昨日もまた雪が降り交通網が乱れる中、うちの病院で年1回の院内フォーラム(各部署の研究・調査などの発表会)が無事開催されました。
今回のフォーラムでは朝一番のセッションで私の発表が組まれていたのですが、前日からの予報が暴風雪で自宅も病院も駐車場が大変なことになりそうだったし、電車も使えないだろうし、そして何よりソチオリンピック男子フィギュアフリーを深夜に観たかったので(羽生君、金メダルおめでとう!)、遅刻しないように院内の「簡易仮眠室」で過ごしました。
羽生君の金メダルが決まり気分が高揚してなかなか寝つけないでいたら、外では重機を使って病院の駐車場の除雪作業が始まってました。明け方にまた積もってはいましたが、除雪してなかったら院内駐車場はきっとアウトだったでしょう。
深夜の作業、寒いなか大変ご苦労様でした!
今回の私の発表演題名は「診療報酬から見た最近の外部放射線治療実績」でした。
約1年前のこのブログでも触れましたが、最近の放射線治療分野の診療報酬(=国が決めたお値段)は、お役人様方と交渉される先生方のご尽力のおかげで改定毎に右肩上がりとなっています。
そのおかげで、高額で購入・維持費が大変な放射線治療機器にもかかわらず、普通に1日20名以上の患者さんを治療すれば病院として充分採算が見込める部門になりました。来年度からの改定で放射線治療部門はほぼ横ばいのようですが、全体がマイナス査定ということを考慮するとぜいたくは言えませんかね?
現在の病院に着任してまもなく3年になるのですが、病院全体の医業収益に占める自部門の割合・立ち位置を改めて確認し(、そして病院スタッフにも示し)たかったのと、今後の放射線治療機器更新の際の資料にもなればと思いまして、今回の発表をしました。
調査結果ですが、近隣施設に新たな放射線治療装置が導入された年などを除き、ここ数年はやはりうちの病院も放射線治療部門は右肩上がりの収益増でした。今後は単価もお高めなIMRTなどの高精度放射線治療を積極的に導入する方針なので、さらに収益は増加しそうです。具体的な数字を書くと問題になりそうなので、ここでは伏せておきます。
私以外の演題は、研究とか治療成績とか取り組みとか「学術的」なものばかりで、いささか浮いている感もありましたが、座長の先生から「こういう内容の学会もあるから、充分学術的ですよ」とサポートコメントをいただきました。恐れ入ります。
医業収益を増やすということは、その分患者さんに経済的負担がかかってしまうことになるわけで、そこは気が引ける所です。ただ、世界に冠たる社会主義制度とも例えられる国民皆保険に守られた日本の医療を取り巻く環境(≒製薬・医療機器業界)は欧米型の資本主義であり、高度な医療技術・物品を導入するためには一般の企業同様に設備投資など相応にかかってしまいます。また、先ほども触れましたが高精度照射は治療内容の品質がより高く準備にも手間暇を要する分、1回単価が割高に設定されています。
「収益」とか「採算」などという文言にはいささか抵抗もありますが、病院経営も正直ボランティアだけでは成り立たないところがありますし、ここはどうしても無視できません。
今回は発表時間の制約で収益面のみとなりましたが、来年のフォーラムでは支出や労働力、各機器の売り上げ状況なども含めた評価を発表するつもりです。
ざっとシミュレーションしてみると今の所黒字のようだし、「儲かりそうだから、さらに良い装置を買ってください!」って病院の上層部にアピールするために…不謹慎ですか?申し訳ございません。
「よい」医療を取り入れるのって、お金がかかるんだよなぁ。
今回のフォーラムでは朝一番のセッションで私の発表が組まれていたのですが、前日からの予報が暴風雪で自宅も病院も駐車場が大変なことになりそうだったし、電車も使えないだろうし、そして何よりソチオリンピック男子フィギュアフリーを深夜に観たかったので(羽生君、金メダルおめでとう!)、遅刻しないように院内の「簡易仮眠室」で過ごしました。
羽生君の金メダルが決まり気分が高揚してなかなか寝つけないでいたら、外では重機を使って病院の駐車場の除雪作業が始まってました。明け方にまた積もってはいましたが、除雪してなかったら院内駐車場はきっとアウトだったでしょう。
深夜の作業、寒いなか大変ご苦労様でした!
