第19回日本緩和医療学会学術大会が来月神戸で開催されます。私もポスターで演題発表です(が、ポスターはいまだ全くできあがってません…)。
学術大会のポスターには「これでいいのだ!」というメインテーマとともに故 赤塚不二夫さん原作の天才バカボンが掲載されています。今回の学会大会長、島根大学医学部附属病院の齊藤洋司先生ご挨拶文を学術大会HPより一部転載させていただきます。
『このテーマは、患者さんや家族がその一瞬、その日、その月、その年をこれでよかった(これでいいのだ!)と思える、その人らしい生活を支えることが緩和ケアであるという思いを込めたものです。医療者は日々の緩和ケアを振り返り、これでいいのだ!と思える緩和ケアを提供していく、これもこのテーマに込められたものです。』

先日、『「バカボン」という言葉はサンスクリット語で「悟りを開いた人」「知恵物」という意味』だということをたまたま知りました。少しネット検索してみたところ仏教哲学に関係する面白い投稿がいくつかありました。知る人ぞ知る話なのかもしれませんが、個人的にはよく知らない分野だったので(無断)引用中心にまとめてみました。
なお、『 』内は原文のままです(ので今回の投稿はいささか長いです。コピペばかりですが…)。
1.真言宗 福仙寺さんのHPより
http://www.navitown.com/fukusenji/qa2/qa2.cgi?mode=dsp&no=77&num
『(中略)インドの古語サンスクリット(梵語)の「薄伽梵;バギャボン」の事と、漫画家;赤塚不二夫の「天才バカボン」について!
Q;梵語の薄伽梵・婆伽梵(バカボン;バカヴァット;バギャボン)とは?
A;サンスクリット語でブッダ(シャカ;釈迦牟尼)のこと、インドでは自己の意識を自由にあやつる「天才」を意味したり、貴人の尊称だそうです。
ところで赤塚不二夫の、「天才バカボン」は、同じ音である「バギャボン」に似ていると、以前から思っていました。
多くの人に親しまれた赤塚不二夫の漫画に、「天才バカボン」というキャラクターがいます。バカボン父子の言動が私たちを、楽しませてくれたヒット漫画でした。
その名前は(古代インドの言葉:バカボン;バカヴァット;バギャボン)を、意識して付けたわけではなく、たぶん幼児を親しんで呼ぶ「馬鹿なボン(坊や;坊ちゃん)」という意味だろうと、最初はそう思っていました!
タイトルおよび、作中のキャラクター名である「バカボン」の語源は、現在公式には梵語の「薄伽梵」(バギャボン・釈迦如来)に由来するとされています。これはテレビ番組「トリビアの泉」で紹介されました。
また、バカボンパパの決まり文句「これでいいのだ」も、「覚りの境地」の言葉であるようで、何時も竹箒を持ったレレレのおじさんも、お釈迦様のお弟子の一人で、「掃除」で悟りをひらいたチューラパンタカ(周利槃特=しゅりはんどく) を、モデルにしているようです。なおタイトルに「バカボン」とあるものの、当作品において主に活躍するのはその名を冠したキャラクター・バカボンではなく、父親の「バカボンのパパ」です。実際バカボンが登場しない話が数話ある。
(以上「トリビアの泉」より)
だから「バカボン」とは、実際は「バカボンのパパ」をさし、言動は「覚りの境地」を持った「仏陀」のことを、笑いに表そうとしたのでしようか?
それはさておいて、「バカボン」の元祖は、「ブッダ;釈迦」です。「天才バカボン」とは正反対になります。
薄伽梵とは古代インドの梵語、バカヴァットの音訳で、バカボン・バギャボンとなります。
「これでいいのだ!」は、納得した深い悟りの境地に通じた言葉のようです!?
