先週末、毎年のようにご一緒している横浜のご家族さんたちとキャンプへ行ってきました。15年以上前に勤務していた某病院の官舎でお隣さんだったご縁で、ほぼ毎年、夏に合同キャンプをしています。
以前は我が家だけでも年に数回していたのですが、子供たちが部活やらお受験やら(私たちのお仕事やら他のお遊びやら)でここ数年はなかなかタイミングが合わず、うちの家族だけのキャンプはせずに夏のこの合同キャンプだけ。しかも去年は休みの調整が合わずで、2年ぶり。
とはいえ、やっぱり家族全員はそろわず、今年は長女が約6000マイル離れた海外へ短期研修中、次女がお受験で夏の短期講習中でした。ということで、学校の都合で現在約300キロ離れて生活している長男をかなり寄り道して拾って3人で参加となりました。
犬はお留守番。
お盆の高速渋滞などを考慮し、「さあ、出発だ!」となったのは予定通り夜の12時。しかし、今年は不幸なことに真夜中の事故渋滞に巻き込まれ、ようやく息子が住む県へ到着したのは、すでにいま陽が昇る後(しかも小雨…)。
横浜のお知り合いが自他ともに認める雨男だったからか、中央高速側からの富士山は残念ながら見ることができませんでした。まる子の舞台近くの沼津(私の故郷)からは見えたのかなあ?
悲しいかな、木曽に続くこの道、中央高速も事故渋滞に巻き込まれてしまい、目的地に着いたのはお昼過ぎ。出発から半日もかかってしまいました。
疲れ切った状態でテントを張って(少し)飲んでお風呂に浸かって椅子に座って気づけば翌朝…。さすがに半日近い長時間運転は、二人で交代しながらとはいえ、だんだんキツクなってまいりました。爆睡したので目覚めはすっきりでしたが…
今回は我が家だけ一泊で(他の2家族は二泊)、また寄り道して、はるかな北をめざしました。まずは妻のご要望で、伊那にある「かんてんぱぱガーデン」に。
寒天…下剤としての効果があるのは有名ですが、「日本薬局方に医薬品として大正9年から掲載」されているってご存知でしたか?かんてんぱぱガーデン内に書いてありました(笑)。以前、ブログにしたぶどう酒もそうでしたね。他にも、ごまや唐辛子やゼラチン、ウコンなども医薬品だそう。へぇ~って感じです。
もしかして知らなかったの、私だけ?
http://jpdb.nihs.go.jp/jp/
二泊目は、新潟。最寄りの燕三条駅に「日本一の大鳥居」とあった彌彦神社(ネット情報によると建立された昭和57年当時は日本一高い鳥居だったが、残念ながら現在は日本一ではないらしい?)も近くにある、開湯300年の岩室温泉郷で贅沢にのんびり過ごしました。
三日目の帰り際、有名な寺泊の魚のアメ横に寄って、市場に上がったばかりの高級魚(小さな)のどぐろをお刺身(+煮つけ)用にさばいてもらい、自宅で頂きました。至福の一時。
しかし、3日間全部で1200km強の移動、「妻と訪ねて三百里」って感じでした。本当は、「母と訪ねて三百里」としたいところなのですが、「私はあなたの母じゃない」といつも言われているもので…
今日は片づけ。さあ、明日からまたお仕事です。宿題の作文は今月いっぱいが〆切…尻に火がついてきた。
以前は我が家だけでも年に数回していたのですが、子供たちが部活やらお受験やら(私たちのお仕事やら他のお遊びやら)でここ数年はなかなかタイミングが合わず、うちの家族だけのキャンプはせずに夏のこの合同キャンプだけ。しかも去年は休みの調整が合わずで、2年ぶり。
とはいえ、やっぱり家族全員はそろわず、今年は長女が約6000マイル離れた海外へ短期研修中、次女がお受験で夏の短期講習中でした。ということで、学校の都合で現在約300キロ離れて生活している長男をかなり寄り道して拾って3人で参加となりました。
犬はお留守番。
お盆の高速渋滞などを考慮し、「さあ、出発だ!」となったのは予定通り夜の12時。しかし、今年は不幸なことに真夜中の事故渋滞に巻き込まれ、ようやく息子が住む県へ到着したのは、すでにいま陽が昇る後(しかも小雨…)。
横浜のお知り合いが自他ともに認める雨男だったからか、中央高速側からの富士山は残念ながら見ることができませんでした。まる子の舞台近くの沼津(私の故郷)からは見えたのかなあ?
