私事で恐縮ですが、昨夜、地元の一般外科系研究会の特別講演に演者としてデビューさせていただきました。
いろいろな研究会が重なって参加者がかなり少ないという事前情報もありましたが、AKB48の初公演観客7人よりは多かったです(笑)
消化器外科系の先生が主体の会でしたので、消化器系がん(胃腸、肝胆膵)に対する緩和照射のお話をさせていただいたのですが、目からウロコという有難いお言葉を数名の先生からいただきました。
また現在所属する施設でこの2年余りで経験させていただいた他院からご紹介のがん患者さんの緩和照射で、骨転移などによる痛みはもちろんのこと、胃がん・大腸がんからの出血や通過障害、脊椎転移による下半身不全麻痺など、症状が改善してその後の生活の質が上がったというお話を、質疑応答やその後の懇親会で何名かの先生方から伺うこともできました。
正直、緩和照射をすることで良い結果ばかりが得られるというわけではないですし、治療適否はかなり慎重に、また説明は患者さん側からすると脅迫めいた内容になってしまう部分も少なからずあります。当方の受け入れ態勢なども依然として解決しきれていない大きな問題であるのは確かです。
でもやっぱり、主治医の先生方に緩和照射を選択肢の一つとして意識していただくことって大事です。いろいろな面で無理をしすぎず、可能な範囲で、まずは引き続き地元での緩和照射の普及啓蒙をしていきたいと思っています。
私のような田舎のオヤジ町医者でも、AKBのように日本武道館とはいかないまでも(学会が開かれることもないでしょうけど)、いつか大舞台で講演をする時がくるだろうか…?
なんて余計なことを書いていると、本当に日本放射線腫瘍学会あたりから教育講演依頼がきてしまいそうでコワイ(笑)
いろいろな研究会が重なって参加者がかなり少ないという事前情報もありましたが、AKB48の初公演観客7人よりは多かったです(笑)
消化器外科系の先生が主体の会でしたので、消化器系がん(胃腸、肝胆膵)に対する緩和照射のお話をさせていただいたのですが、目からウロコという有難いお言葉を数名の先生からいただきました。
また現在所属する施設でこの2年余りで経験させていただいた他院からご紹介のがん患者さんの緩和照射で、骨転移などによる痛みはもちろんのこと、胃がん・大腸がんからの出血や通過障害、脊椎転移による下半身不全麻痺など、症状が改善してその後の生活の質が上がったというお話を、質疑応答やその後の懇親会で何名かの先生方から伺うこともできました。
正直、緩和照射をすることで良い結果ばかりが得られるというわけではないですし、治療適否はかなり慎重に、また説明は患者さん側からすると脅迫めいた内容になってしまう部分も少なからずあります。当方の受け入れ態勢なども依然として解決しきれていない大きな問題であるのは確かです。
でもやっぱり、主治医の先生方に緩和照射を選択肢の一つとして意識していただくことって大事です。いろいろな面で無理をしすぎず、可能な範囲で、まずは引き続き地元での緩和照射の普及啓蒙をしていきたいと思っています。
私のような田舎のオヤジ町医者でも、AKBのように日本武道館とはいかないまでも(学会が開かれることもないでしょうけど)、いつか大舞台で講演をする時がくるだろうか…?
なんて余計なことを書いていると、本当に日本放射線腫瘍学会あたりから教育講演依頼がきてしまいそうでコワイ(笑)
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パシフィコ横浜で6月21-22日に開催された第18回日本緩和医療学会学術大会に参加してきました。一番大事でいろいろな意味で緊張した口演発表もしてまいりました(笑)
今回の学会における私のひとつのテーマは、自分がかかわる緩和ケアチームのあり方、特に放射線腫瘍医としての存在意義についてでした。具体的には、痛みを主とした症状緩和に対する放射線腫瘍医としての院内スクリーニング(該当患者さんの拾い上げ)、そして予後(残された余命予測)やその方々が置かれた様々な状況下におけるチームとしての放射線治療の適応判断について。
緩和ケアチームとは ⇒ http://kanwaedu.umin.jp/baseline/index.html
そんななか、第2日の朝一番で「End of lifeを考える〜日本人の和の心〜」というパネルディスカッションがありました。「和」という文字を昔から大切にしてきた私は、前夜の二日酔いにめげず何とか早起きをして聴講しました。
座長の飛騨千光寺の大下大圓氏による基調講演の抄録に以下の文章がありましたので、(無断)引用させていただきます。
『日本人が大切にしてきた心性を表す言葉として「和」がある。この言葉を大漢和辞典(1971)に解釈を尋ねると「こえを合せる、やわらぐ、かなう、あつまる、ゆるす、なかなおりをする」とあり、古字においては「龢」であり、(中略)この字を分解して考察すると、「家族単位で住む集落において、協同して社会を構成する」というコミュニティの在り方を示している。』