バカボンのパパは、口癖のように「・・・なのだ!」「これでいいのだ!」を連発します。
これ作者の言う「仏のように深い悟りを得た。」言葉なのかも知れません 。
「・・・なのだ!」「これでいいのだ!」で、後は悩まない。それがバカボンパパの口癖
それは味のある物事の本質を、適切に言い表した言葉といえるかも知れません。
その前提にあるのは、やはり「苦しみ・悩み」を超越した心のように思います。
人はだれもが自分の生きている今が、「・・・なのだ!」「これでいいのだ」と納得できれば、全ての出来事をあるがままに前向きに肯定でき、「・・・なのだ!」「これでいいのだ!」と、心から納得されるのであれば、後退することなく、前進して行けると思います。 それは悟りの境地なのかも?』
トリビアの泉、懐かしいなあ。「バカボン」は覚えてないですが…
2.京都生まれの気ままな遁世僧さんのブログ、「今様つれづれ草」より、「天才バカボン」。
http://blogs.yahoo.co.jp/namoamidabutsu18/26388943.html
『もっとも、少なくとも仏教を学んだり興味のある人間であるならば、
「バカボン」という言葉そのものにピンと来る筈である。
しかし、それが単なる偶然ではなかった。
そして、「トリビアの泉」でも採用された、全く「ガセビア」ではないというのである・・・・・。
情報に疎い私は、そんなのがオンエアされたとは、ついぞ知らなかった・・・・・。
「バカボン」とは・・・「薄伽梵(バギャボン)」から来ているというのである。
「薄伽梵」は“バガボン”とも発音する。
即ち、サンスクリット語の“Bhagavad(ヴァガバッド)”を経典の漢訳に際し、
発音を漢字に音写したものである。
その意味は「覚れる者」という意味で、“Buddha(ブッダ)”と同義語である。
“Bhagavad”は「世尊」とも訳されている。
「世の中で尊敬されるべき方」という程の意味である。
一般に「釈尊」と呼ぶのは略称であり、正式には「釈迦牟尼世尊」という。
尊称の最後の「世尊」は“Bhagavad”を漢訳したものなのだ。
ところが・・・・・
「トリビア・・・」で取り上げられたのはここまでらしい。
M師によると、まだ続きがあるというのである。
バカボンにはチョー天才児「はじめちゃん」という弟がいる。
「はじめちゃん」・・・・
決して奇天烈な名前などではない。
別に何処にでもありそうな名前である。
しかし・・・・・
これもインド学仏教学を学んだ経験があれば、ピンと来る名前なのである。
即ち、東大インド哲学科の碩学で、近年亡くなった中村元(なかむらはじめ)博士の名である。
中村博士は、内外に知られたインド哲学者である。
多くの著作があり、また多くのサンスクリット語・パーリ語経典を翻訳されている。
バカボンの弟・はじめちゃんは中村博士から採った名前というのだ。
赤塚不二夫は仏教にも造詣が深かったのだろうか・・・・。
それにしても、私は子どもの頃『天才バカボン』のアニメを見ては、
テレビの前で泣いて笑い転げたものである・・・・。
要するに・・・・
兄バカボンの良き理解者が弟のはじめちゃんであり、
バカボンもまた弟を慈しんでいる。
以て、バカボンは天才なのである。
天才は奇想天外であり、一種の人智を超越したものがある。
まさに「薄伽梵」なのである。
その「薄伽梵」を理解し得るのは、これまた、まさしく「はじめちゃん」なのである。
「はじめちゃん」の出生もまた、天才的要素に満ち満ちている。
生まれて程なく言葉を話し、程なく立って歩くのである。
まるで釈尊ではないか・・・・。』
天才バカボン、なんとも奥が深い…仏教哲学とは!
3.Wikipediaの天才バカボン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E6%89%8D%E3%83%90%E3%82%AB%E3%83%9C%E3%83%B3
『赤塚自身は生前に雑誌等のコメントで異説(馬鹿なボンボン、バガボンド=放浪者、天才=ハジメちゃんとバカ=バカボンのパパとボンボン息子=バカボンの3人合わせて「天才バカボン」とした説、等)も唱えていたことがあった。また1967年4月9日の週刊少年マガジンでの連載第1回では、扉絵の部分に、「バカボンとは、バカなボンボンのことだよ。天才バカボンとは、天才的にバカなボンボンのことだよ」という説明文が記されていた。』
聡明な故 赤塚不二夫さんのことですから、きっと1~3の全部を意図されていたのでしょうね。
しかし、「天才バカボン」って実は緩和医療・スピリチュアルケアのイメージキャラクターだったとは!?
へぇ~
学術大会のポスターには「これでいいのだ!」というメインテーマとともに故 赤塚不二夫さん原作の天才バカボンが掲載されています。今回の学会大会長、島根大学医学部附属病院の齊藤洋司先生ご挨拶文を学術大会HPより一部転載させていただきます。
『このテーマは、患者さんや家族がその一瞬、その日、その月、その年をこれでよかった(これでいいのだ!)と思える、その人らしい生活を支えることが緩和ケアであるという思いを込めたものです。医療者は日々の緩和ケアを振り返り、これでいいのだ!と思える緩和ケアを提供していく、これもこのテーマに込められたものです。』

先日、『「バカボン」という言葉はサンスクリット語で「悟りを開いた人」「知恵物」という意味』だということをたまたま知りました。少しネット検索してみたところ仏教哲学に関係する面白い投稿がいくつかありました。知る人ぞ知る話なのかもしれませんが、個人的にはよく知らない分野だったので(無断)引用中心にまとめてみました。
なお、『 』内は原文のままです(ので今回の投稿はいささか長いです。コピペばかりですが…)。
1.真言宗 福仙寺さんのHPより
http://www.navitown.com/fukusenji/qa2/qa2.cgi?mode=dsp&no=77&num
『(中略)インドの古語サンスクリット(梵語)の「薄伽梵;バギャボン」の事と、漫画家;赤塚不二夫の「天才バカボン」について!