悲しいかな、木曽に続くこの道、中央高速も事故渋滞に巻き込まれてしまい、目的地に着いたのはお昼過ぎ。出発から半日もかかってしまいました。
疲れ切った状態でテントを張って(少し)飲んでお風呂に浸かって椅子に座って気づけば翌朝…。さすがに半日近い長時間運転は、二人で交代しながらとはいえ、だんだんキツクなってまいりました。爆睡したので目覚めはすっきりでしたが…
今回は我が家だけ一泊で(他の2家族は二泊)、また寄り道して、はるかな北をめざしました。まずは妻のご要望で、伊那にある「かんてんぱぱガーデン」に。
寒天…下剤としての効果があるのは有名ですが、「日本薬局方に医薬品として大正9年から掲載」されているってご存知でしたか?かんてんぱぱガーデン内に書いてありました(笑)。以前、ブログにしたぶどう酒もそうでしたね。他にも、ごまや唐辛子やゼラチン、ウコンなども医薬品だそう。へぇ~って感じです。
もしかして知らなかったの、私だけ?
http://jpdb.nihs.go.jp/jp/
二泊目は、新潟。最寄りの燕三条駅に「日本一の大鳥居」とあった彌彦神社(ネット情報によると建立された昭和57年当時は日本一高い鳥居だったが、残念ながら現在は日本一ではないらしい?)も近くにある、開湯300年の岩室温泉郷で贅沢にのんびり過ごしました。
三日目の帰り際、有名な寺泊の魚のアメ横に寄って、市場に上がったばかりの高級魚(小さな)のどぐろをお刺身(+煮つけ)用にさばいてもらい、自宅で頂きました。至福の一時。
しかし、3日間全部で1200km強の移動、「妻と訪ねて三百里」って感じでした。本当は、「母と訪ねて三百里」としたいところなのですが、「私はあなたの母じゃない」といつも言われているもので…
今日は片づけ。さあ、明日からまたお仕事です。宿題の作文は今月いっぱいが〆切…尻に火がついてきた。
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「市民のためのがん治療の会」HP、がん医療の今というコーナーに、我々放射線腫瘍医の大先輩である愛知県がんセンター中央病院名誉病院長 森田皓三先生による『緩和医療と放射線治療』というタイトルのご投稿が掲載されています。
およそ3年前のご投稿です。
http://www.com-info.org/ima/ima_20110831_morita.html
お恥ずかしながら私、実は森田先生と直接お話をしたことはございません。しかし、このご投稿文章は、緩和的放射線治療について私がなんとなく思っていた難しさやあり方を網羅し明文化してくださった、私にとって読めば読むほど珠玉の名文です。
自分への備忘録と、ご覧になったことがない先生方には是非ご一読いただければとの気持ちで、無断ですがその一部を***以下に引用(一部改変)させていただきました。
先日も似たようなことを書きましたが、緩和的放射線治療ってとても奥が深くて難しいです。生存率をはじめとする統計学が優先される根治的な標準の放射線治療と違い、定石があるようで実はないといってもいい個別化最たる緩和的放射線治療。
患者さんとともに、より良い選択ができるような緩和診療を自分なりに心掛けていきたいと思います。
******************************
【3. 緩和医療における放射線治療の役割】
すでに皆さんもご承知のように、現在では緩和治療の一環として、骨転移・脳転移の治療に、或いはがん組織からの出血とかがん組織による血管・気管支などの狭窄に、放射線治療(以下、放治)が広く用いられています。しかし、どのような病態・症状にどの程度まで放治が有効であるかを、意外に他科の医師は知らないことが多いのです。一般に放治医は患者さんの直接の主治医になることが少ないので、主治医がまず、「このような病態・症状の場合には、放治が有効ではないか?」と考えてくださらないと、放治医には相談/依頼が回ってこないのです。