大下大圓氏のご講演で個人的に一番印象に残ったのは「ただ仲良くではなく、みんなで力を合わせて目的に向かうプロセスが大切なのです」というお話でした。「和」はともすれば仲良し≒同業者同士の楽でなあなあな対応になりがちなリスクもあります。そうではないんだよ、というお話(私の解釈)を伺い、とても共感を得ました。
このセッションでは、その他にもホスピスや在宅医療の最前線で活動されている先生や臨床宗教師という新たなご活動をなさっている先生から大変有意義なご講演を拝聴できました。
少しそれますが、がん疼痛緩和で日本の第一人者の武田文和先生も、私が前夜に初参加させていただいた二日酔いの原因でもあるSCORE-G(医師と薬剤師を中心に全国の有志が集まって、緩和医療の現場で役に立つ共同研究や、わかりやすい情報提供を目指して設立された研究会)の懇親会で、『他の先進国と比べるといまだ少ないがん疼痛における医療用麻薬の年間消費量。海外のマスコミ関係者の中には、余りに少ない日本の年間消費量を知って、「日本人のがんは人種的に痛みを起こしにくいがんなのか」という解釈をした人すらあった。仲良く医療をするだけでなく、もっと適切に痛み止めを使用するようはっきりと議論しないと』といった趣旨のお話(私の解釈)をなさっていました。
「仲間内は仲良くしないとうまくいかないよ」って言う方もいらっしゃいます。それはそれで一理あります。でもあくまで私の経験上ですが、表面上の『なあなあ』は中長期的にみるとたいてい組織の体質が澱む気がしています。前向きに意見がぶつかり合うのは、ある程度必要でしょ?
もちろん(自戒を込めてですが)全く引かずに自論を押し付けるのもどうかとは思います。なんにも意見を言わないのも同レベルです。バランスなんでしょうけどね。
そうそう、笑顔が大事ともいいますね。ただ、私の場合、無理に笑顔を作るとどうもしらじらしく表情が引きつった感じに見えてしまうようなのです…。悪気はない(つもりな)ので、スタッフの皆様、どうぞお許し下さい。
以上、抽象的な表現でごまかして(?)申し訳ございませんが、うちの病院における緩和ケアチームのあり方、そして放射線腫瘍医としての関わり方が少し見えてきた今回の学会でした。
(第18回日本緩和医療学会印象記、その2へ続く…)
今回の学会における私のひとつのテーマは、自分がかかわる緩和ケアチームのあり方、特に放射線腫瘍医としての存在意義についてでした。具体的には、痛みを主とした症状緩和に対する放射線腫瘍医としての院内スクリーニング(該当患者さんの拾い上げ)、そして予後(残された余命予測)やその方々が置かれた様々な状況下におけるチームとしての放射線治療の適応判断について。
緩和ケアチームとは ⇒ http://kanwaedu.umin.jp/baseline/index.html
そんななか、第2日の朝一番で「End of lifeを考える〜日本人の和の心〜」というパネルディスカッションがありました。「和」という文字を昔から大切にしてきた私は、前夜の二日酔いにめげず何とか早起きをして聴講しました。
座長の飛騨千光寺の大下大圓氏による基調講演の抄録に以下の文章がありましたので、(無断)引用させていただきます。
『日本人が大切にしてきた心性を表す言葉として「和」がある。この言葉を大漢和辞典(1971)に解釈を尋ねると「こえを合せる、やわらぐ、かなう、あつまる、ゆるす、なかなおりをする」とあり、古字においては「龢」であり、(中略)この字を分解して考察すると、「家族単位で住む集落において、協同して社会を構成する」というコミュニティの在り方を示している。』
大下大圓氏のご講演で個人的に一番印象に残ったのは「ただ仲良くではなく、みんなで力を合わせて目的に向かうプロセスが大切なのです」というお話でした。「和」はともすれば仲良し≒同業者同士の楽でなあなあな対応になりがちなリスクもあります。そうではないんだよ、というお話(私の解釈)を伺い、とても共感を得ました。
このセッションでは、その他にもホスピスや在宅医療の最前線で活動されている先生や臨床宗教師という新たなご活動をなさっている先生から大変有意義なご講演を拝聴できました。
少しそれますが、がん疼痛緩和で日本の第一人者の武田文和先生も、私が前夜に初参加させていただいた二日酔いの原因でもあるSCORE-G(医師と薬剤師を中心に全国の有志が集まって、緩和医療の現場で役に立つ共同研究や、わかりやすい情報提供を目指して設立された研究会)の懇親会で、『他の先進国と比べるといまだ少ないがん疼痛における医療用麻薬の年間消費量。海外のマスコミ関係者の中には、余りに少ない日本の年間消費量を知って、「日本人のがんは人種的に痛みを起こしにくいがんなのか」という解釈をした人すらあった。仲良く医療をするだけでなく、もっと適切に痛み止めを使用するようはっきりと議論しないと』といった趣旨のお話(私の解釈)をなさっていました。
「仲間内は仲良くしないとうまくいかないよ」って言う方もいらっしゃいます。それはそれで一理あります。でもあくまで私の経験上ですが、表面上の『なあなあ』は中長期的にみるとたいてい組織の体質が澱む気がしています。前向きに意見がぶつかり合うのは、ある程度必要でしょ?
