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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 少し前の外来で放射線治療中のある患者さんが、照射部位のヒリヒリと軽い痛痒さを訴え始めたので、リンデロンVG軟膏というステロイド軟膏を処方しようとしました。すると、その患者さんから「持っているからいらない」とご返答が。
 よく聞くと「うちの犬にもらった同じやつが家にある」と…

 「でも、それは転用だから」というも、「いらない」と拒絶され…
 結局、前から使っていた別のタイプの軟膏で経過観察とし、その後もさほど増悪なく予定の放射線治療が完了しました。


 放射線皮膚炎にステロイドなんか使わないで!っていうお医者さんもいらっしゃるかもしれませんが、日焼け程度に赤くなって痒いとかヒリヒリするなどの自覚症状を改善する時は結構効果あるので、私は使っちゃうほうです。ただれとか感染とかがある時には控えますけど。
 ちなみに私は照射開始時からの皮膚炎予防の投薬はしません。これも話題にするといろいなご意見が出てきて面白そうですが、今回のブログでは深入りしません。

 で、その患者さんに対して私から「じゃ、犬のやつを使ってね」とはもちろん(表向き)絶対言えませんでした。
 でも、もしかして使われちゃってたのかなぁ?その後も皮膚炎はそんなに悪くならなかったし…

 ちなみにうちにも(ヒト用の)軟膏が数本あって、どれが誰のか私には区別困難です。うちの犬に湿疹が出たら使ってみるか?

 私は人間以外の動物については詳しくないのですが、犬や猫も人間と同じ薬を使うことが多いらしいです。まあ、解剖学的には似たような構造をしているし、薬の開発をする時はまずは動物たちに毒見させているから、量の調整は別としても人間サマと同じ薬を使ってしかるべきなんでしょうけどね。

 と思いつつも、やっぱり「犬のリンデロンねぇ…」でした。
 ちなみに医者が人間の患者さんに処方した薬も、他人への無断転用は法律で認められていません。全く同じ薬でも薬局で買ったものは、誰が服用しても(つまり他人に渡しても)原則問題にはならないらしいです。


 法律は守らなければいけませんよね?

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【2013/08/31 22:40】 | 放射線治療:支持療法・アメニティ
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 放射線治療で利用する放射線の種類にはいろいろありますが、主流はX線です。そして大半の病院に設置されている放射線治療装置をLinear accelerator(日本語で直線加速器)といいます。原理を簡単に書くと、直線の特殊な磁石の中で加速した電子を金属にぶつけてがん治療用のX線を発生させる装置です。
 「Lin」ear 「ac」celeratorの両者の頭をとってLinacと略し、一般にライナックと呼んでいます。

 また、別の呼び方として「リニアック」とも呼んでいます。教科書や全国の有名病院放射線治療科のHPなどでもLinacのことを「リニアック」と普通に紹介しています。

 ところでLinacって「リニアック」と英語で読めるのでしょうか?


 ライナックはそのまま読めそうです。(私の周りの日本の先生にはあまりいないのですが)リーナックと呼んでいる先生も多いそうです。まあ、Linacですからリーナックとも読めますね。
 Wikipediaの加速器の説明で『リニアック(lineac)とも呼ばれることがある』と書いてありましたが、これは正しい?? ちなみにlineacだとGoogle検索では見つかりません。医学論文検索サイトのPubmedではlineacという単語でも論文が僅かにありますが、linacで見つかる論文数の比ではありませんでした。Linearの耳(ear)を隠しつつ読むなら、リニアックでいいのかも?


 少し調べたところ、「実を言うとライナック又はリニアックというのは各々直線加速器製造会社の商品名なのです。しかし略称としては言い易く、他にピッタリした言い方もないので、どの会社の装置も全部ライナックなどと呼んでいるのが現状」という、当時名古屋大学医療技術短期大学部教授の小畑康範先生による報告がありました(1994年10月発刊の健康文化)。
http://www.kenkobunka.jp/kenbun/kb10/obata10.pdf

 また、私のお知り合いの(元?)業者さんからは、『昭和30年代後半にNECがVarian製品を輸入・販売した時に装置の名称を”リニアック”としたのがはじまりだと思います。もう一昔も二昔も前の話になってしまいますが、三菱マシンをお使いの施設は”ライナック”と呼んでおられました。NECや東芝のマシンをお使いの施設は”リニアック”と呼んでおられました。その名残だと思われます。』という情報もいただきました。


 繰り返しになりますが、ライナック・リニアック両方の呼称があることはたしかです。でも「Linacがリニアックという呼び方で正しいのかどうか」は、知識不足の私はいまだによくわかりません。海外の書籍や○×歴史館とかに何か記録があるのかもしれません。(ご年配の)先生方で知っておられる方がいるかもしれません。
 
 もしご存知の方がいらっしゃったら、私のためにいつかどこかで教えてください。どうでもいいことと言われれば、その通りかもしれませんが(笑)


 似たような話をついでに…

 放射線治療の準備をする装置のことをシミュレーターといいます。これをシュミレーターと呼ぶ方がいらっしゃいます。シュミのほうが日本語として言いやすいけど(?)、さすがにこれは間違いでしょう。最近は減ったとは思うのですが(?)、病院内の掲示などに堂々とシュミレーター室と記されている施設もあります。

 整形外科領域ですが、ギプス(Gips)をギブス(Gibs)と間違える方もいらっしゃいますね。

 かなり昔に私が勤務した病院で、吸入器(ネブライザー:nebulizer)のことをネ「プ(pu)」ライザーと多くの看護師さんが呼び、公式文書のカルテにもたくさん記されていましたこともありました。私が「違う」と言っても頑として変わらず、途中からどうでもよくなりました。もちろん私はネブライザーと書いてましたが。
 どの病院かは忘れましたが、その後直ったのかなぁ?