最近では主治医の先生方は、その病院にある「緩和ケアチーム」のスタッフには相談されることが多くなりましたので、私見では放治医はぜひともこのチームの一員となるべきだと考えています。しかし現状は、ほとんどの病院では放治医はこのチームに参加していません。その最大の理由は、日本では放治医が極端に少なく、とても緩和医療チームに参加する時間的な余裕がないからです。さらにもうひとつの問題点は、学会辺りから種々のガイドラインが出されている治癒目的の治療と異なり、緩和目的の治療の場合には、患者さんのひとりひとりの病態で、その治療適応が異なるということです。
体力的にはかなり衰えている定年後の私でも、長期に亘る放治の経験ということではいささか自信がありますので、それが現在の緩和医療の中での放治という領域で、患者さん方に大きな迷惑をかけることなく、仕事ができているのではないかと思っております。つまり緩和医療の中での放治は、治癒目的の放治よりもずっと幅広い、個別の対応が求められていることだと思います。現在の日本では、長年放治に従事した放治医は、その経験を生かして、定年後は主として緩和医療に従事することが重要ではないかと考えています。
【4.緩和治療としての放射線治療の難しさ】
自画自賛するようで申し訳ないのですが、緩和目的の放治は、私のように、長い間放治に携わってきた古手の放治医が最も適当だと思います。それはどうしてかといいますと、「緩和目的の放治には、「標準治療ガイドライン」というものはなく、個別に対応しなければならない」という大原則があるからです。
治癒目的の放治では、治癒率を良くするために、線量投与のスケジュールにも一定の原則があります。その原則を守るために、しばしば患者さんにかなりの我慢を強いることもあり、一次的にもせよ、治療に伴う急性の副作用のために、患者さんのQOLの低下を招くことも多いのです。
しかし、緩和医療にあってはその正反対に、個々の患者さんの肉体的・精神的なQOLの低下につながるような治療は、できるかぎり避けなければならないと思います。「患者さんがいま訴えている症状に対して、放治医としては、どのような治療適応があるか」という放治の照射目的がもっとも重要です。治療の狙いが患者さんの希望と一致して、初めて患者さんから喜んでいただけます。私の経験した中に、肺・肝などに多くの転移を抱え、医師の立場からは予後が数ヶ月かと心配されている進行乳癌の患者さんがおられました。しかしこの患者さんご自身は、目に見える鎖骨の上にあるリンパ節転移が日に日に大きくなって、それを毎日触りながら大きな不安に陥っておられ、患者さんの最大の希望は、この腫瘤を小さくして欲しいということでした。週に1回、外来通院していただいて、毎回10Gyの照射を3週間続けて、腫瘤は半分ほどになり、夜も寝られるようになったと、患者さんに大変喜んでいただいた経験があります。なかには、治療効果がはっきりと患者さんに見えなくと も、「現在がんに対する治療を受けている」という意識だけでも、患者さんのQOLが上がるという経験を何度もいたしました。
治療方法も患者さんを主体に考えなければならないと思います。治癒目的の放治の大原則として考えられている、1日1回2グレイという線量で、1週間に5回という線量配分を守ることは、緩和目的で患者さん主体の放治では標準ではありません。治療はできる限り通院で実施し、患者さん或いはそのご家族の都合で、週2回、しかも月曜と水曜しか通院できないということであっても、その条件下で、放治医は最善の治療効果を得るために、最良の線量配分を考えて差し上げなければならないと考えています。
緩和医療にあっては、すべてが患者さん本位なのです。いまでも、がんセンター或いは大学病院で、通院に1時間以上も必要な、しかし、予後が半年も見込めないような進行がん患者さんに、この原則を押し付けて、週5回の通院を強いている若い放治医を見ると、心が痛みます。また逆に、自宅が遠方のために入院せざるを得ないような患者さんでは、可及的早くに自宅療養に移っていただくために、1日に2回照射するという方法も頻用されるべきと考えます。だから緩和目的の放治こそ、長年放治に携わり、数多くの患者さんを治療してきた経験豊かな定年後の放治医の役割だと思います。