もちろん(自戒を込めてですが)全く引かずに自論を押し付けるのもどうかとは思います。なんにも意見を言わないのも同レベルです。バランスなんでしょうけどね。
そうそう、笑顔が大事ともいいますね。ただ、私の場合、無理に笑顔を作るとどうもしらじらしく表情が引きつった感じに見えてしまうようなのです…。悪気はない(つもりな)ので、スタッフの皆様、どうぞお許し下さい。
以上、抽象的な表現でごまかして(?)申し訳ございませんが、うちの病院における緩和ケアチームのあり方、そして放射線腫瘍医としての関わり方が少し見えてきた今回の学会でした。
(第18回日本緩和医療学会印象記、その2へ続く…)
若かりし頃、私はパチンコに(少~しだけ)ハマっていました。
その時の経験を活かし、患者さんへの副作用の説明の時にパチンコ大当たり確率を引用することがあります。いつものことではありません。
私の新患外来を受診される患者さんには、事前に主治医から放射線治療に対する1%あるかないかの副作用のお話をいろいろ聞いてきたことがズシッと心の重荷になって来られる方も少なくありません。
1%であっても「副作用」という説明を受ければ、多くの方は深刻に受け止めないはずがありません。医療者目線では確率的に「たった」100人に1人であっても、「されど」患者さんの立場からは不幸にして自分がその1人に該当してしまえば他の99人のことなど関係なく生涯悩まされる事態に陥ってしまうかもしれないわけですから、当然のことだと思います。
まして、それより低い確率である「命に係わる重篤な後遺症」のお話をいくつも説明されたら、「放射線治療を受けたら私はいったいどんな身体になってしまうのだろう…?」と恐れおののいてしまう方は少なくないと思います。傍から聞くと脅迫そのものです。
とはいえ、治療をしなければそれよりも高い確率で病気そのものによって命を脅かす状態になる可能性があります。その違いをパチンコ大当たり確率に例えてみたりします。
なお、事前に詳しくない方のために補足しておきますと、最近のパチンコホールでは、10万円くらい連続投資しても(私ではありません)全く当たらないことも普通にある300-400分の1の低い当選確率モードに通常設定された一方で一旦突入すると大当たりしやすい確変モード(5~20分の1くらいの当選確率)がいつまでも続くギャンブル性の高い爆裂台や、それよりはずっと低予算で遊戯できる最初から100分の1程度の大当たり確率に設定された遊パチ台が大半を占めています。
雰囲気的に大丈夫そうな患者さんに対して普段パチンコをされていると確認した上で、「遊パチであってもなかなか1発目で当たる気はしないでしょ?重篤な副作用なんて爆裂台の大当たり確率みたいなもの。で、治療をしないで病気が悪くなるのは確変モード以上。もちろん副作用が出ないよう最大限の配慮はいたしますので…(これは必須)」などと例えてお話をすると、とてもご納得いただけることがあります。
私がパチンコホールに行って、打ち初めの1発目で大当たりしたことがあるのは過去にたった2回だけしかありません。最近はめったに行きませんが、昔はよく通いました…。当たるじゃん!と言われれば、まあその通りです…
ちなみに当たった台の確率は約1/400と 1/280、どちらも単発終了、球はその後すべて飲み込まれました。約1/100台で1回転目に当たったことはありません。
そして「1/100なら1発目でよく当たる」と患者さんから言われたこともまだありません。
医療者側も100%治り、100%副作用がないがん治療をしたいと思って診療をしている(はず)ですが、残念ながら医学はまだそこまで至っていません。確率というものを含めてなるべく正確に治療の選択判断をしていただければと思います。
今日の内容は、おそらく不謹慎と思われる方も少なくないかと思います。あくまで、わかりやすい(?)例えの一つとして(冗談半分で)受け入れていただけそうな方々に対してのみ個人的にご説明しているものでございますので、ご容赦いただければ幸いです。
なお、話す頻度は少ないですが、患者さんやご家族からまだ怒られたことはございません。私が勤務した地域の住民がやさしいだけ?