今回の私の発表演題名は「診療報酬から見た最近の外部放射線治療実績」でした。
約1年前のこのブログでも触れましたが、最近の放射線治療分野の診療報酬(=国が決めたお値段)は、お役人様方と交渉される先生方のご尽力のおかげで改定毎に右肩上がりとなっています。
そのおかげで、高額で購入・維持費が大変な放射線治療機器にもかかわらず、普通に1日20名以上の患者さんを治療すれば病院として充分採算が見込める部門になりました。来年度からの改定で放射線治療部門はほぼ横ばいのようですが、全体がマイナス査定ということを考慮するとぜいたくは言えませんかね?
現在の病院に着任してまもなく3年になるのですが、病院全体の医業収益に占める自部門の割合・立ち位置を改めて確認し(、そして病院スタッフにも示し)たかったのと、今後の放射線治療機器更新の際の資料にもなればと思いまして、今回の発表をしました。
調査結果ですが、近隣施設に新たな放射線治療装置が導入された年などを除き、ここ数年はやはりうちの病院も放射線治療部門は右肩上がりの収益増でした。今後は単価もお高めなIMRTなどの高精度放射線治療を積極的に導入する方針なので、さらに収益は増加しそうです。具体的な数字を書くと問題になりそうなので、ここでは伏せておきます。
私以外の演題は、研究とか治療成績とか取り組みとか「学術的」なものばかりで、いささか浮いている感もありましたが、座長の先生から「こういう内容の学会もあるから、充分学術的ですよ」とサポートコメントをいただきました。恐れ入ります。
医業収益を増やすということは、その分患者さんに経済的負担がかかってしまうことになるわけで、そこは気が引ける所です。ただ、世界に冠たる社会主義制度とも例えられる国民皆保険に守られた日本の医療を取り巻く環境(≒製薬・医療機器業界)は欧米型の資本主義であり、高度な医療技術・物品を導入するためには一般の企業同様に設備投資など相応にかかってしまいます。また、先ほども触れましたが高精度照射は治療内容の品質がより高く準備にも手間暇を要する分、1回単価が割高に設定されています。
「収益」とか「採算」などという文言にはいささか抵抗もありますが、病院経営も正直ボランティアだけでは成り立たないところがありますし、ここはどうしても無視できません。
今回は発表時間の制約で収益面のみとなりましたが、来年のフォーラムでは支出や労働力、各機器の売り上げ状況なども含めた評価を発表するつもりです。
ざっとシミュレーションしてみると今の所黒字のようだし、「儲かりそうだから、さらに良い装置を買ってください!」って病院の上層部にアピールするために…不謹慎ですか?申し訳ございません。
「よい」医療を取り入れるのって、お金がかかるんだよなぁ。
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先週末、数年間所属していた某大学の放射線科医の会という勉強会に久しぶりに参加してきました。あの大雪の日です。
毎年、放射線治療&診断の分野で著名な講師をそれぞれお招きして、特別講演2題を拝聴します。大学同門の放射線科医限定の勉強会なのですが、いつも大変お勉強になるご講演が多いです。
で、今年はというと、治療が東京大の中川恵一准教授による「画像誘導高精度放射線治療の歴史と現状」、診断が藤田保健衛生大の片田和広教授による「面検出器CTの新たな話題」というご講演でした。お二方とも、放射線装置の開発・研究に長年携わってこられ、その労苦も垣間見させていただき、期待通りの内容でした。
中川先生が主にご講演された画像誘導放射線治療(Image-Guided RadioTherapy: IGRT)というのは、放射線治療装置に内蔵あるいは併設されたCTやX線透視などを使い、がん病巣を直接画像表示しながらより正確に放射線照射を行う技術です。
「照射直前または最中に病巣を直接表示できる」という点では優れものの技術なのですが、現実には身体の動きをリアルタイムに制御する点など、まだまだ改良の余地が多々ある領域で、今も世界中の専門家・企業がいろいろな研究・開発を行っています。
どの領域も同じでしょうが、放射線治療装置・技術の開発にも産学連携、つまり企業の協力が必要です。一時期、放射線治療の国産企業がパッとしなくなり、外国産装置のシェアがどんどん拡大していました。やっぱり日本人なので、少し寂しい部分がありました。
最近また、粒子線治療装置やVero 4DRTという高精度X線装置など、国産の優れた放射線治療装置が市場を賑わわせてきています。海外にも販売されているようで、これからが楽しみです。
と書いたものの、実はうちにある放射線治療装置、全部外国産です。申し訳ございません…
片田先生のお話も、興味深く拝聴しました。面検出器CTとは、脳や心臓の全域が1秒未満であっという間に撮影できる320列CTを指すそうです。国産企業との共同開発で普及し、最近ではその技術を有名外国企業も採用したとのこと。
このCTを使うと、体内の動きも綺麗な動画で瞬時に撮像・可視化できるそうです。片田先生がスライドで紹介された、マウスが水分を飲み込んで口から胃腸に流れる体内の様子はリアルそのものでした。これは放射線治療にも利用できそう(?)
