内容で臨床試験でもなくいきなり実臨床で同時併用を行うなどということは危険を伴いますし、倫理委員会承認などの手続きを踏まずに行うのは厳密には許容されるものではありません。学会発表すらなされないケースは潜在的にはおそらく少なからずあると思われ、実際にとんでもない副作用が出ている症例がいるという噂を聞くことすらあります。
また、海外の臨床試験報告があったとしても、日本人でそのまま採用するのはどうかという意見も当然あります。まあ、(言い方は不適切ですが)それでもないよりはましなのですが…国内で出ている数少ない臨床試験だけを参考にすると、化学放射線療法が困難となるものも少なくありませんし。
ちなみに、日本放射線腫瘍学会の多くの先生方はマンパワーがとても少ない中、頑張って日本のがん患者さんに将来役立つであろう化学放射線治療の臨床試験をいろいろと企画・実行されています。
(長いので、次回に続くとしました…)
最近の抗がん剤治療は、各がん別に標準的な投与メニューが院内登録されることが一般的になり、普通の(まともな)病院での不注意な薬剤投与量ミスというのは激減してきたと思います。
一般に抗がん剤治療のメニューというものは、多くの専門の先生が集まって大がかりで厳しい規定をいろいろと作成し、人への投与に対する安全性や有効性を確認する臨床試験などで何年もかけて治療および経過観察をし、出てきた結果を国内外の学会や医学誌に発表するという、それはそれは大変な労苦を要する作業をいろいろと行って、ようやく新しい患者さんのために利用できるようになります。
また、放射線治療関連では、がんに対する治療効果をより高めるため、放射線治療をする期間にいろいろな抗がん剤を一緒に投与することがあります。最近では、いろいろながん診療ガイドラインで、抗がん剤と放射線治療の同時併用(同時化学放射線療法)が標準治療と評価されています。
ただそこで、以前から個人的に気になっていることがあります。同時化学放射線療法をどんな内容でもいいと拡大解釈してしまっている先生が、学会や院内カンファレンスなどでたまにいらっしゃるということです。
抗がん剤治療も放射線治療も、がんであろうと正常組織であろうとどちらも細胞に相当なダメージを与えます。そして、抗がん剤単独治療で保険承認されている投与量であっても、放射線治療との同時併用では細胞のダメージが単純な足し算以上の上乗せ効果が出る恐れがあり、放射線治療との組み合わせOKと気軽に言えるものではありません。照射範囲が大きいとなおさらです。
また、複数薬剤を組み合わることでより効果を高める有名な抗がん剤治療メニューもいろいろあります。たとえば、子宮がんにおけるTC(パクリタキセル:タキソール+カルボプラチン)療法、直腸がんにおけるFOLFIRI療法、膀胱がんにおけるGC(ジェムシタビン+シスプラチン)療法、などなど。そんな有名メニューでも、放射線治療との同時併用に関しては(最近まで)あまりきちんとした臨床試験報告がなされていなかったものが意外にあったりするので(しかも外国人仕様だけの報告)、注意が必要だと思います。
実際のところ有名ながん関連学会ですら、証拠が乏しくも「勇気ある」同時併用治療を単施設の数少ない症例数でご発表というのをちらほらとお見受けすることがあります。
海外ですら出ていない内容で臨床試験でもなくいきなり実臨床で同時併用を行うなどということは危険を伴いますし、倫理委員会承認などの手続きを踏まずに行うのは厳密には許容されるものではありません。学会発表すらなされないケースは潜在的にはおそらく少なからずあると思われ、実際にとんでもない副作用が出ている症例がいるという噂を聞くことすらあります。
また、海外の臨床試験報告があったとしても、日本人でそのまま採用するのはどうかという意見も当然あります。まあ、(言い方は不適切ですが)それでもないよりはましなのですが…国内で出ている数少ない臨床試験だけを参考にすると、化学放射線療法が困難となるものも少なくありませんし。
ちなみに、日本放射線腫瘍学会の多くの先生方はマンパワーがとても少ない中、頑張って日本のがん患者さんに将来役立つであろう化学放射線治療の臨床試験をいろいろと企画・実行されています。
(長いので、次回に続くとしました…)
最近、堅苦しい投稿ばかり続いていたので、コーヒーブレイクします。
「今朝、流し台で妻愛用のコップがリング状に破損していた。その瞬間を誰も知らないのだけど、なんと綺麗に割れたことか。。。(略)」
昨年のfacebookでお友達向けにこう投稿したら、同級生のイトーさんから「『愛妻用』だと思って、ほほえましいと思ってたら、ちょっと違ってた…」というコメントをいただきました。さらに同級生のヨシキ君からは「『用』を含めると4パターン浮かびますね。それぞれ奥深い意味がありそうです」との指摘を受けました。
読み方によっては、たしかに4パターンありそうな気がします。なお、あえて今回は、思いついた一つ一つの3文字熟語についての疑義照会は受け付けません。
【ひっくり返すと、意味が変わる漢字の熟語】というサイトがあるのですが、そこを眺めると3文字熟語では「中日本」と「本日中」、「名人芸」と「芸人名」など2つのパターンはいくつかあるようです。
http://q.hatena.ne.jp/1324569887
でも、この1年近く自分が調べ思いついた限りで、意味深な4パターンをもつ『妻愛用』という3文字熟語を超える秀作はでてきませんでした。これは、もしかしたらとんでもない3文字熟語かも!