いろんな病院で話をしましたけど…
その時の経験を活かし、患者さんへの副作用の説明の時にパチンコ大当たり確率を引用することがあります。いつものことではありません。
私の新患外来を受診される患者さんには、事前に主治医から放射線治療に対する1%あるかないかの副作用のお話をいろいろ聞いてきたことがズシッと心の重荷になって来られる方も少なくありません。
1%であっても「副作用」という説明を受ければ、多くの方は深刻に受け止めないはずがありません。医療者目線では確率的に「たった」100人に1人であっても、「されど」患者さんの立場からは不幸にして自分がその1人に該当してしまえば他の99人のことなど関係なく生涯悩まされる事態に陥ってしまうかもしれないわけですから、当然のことだと思います。
まして、それより低い確率である「命に係わる重篤な後遺症」のお話をいくつも説明されたら、「放射線治療を受けたら私はいったいどんな身体になってしまうのだろう…?」と恐れおののいてしまう方は少なくないと思います。傍から聞くと脅迫そのものです。
とはいえ、治療をしなければそれよりも高い確率で病気そのものによって命を脅かす状態になる可能性があります。その違いをパチンコ大当たり確率に例えてみたりします。
なお、事前に詳しくない方のために補足しておきますと、最近のパチンコホールでは、10万円くらい連続投資しても(私ではありません)全く当たらないことも普通にある300-400分の1の低い当選確率モードに通常設定された一方で一旦突入すると大当たりしやすい確変モード(5~20分の1くらいの当選確率)がいつまでも続くギャンブル性の高い爆裂台や、それよりはずっと低予算で遊戯できる最初から100分の1程度の大当たり確率に設定された遊パチ台が大半を占めています。
雰囲気的に大丈夫そうな患者さんに対して普段パチンコをされていると確認した上で、「遊パチであってもなかなか1発目で当たる気はしないでしょ?重篤な副作用なんて爆裂台の大当たり確率みたいなもの。で、治療をしないで病気が悪くなるのは確変モード以上。もちろん副作用が出ないよう最大限の配慮はいたしますので…(これは必須)」などと例えてお話をすると、とてもご納得いただけることがあります。
私がパチンコホールに行って、打ち初めの1発目で大当たりしたことがあるのは過去にたった2回だけしかありません。最近はめったに行きませんが、昔はよく通いました…。当たるじゃん!と言われれば、まあその通りです…
ちなみに当たった台の確率は約1/400と 1/280、どちらも単発終了、球はその後すべて飲み込まれました。約1/100台で1回転目に当たったことはありません。
そして「1/100なら1発目でよく当たる」と患者さんから言われたこともまだありません。
医療者側も100%治り、100%副作用がないがん治療をしたいと思って診療をしている(はず)ですが、残念ながら医学はまだそこまで至っていません。確率というものを含めてなるべく正確に治療の選択判断をしていただければと思います。
今日の内容は、おそらく不謹慎と思われる方も少なくないかと思います。あくまで、わかりやすい(?)例えの一つとして(冗談半分で)受け入れていただけそうな方々に対してのみ個人的にご説明しているものでございますので、ご容赦いただければ幸いです。
なお、話す頻度は少ないですが、患者さんやご家族からまだ怒られたことはございません。私が勤務した地域の住民がやさしいだけ?