実はうちにある放射線治療計画用CT、同じ国産メーカーです。機種が違うので、面検出器CTではないらしいのですが…
中川先生も片田先生も、簡単に書くと放射線装置を使って体内の動きをどう画像化するかというお話でした。ここは放射線治療も放射線診断も未知なことが多き領域ですが、今後の技術開発が進めばこれまでにない画期的な放射線装置が出てきそうな気がします。
私が定年を迎えるまでのあと10数年でどこまで進歩するだろう? …他力本願ですね。
すでに市販されている放射線装置やアプリケーションを使って臨床あるいは基礎研究をすることだってやる気や興味(やお金)がなければ簡単にはできませんが、装置・ソフトそのものから創り上げるというのは並大抵のことではないと思います。「大学というのはそういう所だ」というご意見もありましょうが、(普通の)大学病院のお医者さんというのは、学生さんたちの教育・指導や日常臨床業務や様々な会合もあり、それだけでも大変です。
もちろんヒト、カネ、モノがある程度そろわないといけませんが、それをそろえる努力も当然必要なわけで。
ご講演の質疑応答では、上司の某先生が「言われるままの仕事(=研究や臨床)をするだけじゃなく、君たちも見習うように!」と、若い医局の先生方に一喝して…いや、プレッシャーをかけて…いや、檄を飛ばしていらっしゃいました。 みんな、頑張ってね~!
って、大学から離れて負担がいくつも取り除かれた生活を送る私が偉そうに書けることではありませんかね?
この会ですが、見渡すと参加者がすっかり若返っていました。約10年前、私が初めてこの会に参加した時の少数医局員はほとんど不在。きくりん、あっちゃん、はなわさん、ほんませんせ、みんな外の病院に出たのですねぇ。
時が経つのは早いものです。
あの時代はとっても大変でしたね。
毎年、放射線治療&診断の分野で著名な講師をそれぞれお招きして、特別講演2題を拝聴します。大学同門の放射線科医限定の勉強会なのですが、いつも大変お勉強になるご講演が多いです。
で、今年はというと、治療が東京大の中川恵一准教授による「画像誘導高精度放射線治療の歴史と現状」、診断が藤田保健衛生大の片田和広教授による「面検出器CTの新たな話題」というご講演でした。お二方とも、放射線装置の開発・研究に長年携わってこられ、その労苦も垣間見させていただき、期待通りの内容でした。
中川先生が主にご講演された画像誘導放射線治療(Image-Guided RadioTherapy: IGRT)というのは、放射線治療装置に内蔵あるいは併設されたCTやX線透視などを使い、がん病巣を直接画像表示しながらより正確に放射線照射を行う技術です。
「照射直前または最中に病巣を直接表示できる」という点では優れものの技術なのですが、現実には身体の動きをリアルタイムに制御する点など、まだまだ改良の余地が多々ある領域で、今も世界中の専門家・企業がいろいろな研究・開発を行っています。
どの領域も同じでしょうが、放射線治療装置・技術の開発にも産学連携、つまり企業の協力が必要です。一時期、放射線治療の国産企業がパッとしなくなり、外国産装置のシェアがどんどん拡大していました。やっぱり日本人なので、少し寂しい部分がありました。
最近また、粒子線治療装置やVero 4DRTという高精度X線装置など、国産の優れた放射線治療装置が市場を賑わわせてきています。海外にも販売されているようで、これからが楽しみです。
と書いたものの、実はうちにある放射線治療装置、全部外国産です。申し訳ございません…
片田先生のお話も、興味深く拝聴しました。面検出器CTとは、脳や心臓の全域が1秒未満であっという間に撮影できる320列CTを指すそうです。国産企業との共同開発で普及し、最近ではその技術を有名外国企業も採用したとのこと。
このCTを使うと、体内の動きも綺麗な動画で瞬時に撮像・可視化できるそうです。片田先生がスライドで紹介された、マウスが水分を飲み込んで口から胃腸に流れる体内の様子はリアルそのものでした。これは放射線治療にも利用できそう(?)