Q;梵語の薄伽梵・婆伽梵(バカボン;バカヴァット;バギャボン)とは?
A;サンスクリット語でブッダ(シャカ;釈迦牟尼)のこと、インドでは自己の意識を自由にあやつる「天才」を意味したり、貴人の尊称だそうです。
ところで赤塚不二夫の、「天才バカボン」は、同じ音である「バギャボン」に似ていると、以前から思っていました。
多くの人に親しまれた赤塚不二夫の漫画に、「天才バカボン」というキャラクターがいます。バカボン父子の言動が私たちを、楽しませてくれたヒット漫画でした。
その名前は(古代インドの言葉:バカボン;バカヴァット;バギャボン)を、意識して付けたわけではなく、たぶん幼児を親しんで呼ぶ「馬鹿なボン(坊や;坊ちゃん)」という意味だろうと、最初はそう思っていました!
タイトルおよび、作中のキャラクター名である「バカボン」の語源は、現在公式には梵語の「薄伽梵」(バギャボン・釈迦如来)に由来するとされています。これはテレビ番組「トリビアの泉」で紹介されました。
また、バカボンパパの決まり文句「これでいいのだ」も、「覚りの境地」の言葉であるようで、何時も竹箒を持ったレレレのおじさんも、お釈迦様のお弟子の一人で、「掃除」で悟りをひらいたチューラパンタカ(周利槃特=しゅりはんどく) を、モデルにしているようです。なおタイトルに「バカボン」とあるものの、当作品において主に活躍するのはその名を冠したキャラクター・バカボンではなく、父親の「バカボンのパパ」です。実際バカボンが登場しない話が数話ある。
(以上「トリビアの泉」より)
だから「バカボン」とは、実際は「バカボンのパパ」をさし、言動は「覚りの境地」を持った「仏陀」のことを、笑いに表そうとしたのでしようか?
それはさておいて、「バカボン」の元祖は、「ブッダ;釈迦」です。「天才バカボン」とは正反対になります。
薄伽梵とは古代インドの梵語、バカヴァットの音訳で、バカボン・バギャボンとなります。
「これでいいのだ!」は、納得した深い悟りの境地に通じた言葉のようです!?
バカボンのパパは、口癖のように「・・・なのだ!」「これでいいのだ!」を連発します。
これ作者の言う「仏のように深い悟りを得た。」言葉なのかも知れません 。
「・・・なのだ!」「これでいいのだ!」で、後は悩まない。それがバカボンパパの口癖
それは味のある物事の本質を、適切に言い表した言葉といえるかも知れません。
その前提にあるのは、やはり「苦しみ・悩み」を超越した心のように思います。
人はだれもが自分の生きている今が、「・・・なのだ!」「これでいいのだ」と納得できれば、全ての出来事をあるがままに前向きに肯定でき、「・・・なのだ!」「これでいいのだ!」と、心から納得されるのであれば、後退することなく、前進して行けると思います。 それは悟りの境地なのかも?』
トリビアの泉、懐かしいなあ。「バカボン」は覚えてないですが…
2.京都生まれの気ままな遁世僧さんのブログ、「今様つれづれ草」より、「天才バカボン」。
http://blogs.yahoo.co.jp/namoamidabutsu18/26388943.html
『もっとも、少なくとも仏教を学んだり興味のある人間であるならば、
「バカボン」という言葉そのものにピンと来る筈である。
しかし、それが単なる偶然ではなかった。
そして、「トリビアの泉」でも採用された、全く「ガセビア」ではないというのである・・・・・。
情報に疎い私は、そんなのがオンエアされたとは、ついぞ知らなかった・・・・・。
「バカボン」とは・・・「薄伽梵(バギャボン)」から来ているというのである。
「薄伽梵」は“バガボン”とも発音する。
即ち、サンスクリット語の“Bhagavad(ヴァガバッド)”を経典の漢訳に際し、
発音を漢字に音写したものである。
その意味は「覚れる者」という意味で、“Buddha(ブッダ)”と同義語である。
“Bhagavad”は「世尊」とも訳されている。
「世の中で尊敬されるべき方」という程の意味である。
一般に「釈尊」と呼ぶのは略称であり、正式には「釈迦牟尼世尊」という。
尊称の最後の「世尊」は“Bhagavad”を漢訳したものなのだ。
ところが・・・・・
「トリビア・・・」で取り上げられたのはここまでらしい。
M師によると、まだ続きがあるというのである。
バカボンにはチョー天才児「はじめちゃん」という弟がいる。
「はじめちゃん」・・・・
決して奇天烈な名前などではない。
別に何処にでもありそうな名前である。
しかし・・・・・