どなたか他に思い浮かびますでしょうか?
しかし、接合部があるガラスでもないのに、写真のようにあまりにもスパっと切れていました。不思議な現象、何故??

(2012.5.xx facebookより加筆修正。イトーさん、ヨシキ君、無断投稿ごめんなさい)
「今朝、流し台で妻愛用のコップがリング状に破損していた。その瞬間を誰も知らないのだけど、なんと綺麗に割れたことか。。。(略)」
昨年のfacebookでお友達向けにこう投稿したら、同級生のイトーさんから「『愛妻用』だと思って、ほほえましいと思ってたら、ちょっと違ってた…」というコメントをいただきました。さらに同級生のヨシキ君からは「『用』を含めると4パターン浮かびますね。それぞれ奥深い意味がありそうです」との指摘を受けました。
読み方によっては、たしかに4パターンありそうな気がします。なお、あえて今回は、思いついた一つ一つの3文字熟語についての疑義照会は受け付けません。
【ひっくり返すと、意味が変わる漢字の熟語】というサイトがあるのですが、そこを眺めると3文字熟語では「中日本」と「本日中」、「名人芸」と「芸人名」など2つのパターンはいくつかあるようです。
http://q.hatena.ne.jp/1324569887
でも、この1年近く自分が調べ思いついた限りで、意味深な4パターンをもつ『妻愛用』という3文字熟語を超える秀作はでてきませんでした。これは、もしかしたらとんでもない3文字熟語かも!
どなたか他に思い浮かびますでしょうか?
しかし、接合部があるガラスでもないのに、写真のようにあまりにもスパっと切れていました。不思議な現象、何故??

(2012.5.xx facebookより加筆修正。イトーさん、ヨシキ君、無断投稿ごめんなさい)
私はまもなく医者になって4半世紀になろうとしていますが、これまで放射線治療装置を新規導入したばかりの施設のお手伝いをすることが何度かありました。
1月に書いたブログ「放射線治療は病院の看板になる?」でも触れましたが、放射線治療装置というのは初期導入費用が何億円もかかる代物です。通常、公立病院では税金の使い方の都合上で一括払いが多いようですが、民間病院では銀行からの借り入れやリースでの分割払いの利用が多いかもしれません。民間は赤字になれば経営破たんに即つながりますから、患者さん確保を含めて「機器代の回収」におのずと力が入りますし、スタッフの給与にも反映することがあります。
もちろん公立病院でも経営改善・集客を職員に呼び掛けますが、はっきり言えば患者数が増えようが減ろうが、新しい技術を取り入れようが今まで通り「普通の」ことをしていようが、公務員なので給料への反映はほとんどありません。かえって忙しくなるだけで「損」と思うスタッフも少なくないという話も、現場では時に耳にします。
以前、ある公立病院で特殊放射線治療システムを新規導入したことがあったのですが、その病院の当時の開設者が導入に積極的で、私の医局の元上司らと機種選定を進めていました。しかし、現場のスタッフ(の一部)にその情報があまり伝わっていなかったことや公立病院にありがちな仕事が増えることに対する「損」の意識があったことで、装置稼働前から上層部と現場の温度差がありました。
私は新しい装置が導入されてから診療支援をさせていただくことになったのですが、一部の放射線技師スタッフの意欲が乏しく、それだけならいいのですが向上心あふれる若手放射線技師たちの意欲・希望すら摘んでいました。私は何度かキレ(そうになり)ましたが若手のやる気に支えられてその最新装置を使った放射線治療を提供してきました。
しかし、新たな医師が着任するや装置稼働率がとたんに低下し、せっかくの高精度装置もほぼ「遺跡」と化してしまいました。
新規導入したはいいけれど予算の都合できちんとした保守契約(毎年の機器メンテナンス代)が結べなくなったり、常勤医がいなくなったりやる気のない医者が着任したりしてせっかくの装置が宝の持ち腐れになってしまうケースは少なくありません。装置そのものがないとどうにもなりませんが、機器を購入した時点から体制が代わっても運用可能な人的・金銭的環境整備も同じように重要です。まあ、道路などの公共事業に比べればもしかするとたいしたことない無駄遣いなのかもしれませんが、私の知る限りでももったいない事例は少なくありません。血税を使ってですから。
今後、普及が期待される公的な粒子線施設計画も同じことが起きなければいいのですが。。。
また、隣の病院に凄い放射線治療装置や備品が埋もれているのがわかっていても、自分の施設では使えず指をくわえてみているしかない(借りられない)なんてこともありました。転院して治療を受けてもらえばいいのですが、その施設での受け入れ態勢が必ずしも整っているわけではなかったりすることもあります。
公私施設に関係なく、装置の共用が可能となる方法・手続きってあるのかな?どなたかご存じでしたら教えてください。
実は現在、うちの病院では新しい放射線治療装置を増設中です。つまり、私はまた立ち上げ屋です(笑)。
