fc2ブログ
放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 無知暴露で恥ずかしい限りですが、医者が病院に入院中の患者さんにお酒を「処方」できるということを最近知りました。「日本薬局方 ぶどう酒」というものがあるそうです。

 うちの病院でも数年前まで処方できたそうなのですが、残念ながら現在は削除されていました。薬局の方によると「院外処方はできます」と…。
 院外なら普通にお店で酒買えるしなぁ。


 このぶどう酒、1回60ml処方だから食前酒程度です。正直、ちょっと物足りないかも(でも1日最大限度量の記載はなし?)。甘味料や合成着色料を添加していないぶどう酒らしいので、身体には良いのかな?
 あと効能書には『小児等に対する安全性は確立していないので投与しないこと。アルコールにより副作用等を起こすおそれがある。』とも書いてました。これはそもそも法律違反…。


 以前からなのですが、病棟でも晩酌代わりに小さな缶ビール1本くらい飲んでもいいじゃないかって思ってました。自分が入院してもできれば飲みたいし。よく出てくるミニパック牛乳の代わりにでも。
 なんで一般病室ではだめなんでしょうね。私の確認不足だけかもしれないですが、集団生活の風紀上の問題だからなのか、何らかの規定があるのか、ただ病院側の管理上の要望なのか?
 緩和ケア病棟なんかでは少しは許容してるって噂も聞いたことあるけど…。


 古き良き時代、私が勤務した某田舎の病院で、御用納めの時に患者さんたちやスタッフと病棟で(もちろん軽くですが)酒盛りをしたことがあります。一升瓶を持って各病棟ナースステーションを渡り歩いたりもしました。正直、あれは楽しかったです。
 今なら完全に新聞沙汰ですね。

 病棟の冷蔵庫に牛乳パックに日本酒を入れ替えて隠れて飲んでいたという強者もいました。この患者さん、夜になるとどうも酒臭い。でもベッド周囲には酒は見当たらないし、外出している気配もない。で、看護師さんたちが行動チェックして、こそこそ冷蔵庫に移動して飲んでいる所を御用となりました。
 あ、これは絶対に真似しないでください。強制退院させられる恐れがあります。


 「日本薬局方 ぶどう酒」ってネット販売もされているようです。これを自分で購入しても、医師の処方ではないから入院中に服用はやっぱりダメなんでしょうね。

 普通のお酒と同じですからね~、病院の規定で。

スポンサーサイト




【2013/07/30 20:47】 | 医療全般
トラックバック(0) |
 私が放射線腫瘍医になって間もない頃のこと。

 今ではちょっと難しい「大胆な」放射線治療を実践されていた上司の先生がいらっしゃいました。そして、その影響が疑われる合併症を抱えた方を何人か病棟や在宅で診たこともあります。
 やはり後遺症というのは患者さんにとって心身ともにとてもつらいものです。医者もつらいです。


 しかし、ある日の往診のこと、おそらく後遺症で寝たきりになってしまったある患者さんが、若かりし頃の私にこうおっしゃってくださったことがあります。「今、私は放射線治療の後遺症で大変ですが、そのおかげでがんが治って生きているわけですから、治療してくれた(上司の)先生にはとても感謝しています」

 最近では、晩期障害(後遺症)を極力出さないような臨床試験の結果などを元にした標準治療が、いろいろな診療ガイドラインに記されています。それを逸脱することはタブーとして絶対にしない先生もおられます。たぶん、それが普通なのかもしれません。

 しかし、患者さんによっては後遺症覚悟の標準治療を超える選択を希望される場合もありえます。

 もちろん、思いつきの何となく医療はよろしくないです。「診療ガイドラインというのは、主流からはずれて我流になりがちな治療にブレーキをかける役割が大きい」という意見は、全くその通りです。
 この患者さんのような綺麗事で終わらないケースも当然あります。不幸にして寿命を縮める結果となった場合などにはご遺族から訴訟のリスクはもちろんあるわけで、決して薦められるものではないと思います。


 でも、その方と出会って以来、患者さんご本人が充分ご納得いただけるのならそういう治療も選択肢の一つになるのかもしれないとも意識するようになりました。もちろん、お互いの信頼関係をある程度は築いた上で。


 その設定限度(さじかげん)が医者によってかなり異なるため、ある病院では非常に苦慮しましたが…



(2012.5.xx Facebookより改変引用)


【2013/07/16 23:59】 | 放射線治療:よもやま話
トラックバック(0) |
 今年の日本緩和医療学会学術大会でも、先日ご紹介したN先生以外に何人かの放射線腫瘍や緩和の先生方(とついでに私)の緩和照射に関する発表がいろいろありました。

