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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 去年のことですが、娘が通学している高校で開催された文化祭みたいな催しを妻と二人で見に行ってきました。
 当初は妻が友人と行き私は家で留守番の予定だったのですが、友人の都合が悪くなったとのことで私は運転手兼任で同行となりました。入場可能なのは父兄関係者のみだったらしいのですが、おかげで私は約30年ぶりに(ほぼ)女子高の門をくぐりました。
 高校の時に、中学の同級生に会うためドキドキしながら女子高の中に入って以来のことでした。不法侵入はしていません。

 その帰り道、早めの昼食をとろうと、車を止めた私の出身校である某大学病院前の焼肉系のお店へ久しぶりに妻と二人で入りました。ここ、ネットではあまり評価が高くないようなのですが、私はたぶん医学生時代から食べ慣れていたからか、たまに行きたくなります。その日は私たちが一番客でした。

 定番の定食を頼むと、しばらくしてお店のおばちゃんがスープをお盆にのっけて持ってきてくれました。そして親指の第1関節まで浸して私の前にお椀を置き、最後に私のおしぼりで自分の親指をさっと拭って立ち去りました。なぜか湧き上がる笑いを必死にこらえつつ、味のしみ込んだスープを堪能しました。

 帰りの車中で、妻の実家近くにある某ラーメン屋さんを思い出し、二人でしばし笑いが止まりませんでした。このラーメン屋さんの名物ばーちゃんも、いつも熱いラーメンどんぶりにどっぷりと親指を浸して運んでくれました。
 この手のお店は賛否はっきり分かれそうです。おばちゃんのゆびを特製調味料として味わえるかどうかでしょう。


 別のお店の話もついでに…

 母校の某大学病院からかなり離れた民家の中に、小汚い(失礼!)ホルモン焼のお店があります。某大学病院(の一部?)では知る人ぞ知る超有名店です。
 ここのおかみ、焼き方や食べ方に超こだわりがあって、自分の店の食べ方に従うまでどんな客にもしつこく指示するし平気で怒鳴ります。口も態度も正直言って良いとは言えません。特製ホルモンは大きなバケツ容器にどさっと入っていて、七輪できちんと炭火焼するとはいえ、パッと見「衛生的に大丈夫なの?」って感じもします。

 実はこのお店、はまって足しげく通われる教授さん(と、お供する医局員や看護師さん、秘書さん)たちって結構いらっしゃるんですよ。仕事ではSの人たちが、皆さんここではMなのです(笑)。
 まあ、確かに美味しいと私も思いますけれどね~


 今日紹介した焼肉系のお店もホルモン焼のお店も、表面上の接客面ではお世辞にも優れているとは思えません。でも私にとってはあまり気にならず、むしろそういうもんだって思っているお店です。行き慣れているからかもしれません。
 でも、どちらのお店も、嫌いな人は「全くダメ、受け付けない!」と言ってます。

 前回のブログで私が初恋の味と揶揄したあの焼肉系のお店も、もしかすると同じことなのかもしれません。来店したタイミングやその時の印象で、その人が感じるお店のレベルもイメージもきっと変わってくるのでしょう。
 改めて思いましたが、接客、接遇って『生もの』ですね。

 医療の現場も同じ。まして、人の生死がかかっている「修羅場」なわけで…


 また行きますね、おばちゃん!


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【2013/05/28 20:11】 | 趣味
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 昨日午後、仕事帰りにランニングしその途中で電気屋に入って店内を散策していたら無性に腹が減ったので、以前からまた食べに行ってみたいと思っていたある焼肉系のお店にぶらっと立ち寄ってきました。
 そこは、十年くらい前に二次会で諸先輩方と入って皆で「美味い美味い」と呑みながら言っていたおぼろげな記憶が残り、その後は立ち寄っても予約を取ろうとしてもいつも「満席で…」と断られ、私の中でいつしか淡い初恋のような想い出のみが残るお店でした。

 今回は私一人だったこともあって、少し待っていたらカウンター席が空いて運良く座れました。ただうっかり財布の中身が不足していることを着席直前までど忘れしていて、年配の親方らしき人に「カードは使えますか?」って聞いたら「ダメ」って言われ、やむ無く一旦外に出てコンビニでお金をおろしてきました。
 再入店したらその親方らしき人に「こいつ大丈夫か?」的な目線で見られました。たしかにリュックに少し汗かきジャージ系の変わったオヤジでしたし、周りはスマートな若い社会人系客ばかりでしたが…。

