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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 施設によっては、長期連休による放射線治療効果への影響を考慮して、日々の1回線量を調整したり1日2回照射法(加速過分割照射など)にしたりと、連休前に治療が終了するよう臨機応変にやや定型的ではない対応をとることがあります。
 ある先生方からは、「標準治療から少し逸脱しているのでは?」と指摘されるかもしれません。たしかにそれも否定はできないのですが、全く何も考慮していないよりはまだマシかも、と個人的には思っています。ただ、さじ加減の程度は医師による個人差がそれなりにありそうですけれど。

 抗がん剤治療でも、患者さんの状態によっては通常量の何割か減らして投与などという「さじかげん」をしている先生方は少なくありませんね。標準治療からかなり逸脱しているケースも時に耳にしますし…。
 おっと、抗がん剤の投与量に関するお話は私の専門外ですし、今日はこれだけにしておきます。

 理想的には祝日は1日も休まず平日扱いで治療を行うということになるのでしょうが、現実的にはなかなか難しい部分があります。こんなことを書くと「患者さんの立場に立っていない!」と怒りの言葉をいただきそうです。

 しかし、どんどん高度化する放射線治療装置を扱える専門の放射線技師さんの人員確保や他の放射線部門も含めた休日当番体制、人の命を預かる精密治療機器の電源立ち上げから始まる種々の調整など、その施設で可能な体制を個別に構築せざるを得ないというのが現場の実情かと思います。
 常勤放射線腫瘍医が不在な病院では、放射線技師さんだけで休日照射を施行するというのは、もし治療途中で患者さんが急に体調不良になった時の対応など安全管理面を中心にいろいろな課題があります。休日当番の放射線治療専門ではない他の診療科医師が対応することになるのでしょうが…?

 病棟スタッフ数が制限された看護師さんによる放射線治療室への患者搬送にも問題点があります。外来照射患者さんは比較的元気なので、医療者側の「手間」はかかりません。「あの人、最近見かけないけど、病気で体調でも悪いのかしらね?」という病院の外来待合でのご老人たちの会話、なんていう笑えない話もあるくらいです。
 そもそも入院照射患者さんは原則体調が良くないからいるわけで、病室から放射線治療室まで車椅子やベッドで搬送する必要がある患者さんは少なくありません。中には遠方で通院できないからという理由で入院されている方もいますけれど。
 一般に、休日の病棟看護体制は平日より看護師数が少なく設定されていて、自力移動が困難な放射線治療患者さんを多く抱える所では、移送に伴い病棟そのものが手薄になり安全管理面での不安が生じます。

 あくまで医療者側の現状・課題だけを考慮した場合、治療日の規定を数値で明示した全国共通の休日照射ガイドラインを作成するのはなかなか困難かもしれません。

 以上、たぶん医療者目線で申し訳ございません。私は当時の研究班メンバーでも何でもなく、あくまで今の個人的な見解です。


 ちなみに今度の年末年始休暇は見事に9連休。さて、どうしたものか?と今から少し頭を悩ませています。
 連休をどう遊んで過ごすか、という意味ではなく…。



(2012.12.xx facebookより加筆修正)

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【2013/04/29 19:08】 | 放射線治療:一般
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 明日からゴールデンウィークですね。

 今年は連休の真ん中に平日が3日もあって、現在放射線治療を受けられている患者さん(や我々)にとっては例年より治療休止期間が少なく済みそうでやや都合の良い日程です。
 その3日間も休みとして大型連休化している企業も多々あることでしょう。なんとなく羨ましい気もしますが、私は人混みへわざわざ外出するのはあまり好きなほうではないですし、子供たちもそれぞれ予定があるので、個人的には「まあ、いいか」と思っています。


 うちの病院では以前から、大型連休対策として院内各部門のご協力を賜り、必要に応じて臨時休日照射日を設けています。また、主治医や患者さんご本人と相談して病状的に許容と判断し連休明けから照射を開始することにしたり、逆に連休前に終了できるような照射法を採用したりしています。
 全国の放射線治療施設でも、大型連休の時には施設毎に様々な対応がとられていると聞きます。