いろんな病院で話をしましたけど…
今日は第23回がん臨床研究フォーラムのテレビ中継があったので、外来診療を放射線腫瘍専門医の女医さんにお願いして、勉強のため参加させていただきました。
午前の主題は「高齢者のがん医療」。今後ますます高齢化社会が進むであろう日本の医療現場で、高齢者に対するがん治療をどうしたらよいかというのは大きな課題です。そもそも治療をすべきなのか、認知症の方にはどう対処すべきか、を含め…。
今回のシンポジウムでは、疫学から三大治療(手術、化学療法、放射線療法)そして看護まで多岐にわたる話題提供がありました。残念ながら手術・化学療法のご講演は時間の都合で参加できなかったのですが、一番楽しみにしていた放射線治療の演者である北海道がんセンター名誉院長の西尾正道先生のご講演は拝聴できました。
ご講演ですが、期待通りたった30分では語りきれない西尾節が炸裂していました。現代医療に対するエビデンス中心の技術論や統計論に対する批判、生命倫理や死生観について、そして福島原発の原子力政策に対する批判まで、途中でタイトルが何だったか忘れてしまうくらいの熱弁に爽快感を覚えました。
その後の質疑応答で、ある先生から日本の放射線腫瘍医不足問題に関する質問があり、「放射線腫瘍医は患者が嫌いな変人ばかりだ!と他科の医者は言っている」という厳しいご指摘もありました。
「う~ん、我々は他科からそんな風に見られているのか~。まあ、私はAB型だし、いつも放射線治療計画室でパソコンの前に座っているし、カンファレンスなんかでは口も態度も悪いしな~」と妙な納得感を覚えてしまいました…。
午後の主題は「緩和ケア」。緩和病棟や在宅緩和などとの連携、精神的ケアの課題など、こちらも有名施設の先生方からいろいろな話題提供がありました。
こちらの質疑応答でも、日本の緩和医療界の現状についてご高名な某先生から「活動そのものが医療者の自己満足に終わっているのでは?」との厳しいご指摘があったり、昨今話題の早期緩和ケアの導入について「従来のいわゆる終末期ケアと早期ケアとのきりわけ」や言葉の定義などについての問題提起があったりと、私にとっては来週末に開催される日本緩和医療学会の予習として大変意義あるフォーラムになりました。
あくまで私の知る限りですが、たしかに人と話をするのが不得意(そう)な放射線腫瘍医って少なくないような…。気のせい?
午前の主題は「高齢者のがん医療」。今後ますます高齢化社会が進むであろう日本の医療現場で、高齢者に対するがん治療をどうしたらよいかというのは大きな課題です。そもそも治療をすべきなのか、認知症の方にはどう対処すべきか、を含め…。
今回のシンポジウムでは、疫学から三大治療(手術、化学療法、放射線療法)そして看護まで多岐にわたる話題提供がありました。残念ながら手術・化学療法のご講演は時間の都合で参加できなかったのですが、一番楽しみにしていた放射線治療の演者である北海道がんセンター名誉院長の西尾正道先生のご講演は拝聴できました。
ご講演ですが、期待通りたった30分では語りきれない西尾節が炸裂していました。現代医療に対するエビデンス中心の技術論や統計論に対する批判、生命倫理や死生観について、そして福島原発の原子力政策に対する批判まで、途中でタイトルが何だったか忘れてしまうくらいの熱弁に爽快感を覚えました。
その後の質疑応答で、ある先生から日本の放射線腫瘍医不足問題に関する質問があり、「放射線腫瘍医は患者が嫌いな変人ばかりだ!と他科の医者は言っている」という厳しいご指摘もありました。
「う~ん、我々は他科からそんな風に見られているのか~。まあ、私はAB型だし、いつも放射線治療計画室でパソコンの前に座っているし、カンファレンスなんかでは口も態度も悪いしな~」と妙な納得感を覚えてしまいました…。
午後の主題は「緩和ケア」。緩和病棟や在宅緩和などとの連携、精神的ケアの課題など、こちらも有名施設の先生方からいろいろな話題提供がありました。
こちらの質疑応答でも、日本の緩和医療界の現状についてご高名な某先生から「活動そのものが医療者の自己満足に終わっているのでは?」との厳しいご指摘があったり、昨今話題の早期緩和ケアの導入について「従来のいわゆる終末期ケアと早期ケアとのきりわけ」や言葉の定義などについての問題提起があったりと、私にとっては来週末に開催される日本緩和医療学会の予習として大変意義あるフォーラムになりました。
あくまで私の知る限りですが、たしかに人と話をするのが不得意(そう)な放射線腫瘍医って少なくないような…。気のせい?