これもインド学仏教学を学んだ経験があれば、ピンと来る名前なのである。
即ち、東大インド哲学科の碩学で、近年亡くなった中村元(なかむらはじめ)博士の名である。
中村博士は、内外に知られたインド哲学者である。
多くの著作があり、また多くのサンスクリット語・パーリ語経典を翻訳されている。
バカボンの弟・はじめちゃんは中村博士から採った名前というのだ。
赤塚不二夫は仏教にも造詣が深かったのだろうか・・・・。
それにしても、私は子どもの頃『天才バカボン』のアニメを見ては、
テレビの前で泣いて笑い転げたものである・・・・。
要するに・・・・
兄バカボンの良き理解者が弟のはじめちゃんであり、
バカボンもまた弟を慈しんでいる。
以て、バカボンは天才なのである。
天才は奇想天外であり、一種の人智を超越したものがある。
まさに「薄伽梵」なのである。
その「薄伽梵」を理解し得るのは、これまた、まさしく「はじめちゃん」なのである。
「はじめちゃん」の出生もまた、天才的要素に満ち満ちている。
生まれて程なく言葉を話し、程なく立って歩くのである。
まるで釈尊ではないか・・・・。』
天才バカボン、なんとも奥が深い…仏教哲学とは!
3.Wikipediaの天才バカボン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E6%89%8D%E3%83%90%E3%82%AB%E3%83%9C%E3%83%B3
『赤塚自身は生前に雑誌等のコメントで異説(馬鹿なボンボン、バガボンド=放浪者、天才=ハジメちゃんとバカ=バカボンのパパとボンボン息子=バカボンの3人合わせて「天才バカボン」とした説、等)も唱えていたことがあった。また1967年4月9日の週刊少年マガジンでの連載第1回では、扉絵の部分に、「バカボンとは、バカなボンボンのことだよ。天才バカボンとは、天才的にバカなボンボンのことだよ」という説明文が記されていた。』
聡明な故 赤塚不二夫さんのことですから、きっと1~3の全部を意図されていたのでしょうね。
しかし、「天才バカボン」って実は緩和医療・スピリチュアルケアのイメージキャラクターだったとは!?
へぇ~
スポンサーサイト
ここ1年で実際にセツキシマブと放射線治療(以下、セツ照射)を同時併用した頭頸部がん患者さんを数名診察させていただきましたが、副作用対策はなかなか大変だと感じます。
セツの副作用や標準的な対策については、アービタックス適正使用ガイド第1版‐頭頸部癌‐に詳しく記され、前回ブログで紹介した国内外の臨床試験論文についても概要が解説されています。
http://file.bmshealthcare.jp/bmshealthcare/pdf/guide/EB-HN-guide-1212.pdf
セツの副作用としては、注射している時に起きる可能性がある infusion reaction(いわゆるアレルギー発作)や「にきび」様皮疹の頻度が多く、また特徴的です(適正使用ガイドにも最初に紹介)。
アレルギー発作が起きる頻度はステロイドなどの予防薬をいっしょに使えば少なくなりますが、それでも入院が必要になりそうな重症発作(CTCAE ver4でGrade3以上)は1%程度でステロイドを使わないと1~5%もあるのだそうです。放射線科領域ですと造影CT検査などで使用するヨード造影剤のアレルギー発作がよく知られていますが、最近の非イオン性ヨード造影剤は特に予防薬を使わなくても重症副作用がおきる割合は全体の0.1%以下、昔よく使用され副作用が出やすかったイオン性造影剤ですら1%以下でした。それよりセツのほうが多そうなので、要注意です。
「にきび」様皮疹は薬が効きそうな人に出やすいそうです。そして皮疹が悪化しないようにするためには治療開始時からの日々のこまめな皮膚ケアが推奨され、ステロイド外用剤などが有効だそうです。
しかし、これまでたいしたお肌のお手入れなどしたことがない男性患者さんなどからすれば、セツ投与期間中に皮膚ケアを何か月(何年?)も続けるというのは、いやそもそもこれまで経験ない全身皮疹と毎日お付き合いしなければならないというのは、自分のためとはいえ、また効果がありそうな証拠とはいえ、心身ともに相当な負担だと思います。
そういえば横浜の某医院でアトピー性皮膚炎用の「漢方クリーム」と虚偽広告したステロイド入り軟膏による集団被害が報道されていましたね。軟膏とはいえステロイド長期連用、要注意です。