 現広島大学放射線治療科教授の永田靖先生が研究班代表者として2004年の日本放射線腫瘍学会(JASTRO)誌にご発表された『休日照射に関するJASTROガイドラインの作成』という論文があります。公表から数年が経過しましたが、今でも日本の休日照射に関する唯一の目安だと思います。
 ちなみに、ある先生から伺いましたが、この論文はJASTRO公式のガイドラインにはなっていないようです。まあ、そもそもガイドライン自体が自主基準であり、法的な強制力を持つものではないらしいのですが。

 この報告でも記されていますが(添付写真)、扁平上皮癌(主な頭頚部癌を代表として肺癌、食道癌、子宮頸癌など)を放射線治療だけで根治治療を行った場合に、予定の照射期間が延びると治療効果が低下する恐れがあることが知られています。総治療期間に2週間以上の違いがあると生存率にも差が出るという信頼性の高い海外の報告もあります。

休日照射

 ここで気をつけたいのは、2週間で差があるからといっても13日間の休止なら大丈夫で14日間だと駄目ということではなく、2週未満と2週以上で治療患者さんの集団を分けたら「統計学的な数字の差が出た」だけのこと。13日間と14日間の休止の比較というのは1日だけ休止と予定通り治療の差と(およそ)同じ1日の違いであり、集団として見ると日に日に少しずつ影響が出る可能性があるということのようです(個々について厳密なことはわかりません)。

 これは他の治療成績を評価する際も同様で、最近では福島原発の低線量被曝でも似たような議論がなされています(○○ベクレル以上とか)。抗がん剤と一緒に放射線治療を行うとその差ははっきりしなくなり、逆に治療中の副作用が増強される影響を緩和するために、放射線治療を途中で1-2週休止するメニューをあえて選択している臨床試験すらあります。

 一方で、乳がんの術後予防照射や前立腺がんなどは連休による治療中断の影響が出にくいので対応は「施設に委ねる」(事実上許容)、となっています。とはいえ、前立腺がんでも1日遅延するだけでホンの少しですが治療効果(生存率ではなく腫瘍マーカー)に影響が出るかもしれない、とする報告も最近ではみられます。

 大型連休による放射線治療効果の影響を考慮して、連休期間中に休日照射日を設ける施設があり、また放射線治療に限らず病院全体で大型連休期間中に平日体制を何日か採用する施設もあります。通常でも土曜日を平日診療としている施設もあります。


 頑張って何日か休止日を減らせば問題ないのか。休日照射を1日追加努力するだけでも許容できるものか。中途半端な連休をはさんだ治療を避けるために、年明けから治療を開始するほうがよいとも聞きますが、逆に治療開始が遅くなることに関してどこまで許容されるものなのか。私の知る限りこれらもあまり明確ではありません(ちなみに、乳がん術後照射の開始目安時期に関してはガイドラインに記載があります)。


(まだ続くので、Part2へ…後日)


【2013/04/26 00:23】 | 放射線治療:一般
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 IMRTや粒子線治療といった高精度放射線治療は、がんに放射線を集中しやすい点で腫瘍縮小効果や副作用の軽減が期待されますし、論文やメディアなどでその有効性が多々報告されています。

 しかし、いくら優れものの放射線治療装置で技術的に正確な放射線治療が可能だとしても、そもそもの病気の部分がきちんと治療計画画像で捉えられていなければ(≒ターゲット設定が正確でなければ)、治療効果が不十分となりがち、いや逆に照射の切れ味が良いだけにかえって病巣辺縁から再発する危険が高まる恐れもあります。


 以前、某施設で施行された化学放射線療法の臨床試験に関連するご講演があり、「ターゲット設定にも放射線治療の施設間格差がある」と講師の先生がお話されていました。質疑応答で具体的な部分を質問させていただいた所、「きちんとした造影CTを撮影していても病巣の囲み方が施設ごとでかなり違った」そうなのです。
 詳細な放射線治療範囲に関する規定が定めてあって、かつ〇×大学とか△□がんセンターといった全国でも有名な施設の放射線腫瘍専門医ばかりが参加する臨床試験『であっても』バラつきが出るということは、普通の放射線治療ではもっと…?