 恥ずかしながら私、諸事情でここ最近3年の学術大会しか参加していないのですが(それ以前は演題抄録しか知らないペーパー学会員…)、放射線治療関連の発表演題を見ると、たぶん誰でも知っている有名な骨転移による痛みや脳転移に対する緩和照射以外に、腫瘍からの出血や圧迫閉塞、悪臭など多岐症状にわたる緩和照射の有効性についてもいろいろと報告がなされています。ただ、口演発表もポスター発表も放射線治療セッションがひとまとめになっていて、放射線腫瘍関連学会でも見覚えのある先生方ばかりのような気が。つまり会場内が日本放射線腫瘍学会の部会のような雰囲気なのです。

 本当は、他の科の先生方にこそ同席していただきたい、知っていただきたい所ではあるのですが…。それを狙ったかのような一部の先生の工夫された演題はあるのですが単発で、大変失礼な表現ですが埋もれている感も少しだけあり…?
 一つの手として、多くの他の科の先生方に意識していただくため、みんながポスター発表に切り替えて緩和照射の演題をしつこいくらいにずらずら並べるというのは見た目のインパクトがありそうです。「すごいな、まだ続くのか~」っていう確変爆裂連チャンモードのような感じで。

 学会事務局にバランスをとられて口演発表に強制移動される恐れもあるでしょうか。あと食道学会とか頭頸部学会とかも近い時期にあるし、「治す」ことに重きを置く先生方は参加が難しいかなぁ。
 そもそも、緩和照射の演題ってそんなに出ないか…?


 緩和照射の多様性や適応の広さは、全国の医療者にまだまだきちんと知られていない部分がおそらく多々あります。「がん早期からの緩和ケア」がうたわれ始めた昨今、除痛だけでなく、狭窄・閉塞や出血などに対する終末期以外を含めた緩和照射の適応に関する客観評価、そして地域間格差の是正(均てん化)というのは、今後の課題だと思います。
 
 先日のブログ「May I help you?(1)」で取り上げた緩和ケアチームも、「May I help you?(2)」で取り上げたN先生のご発表もそうなのですが、緩和照射が選択肢になりそうな心身で病む患者さんたちをどのようにスクリーニングする(拾い上げる)か、が一つの大きなポイントになるのでしょう。

 少し前のことなのですが、某施設の先輩女性放射線腫瘍医が私とのあるやりとりの中で、『「良好なスタッフ間のコミュニケーションを図る」ことは重要で、それが(緩和照射の)選択肢を広げることに繋がると思っています。…(中略)…ただ、スタンスとして「あなた方、これ知らないでしょ」というより、「May I help you? 」という方が、おそらく最終的には相手に浸透できると思っています。』というコメントをされていました。

 他の医療者に対する我々放射線腫瘍医側の接し方として「May I help you? 」は確かに大事な部分です。しかし主治医側が緩和照射を意識しなければ、我々はただ照射依頼が来るのを待っているだけでは、下手をすると緩和医療の選択肢として照射は候補にも上がらない。先日も触れましたが、お医者さんが大好きなガイドラインに書いてないと、完全に選択外にするケースが少なくありません。
 『患者が本当に希望された時には…』という意見もあるようですが、患者さんがそれを医療者側に要求するのはそこそこ調べていない限り、正直かなり難しい。

 もちろん麻薬をはじめとする鎮痛剤は、ここ10年ほどで種類・投与法など様々な進歩がみられますし(それでも世界的にみると先進国で最低レベルらしいですが)、神経ブロックなど他にもいろいろな緩和的施術があります。
 また、日本の放射線腫瘍医の数は諸外国と比べて桁外れに少ないのが現状で、一部には『現場の疲弊を考えると戦線拡大みたいな緩和照射普及の話をするのはいささかナンセンスでは?』とか、『忙しい放射線治療の現場で、むりくり照射するより、ほかの治療の方が短期的にはいいんじゃない?』という意見もあります。医療者目線だよな…。

 でも、やっぱり苦痛のあるがん患者さんにとって、症状緩和のいろいろな診療手段があるっていうのは大事なことですよね。


『緩和照射が選択肢としてあるか?』

 何度も書きますが、今回の学会(そしてこのブログ)での私のポイントはここでした。決して緩和照射を強制するつもりではありません。何もしないという選択肢も当然あります。

 放射線腫瘍医をはじめとする医療者側からの「押し付け」医療にならぬよう、緩和照射普及・啓蒙に向けた具体的な活動をもっとしてみよう、そんな風に思う今日この頃です。


 田舎のオヤジ町医者が今更ながら偉そうに、なんですけどね~


【2013/07/09 18:44】 | 緩和的放射線治療
トラックバック(0) |
 今日は7月4日。アメリカ独立記念日であり、梨の日でもあります。
もう一つ、ごく一部のマニアには「ナナシー」の日として有名(?)です。