 ま、シュミでもギブスでもネプでも「わかればいい」と言われればそれまでです。仮に誤表現だったとしても、みんなが呼べばいつしか正しくなってしまう(≒一般的になる)のが言葉というものなのでしょうし?

 あと、言葉尻をとらえ過ぎると(特に看護師さんたちに)嫌われます……経験談です。



【2013/08/16 16:58】 | 放射線治療:機器・技術
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 以前のことですが、いつものように某診療科から患者さんの放射線治療依頼がありました。治療依頼書を読むと、最後に「性格が…」との付記が。カルテを拝見すると、他科受診で某先生の手紙にも「30分かけてご説明しましたが治療のご承諾を得られませんでした」との記載が。
 既往歴として糖尿病や心臓病などいろいろな成人病をお持ちの男性患者さんで、紹介状やカルテだけ見ると放射線治療の説明にもいささか苦戦しそうな雰囲気を感じました。

 そんな先入観の中、(さて、時間をかけて慎重に!)と心の中で少し気合いを入れ患者さんを診察室にお呼びすると、ご夫婦で入室。患者さんはややラフな格好でしたが、パッと見はそれなりでどことなくマイペースっぽい雰囲気。そして付き添いの奥様はしゃきっとした感じの方でした。
 (この方、もしかして。。。?)

 あいさつの後、放射線治療の説明を始めると、奥様が丁寧にメモを取る一方で患者さんはやや集中にかけるような印象でした。数分後、説明の途中でやや飽きた感じの患者さんからぶっきらぼうに「先生に任せるから!」と。
 これ以上説明が長すぎると逆効果になりそうだったので、そこからは少し足早に。

 説明後、「お仕事は何をなさっていらっしゃったのですか?」とお尋ねしてみると、「以前、中小企業の社長をしていた」と。

 (やっぱりそうでしたか!)と私の心の中。

 そのまま少し脱線して「社長さんって夜のお付き合いとか大変ですよね?毎晩のようにパーティーやら会合やら飲食生活がかなり乱れているって聞きますしね。」と話すと、ニヤッと笑い「そうなんだよね~」と患者さん。奥様も少し和やかな面持ちになり「身体には気をつけてもらいたかったのに、本当に困ってたんです。やっぱりいろいろな病気になるし」と。
 その後、今回の病状説明とはあまり関係ない食生活と成人病談義がしばし続きました。


 私の同級生や近い世代の社長さんや専務さん、あるいは講演会などでご年配の(元)管理職の方々と直接お話を伺う機会がたまにあります。また最近ではfacebookなどで、いろいろな管理職の方々の日常生活を垣間見ることができるようにもなりました。
 そこでよく感じるのは、(知る限りですが)多くの方が週何回もお食事付きの会合に参加し、想像以上に飲食生活が不規則かつ暴飲暴食(気味)ということ。
 そして宴会場の写真や豪華絢爛なお食事やお酒の写真の数々がネットなどに掲載されているのを眺めると「美味しそうだな」「うらやましいな」と思う反面、「この生活を続けると身体にはきっと悪いよな」と感じることも多いです。みなさんお仕事柄、やむなく宴会が定例化しているようなのですが。

 この社長さんも、やはりそんな生活をずっと続け当然のようにいろいろな成人病にかかってしまった方のようでした。
 私の知る限り、医者も似たような生活をしている方が少なくありません。院長とか教授とか地位の高い先生方は特に。医者の不養生はいまだその通りかもしれません。お酒が入るとつい調子に乗りがちな私も気をつけないと…

 で、私の印象で恐縮なのですが、社長さんに放射線治療を行うと粘膜炎など治療中の副作用が通常の方より強めに出ることが少なくない気がしています。(喫煙を含めた)普段の暴飲暴食生活で粘膜修復機能が相当低下しているんじゃないかって勝手に勘繰っています。
 全く根拠ないコメントなので、これ以上は深入り発言しないでおきます。


 社長さんの外来診察の話に戻ります。

 食生活と成人病談義で双方に少し心の余裕ができた感じだったので、最後にもう少し主目的の放射線治療の説明を補足しました。そして最後に「では、治療に関してはある程度我々にお任せいただきます」と締めて、奥様を含めて放射線治療の文書同意をいただきました。
 放射線治療中の食生活にも気をつけるよう指導をしました(特に看護師さんがきちんと)。

 全てがそうというわけではもちろんないのですが、私がこれまで診療に関わらせていただいた中小企業の社長さんと奥様ってどこか似た雰囲気があります。言い方は悪いのですが、ちょっとやんちゃで頑固でわがままなおじ(い)ちゃんと、旦那をほどほどに泳がせながら肝心な所は見えない手綱をしっかり引いている奥様。


 説明や診察の時も、奥様につい気を配ってしまいます…


【2013/08/09 21:28】 | 医療全般
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