実はうちにある放射線治療計画用CT、同じ国産メーカーです。機種が違うので、面検出器CTではないらしいのですが…
中川先生も片田先生も、簡単に書くと放射線装置を使って体内の動きをどう画像化するかというお話でした。ここは放射線治療も放射線診断も未知なことが多き領域ですが、今後の技術開発が進めばこれまでにない画期的な放射線装置が出てきそうな気がします。
私が定年を迎えるまでのあと10数年でどこまで進歩するだろう? …他力本願ですね。
すでに市販されている放射線装置やアプリケーションを使って臨床あるいは基礎研究をすることだってやる気や興味(やお金)がなければ簡単にはできませんが、装置・ソフトそのものから創り上げるというのは並大抵のことではないと思います。「大学というのはそういう所だ」というご意見もありましょうが、(普通の)大学病院のお医者さんというのは、学生さんたちの教育・指導や日常臨床業務や様々な会合もあり、それだけでも大変です。
もちろんヒト、カネ、モノがある程度そろわないといけませんが、それをそろえる努力も当然必要なわけで。
ご講演の質疑応答では、上司の某先生が「言われるままの仕事(=研究や臨床)をするだけじゃなく、君たちも見習うように!」と、若い医局の先生方に一喝して…いや、プレッシャーをかけて…いや、檄を飛ばしていらっしゃいました。 みんな、頑張ってね~!
って、大学から離れて負担がいくつも取り除かれた生活を送る私が偉そうに書けることではありませんかね?
この会ですが、見渡すと参加者がすっかり若返っていました。約10年前、私が初めてこの会に参加した時の少数医局員はほとんど不在。きくりん、あっちゃん、はなわさん、ほんませんせ、みんな外の病院に出たのですねぇ。
時が経つのは早いものです。
あの時代はとっても大変でしたね。
昭和の時代は(いや、平成になってからも)、今のようながん告知は一般的でなく、またきちんとした緩和ケア病棟や在宅緩和診療体制も整備されていませんでした。なので、当時は放射線治療病棟が今の緩和ケア病棟に近い役割も果たしていたそうです。「放射線治療科病棟でお亡くなりになられた患者さんが大学病院内の霊安室に4名続けて運ばれ、ベッドを連ねたこともあった」と、ある先輩放射線腫瘍医から伺ったこともあります。
そこまでではないですが、私が放射線腫瘍医になりたてで(20年くらい前)某病院に下っ端勤務をした時は、30床以上ある放射線治療科病棟の半数くらいが進行・末期がん患者さんで、私一人で毎月何枚も死亡診断書を記載したこともありました。
また、私が某大学の放射線科に入局した頃の放射線治療計画(=医者が行う準備)と言えば、一枚の位置決めX線写真を撮影し、出てきたフィルム上に色鉛筆でささっと照射範囲の印をつける程度で、早ければ1患者数分で完了したものでした。中には正方形や長方形に曲げられた針金を患者さんの皮膚の上にポンと置き、「このあたりでよろしく!」と印をつけて終了、という計画をしていたひどい(?)施設もありました。
治療に用いる放射線の量も、手計算(≒電卓程度)で済んでしまうようなものでした。前述の放射線治療準備が終わったらそのまま治療装置に移動して放射線治療を開始、なんてことも日常茶飯事。
今から思えば、全てが簡易で大雑把。コンピュータなど必要ない(というか存在しない)マクロでアナログの世界。文系要素の色濃かった放射線治療科の時代でした…古き良き時代?