 金髪系の若いおにいさん店員さんが「ご注文は?」とぼそっと聞くので、生ビールと名物焼肉を注文しました。店員さんは他にも若いおねえさんが数名いて、一人はカウンターの目の前にある厨房で親方らしき人と談笑してました。

 ビールが半分以上なくなった頃、待ちに待った焼肉が届き、早速一口。しかし「あれ〜、こんな味だったっけ…?」
 初恋の味ってこんなもの?って気分と同じような(?)感傷に浸りつつ、きちんと完食いたしました。

 食事終了後、若いおにいさん店員がぼそっと小さな声で「お会計です」とレシートを手渡したので、おろしたての現金で支払を済ませました。お店を出るとき、誰かに「ありがとうございました」って声をかけてもらえると、嬉しかったんだけどなぁ。

 カウンターに座って飲食すると、いろいろな接客の仕方が見えて勉強になります。もしかして接客で味って変わるのかな?と少しだけ思いました。まあ、美味しくないものはいくら接客態度が良くても美味しくはならないでしょうけれど。


 医療の現場もきっと同じで、表面上の接遇が良くても、ヤブ医者ではいけないと思います。ただ、ヤブ医者かどうかがわからなければ、そのほうが良いっていう人もいるようです。知らぬが仏ってやつ…

 接遇が良くて診療内容も良いのがベストですが、なかなかそうならないことがまれならずあります。もし接遇は最高だけど診療はヤブ、または診療の腕は良いけど接遇が最悪、の二択があるとしたら、どちらを選びますか?


 地元では、隠れた名店って言われているみたいなんだけどな〜



おばちゃんのおやゆび(2)へ続く…


【2013/05/27 00:01】 | 趣味
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 少し前のことになりますが、うちの病院に今度導入予定している特殊な高精度放射線治療装置の実習のために、東京都立駒込病院さんを数日間訪問し実りある研修(といろいろな懇親会)をさせていただきました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。
 駒込病院さんには、Vero 4DRT/MHI-TM2000、CyberKnife、TomoTherapyといった最先端のX線治療装置がいろいろ設置されていて、まるで学会展示場のよう。もちろん見学(そして記念撮影も)させていただきましたけれど、同業者としては何ともうらやましい限りでした。

 これらの高精度放射線治療装置はみな、治療台の上でCTなどを撮影してがん病巣を画像で「直接」確認しながらより正確に放射線を照射できる優れもの技術を搭載しています。画像誘導放射線治療(Image-Guided RadioTherapy: IGRT)って表現しています。
 IGRTについては、私もそのうち気が向いたら何かブログに投稿するかもしれませんけど、とりあえずきちんとした内容はネットや書物などでご確認ください。


 普通の(という表現が良いかは不問で…)放射線治療を行う際には、ほとんどの患者さんに対して治療位置確認のため、事前に治療位置近傍の皮膚面にマジックやインクなどで線などの印を書かせていただき、治療期間中その印を保持します。頭や首などの治療ではお面をつけたりするので直接身体に印をつけなくても済むのですが、やはりお面には書きます。

 昨年のうちの病院での出来事なのですが、元々の皮膚病などの影響があって放射線治療に必要な皮膚の印がすぐに消えてしまうため、毎日の放射線治療に苦労していた患者さんがいらっしゃいました。何か良い工夫はないものかと全国他施設の放射線治療の諸先生にメーリングリストなどでお問い合わせをしましたところ、刺青(いれずみ=皮膚への色素注入)はどうかとのアドバイスもいただきました。

 私がまだ放射線腫瘍医になりたての頃、とある病院で当時の上司に指示を受け言われるがまま注射器を使って皮膚に色素注入をした経験はありました。ただ最近は、下手に人様の身体へ「勝手なこと」をするのはいけないと指摘されそうなご時世ですし、医療行為として大丈夫なのかいささか不安があったので、去年受け持った患者さんに関しては、日々のこまめな注意で従来の皮膚マークのままでなんとか治療を乗り切りました。


 その後、私の友人のFacebookでたまたま刺青の話題があり、そこで関西のある先生から、すでに平成13年に「医師でなければ保健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第17条に違反するものとして『針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為』がある」との厚生労働省からの通達(医政医発第105号)が出ているという情報を教えていただきました。
 つまり、医師なら合法的に他人の身体に刺青をいれてよいと国が認めているということになるようです。照射範囲の印しつけに関しても同様に。
 もし解釈が間違っていたら何とぞ教えてください。m(_ _)m