そして一昨年に着任する以前から遺跡化している設備や機器がいくつかあり、まだ再生可能なものが少なくありません。マシンタイムやスタッフ数など利用したくてもその時その時に様々な制約があったり、担当されていた諸先生方、放射線技師さんたちの諸般の事情があったりして、だんだん遺跡化してしまったようです。正直、たしかに現在の照射件数と機器台数では、フル稼働は困難かもしれません。
人命を預かる高度な医療システムなので、精度を維持するにも当然お金がかかります。保守契約や維持管理費やマンパワーなどが整わず今後も潜在能力を充分に発揮できない可能性もあります。
ただ、新しい治療装置が入るとともにスタッフの増員が決まっていますし、既存装置にも少し余裕ができそうなので、可能な限り復元できるよう関係部門といろいろな調整や確認作業をしているところです。
新しい装置が稼働したり埋蔵文化財の復元が成功したら、可能な範囲でこのブログでもご紹介できればいいなと思っています。でも、そうすると私の所属が完全にバレますね…。
1月に書いたブログ「放射線治療は病院の看板になる?」でも触れましたが、放射線治療装置というのは初期導入費用が何億円もかかる代物です。通常、公立病院では税金の使い方の都合上で一括払いが多いようですが、民間病院では銀行からの借り入れやリースでの分割払いの利用が多いかもしれません。民間は赤字になれば経営破たんに即つながりますから、患者さん確保を含めて「機器代の回収」におのずと力が入りますし、スタッフの給与にも反映することがあります。
もちろん公立病院でも経営改善・集客を職員に呼び掛けますが、はっきり言えば患者数が増えようが減ろうが、新しい技術を取り入れようが今まで通り「普通の」ことをしていようが、公務員なので給料への反映はほとんどありません。かえって忙しくなるだけで「損」と思うスタッフも少なくないという話も、現場では時に耳にします。
以前、ある公立病院で特殊放射線治療システムを新規導入したことがあったのですが、その病院の当時の開設者が導入に積極的で、私の医局の元上司らと機種選定を進めていました。しかし、現場のスタッフ(の一部)にその情報があまり伝わっていなかったことや公立病院にありがちな仕事が増えることに対する「損」の意識があったことで、装置稼働前から上層部と現場の温度差がありました。
私は新しい装置が導入されてから診療支援をさせていただくことになったのですが、一部の放射線技師スタッフの意欲が乏しく、それだけならいいのですが向上心あふれる若手放射線技師たちの意欲・希望すら摘んでいました。私は何度かキレ(そうになり)ましたが若手のやる気に支えられてその最新装置を使った放射線治療を提供してきました。
しかし、新たな医師が着任するや装置稼働率がとたんに低下し、せっかくの高精度装置もほぼ「遺跡」と化してしまいました。
新規導入したはいいけれど予算の都合できちんとした保守契約(毎年の機器メンテナンス代)が結べなくなったり、常勤医がいなくなったりやる気のない医者が着任したりしてせっかくの装置が宝の持ち腐れになってしまうケースは少なくありません。装置そのものがないとどうにもなりませんが、機器を購入した時点から体制が代わっても運用可能な人的・金銭的環境整備も同じように重要です。まあ、道路などの公共事業に比べればもしかするとたいしたことない無駄遣いなのかもしれませんが、私の知る限りでももったいない事例は少なくありません。血税を使ってですから。
今後、普及が期待される公的な粒子線施設計画も同じことが起きなければいいのですが。。。
また、隣の病院に凄い放射線治療装置や備品が埋もれているのがわかっていても、自分の施設では使えず指をくわえてみているしかない(借りられない)なんてこともありました。転院して治療を受けてもらえばいいのですが、その施設での受け入れ態勢が必ずしも整っているわけではなかったりすることもあります。
公私施設に関係なく、装置の共用が可能となる方法・手続きってあるのかな?どなたかご存じでしたら教えてください。
実は現在、うちの病院では新しい放射線治療装置を増設中です。つまり、私はまた立ち上げ屋です(笑)。
そして一昨年に着任する以前から遺跡化している設備や機器がいくつかあり、まだ再生可能なものが少なくありません。マシンタイムやスタッフ数など利用したくてもその時その時に様々な制約があったり、担当されていた諸先生方、放射線技師さんたちの諸般の事情があったりして、だんだん遺跡化してしまったようです。正直、たしかに現在の照射件数と機器台数では、フル稼働は困難かもしれません。
人命を預かる高度な医療システムなので、精度を維持するにも当然お金がかかります。保守契約や維持管理費やマンパワーなどが整わず今後も潜在能力を充分に発揮できない可能性もあります。
ただ、新しい治療装置が入るとともにスタッフの増員が決まっていますし、既存装置にも少し余裕ができそうなので、可能な限り復元できるよう関係部門といろいろな調整や確認作業をしているところです。
新しい装置が稼働したり埋蔵文化財の復元が成功したら、可能な範囲でこのブログでもご紹介できればいいなと思っています。でも、そうすると私の所属が完全にバレますね…。
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