ところが今は、慢性の全国的な放射線腫瘍医の人手不足と業務過多などで、病棟患者を持た(→て?)ずに外来診療に限定している放射線腫瘍医が少なくありません。時代の流れで多くの施設で高額放射線治療機器の整備(だけ)は着々と進み、たった一人あるいは非常勤医師だけで診療せざるを得ない施設もかなりあります。
IMRTに代表される高精度放射線治療の総業務量は昔とは雲泥の差となり、何台も並んだコンピュータの前で医者が黙々と作業する時間は劇的に増えました。
まず治療の準備として撮影した数十枚以上のCTやMRI、時にはPET画像をモニターで綿密にチェックし、がんやそれに関係する標的、守るべき多くの正常臓器を治療計画コンピュータソフト上で丁寧に描く必要があります。さらに放射線治療の量(線量分布)も複雑な計算をコンピュータで行った後に、専門の人間の目で入念な二重の確認をする必要があります。その後には放射線技師さんらが(業務時間外まで)時間をかけて、正しく放射線があたっているかの実測検証作業もあります。
これら一連の業務は、全部で早くても数時間、IMRTといった大がかりなものだと数日以上の準備期間を要します。このようにして1日何人もの患者さんの準備を日々行っています。他科の先生方と同様に、何十人もの新患・外来診察をしたり、各種症例検討会に参加したり、などももちろんあります。
昔とは正反対、コンピュータまみれ、ミクロでデジタルの世界です。たまに、自分の仕事はコンピュータ屋なのか?と錯覚しそうな時もあります。
他科のお医者さんたちや一般の方々からみたら賛否様々なご意見があろうかと思いますが、そんな状況なので、全がん患者さんのおよそ30%にも関与している数少ない放射線腫瘍医が「全ての方々」を主治医として入院管理することはほぼ不可能だと思います。
ちなみに今、私の所では放射線治療装置がない他院からのご紹介や緩和照射について一部患者さんの入院管理を主に担当させていただいております。もちろん、放射線治療科としてどの疾患のどんな患者さんを自分の病棟で診るか、いやそもそも診られるか、といった方針は施設ごとで大きく異なってきます。
私が経験してきたここ20年余りを振り返ってみても、放射線治療の職場環境は大きく様変わりしました。
理系(とオタク系)の世界にどっぷりはまってしまいがちな昨今の放射線治療科ではありますが、文系(と芸術系)もつつがなくできるよう臨床医として成長・勉強を続けて切磋琢磨せねば!と、いまだ自らに言い聞かせています。
たまには湯船につかってリラックスもしつつ…
そこまでではないですが、私が放射線腫瘍医になりたてで(20年くらい前)某病院に下っ端勤務をした時は、30床以上ある放射線治療科病棟の半数くらいが進行・末期がん患者さんで、私一人で毎月何枚も死亡診断書を記載したこともありました。
また、私が某大学の放射線科に入局した頃の放射線治療計画(=医者が行う準備)と言えば、一枚の位置決めX線写真を撮影し、出てきたフィルム上に色鉛筆でささっと照射範囲の印をつける程度で、早ければ1患者数分で完了したものでした。中には正方形や長方形に曲げられた針金を患者さんの皮膚の上にポンと置き、「このあたりでよろしく!」と印をつけて終了、という計画をしていたひどい(?)施設もありました。
治療に用いる放射線の量も、手計算(≒電卓程度)で済んでしまうようなものでした。前述の放射線治療準備が終わったらそのまま治療装置に移動して放射線治療を開始、なんてことも日常茶飯事。
今から思えば、全てが簡易で大雑把。コンピュータなど必要ない(というか存在しない)マクロでアナログの世界。文系要素の色濃かった放射線治療科の時代でした…古き良き時代?