 前立腺がんの放射線治療計画をする時に、通常は前立腺全体を治療範囲に設定します。前立腺は膀胱や直腸に挟まれたクルミ大の骨盤内臓器です。
 数年前ですが、九州の25名の放射線腫瘍医に同じ患者さんのCT上の前立腺を線で囲んでもらった調査結果を解析された九州大の中村先生から論文報告がありました。それによると、頭尾側長さで2倍以上(21~54mm)、体積に至っては4倍以上(23.8~98.3cm3)も医師間格差があるという結果だったそうです。また 治療医経験年数10年以上のベテラン医師ほど囲む範囲が広めだったとも報告されています(p=0.067)。

 繊細で丁寧と評判の(?)日本人医師たちなのに、比較的見分けやすいと思われていた前立腺(がんではなく臓器全体)の囲み『ですら』これだけの違いが出るのか!と 当時の私には結構衝撃的な報告でした。九州人がアバウトだとは思えませんし。ただ、MRIを参考にしていないこと、造影検査をしていない調査であること、2007年ごろと少し前であることから、今と状況は異なるかもしれません。
 当時の年配の先生がたはコンピュータ操作の不慣れや(悲しいかな他人事ではないのですが)老眼の影響で広く囲んでしまっていたのかもしれません。いずれにせよ専門の医師であっても囲いの格差は意外にあるかも、と改めて認識させられた論文でした。

 ちなみに外国からも似たような論文報告がでています。


 最近では、国内外の学会などから部位別の輪郭描出アトラスが論文として発表されるようになり、定型的なターゲット作成に関してはだんだん標準化されてきています。しかし、これも微妙にバラつきがあったりして、逆に頭を悩ませることがありますが…

 我々が時々参考にする教科書でも、著者によって結構ターゲットの囲み方が異なっていたりします。どの本のどの先生の、という具体的な内容はここでは(あえて)触れませんが、結構違います。几帳面な先生がいれば、大ざっぱな先生もいて…。CT治療計画世代の比較的年齢が若い先生ほど『丁寧』な印象です。

 研修医の先生は、そういったアトラスや教科書と治療計画CTとをにらめっこしながらそのまま「模写しています」。


 X線などを使った画像診断というのは未だにせいぜい数mmレベルのがん病巣の描出能力しかなく、しかもがん以外の変化、例えば炎症との鑑別も容易ではない場合が少なからずあります。MRIやPETなどで総合的に判断しますけど、現状の画像診断は病理検査(顕微鏡で細胞ががんなのかどうかを確認するやつ)の代わりにはまだなれません。
 機械の精度同様に病巣描出も厳密に行うべきなのですが、あまり厳密過ぎると却って仇となる(≒治療が失敗する)恐れもないとはいえません。豊富な経験に裏打ちされたPC操作に疎いご高齢の先生方の「こんな感じ~」的な囲みの方が、実は結果的に正しかったということも?

 私は一応、「きちんと」ターゲットを囲ったほうが確率的には局所制御率は高く副作用は少ないはず、と信じているほうなのですが…


放治教科書



【2013/04/25 00:11】 | 放射線治療計画
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 昨夜は歓迎会で、今夜は以前同僚だった女医さんとのメールで血液型の話題が続いたので、これもまたfacebookに去年投稿したものを改変したものですが、今日がブログに出す日かなって勝手に決めました。本当は、ターゲット(2)を出さねばと思っていたし話題もあるのですが、ここ2週近くの間あまり時間的余裕がなく、場つなぎ的に血液型投稿をブログで再掲載することにしました。

 一度読まれた方は飽き飽きしていると承知していますが、どうぞご勘弁ください。去年のFBネタ、まだまだあるのです…(笑)

 ここ2-3年のABO血液型の論文、中国系の著者のものが多いような気がします。改ざんはない論文ばかりと信じたい所ですが…?