 去年のこの日にもFacebookで投稿したのですが、このブログを始めてから今日を少し待ち望んでました。


 ナナシーとは1996年に世に出た大当たり確率1/158のパチンコ台の名機でした。リーチがかかりコインの絵柄に手足が出ると少~し期待、でもコインの伸び縮みが起きないとなかなか大当たりする気がしない台で、個人的には大当たり確率の割に相性がとても良くありませんでした。

 今日は(私が当時はまった)パチンコ必勝ガイドという雑誌で「パチプロ日記」という数々の名文を綴り続けた東大中退という異色パチプロの田山幸憲さんの命日でもあります。
 彼は伝説のカリスマで、パチンコ歴の長い人ならば一度くらいはその名前を聞いたことはあるのではないでしょうか。彼は冒頭に挙げたナナシー打ちが特に好きで、今日がナナシーの日と名付けられたのも田山さんを偲ぶ方が多かったからだそうです。

 パチンコという(いささか品位に欠ける?)テーマはありましたが、実に情緒あふれた、パチンコの玉が映像でリアルに動いているような、パチンコ好きだけにかもしれませんが読むものを魅了する作品を彼は連載し続け、とても楽しませてもらいました。
 私を含め多くのファンが「あにはからんや」「してやったり!」「目くるめく…」などの独特の言い回しに虜になりました。何を書いているのかさっぱりわからない方には大変申し訳ないです…。

 平成 13年の今日、彼はおそらくタバコと酒の過量摂取による舌癌が原因で50台半ばにして永眠されました。ご冥福をお祈り申し上げます。
 副流煙と呑み過ぎには気を付けないといけません。
http://www.geocities.jp/over1921/hitorigoto/tayamayukinori.html


 パチンコついでに、これも一部では有名なお話をご紹介します。

 パチンコ業界の売上と国民医療費は、少し前まで年間30兆円あまりとほぼ同じでした。ここ数年は、医療費はさらに増加、パチンコの売上はやや減少傾向だそうですが。

 最近まで掲載されていた(?)外科系学会社会保険委員会連合HPの日本の医療費についてQ&Aサイトを以下にご紹介します。
 「わが国の政府やマスコミは医療費が30兆円を超えた、大変だと宣伝していますが、先進国の中で日本の医療費支出は実は一番少ないのです。ちなみに、わが国のパチンコ産業の年間売り上げは国民総医療費と同じく30兆円、また、葬式産業の売り上げは15兆円と言われています。葬式に費やすお金がわが国の総医療費の半分と言う現実を国民の皆さんはどう考えられるのでしょうか?」
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5670.html

 単純計算ですが、人の生命がかかった国民医療費は1〜3割の一部自己負担金支払い額が実費10兆円以下、かたやパチンコ産業の売り上げは個人の全額負担で30兆円(もちろん勝てば還元されますが、たいていは後日吸い取られますよね?)。亡くなられた方に使うお金(葬式産業の売り上げ)10兆円はほぼ実費。もちろんお葬式は大事なお別れの儀式です。


 お金の価値観は人それぞれなんですけどね…


(2012.7.4 facebookより加筆修正)


【2013/07/04 02:40】 | 趣味
トラックバック(0) |
 第18回日本緩和医療学会、私の印象記、その2です。

 放射線治療関係の発表は、2日目に集中していました。午前の口演では私も発表しましたが、この内容についてはいずれそのうちブログでまとめようかと思います。
 緩和診療科の先生方による緩和照射の口演発表もちらほらあり、少し新鮮でした。


 午後は全体のポスター発表がありました。

 放射線治療のセッションでは、去年のこの学会で「モーズ(Mohs)ペーストはもういらない!?悪性腫瘍の皮膚病変に伴う浸出液・悪臭・出血の原因療法とは」と題したセンセーショナルなご発表をされた北海道のN先生が、今年は「手術不能の下部消化管閉塞で経口摂取困難となったが非侵襲的に閉塞を解除出来食べる喜びが蘇った一例」という、これまた興味深い演題でご発表なさっていました。

 参考までにモーズペーストとは、出血や悪臭を伴う腫瘍の潰瘍表面に主成分の塩化亜鉛を含む調合軟膏を塗布し、亜鉛イオンのタンパク凝集作用によって腫瘍細胞や腫瘍血管、および二次感染した細菌の細胞膜を硬化させて、止血、殺菌効果を得るというもので、最近緩和医療の現場ではかなり注目されています。ただ組織を凝固させる強い薬剤なので、調合や処置が結構手間がかかり痛みも伴うことがあるようです。
 N先生の昨年のご発表は、巨大腫瘍が皮膚表面に露出して滲出液や悪臭・出血を起こしている腫瘍に対する放射線治療の有効性を示したというもので、「ごく普通の放射線治療をしただけで、モーズペーストと同じ効果が得られますよ、簡便で有効な放射線治療をもっと見直してね」という趣旨のご発表でした。

 そういえば一昨年のモーズペースト関連の発表はたしか10以上の演題数でしたが、今年は数件だけでしたね。話題性が一段落したのか?