ところが今は、慢性の全国的な放射線腫瘍医の人手不足と業務過多などで、病棟患者を持た(→て?)ずに外来診療に限定している放射線腫瘍医が少なくありません。時代の流れで多くの施設で高額放射線治療機器の整備(だけ)は着々と進み、たった一人あるいは非常勤医師だけで診療せざるを得ない施設もかなりあります。
IMRTに代表される高精度放射線治療の総業務量は昔とは雲泥の差となり、何台も並んだコンピュータの前で医者が黙々と作業する時間は劇的に増えました。
まず治療の準備として撮影した数十枚以上のCTやMRI、時にはPET画像をモニターで綿密にチェックし、がんやそれに関係する標的、守るべき多くの正常臓器を治療計画コンピュータソフト上で丁寧に描く必要があります。さらに放射線治療の量(線量分布)も複雑な計算をコンピュータで行った後に、専門の人間の目で入念な二重の確認をする必要があります。その後には放射線技師さんらが(業務時間外まで)時間をかけて、正しく放射線があたっているかの実測検証作業もあります。
これら一連の業務は、全部で早くても数時間、IMRTといった大がかりなものだと数日以上の準備期間を要します。このようにして1日何人もの患者さんの準備を日々行っています。他科の先生方と同様に、何十人もの新患・外来診察をしたり、各種症例検討会に参加したり、などももちろんあります。
昔とは正反対、コンピュータまみれ、ミクロでデジタルの世界です。たまに、自分の仕事はコンピュータ屋なのか?と錯覚しそうな時もあります。
他科のお医者さんたちや一般の方々からみたら賛否様々なご意見があろうかと思いますが、そんな状況なので、全がん患者さんのおよそ30%にも関与している数少ない放射線腫瘍医が「全ての方々」を主治医として入院管理することはほぼ不可能だと思います。
ちなみに今、私の所では放射線治療装置がない他院からのご紹介や緩和照射について一部患者さんの入院管理を主に担当させていただいております。もちろん、放射線治療科としてどの疾患のどんな患者さんを自分の病棟で診るか、いやそもそも診られるか、といった方針は施設ごとで大きく異なってきます。
私が経験してきたここ20年余りを振り返ってみても、放射線治療の職場環境は大きく様変わりしました。
理系(とオタク系)の世界にどっぷりはまってしまいがちな昨今の放射線治療科ではありますが、文系(と芸術系)もつつがなくできるよう臨床医として成長・勉強を続けて切磋琢磨せねば!と、いまだ自らに言い聞かせています。
たまには湯船につかってリラックスもしつつ…
STAP細胞で一躍時の人となった小保方晴子さん。リケジョ(理系女子)という言葉もメディアを賑わせています。彼女の画期的な大発見はもちろんのこと、そこに至るまでに人一倍の努力を重ねてきたと報道されている研究に対する姿勢と努力もお見事です。
小保方さんは入浴中のくつろいでいる時にアイデアが閃いたとTV報道されていました。iPS細胞の山中さんもそうらしい?リラックスした時間ってやっぱり大切なのでしょう。そういえば、アルキメデスの原理発見も入浴時に閃いたという逸話がありましたね。あれは、風呂に入った瞬間でしたっけ?
最近、シャワーを浴びるだけのことが多かった私ですが、湯船でくつろぐ回数をもっと増やそうかなぁ。「お前、実験なんてしてないだろ!」ですか?まあ、その通りですが。
とりあえず、日々の出来事に対し常に問題・疑問の意識を持ち、言われるがまま、なんとなくといった思考停止状態に陥らないようには気をつけないと。いつ何時、どんな発見があるかわかりませんから。チャンスの女神は前髪しかない、ともいいますし。
ここだけの話なのですが、実はだんだん少なくなってきていて…無くなる前につかんでおきたい所です(笑)
で、リケジョ
医学部受験も多くの大学で理系科目が主であり、また現在の(西洋)医学というのは科学的根拠を重視していますから、女医さんもリケジョでしょうね。
というか、男女関係なく医者の思考・成育環境というのは基本的に理系です。しかしながら、がんの臨床現場では文系要素もすごく重視されてきます。ちなみにここでの「理系」とは科学的根拠(エビデンス)に基づく医療=エビデンスベイストメディシン;Evidence-based medicine (EBM)、「文系」とは患者さんやご家族の希望・価値観を重視した医療=ナラティブメディシン;Narrative (-based) medicineのこと。私なりの言いかえなので、どうかあしからず。
がんの三大治療は、手術、抗がん剤(化学療法)、放射線治療です。どの治療法も理系が原則になりますし、どの診療科でも文系は大切です。