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 私事ですがAB型です。血液型性格分類で二重人格、奇人変人が多いとされるAB型です。Wikipediaによると「血液型性格分類には科学的な根拠が認められず、統計的に有意な差も認められない事から、誤った説であると断定できる。いわば迷信、擬似科学または占いといえ、血液型占いとも呼ばれる。それにも関わらず、血液型と性格に関連があるかのように決めつける差別問題が存在する血液型による差別や偏見をブラッドタイプ・ハラスメントと呼ぶ」らしいです。

 昨年、「ABO血液型が腎臓がん術後の予後予測因子」という論文が紹介されていました(Kaffenberger SD, et al. BJUI, 2012)。冗談みたいな論文…と思いつつ、なんとなくPubmed(医学論文検索サイト)で「ABO がん(cancer) 血液(blood)」で検索してみたら、なんとびっくり、ABO血液型とがんに関連する論文、いろいろあるじゃないですか!胃がん、すい臓がん、絨毛がん、乳がん…。すい臓がんはあのJNCIに掲載された疫学論文もありました(Wolpin BM et al., 2009)。絨毛がんに至ってはWHOの予後スコアの因子だったようだし…最近のmodified WHO scoreでは根拠薄弱ということで残念ながら除外されてますけど。

 どの論文もまじめに分子生物学的な考察までしていて、凄いな〜と思ってしまいました。で、最近の報告の傾向はO型が良さそうというものが多いようでした。A抗原、B抗原の保有の順に悪そうです。JNCIの報告では、すい臓がん発症率がO型と比較してA型は32%、AB型は52%、B型は72%も高かったそうです(この論文の調査対象は医療者に限定されていますが)。国内でも愛知県がんセンター研究所疫学予防部が今年ABO血液型と膵臓がん発症リスクの関連性についての検討で「遺伝子型OO被験者と比し、オッズ比で他はほぼ1.5以上。BBに至っては3.28と有意な相関があった」と報告しています。
 ちなみに米国心臓協会学術集会2011でハーバード公衆衛生大学院からは、AB型の人は脳卒中になりやすいなんていう報告もなされているようです。知ってました?私って暇人と思われてます??


 どうでもいいことですが、私の周りにはAB型が溢れています。我が家の過半数はAB型、大学の放射線治療科も中堅以上の過半数がAB型、さらに関連病院の科長クラスはほとんどAB型(?)、21世紀に入ってからのうちの病院の放射線治療科長は全員AB型。
 AB型って全体の1割だったはずですが、ここまで来ると不気味です。類は友を呼ぶ、とは言いますけれど…。

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 ちなみに、今日私にメールしてくださった冒頭の女医さんも「やっぱり」AB型でした。某大学の教授は「AB型はキチガイばかりだ!」とおっしゃっていたとか…?


【2013/04/21 00:02】 | 医療全般
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 うちの科に今月から、大学人事による交代で新しい先生が着任されました。放射線腫瘍専門医の資格を持っていらっしゃるうえ、他県のがん専門病院勤務もご経験されているので、私にはとても勉強になりますし大変な戦力であります。今日もある患者さんの治療計画で、放射線治療すべき部位(ターゲット)について二人でいろいろ語りました。

 学会などでの情報交換というのは治療成績とか総論的な治療計画内容の話とか、具体性にいささか欠けた議論になりがちだと思っていますが、個々の患者さんの具体的な治療計画に関する専門医同士の情報交換というものは、また違った刺激や向上が得られます。
 踊る大捜査線での織田裕二さん演じる青島俊作の名セリフ「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」ってやつに相通じるものでしょうか(違うかな…?)

 そこで今日は(やっぱり以前のFBにも投稿した内容ではあるのですが)、これからのブログ投稿に向けての準備といいますか同業者以外へのイントロといいますか、放射線治療計画におけるターゲットについて、同業者から学び自分なりに感じてきたことを手短に『あえて』書かせていただこうと思います。
 
 とても偉そうな文章かもしれませんが、どうぞお許しくださいませ。


 最初に基礎情報として、CTを用いた一般的な放射線治療計画のターゲットの定義について、同業者以外の方々用に放射線治療計画ガイドライン2013:総論の一部を***間に改変引用させていただきます。これはあくまで用語の定義で、同業者には特におせっかいな記載ですが…。

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 最初に治療計画コンピュータ上のCT画像で、ターゲットを決定します。写真のごとく、ターゲットはICRUレポート(JIS規格みたいなものと思って頂ければ…)に規定されている
・肉眼的腫瘍体積(GTV ; gross tumor volume)
・臨床標的体積(CTV ; clinical target volume)
・ITV(internal target volume)
・計画標的体積(PTV ; planning target volume)
に分けられます。