愛知県がんセンターで私たちが開発してきた原体照射法という、病巣に放射線を集中させる照射法が、最近はもっと進歩して、多方向から照射する IMRTという照射法が日常に使用されるようになりました。治癒目的の放治では、たしかに病巣に放射線を集中させることは重要ですが、欠点は、治療計画とその実行に時間がかかります。緩和目的の治療患者さんの中には、痛みが強くて一定の姿勢で長く仰臥できない方も沢山おられます。可及的簡単な照射方法を選択して、短時間で治療を終了させるということも、緩和目的の放治では大変に重要となってきます。
要は、治癒目的と緩和目的とでは、放治の考え方を大きく変える必要があるということです。
およそ3年前のご投稿です。
http://www.com-info.org/ima/ima_20110831_morita.html
お恥ずかしながら私、実は森田先生と直接お話をしたことはございません。しかし、このご投稿文章は、緩和的放射線治療について私がなんとなく思っていた難しさやあり方を網羅し明文化してくださった、私にとって読めば読むほど珠玉の名文です。
自分への備忘録と、ご覧になったことがない先生方には是非ご一読いただければとの気持ちで、無断ですがその一部を***以下に引用(一部改変)させていただきました。
先日も似たようなことを書きましたが、緩和的放射線治療ってとても奥が深くて難しいです。生存率をはじめとする統計学が優先される根治的な標準の放射線治療と違い、定石があるようで実はないといってもいい個別化最たる緩和的放射線治療。
患者さんとともに、より良い選択ができるような緩和診療を自分なりに心掛けていきたいと思います。
******************************
【3. 緩和医療における放射線治療の役割】
すでに皆さんもご承知のように、現在では緩和治療の一環として、骨転移・脳転移の治療に、或いはがん組織からの出血とかがん組織による血管・気管支などの狭窄に、放射線治療(以下、放治)が広く用いられています。しかし、どのような病態・症状にどの程度まで放治が有効であるかを、意外に他科の医師は知らないことが多いのです。一般に放治医は患者さんの直接の主治医になることが少ないので、主治医がまず、「このような病態・症状の場合には、放治が有効ではないか?」と考えてくださらないと、放治医には相談/依頼が回ってこないのです。
最近では主治医の先生方は、その病院にある「緩和ケアチーム」のスタッフには相談されることが多くなりましたので、私見では放治医はぜひともこのチームの一員となるべきだと考えています。しかし現状は、ほとんどの病院では放治医はこのチームに参加していません。その最大の理由は、日本では放治医が極端に少なく、とても緩和医療チームに参加する時間的な余裕がないからです。さらにもうひとつの問題点は、学会辺りから種々のガイドラインが出されている治癒目的の治療と異なり、緩和目的の治療の場合には、患者さんのひとりひとりの病態で、その治療適応が異なるということです。
体力的にはかなり衰えている定年後の私でも、長期に亘る放治の経験ということではいささか自信がありますので、それが現在の緩和医療の中での放治という領域で、患者さん方に大きな迷惑をかけることなく、仕事ができているのではないかと思っております。つまり緩和医療の中での放治は、治癒目的の放治よりもずっと幅広い、個別の対応が求められていることだと思います。現在の日本では、長年放治に従事した放治医は、その経験を生かして、定年後は主として緩和医療に従事することが重要ではないかと考えています。
【4.緩和治療としての放射線治療の難しさ】
自画自賛するようで申し訳ないのですが、緩和目的の放治は、私のように、長い間放治に携わってきた古手の放治医が最も適当だと思います。それはどうしてかといいますと、「緩和目的の放治には、「標準治療ガイドライン」というものはなく、個別に対応しなければならない」という大原則があるからです。
治癒目的の放治では、治癒率を良くするために、線量投与のスケジュールにも一定の原則があります。その原則を守るために、しばしば患者さんにかなりの我慢を強いることもあり、一次的にもせよ、治療に伴う急性の副作用のために、患者さんのQOLの低下を招くことも多いのです。