 で、いよいよ今年のN先生のご発表なのですが、がんによる直腸狭窄に放射線治療を行ったら、念願の塩ラーメンが食べられるようになったという、感動的な症例報告でした。

 大腸がんなどによる下部消化管閉塞は、下血・排便困難・骨盤痛・腸閉塞などを起こし、患者さんの生活の質を著しく低下させます。

 『「本当は塩ラーメンが食べたい」等の願望はあったが、食事の度に激しい疝痛に見舞われるため。食事を忌避するようになる。』という可哀想な患者さんに対して、N先生が『手術不能のため、60Gy/30回の放射線治療を開始したところ、1週目から疼痛が改善され、2週目には苦痛なく経口摂取でき、治療終了2週後には朝食を全量摂取し得た。放射線治療開始から4ヶ月後に肝転移で死亡したが、死の2日前まで経口摂取可能であった。』とのことでした。(『』内は学会抄録より無断引用)
 お亡くなりになるまでの4ヶ月間に、『豚汁、あんみつ、あんかけ焼きそば、ラーメンサラダ、パスタ、鶏から揚げ、カレーライス、生寿司、シチュー、オムライス等を摂取することができ、自分で料理を作ることもできた』そうです。

 腸閉塞がおきると、強い腹痛や吐き気をもよおし、食事はおろか、下手をすると(お亡くなりになるまで)ずっと鼻からチューブを入れられたままです。サンドスタチンやステロイドという薬も症状改善に有効ですが、終末期の方の一時的対応に過ぎないことが少なくありません。根本治療としてはバイパス手術がありますが、全身麻酔が困難である患者さんも少なくありません。胃瘻で腸のガス抜きを図る手もあるでしょうが、食事は取れません。

 その点、緩和的(そして場合によっては根治的)放射線治療は全身麻酔をかけることもなく、腫瘍そのものを縮小させて閉塞を解除しうる、薬による「対症療法」とは違った根本的な「原因療法」になります。
 もちろん手術のような即効性はなく、また治療部位によっては下痢や最悪の場合に穿孔(腸に穴があく)といった恐ろしい腸の副作用が出る可能性もたしかにありえます。これらのリスクは、治療前に患者さんや身内の方々にきちんとご説明・ご了解いただかざるを得ません。通常の放射線治療でも同じですが…。また、かなり体力の低下してしまった終末期には無理しないほうがいいかもしれません。
 しかし、最近の照射技術で治療範囲や線量をなるべく絞り込んだり期間の工夫をしたりでなるべく副作用・後遺症を出さずに、この報告のような症状改善が図れることが医療者が思いこんでいるよりも高い確率で期待できるとする報告も少なくありません(引用文献はブログでは省きます)。

 実は、アメリカなど海外のガイドラインにはきちんと「消化管閉塞の緩和治療には、手術、放射線治療がある」と、同列で明記されています。ところが、日本のがん患者の消化器症状の緩和に関するガイドラインには「放射線治療」という文言は記載すらされていません。
 ガイドラインが大好きなお医者さんは、本に書いてないと選択肢にすらしてくれません。あと胃がんや大腸がんには放射線治療が効かないと思い込んでいる先生も少なくありません。「緩和照射とほぼ同等の」放射線量である胃がんや大腸がんの術前(化学)放射線治療「でも」、手術するとがんが縮小・消失することが何割かのケースで見られるという臨床試験の報告が国内外でなされているにもかかわらず…。

 我々、日本の放射線腫瘍医のアピール不足だろ!とのご指摘は、全くもってその通りです。大変申し訳ございません。
 これからの大事な責務のひとつだと思います。


 モーズペーストもバイパス手術も良い緩和治療ですが、「普通の」緩和放射線治療は多くの臨床医の方々にもっと知っていただきたい有効な選択肢です。
 

 今回のは完全にN先生の報告をいただいたブログ…
未承認ですが、心広いN先生のことならきっと許してくださると信じています。



(第18回日本緩和医療学会印象記、その3へ…)


【2013/07/02 02:51】 | 緩和的放射線治療
トラックバック(0) |