ナンセンス【nonsense】
[名・形動]意味をなさないこと。無意味であること。ばかげていること。また、そのさま。(goo辞書より)
以前に脊椎に転移のある某がん患者さんに対する放射線治療依頼がありました。これまで化学療法が行われてきて、外来治療で他病巣は小康状態を保っていたようなのですが、骨転移が出現しました。
その方を最初に外来診察したのは私ではなかったのですが、自分の治療のことをいろいろと調べられる患者さんで、今回の骨転移以前にも粒子線治療の相談に県外へ出向いたことがあったようです。その時は全身の治療を優先ということで粒子線治療は実施されませんでした。
最初に担当した放射線治療科の先生との診察で、標準は数回の放射線治療というお話などをしたうえで、患者さんからまた粒子線治療の話が出たようです。その先生から私にも相談があり、再度患者さんにお話を伺いましたが、やはり可能なら受けてみたいとの希望でした。粒子線治療に関しては全額負担の先進医療なので300万円実費でかかるのですが、経営者の方で金銭的なことは問題なさそうな口調でした。
正直、粒子線治療まではどうかな…と私も感じてはいましたが、ご本人の希望が結構ありましたし、少し痛みはありましたが切迫骨折や脊髄圧迫がすぐに来る病状でもなかったので、ご本人の納得が得られるならばと「まずはセカンドオピニオン的に受診すればいいのではないですか」ということになりました。
で、その日は治療計画なし。その旨を担当診療科の先生にもお伝えいたしました。
しかしその日の夜、最初に担当した放射線腫瘍医の所に電話で主治医の先生から「nonsense」というコメントと共に当院での放射線治療をお願いしますとの連絡がありました(と聞きました)。私は出張で不在でしたが、粒子線治療施設への受診は結局キャンセルとなり、翌日に改めて放射線治療計画となりました。患者さんがご納得されたのかは定かでありませんでしたが、主治医側に説得され患者さんも当院での治療に同意されたようです。
冷静な医療者の立場から見たらnonsenseという意見は正しいとする方がたぶん多いのかもしれません。しかし患者さんが実際に粒子線治療施設を受診して「適応外」と説明を受ければ、よりご納得の程度も深まったようにも思ったのですが…。「適応有」ならなおさら。治療中に業務出張で数百キロ先の東京まで出かけられる体調の患者さんでしたし。
専門家がナビゲート(≒誘導)してやらないと患者さんが迷うから駄目とおっしゃる先生もいらっしゃいますが(それはそれで一理はあり)、標準治療だけの世界ではないのでは?
元々予定していた標準治療を提供することや、ずっと診てもらっている担当科の先生とのお話をご了承されたこともあり、再び差し戻すとかえって患者さん自身が混乱しそうだったから、そのまま当院で照射ということになりました。
医者によっていろいろな考え方があるように、患者さんにもそれぞれに希望や価値観があり、その方の「気持ち」としては粒子線治療の選択肢はnonsenseではなかったのではないか?たしかに高価ですが、車一台購入と考えれば不可能な額ではありませんし、特にその方は問題なさそうでしたから。もちろんそもそも適応があると判断されるかはわかりませんが、骨転移だから照射期間もさほど化学療法に影響の出る範囲ではなかったようですし、セカンドオピニオン受診くらいはあってよかったのでは?と思いました。
逆にいつまでもダラダラ続ける化学療法自体が「nonsense」だと、堂々と本に書いたりコメントをされている先生がたもいらっしゃいますね…。
真偽はよくわかりません。
[名・形動]意味をなさないこと。無意味であること。ばかげていること。また、そのさま。(goo辞書より)
以前に脊椎に転移のある某がん患者さんに対する放射線治療依頼がありました。これまで化学療法が行われてきて、外来治療で他病巣は小康状態を保っていたようなのですが、骨転移が出現しました。
その方を最初に外来診察したのは私ではなかったのですが、自分の治療のことをいろいろと調べられる患者さんで、今回の骨転移以前にも粒子線治療の相談に県外へ出向いたことがあったようです。その時は全身の治療を優先ということで粒子線治療は実施されませんでした。
最初に担当した放射線治療科の先生との診察で、標準は数回の放射線治療というお話などをしたうえで、患者さんからまた粒子線治療の話が出たようです。その先生から私にも相談があり、再度患者さんにお話を伺いましたが、やはり可能なら受けてみたいとの希望でした。粒子線治療に関しては全額負担の先進医療なので300万円実費でかかるのですが、経営者の方で金銭的なことは問題なさそうな口調でした。
正直、粒子線治療まではどうかな…と私も感じてはいましたが、ご本人の希望が結構ありましたし、少し痛みはありましたが切迫骨折や脊髄圧迫がすぐに来る病状でもなかったので、ご本人の納得が得られるならばと「まずはセカンドオピニオン的に受診すればいいのではないですか」ということになりました。
で、その日は治療計画なし。その旨を担当診療科の先生にもお伝えいたしました。
しかしその日の夜、最初に担当した放射線腫瘍医の所に電話で主治医の先生から「nonsense」というコメントと共に当院での放射線治療をお願いしますとの連絡がありました(と聞きました)。私は出張で不在でしたが、粒子線治療施設への受診は結局キャンセルとなり、翌日に改めて放射線治療計画となりました。患者さんがご納得されたのかは定かでありませんでしたが、主治医側に説得され患者さんも当院での治療に同意されたようです。
冷静な医療者の立場から見たらnonsenseという意見は正しいとする方がたぶん多いのかもしれません。しかし患者さんが実際に粒子線治療施設を受診して「適応外」と説明を受ければ、よりご納得の程度も深まったようにも思ったのですが…。「適応有」ならなおさら。治療中に業務出張で数百キロ先の東京まで出かけられる体調の患者さんでしたし。
専門家がナビゲート(≒誘導)してやらないと患者さんが迷うから駄目とおっしゃる先生もいらっしゃいますが(それはそれで一理はあり)、標準治療だけの世界ではないのでは?