 GTVとは、画像や診察で確認できる腫瘍そのものを意味し(だからGTVだけT=tumor=腫瘍、他はtarget=標的)、これには原発巣、リンパ節あるいは遠隔転移巣が含まれ、GTVは原則『治すために絶対に治療範囲に含めなければいけません』。癌をとった後の術後照射などの場合は、GTVがないということもありえます。
 CTVとは、GTVおよびその周辺の顕微鏡的な進展範囲、あるいは所属リンパ節領域を含んだ照射すべき部分。「一部は目に見えてないけど小さな癌がとてもありそうな近隣の危険範囲」のことです。
 ITVとは、CTVに呼吸、飲み込み、心臓の拍動、胃腸の蠕動など、体内臓器の動きによる影響を含めた標的体積を意味します。「CTVは静止画像、ITVは動画」と思って頂ければいいかな?ここまでは「人間の身体の中」のお話でした。
 PTVとは、「身体の外でのズレ・誤差」のことで、毎回の照射における機械などの設定誤差を含めた標的体積を意味します。

 以上より、根治的な照射ではGTV ≦ CTV ≦ ITV < PTVの不等号は常に成立します。

放治GL総論より

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 放射線治療を志す若手の先生方ならこの定義はさすがに皆さん良くご存知でありますが、わかりました?


 ここから先は私個人のコメントです。

 特にGTVやCTVですが、「その中でも」優先順位設定というのがあると思います。放射線腫瘍医のお仕事として大事なポイントの一つでしょう。

 例えば、耳鼻科の癌ではなるべく臓器の機能温存(≒元のままに残すこと)が望まれますが、そこで原発巣とリンパ節転移は同じGTVでも扱い方が多少変わることがあります。原発巣はのどとか口の中とか、手術で摘出しまうと発声や飲食など後々の日常生活に大変不具合がでてしまうので『絶対』照射範囲に入れなければいけません。しかし首のリンパ節転移は正常組織の副作用、特に後遺症との兼ね合いなどで照射範囲から不幸にして外れてしまっても、その後に手術切除できれば生活の質に対する影響は少なめに済みます。
 もちろん、首のリンパ節転移に対する放射線治療がいい加減(悪い意味)でも良いとしているわけではありません。あくまで止むなくです。

 CTVも同じで、癌が絶対にあると確定している部分ではないとは言うものの本当にヤバそうな場所は何とか治療範囲に含めるようにすべきですし、逆に危険度の少ないところは優先順位で緩め設定も(止むなく)視野に入れることになると思います。
 で、絶対的なGTVよりはCTVは優先順位が落ちます。

 そんなの当たり前のことでしょ?とも言われそうな気がします。


 ところが、若い先生や学生さんなどに治療計画をしてもらうと、アニメーション画像だけになった段階でGTVもCTVもPTVも全て『横一線の意識』となってしまい、『癌が確実に存在する一番重要なGTV』が照射範囲から外れそうだったり線量分布(放射線の量)が一部甘かったりしてもあまり気にしなかったり、それほど気にしなくてもよさそうなPTVの分布に妙なこだわりをもって無駄な時間を費やしてしまうことがあります。
 臨床情報の確認も不十分なまま…。

 どうもコンピュータ操作にはまり込むと、放射線治療でどこを最も治さなければいけないのか、つまり画面の裏にいる実際の患者さんが本当に困っている、あるいはこれから困る病気の場所が見えにくくなってしまう傾向が、私の周りの一部(若手の)先生方に見受けられるような印象を持っています。

 「放射線治療計画はコンピュータゲームじゃないよ」が少しだけ私の口癖になってきました。


 IMRTなどで工夫すればそんな問題自体起きないよ、とおっしゃる一部の先生もいそうですが、それはまた別の問題ということでご容赦ください。


 一般の方にはやっぱり解りにくい文章だったでしょうか??