セツ照射同時併用は、照射範囲の(特に「にきび」様皮疹部の)皮膚炎や口腔粘膜炎も患者さんによってはシス同時併用並みに強い症状が出現します。食べられないくらいの粘膜炎で胃ろうや高カロリー点滴の補助が必要になるケースは、前回紹介した日本人の臨床試験通りで結構いるように思われます。特に高齢者ですとかインスリンが必要な糖尿病や体力低下などがある患者さんに対しては、実感としても同時併用はなかなか負担が大きいように思います。
適正使用ガイドの添付文書に、高齢者への投与については「一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること」とだけ記載があります。ちなみに前回触れた頭頸部がんセツ照射併用の国内臨床試験の年齢上限は81才(中央値67才)でした。
しかし、予備体力が低下している高齢者は、食が細くなるだけで一気に体調を崩す恐れがあります。高カロリー点滴は心肺機能にも負担をかけますし、むくみやすくなりますし…。高齢者に対するセツ照射同時併用、要注意です。
皮膚炎やアレルギー発作と同レベルの頻度で(0.5~10%とかなり幅はありますが)呼吸困難を呈する間質性肺炎や下痢なども記されていますし、それらより頻度は少ないものの心不全なども記されています。使用上の注意として「慎重投与」項目にも挙げられています。
こういった注意事項はどの抗がん薬剤でもたいてい似たような記載がなされています。しかし、全体としての発症頻度は少なくとも、症状が出てしまった患者さんにとってはすでに確率は関係なく自分の命にもかかわる大問題となります。ほかの副作用が有名なだけに忘れられがちな呼吸困難や心不全兆候の確認、要注意です。
1年前のブログで「ちゃんと体調管理できない病院でセツを使われるのも何となくちょっと心配だよね」と書きましたが、今は「何となくちょっと」を消したい気分です。
適正ガイドにも最初に赤字で、『緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ投与して下さい』としっかり書いてありますし。「十分」と「適切」の定義が曖昧な点は気になりますが…
以上、いろいろ書いてしまいました。
ここ大事な点ですが、「セツは進行頭頸部がん治療の有効な選択肢の一つ」であることに異を唱えるつもりではございません。あくまで個人的な実感としてセツ照射併用は当初予想より副作用があるっていう印象をブログにしようと思っただけです。(がん治療に限りませんが)どの治療を選択するかは、治療効果と副作用、がんの病状や進み方、そして患者さんの体調・希望などの兼ね合い(総合評価)で決まりますし。ついでに書くと(なかなか数値化できない)医者の知識や腕もあり…
日本人に対して文章化されたセツ照射の使用報告はまださほど出ていないようなので、セツ照射の初期報告がなされそうな(私も参加予定の)来月の日本頭頸部癌学会、要注意(チェック?)です。
セツ照射患者さんをそんなに診ているわけではない町医者の投稿ですので、問題点などございましたらどうかご教示ください。
セツの副作用や標準的な対策については、アービタックス適正使用ガイド第1版‐頭頸部癌‐に詳しく記され、前回ブログで紹介した国内外の臨床試験論文についても概要が解説されています。
http://file.bmshealthcare.jp/bmshealthcare/pdf/guide/EB-HN-guide-1212.pdf
セツの副作用としては、注射している時に起きる可能性がある infusion reaction(いわゆるアレルギー発作)や「にきび」様皮疹の頻度が多く、また特徴的です(適正使用ガイドにも最初に紹介)。
アレルギー発作が起きる頻度はステロイドなどの予防薬をいっしょに使えば少なくなりますが、それでも入院が必要になりそうな重症発作(CTCAE ver4でGrade3以上)は1%程度でステロイドを使わないと1~5%もあるのだそうです。放射線科領域ですと造影CT検査などで使用するヨード造影剤のアレルギー発作がよく知られていますが、最近の非イオン性ヨード造影剤は特に予防薬を使わなくても重症副作用がおきる割合は全体の0.1%以下、昔よく使用され副作用が出やすかったイオン性造影剤ですら1%以下でした。それよりセツのほうが多そうなので、要注意です。
「にきび」様皮疹は薬が効きそうな人に出やすいそうです。そして皮疹が悪化しないようにするためには治療開始時からの日々のこまめな皮膚ケアが推奨され、ステロイド外用剤などが有効だそうです。