元々予定していた標準治療を提供することや、ずっと診てもらっている担当科の先生とのお話をご了承されたこともあり、再び差し戻すとかえって患者さん自身が混乱しそうだったから、そのまま当院で照射ということになりました。
医者によっていろいろな考え方があるように、患者さんにもそれぞれに希望や価値観があり、その方の「気持ち」としては粒子線治療の選択肢はnonsenseではなかったのではないか?たしかに高価ですが、車一台購入と考えれば不可能な額ではありませんし、特にその方は問題なさそうでしたから。もちろんそもそも適応があると判断されるかはわかりませんが、骨転移だから照射期間もさほど化学療法に影響の出る範囲ではなかったようですし、セカンドオピニオン受診くらいはあってよかったのでは?と思いました。
逆にいつまでもダラダラ続ける化学療法自体が「nonsense」だと、堂々と本に書いたりコメントをされている先生がたもいらっしゃいますね…。
真偽はよくわかりません。
お腹に大きな腫瘍があって腰の神経を圧迫し足のしびれや痛みを訴えていた患者さんが、先月うちの科に紹介となりました。採血やCTの結果で悪性リンパ腫を疑ってはいたのですが、まだ正式な結果が出ていませんでした。
症状が悪化していたので、整形外科や血液内科の先生方と相談した結果、神経を圧迫したところに限定して1回4グレイだけの照射を直ちに行ったら、症状がすぐ改善しました。後日MRIを撮像したら、神経の圧迫は問題にならないくらいに縮小していました。
その後、確定診断がなされて化学療法開始とのこと。
患者さんは「先生、良くなりました!」と笑顔でした。
悪性リンパ腫のような放射線の効きが良い腫瘍だと、(腫瘍が縮小しすぎなければ)後遺症は出ないたった1回の少量の放射線治療だけで巨大腫瘍でも凄く良くなるんですよ~。ご存じでした?
実は、昨年の日本緩和医療学会学術大会に参加した後のFacebookに***以下の印象記を書いていました(一部修正)。今回の症例は、そこで学んだことも活きたと思います。
**********************************
(昨年の)日本緩和医療学会総会では、放射線治療がらみの演題がいくつかありました。個人的には、ある大学病院の先生のご発表「化学療法抵抗性で巨大腫瘤を形成した悪性リンパ腫の緩和的放射線治療」が印象的でした。
限局性の悪性リンパ腫はちょっと前まで放射線とがセットで標準治療とされていたのですが、最近の化学療法だけでも生命予後が変わらないというセンセーショナルな臨床試験の結果を理由に、皮膚表面の腫瘍が崩れて悪臭が出るくらい本当に馬鹿デカクなるまで抗がん剤で引っ張り続け、手に負えなくなったところで放射線治療「でも(北海道がんセンター名誉院長の西尾正道先生が嘆いて常に表現される決め台詞)」というケースがまた増えつつあるような気がします(うちの病院は違います…よね?)。
その先生のご発表もそんなやつを3例ご提示いただき、照射により腫瘍の縮小や患者さんのQOL(Quality of life: 生活の質)が非常に改善したというものでした。写真もお見せしたいくらいですが著作権&グロいので…。
悪性リンパ腫は放射線の効きがすごく良いので、(抗がん剤も効きにくい一部を除いて)たった数回副作用はまず出ないレベルの放射線を本当にちょろっと照射するだけで巨大な腫瘍でも数日で劇的に縮小するなんてことは普通の放射線腫瘍医なら常識です(逆に、急激にがん細胞がぶっ壊れすぎて腎不全などにならないよう気をつけないといけませんが…)。
腫瘍が小さければ標準治療通りで無理に照射をすることはないと思いますが、なぜ腫瘍が崩れて悪臭漂い、QOLが著しく悪い状態になって困っている患者さんを放射線治療という有効なアプローチも使って早く改善してあげようとしないのか、全く理解に苦しみます。
また、このご発表にはさらに考えさせられる事例がありました。(放射線腫瘍医からすれば予想通りに)放射線治療で腫瘍が小さくなった患者さんが元気になり年明けに主治医を受診すると、その先生が患者さん本人に対し「正月を迎えられないと思ってたんだけどね」と一言。その患者さんは「この先生は私の病状をそんな風に見ていたの…」とショックを受けたそうでした。
そんな先生にこれからも自分の病気を診てもらわなければならない患者さんの心情はつらいものがあります。これは私にとって決して他人事ではなく、何気ない(と思っている)医療者のたった一言(されど一言)で信頼関係が大きく変化してしまう恐れがあることを、改めて教えていただきました。
口演スライドはポスター展示にもなるので、正直一番印象に残ったこの一言スライドをみようとブースに行ったのですが、ご発表の先生がいろいろとカドがたつかもと心配されたからでしょうか、省かれていました。
ちょっと残念でした。
**********************************
あ~俺、ブログなんか書いてる前に、再来週の日本緩和医療学会用の発表スライド作らなければいけないだろ!