【2013/04/08 20:54】 | 放射線治療計画
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 今年(2013年)度中に新しい放射線治療装置とPET-CTがうちの病院に導入されるとあって、今回なんと5名もの新人(+1名の実力派)診療放射線技師さんが新採用となりました。全員国家試験も無事合格して、今週から勤務しています。
 私がお医者になってから四半世紀近く経ちますが、新しくできた病院でもない所にこんなに新人さんが同時採用になったのはたぶん初めてかも(大学病院の時にあったかな…?)。しかも正職員で!
 
 職場内もなんとなく爽やかで緊張感ある空気がただよっていて、いい感じです。


 私はこれまでいくつかの病院で一人常勤または非常勤放射線腫瘍医として長年勤務してきましたが(某大学時代は4年弱しか大学にいなかった地方巡業メンバー)。そこで常々大きな課題の一つと感じてきたことはスタッフの入れ替えがないことによる「空気の澱み」でした。
 
 医者は私のように医局人事でころころ異動があるため適度に人の入れ替えがあり(まあこれも善し悪しですけど)、また同じ病院内とはいえ看護師さんたちも定期的に異動があるわけですが、診療放射線技師さんは一度病院に入職すると一生そこで移動なしという場合が少なくありません。元々はきっとやる気も元気も能力もある方々だったはずなのに、公務員的な職場環境の影響なのか年齢を重ねるごとに気力(や体力)が低下してしまい、家庭や趣味のご都合などもあいまって、9時5時&必要最低限業務を順守する方が次々と育成されてしまうところを目の当たりにしてきました。

 もちろんそうでない方々も多々知っています(そちらのほうがずっと多い!と、信じてます)。まあ別に、ご本人だけの問題なら人それぞれの価値観ですしある意味仕方ないとは思うのですが、せっかくやる気満々で仕事をしている、あるいはしたいと思っている若手有望株の努力や気力まで「先輩」の言動で潰しにかかってしまうケースが少なからずありました。タチが悪いことにご本人が気づかずにそうなっている場合もあり…。
 こういう空気が蔓延している環境で惰性の業務をしていると、新たな装置等が導入された時などにいろいろな業務チェック機構が効きにくくなり、積もり積もって種々のトラブルが起きやすい雰囲気になるということを肌で感じてきました。これに関しては私を含めてそれ以外の問題もいろいろありますが…。

 (同世代の方にしか通じないかもしれませんけど)初期の頃の『3年B組 金八先生』というTVドラマ内でも話題になった『腐ったみかんの法則』という表現があります。クラスの中の生徒の一人がぐれてしまうと、周りの生徒に波及してクラス全体がぐれてしまうということを、みかん箱の中で一つのみかんが腐ることで周りのみかんをどんどん腐らせていくという様に例えたやつです。これは大人になってもあるんだな、ということを時々実感してきました。
 ただ、その逆パターンもまたあり、バイタリティーあふれる人(私ではありません…)が来て職場内の空気が少しずつ別の方向に変化していく、というのも経験しました。類は友を呼ぶというか、朱に交われば赤くなるというか。どこの集団でも同じようなことは起きているのでしょうね。


 せっかく若くて元気な新人さんがたくさん入ってきたのに、不謹慎というか興ざめというか、不相応な去年のフェイスブック修正投稿を持ち出してきてしまったかもしれません。うちの治療スタッフはみなさん日々頑張ってくださっていますし、創意工夫で業務効率を改善して「無駄に」夜遅くまで仕事を持ち越すこともあまりありませんし(医者の業務効率は棚に上げ…)、でも時間外の緊急照射には即座に対応してくれるし、今の私は(お世辞抜きに)恵まれた環境にいると思います。

 とはいえ、やっぱり慣れた環境にこもってしまうと、だんだん見えなくなってしまうことが少なくありません。多少の空気というか、場合によっては血の入れ替えは必要でしょう。そういった点で、今回の新人さんたちには元気な新しい風をどんどん吹き込んでいただいきたいと期待してますし、より活気ある職場になっていけばいいな、と個人的にも大いに楽しみにしています。


 私もただの傍観者になっていてはいけない!

 若手の意欲を潰さないように…いや、元気をもらいにいかないと…。



(2012.7.xx facebookから一部引用)


【2013/04/03 20:28】 | 医療全般
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