しかし、これまでたいしたお肌のお手入れなどしたことがない男性患者さんなどからすれば、セツ投与期間中に皮膚ケアを何か月(何年?)も続けるというのは、いやそもそもこれまで経験ない全身皮疹と毎日お付き合いしなければならないというのは、自分のためとはいえ、また効果がありそうな証拠とはいえ、心身ともに相当な負担だと思います。
そういえば横浜の某医院でアトピー性皮膚炎用の「漢方クリーム」と虚偽広告したステロイド入り軟膏による集団被害が報道されていましたね。軟膏とはいえステロイド長期連用、要注意です。
セツ照射同時併用は、照射範囲の(特に「にきび」様皮疹部の)皮膚炎や口腔粘膜炎も患者さんによってはシス同時併用並みに強い症状が出現します。食べられないくらいの粘膜炎で胃ろうや高カロリー点滴の補助が必要になるケースは、前回紹介した日本人の臨床試験通りで結構いるように思われます。特に高齢者ですとかインスリンが必要な糖尿病や体力低下などがある患者さんに対しては、実感としても同時併用はなかなか負担が大きいように思います。
適正使用ガイドの添付文書に、高齢者への投与については「一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与すること」とだけ記載があります。ちなみに前回触れた頭頸部がんセツ照射併用の国内臨床試験の年齢上限は81才(中央値67才)でした。
しかし、予備体力が低下している高齢者は、食が細くなるだけで一気に体調を崩す恐れがあります。高カロリー点滴は心肺機能にも負担をかけますし、むくみやすくなりますし…。高齢者に対するセツ照射同時併用、要注意です。
皮膚炎やアレルギー発作と同レベルの頻度で(0.5~10%とかなり幅はありますが)呼吸困難を呈する間質性肺炎や下痢なども記されていますし、それらより頻度は少ないものの心不全なども記されています。使用上の注意として「慎重投与」項目にも挙げられています。
こういった注意事項はどの抗がん薬剤でもたいてい似たような記載がなされています。しかし、全体としての発症頻度は少なくとも、症状が出てしまった患者さんにとってはすでに確率は関係なく自分の命にもかかわる大問題となります。ほかの副作用が有名なだけに忘れられがちな呼吸困難や心不全兆候の確認、要注意です。
1年前のブログで「ちゃんと体調管理できない病院でセツを使われるのも何となくちょっと心配だよね」と書きましたが、今は「何となくちょっと」を消したい気分です。
適正ガイドにも最初に赤字で、『緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ投与して下さい』としっかり書いてありますし。「十分」と「適切」の定義が曖昧な点は気になりますが…
以上、いろいろ書いてしまいました。
ここ大事な点ですが、「セツは進行頭頸部がん治療の有効な選択肢の一つ」であることに異を唱えるつもりではございません。あくまで個人的な実感としてセツ照射併用は当初予想より副作用があるっていう印象をブログにしようと思っただけです。(がん治療に限りませんが)どの治療を選択するかは、治療効果と副作用、がんの病状や進み方、そして患者さんの体調・希望などの兼ね合い(総合評価)で決まりますし。ついでに書くと(なかなか数値化できない)医者の知識や腕もあり…
日本人に対して文章化されたセツ照射の使用報告はまださほど出ていないようなので、セツ照射の初期報告がなされそうな(私も参加予定の)来月の日本頭頸部癌学会、要注意(チェック?)です。
セツ照射患者さんをそんなに診ているわけではない町医者の投稿ですので、問題点などございましたらどうかご教示ください。
前回、「半世紀だし半生記の反省期」などというオヤジ文章を書いた手前、これまで投稿した自分のブログをなんとなく見直してみました。
だんだん以前に自分が何を書いたか忘れつつある時期に突入しており…
およそ1年前に、セツキシマブ(以下、セツ)という薬と放射線治療について、自分なりの疑問点をいくつか挙げた投稿をしたことがあります。
その後、うちの病院でも何人かの患者さんに放射線治療との組み合わせでセツを投与しました。正確には、頭頸部がんを積極的に治療している同じ職場の先生がたが主治医として処方され、私は併診です。
今回は、この1年間に自分が診察させていただいた患者さんたちを振り返り、またごく最近の報告にも少し目を通したうえで、(いつものことですがあくまで個人的な)今の印象を「その2」として書いてみることにしました。まあ、他の理由もありますが。