でも、ブログはあんまり苦にならないんだよな…
PS:よっしゃー、ワールドカップサッカー本大会出場!(私、大学医学部ではサッカー部でした)
ブラジルへ応援に行きたいなぁー
症状が悪化していたので、整形外科や血液内科の先生方と相談した結果、神経を圧迫したところに限定して1回4グレイだけの照射を直ちに行ったら、症状がすぐ改善しました。後日MRIを撮像したら、神経の圧迫は問題にならないくらいに縮小していました。
その後、確定診断がなされて化学療法開始とのこと。
患者さんは「先生、良くなりました!」と笑顔でした。
悪性リンパ腫のような放射線の効きが良い腫瘍だと、(腫瘍が縮小しすぎなければ)後遺症は出ないたった1回の少量の放射線治療だけで巨大腫瘍でも凄く良くなるんですよ~。ご存じでした?
実は、昨年の日本緩和医療学会学術大会に参加した後のFacebookに***以下の印象記を書いていました(一部修正)。今回の症例は、そこで学んだことも活きたと思います。
**********************************
(昨年の)日本緩和医療学会総会では、放射線治療がらみの演題がいくつかありました。個人的には、ある大学病院の先生のご発表「化学療法抵抗性で巨大腫瘤を形成した悪性リンパ腫の緩和的放射線治療」が印象的でした。
限局性の悪性リンパ腫はちょっと前まで放射線とがセットで標準治療とされていたのですが、最近の化学療法だけでも生命予後が変わらないというセンセーショナルな臨床試験の結果を理由に、皮膚表面の腫瘍が崩れて悪臭が出るくらい本当に馬鹿デカクなるまで抗がん剤で引っ張り続け、手に負えなくなったところで放射線治療「でも(北海道がんセンター名誉院長の西尾正道先生が嘆いて常に表現される決め台詞)」というケースがまた増えつつあるような気がします(うちの病院は違います…よね?)。
その先生のご発表もそんなやつを3例ご提示いただき、照射により腫瘍の縮小や患者さんのQOL(Quality of life: 生活の質)が非常に改善したというものでした。写真もお見せしたいくらいですが著作権&グロいので…。
悪性リンパ腫は放射線の効きがすごく良いので、(抗がん剤も効きにくい一部を除いて)たった数回副作用はまず出ないレベルの放射線を本当にちょろっと照射するだけで巨大な腫瘍でも数日で劇的に縮小するなんてことは普通の放射線腫瘍医なら常識です(逆に、急激にがん細胞がぶっ壊れすぎて腎不全などにならないよう気をつけないといけませんが…)。
腫瘍が小さければ標準治療通りで無理に照射をすることはないと思いますが、なぜ腫瘍が崩れて悪臭漂い、QOLが著しく悪い状態になって困っている患者さんを放射線治療という有効なアプローチも使って早く改善してあげようとしないのか、全く理解に苦しみます。
また、このご発表にはさらに考えさせられる事例がありました。(放射線腫瘍医からすれば予想通りに)放射線治療で腫瘍が小さくなった患者さんが元気になり年明けに主治医を受診すると、その先生が患者さん本人に対し「正月を迎えられないと思ってたんだけどね」と一言。その患者さんは「この先生は私の病状をそんな風に見ていたの…」とショックを受けたそうでした。
そんな先生にこれからも自分の病気を診てもらわなければならない患者さんの心情はつらいものがあります。これは私にとって決して他人事ではなく、何気ない(と思っている)医療者のたった一言(されど一言)で信頼関係が大きく変化してしまう恐れがあることを、改めて教えていただきました。
口演スライドはポスター展示にもなるので、正直一番印象に残ったこの一言スライドをみようとブースに行ったのですが、ご発表の先生がいろいろとカドがたつかもと心配されたからでしょうか、省かれていました。
ちょっと残念でした。
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あ~俺、ブログなんか書いてる前に、再来週の日本緩和医療学会用の発表スライド作らなければいけないだろ!
でも、ブログはあんまり苦にならないんだよな…
PS:よっしゃー、ワールドカップサッカー本大会出場!(私、大学医学部ではサッカー部でした)
ブラジルへ応援に行きたいなぁー
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