しかし、それぞれの分野の医者集団の傾向はいささか違うような印象が私にはあります。放射線腫瘍医は多くのコンピュータに囲まれた職場環境ということもあってか濃い理系、化学療法医は進行・再発がん患者さんを多く診療されるからでしょうか緩和医療にも造詣の深い先生が多数いらっしゃって文系、そして外科医は総じて体育会系、といった感じです。
もちろん外科医でも化学療法医でも、文系も理系も芸術系も得意な方は多数いらっしゃいますし(実際に趣味の世界を超えた作家や画家、音楽家の方もいます)、放射線腫瘍医も然り、です。なお、これはエビデンスのない田舎の町医者のなんとなくですし、さして深い意味はないつもりなので、その点はどうぞご容赦ください。
ちなみに緩和医は芸術的要素の強い文系、でしょうか?癒しの音楽療法がありますし、宗教的アプローチもあります。また緩和の先生方のご講演や論文やメディア記事、ブログやFacebook投稿などを拝見すると、そして常に死の臨床に接しておられるからか、皆さん大変感受性の豊かな文章表現と上手な語り、感心させられることしばしばです。
実は、昔の放射線腫瘍(治療)科はどちらかというと文系に近い診療科でした。少なくとも私が見聞きした限りでは、ですが。
(まだあるのですが、続きはその2としました)
小保方さんは入浴中のくつろいでいる時にアイデアが閃いたとTV報道されていました。iPS細胞の山中さんもそうらしい?リラックスした時間ってやっぱり大切なのでしょう。そういえば、アルキメデスの原理発見も入浴時に閃いたという逸話がありましたね。あれは、風呂に入った瞬間でしたっけ?
最近、シャワーを浴びるだけのことが多かった私ですが、湯船でくつろぐ回数をもっと増やそうかなぁ。「お前、実験なんてしてないだろ!」ですか?まあ、その通りですが。
とりあえず、日々の出来事に対し常に問題・疑問の意識を持ち、言われるがまま、なんとなくといった思考停止状態に陥らないようには気をつけないと。いつ何時、どんな発見があるかわかりませんから。チャンスの女神は前髪しかない、ともいいますし。
ここだけの話なのですが、実はだんだん少なくなってきていて…無くなる前につかんでおきたい所です(笑)
で、リケジョ
医学部受験も多くの大学で理系科目が主であり、また現在の(西洋)医学というのは科学的根拠を重視していますから、女医さんもリケジョでしょうね。
というか、男女関係なく医者の思考・成育環境というのは基本的に理系です。しかしながら、がんの臨床現場では文系要素もすごく重視されてきます。ちなみにここでの「理系」とは科学的根拠(エビデンス)に基づく医療=エビデンスベイストメディシン;Evidence-based medicine (EBM)、「文系」とは患者さんやご家族の希望・価値観を重視した医療=ナラティブメディシン;Narrative (-based) medicineのこと。私なりの言いかえなので、どうかあしからず。
がんの三大治療は、手術、抗がん剤(化学療法)、放射線治療です。どの治療法も理系が原則になりますし、どの診療科でも文系は大切です。
しかし、それぞれの分野の医者集団の傾向はいささか違うような印象が私にはあります。放射線腫瘍医は多くのコンピュータに囲まれた職場環境ということもあってか濃い理系、化学療法医は進行・再発がん患者さんを多く診療されるからでしょうか緩和医療にも造詣の深い先生が多数いらっしゃって文系、そして外科医は総じて体育会系、といった感じです。
もちろん外科医でも化学療法医でも、文系も理系も芸術系も得意な方は多数いらっしゃいますし(実際に趣味の世界を超えた作家や画家、音楽家の方もいます)、放射線腫瘍医も然り、です。なお、これはエビデンスのない田舎の町医者のなんとなくですし、さして深い意味はないつもりなので、その点はどうぞご容赦ください。
ちなみに緩和医は芸術的要素の強い文系、でしょうか?癒しの音楽療法がありますし、宗教的アプローチもあります。また緩和の先生方のご講演や論文やメディア記事、ブログやFacebook投稿などを拝見すると、そして常に死の臨床に接しておられるからか、皆さん大変感受性の豊かな文章表現と上手な語り、感心させられることしばしばです。
実は、昔の放射線腫瘍(治療)科はどちらかというと文系に近い診療科でした。少なくとも私が見聞きした限りでは、ですが。
(まだあるのですが、続きはその2としました)
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