局所進行頭頸部がんの治療は、手術以外に、シスプラチン(以下、シス)という抗がん剤と放射線治療の同時併用が世界標準の治療法と評価されています。しかし実際の所、比較的若くて腎臓など身体も元気な患者さんでないと治療は難しいですし、そういう方々であっても治療中のいろいろな副作用が結構強く出現してかなりへばることが少なくありません。多くの患者さんが咽頭粘膜炎によるのどの痛みなどで水もなかなか飲めなくなるから、一時的胃瘻など別の形でしっかりとした栄養管理をせざるを得なくなります(もちろん医療用麻薬を含めた痛み止めもしっかり使います)。
手術と違って放射線治療は「切らずに治す」「身体にやさしい治療」と一般に言われるものの、あくまで「手術に比べれば」という但し書きがつくだけであって、頭頸部がん患者さんにとっては抗がん剤と放射線治療の同時併用もかなりしんどい影響が治療中に、そして治療が終わった後にもいろいろと生じえます。
一方で、およそ1年半前に保険収載となり、日本でも日常診療で使用可能となった頭頸部がんに対するセツと放射線治療は、「抗がん剤と放射線治療の同時併用のようなひどい副作用はなくて大丈夫ですよ!」といった触れ込みや噂が(少なくとも私の所には)入ってきたように思い出されます。
国内承認に至ったのは、日本の有名所数施設が局所進行頭頸部がんに対するセツと照射の同時併用臨床試験で安全性を確認したのを踏まえてのことらしいです。で、その結果を示した医学論文が去年の3月、つまり私がブログを書いた翌月に医学雑誌に掲載されていました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23479383
セツと放射線治療は同時が良いって示した有名なBonner先生たちの臨床試験の報告(NEJM2006、Lancet2010)と同じようなメニューで「日本人に対する安全性と有効性」を確かめた臨床試験の報告です。
論文の結論は「日本人でも安全に実施できました(私の和訳)」でした。
でも、その内容をよくみると治療中の副作用も全然無視できず、かなり強いとされるGrade3-4の皮膚炎(触ると出血しやすいくらいのただれ以上)が27%、粘膜炎(食べられないくらい辛くて高カロリー点滴などが必要になるレベル以上)に至ってはなんと73%もでていたそうです。ちなみにこの臨床試験を行ったのは、強い副作用が出ても全身管理をしっかり行える(はずの)全国有数の施設ばかりです。
そんな施設なら、仮に強い副作用が出ても無事回復して「安全に治療できる」と思います。でも、普通の(?)病院でそういう強めの副作用が3人に2人以上も出るというのは、耳鼻科にしても放射線治療科にしても診療体制が必ずしも充分とはいえないでしょうから、正直大変かな?って気もします。
また、この臨床試験ではBonner試験でも何割かの患者さんに用いられた「照射は首全体に1.8Gy/日を週5日全6週間+6週の後半2週間余はがんにしぼって1.5Gy/日を1回追加して計1日2回朝夕」という後半1日2回(朝夕)照射法(Concomitant Boost、加速過分割照射)を採用しています。ここでの1日2回法というのは総治療期間を短くして予定線量を照射するため、実は放射線治療だけの場合でも治療中の皮膚炎や粘膜炎は普通の1日1回法(1.8~2Gy/日の通常分割照射)より強くなります。頭頸部がん領域では、抗がん剤との同時併用は副作用が強すぎるため慎重に、とも言われています(放射線治療単独ならお勧め)。
ちなみに去年開催された日本放射線腫瘍学会学術大会のシンポジウムの質疑応答で、この件に関するフロアからの質問に対し日本の頭頸部がんの主導的立場でいらっしゃる先生が「(臨床試験は1日2回法ですが)患者さんの身体の負担を考慮すると1日1回法で治療したほうがいいかもしれません」とご回答されていました。
ということで、うちの病院ではセツと放射線治療の同時併用は1日1回照射法を採用しているのですが、それでも(当初の個人的予想以上に)副作用が強く現れる患者さんがいらっしゃいます。
長くなってきたので、次回へ…
だんだん以前に自分が何を書いたか忘れつつある時期に突入しており…
およそ1年前に、セツキシマブ(以下、セツ)という薬と放射線治療について、自分なりの疑問点をいくつか挙げた投稿をしたことがあります。
その後、うちの病院でも何人かの患者さんに放射線治療との組み合わせでセツを投与しました。正確には、頭頸部がんを積極的に治療している同じ職場の先生がたが主治医として処方され、私は併診です。