 IGRT技術はどんどん進化していますので、将来は皮膚に刺青はおろか、マジックなどの印をあえてつける必要などなくなる時代が来るのかもしれませんが、今の所は残念ながらまだのようです。あの駒込病院さんですら、必要に応じて印を身体に書いていましたし。


 しかし、刺青って医者の資格もっている人なら他人につけてもOKとはね~~~。副業になるかな?(冗談です)



刺青厚労省通知

【2013/05/24 19:56】 | 放射線治療:機器・技術
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 先日、うちの病院にダ・ヴィンチのデモ機が来て、私も遊ばせてもらいました。最新鋭の体感ゲーム機を操作しているみたいで、とても楽しかったです。噂によると外科系学会のブースでは順番待ちがあるそうですが、今回は結構空いてました。
 うちの病院の先生たちはあまり関心がないのか?それともすでにどこかで並んでお試し体験が終わっていた人たちばかりなのか??業務が忙しすぎて体感する時間などとても確保できなかったか???
 私の場合は下の先生が事前予約しててくれてたので、偉そうなことは書けないのですけれど…

【Wikipediaより引用】 
 ダ・ヴィンチ(da Vinci)とは、米国インテュイティヴ・サージカル社が開発したマスタースレイブ型内視鏡下手術用の医療用ロボットのda Vinci Surgical System(ダ・ヴィンチ・サージカルシステム、ダ・ヴィンチ外科手術システム)のこと。内視鏡下手術用ロボットの代表であり、患者への低侵襲な手術を可能にする。2000年7月にアメリカ食品医薬品局(FDA)より承認。日本では2009年に厚生労働省薬事・食品衛生審議会で国内の製造販売が承認された。日本では大阪市に本社を置く医療専門商社の株式会社アダチが総代理店を務める。


 ダ・ヴィンチの登場で、技術的には手術を遠隔操作でもできるような時代になりました。外科医ではないのでよくわからない部分がありますが、インターネットにつなげば誰でも操作ができてしまうので、遠方にいる有名な外科医、いや医師の名を借りた素人代行が手術をすることも物理的には可能です。
 まあ、実際のところ現行のダ・ヴィンチは手術室内でしか操作できない仕様になっているし、医療や倫理上の諸問題が多すぎて海外でも「遠隔」手術は行われていないとのことですが…。

 一方、インターネットや電話を利用した遠隔診療支援は、病理や放射線画像そして僻地診療での問診など診断部門ではすでに国内でも普及し、一部ビジネス化(クリニック開業など)しています。実は放射線治療計画も技術的にはコンピュータでの遠隔操作ができるので、遠隔放射線治療計画支援用の商品というものも国内販売されています。

 放射線治療計画を遠隔支援で行うことに関しては、医師法第20条 無診療治療等の禁止など、画像診断と同じレベルで扱うことが困難な部分があります。日本放射線腫瘍学会では平成22年に遠隔放射線治療計画ガイドラインを公認し、HP上でもPDFファイルをダウンロードできるようになっています。
http://www.jastro.or.jp/guideline/

 現状における日本の遠隔放射線治療計画支援というのは、今の所は非常勤支援施設に対する支援、または専門医ではない放射線腫瘍医に対する補助的支援が主体かと思われます。
 臨床試験などのデータ集積・解析、施設間の治療内容相互チェック、医療スタッフに対する教育・訓練を行うことも広義の遠隔放射線治療計画支援に含まれ、臨床試験でのデータ集積は最近オンライン登録もなされるようになってきています。直接患者さんの治療には影響しないし、診療内容の質的均てん化の面で今後が期待される部分です(と数年前から思いながらも、なかなか普及していないのですが…)

 
 いずれにせよ、コンピュータの裏で困っているのは生身の病んだ人間(患者さん)です。「コンピュータ(≒治療計画)は好きだけど人を診るのは嫌い」という若手放射線腫瘍医が増えないことを祈っている、PC操作がさほど得意でないオヤジ医師でした。



【追記】
「放射線腫瘍医を生めや増やせや」と日夜頑張っておられるJASTROの諸先生方には、最後の文章は不快かもしれません。「お前だって人がいなけりゃ困るだろ!」…その通りでございます。