今回は、この1年間に自分が診察させていただいた患者さんたちを振り返り、またごく最近の報告にも少し目を通したうえで、(いつものことですがあくまで個人的な)今の印象を「その2」として書いてみることにしました。まあ、他の理由もありますが。
局所進行頭頸部がんの治療は、手術以外に、シスプラチン(以下、シス)という抗がん剤と放射線治療の同時併用が世界標準の治療法と評価されています。しかし実際の所、比較的若くて腎臓など身体も元気な患者さんでないと治療は難しいですし、そういう方々であっても治療中のいろいろな副作用が結構強く出現してかなりへばることが少なくありません。多くの患者さんが咽頭粘膜炎によるのどの痛みなどで水もなかなか飲めなくなるから、一時的胃瘻など別の形でしっかりとした栄養管理をせざるを得なくなります(もちろん医療用麻薬を含めた痛み止めもしっかり使います)。
手術と違って放射線治療は「切らずに治す」「身体にやさしい治療」と一般に言われるものの、あくまで「手術に比べれば」という但し書きがつくだけであって、頭頸部がん患者さんにとっては抗がん剤と放射線治療の同時併用もかなりしんどい影響が治療中に、そして治療が終わった後にもいろいろと生じえます。
一方で、およそ1年半前に保険収載となり、日本でも日常診療で使用可能となった頭頸部がんに対するセツと放射線治療は、「抗がん剤と放射線治療の同時併用のようなひどい副作用はなくて大丈夫ですよ!」といった触れ込みや噂が(少なくとも私の所には)入ってきたように思い出されます。
国内承認に至ったのは、日本の有名所数施設が局所進行頭頸部がんに対するセツと照射の同時併用臨床試験で安全性を確認したのを踏まえてのことらしいです。で、その結果を示した医学論文が去年の3月、つまり私がブログを書いた翌月に医学雑誌に掲載されていました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23479383
セツと放射線治療は同時が良いって示した有名なBonner先生たちの臨床試験の報告(NEJM2006、Lancet2010)と同じようなメニューで「日本人に対する安全性と有効性」を確かめた臨床試験の報告です。
論文の結論は「日本人でも安全に実施できました(私の和訳)」でした。
でも、その内容をよくみると治療中の副作用も全然無視できず、かなり強いとされるGrade3-4の皮膚炎(触ると出血しやすいくらいのただれ以上)が27%、粘膜炎(食べられないくらい辛くて高カロリー点滴などが必要になるレベル以上)に至ってはなんと73%もでていたそうです。ちなみにこの臨床試験を行ったのは、強い副作用が出ても全身管理をしっかり行える(はずの)全国有数の施設ばかりです。
そんな施設なら、仮に強い副作用が出ても無事回復して「安全に治療できる」と思います。でも、普通の(?)病院でそういう強めの副作用が3人に2人以上も出るというのは、耳鼻科にしても放射線治療科にしても診療体制が必ずしも充分とはいえないでしょうから、正直大変かな?って気もします。
また、この臨床試験ではBonner試験でも何割かの患者さんに用いられた「照射は首全体に1.8Gy/日を週5日全6週間+6週の後半2週間余はがんにしぼって1.5Gy/日を1回追加して計1日2回朝夕」という後半1日2回(朝夕)照射法(Concomitant Boost、加速過分割照射)を採用しています。ここでの1日2回法というのは総治療期間を短くして予定線量を照射するため、実は放射線治療だけの場合でも治療中の皮膚炎や粘膜炎は普通の1日1回法(1.8~2Gy/日の通常分割照射)より強くなります。頭頸部がん領域では、抗がん剤との同時併用は副作用が強すぎるため慎重に、とも言われています(放射線治療単独ならお勧め)。
ちなみに去年開催された日本放射線腫瘍学会学術大会のシンポジウムの質疑応答で、この件に関するフロアからの質問に対し日本の頭頸部がんの主導的立場でいらっしゃる先生が「(臨床試験は1日2回法ですが)患者さんの身体の負担を考慮すると1日1回法で治療したほうがいいかもしれません」とご回答されていました。
ということで、うちの病院ではセツと放射線治療の同時併用は1日1回照射法を採用しているのですが、それでも(当初の個人的予想以上に)副作用が強く現れる患者さんがいらっしゃいます。
長くなってきたので、次回へ…
| ホーム |