【2013/05/19 00:01】 | 放射線治療計画
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 『小さなミスをおかす人には、大切な仕事は任せられません。

 失敗は誰にでもありますが、ミスは【緊張感と責任感】が強くない証拠であります(ちなみに経営者にとっての失敗は、成功のもとではなく倒産のもと)。上司への報告・連絡・相談【報連相】のコミュニケーション不足をはじめ、取引先との電話やメール、資料のやりとり等で、ミスをおかす人は信頼できません。
 なぜなら【小さなミスをおかす人は必ず大きなミスをおかしてしまう】からです。

 仕事とは【目の前のモノをピカピカに磨きあげること】課題を後回しにせず敏速におこなうこと。一切の【…まぁいいか】や【たぶん…だろう】を排除すること。指示されたことだけをやるのではなく、常に【ベストとは何か!?】を追求し、必要であればこれまでの概念は捨てさること。

 そうしたこだわり【情熱+繊細さ】を持つ人こそが、ミスを無くし大いなる成果をあげる。まさに僕が求める、プロフェッショナルの人財像であります。』

******************************

 上記『』内の文章は、株式会社ネクシィーズ 代表取締役社長の近藤太香巳氏が昨年9月に投稿されたFacebook記事です(無断引用、おわび申し上げます)。さすが(2004年当時)最年少で東証一部上場の大企業を創業された方だけあり、最後のプロフェッショナル像の記載などはまさしく正論だと思います。
 言葉の定義ですが、ミス⇒不注意や努力不足による過失・過誤、失敗⇒結果として上手くいかなかったこと、でしょうか?

 ただ、最初の一文が少し引っかかりました。
大切な仕事は「全て」任せられない、という意味なのか?
「何が」大切な仕事なのか?も。


 医療現場は人命にかかわるだけに大切な仕事でのミスが許されないのですが、(特に田舎の病院など)限られた人的資源下では、今いる人財を活用する、また教育するために「ある程度」任せることも必要になります。正直、無い袖振れません。丸投げするのではなく教育・指導を行った上で、周りのバックアップ下で「ある程度」任せ、それでも同じようなミスを繰り返すのであれば、その人に「全ては」任せられないという結論に達するのはやむを得ない部分もありましょう。

 そもそも業務を一人に任せること自体がよろしくないわけですけれど…。とはいえ、そうせざるを得ない診療科はうちを含めて残念ながら実際に少なからずあります。ちなみに、日本の放射線治療分野には「一人医長の会」という(その病院の診療科にたった一人の放射線腫瘍医しかいない人たちの)グループも存在します。
 大企業のように配置換えもしくは(免許取り消し含め)首を切るということが簡単にしにくい(これもおかしいといえばおかしい)今の医療現場としては、ただ単に「任せられない」の一言では片付けられない部分が正直あるように思います。

 企業と同様に多くのまともな医療現場では、人為的ミスを極力減らさんと様々な「ダブルチェック体制の整備」や「リスクマネージメント」などを積極的に導入・運用しているわけですが(ISOを取得する施設もあり)、それでもミスの完全防止は難しい所があります。電子カルテをはじめとする医療IT化もまだまだ成熟しているとは言えませんし、一部では未だに業務の煩雑化・不安定化を招いていかざるをえないというのが現状だと思います。

 「任せられない」などと偉そうに言わないような指導者の力量も大切な部分なのでしょう。山本五十六の名言に『やってみせて、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。』というものがあります。
 これは正直、私にとっていまだ簡単なことではありません。指導者もいろいろと成長しなければいけないと思いつつ、意識ベクトルの向きが違う方に対しては特に…。まあ、相手の顔色を見ながらただ甘やかせばいいのかというと、そうではないと思うのですよね。特に人の命をお預かりし、そこそこのお金をいただいている職種なのですから…。
 少し話がそれました。この辺については後日改めて「何となく」思ったことを書き綴ろうと思っています。

 若くしてここまで立ち上げてこられた社長さんのご投稿です。「任せられない」という表現もきっと組織としてやるべきことをしたうえで、という意味でしょうし、実際にしっかりした厳しい指導および管理体制はとられていることとは思いますが。


 最後に、心広いであろう近藤様へお詫びとお願い(すでにFacebookで「いいね!」をいただいてはおりますが)。以上は田舎の一医者の思いつき好き勝手フィードということで、どうぞご容赦くださいませ。


【2013/05/14 00:48】 | 医療全般
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