しかし、緩和医療にあってはその正反対に、個々の患者さんの肉体的・精神的なQOLの低下につながるような治療は、できるかぎり避けなければならないと思います。「患者さんがいま訴えている症状に対して、放治医としては、どのような治療適応があるか」という放治の照射目的がもっとも重要です。治療の狙いが患者さんの希望と一致して、初めて患者さんから喜んでいただけます。私の経験した中に、肺・肝などに多くの転移を抱え、医師の立場からは予後が数ヶ月かと心配されている進行乳癌の患者さんがおられました。しかしこの患者さんご自身は、目に見える鎖骨の上にあるリンパ節転移が日に日に大きくなって、それを毎日触りながら大きな不安に陥っておられ、患者さんの最大の希望は、この腫瘤を小さくして欲しいということでした。週に1回、外来通院していただいて、毎回10Gyの照射を3週間続けて、腫瘤は半分ほどになり、夜も寝られるようになったと、患者さんに大変喜んでいただいた経験があります。なかには、治療効果がはっきりと患者さんに見えなくと も、「現在がんに対する治療を受けている」という意識だけでも、患者さんのQOLが上がるという経験を何度もいたしました。
治療方法も患者さんを主体に考えなければならないと思います。治癒目的の放治の大原則として考えられている、1日1回2グレイという線量で、1週間に5回という線量配分を守ることは、緩和目的で患者さん主体の放治では標準ではありません。治療はできる限り通院で実施し、患者さん或いはそのご家族の都合で、週2回、しかも月曜と水曜しか通院できないということであっても、その条件下で、放治医は最善の治療効果を得るために、最良の線量配分を考えて差し上げなければならないと考えています。
緩和医療にあっては、すべてが患者さん本位なのです。いまでも、がんセンター或いは大学病院で、通院に1時間以上も必要な、しかし、予後が半年も見込めないような進行がん患者さんに、この原則を押し付けて、週5回の通院を強いている若い放治医を見ると、心が痛みます。また逆に、自宅が遠方のために入院せざるを得ないような患者さんでは、可及的早くに自宅療養に移っていただくために、1日に2回照射するという方法も頻用されるべきと考えます。だから緩和目的の放治こそ、長年放治に携わり、数多くの患者さんを治療してきた経験豊かな定年後の放治医の役割だと思います。
愛知県がんセンターで私たちが開発してきた原体照射法という、病巣に放射線を集中させる照射法が、最近はもっと進歩して、多方向から照射する IMRTという照射法が日常に使用されるようになりました。治癒目的の放治では、たしかに病巣に放射線を集中させることは重要ですが、欠点は、治療計画とその実行に時間がかかります。緩和目的の治療患者さんの中には、痛みが強くて一定の姿勢で長く仰臥できない方も沢山おられます。可及的簡単な照射方法を選択して、短時間で治療を終了させるということも、緩和目的の放治では大変に重要となってきます。
要は、治癒目的と緩和目的とでは、放治の考え方を大きく変える必要があるということです。
昨日は、前夜にあった医局ビールパーティーの影響が少なからず残る中、放射線治療大手の某社主催のユーザーミーティングに参加してきました。
今回の企画、新しい放射線治療計画装置の使用体験会を兼ねたワークショップがなかなか面白かったです。私が以前ご厄介になったことのある施設からのご発表も多く、ぶっちゃけ参加しないわけにはいかない感もありましたが、それはそれとして(笑)。
もちろん、うちの病院にも某社関連の放射線治療関連機器が導入されています。
主催者側から事前に用意されていた乳がん温存手術症例に対する乳房への術後照射について、輪郭描出や計画作成などの大まかなシナリオに基づき代表の先生方が実際の使用感を確認し、他の参加者は前方スクリーン上の操作PC画面を見ながらリアルタイムで放射線治療計画プロセスの確認をするという、検討時間がたっぷり2時間近くも確保されたワークショップでした。「どうぞいつでも遠慮なく質問やコメントをどうぞ」という司会者の冒頭挨拶でスタートしました。
乳房温存術後照射は日本の乳がん診療ガイドラインでも推奨と明記されている標準的治療法です。前立腺がんの根治照射と同様に、全国多くの施設で放射線治療症例のかなりの割合を占めています。標準的な放射線治療計画方法も放射線治療計画ガイドラインなどに記載されていて、患側乳房の四方に体表マークなどをつけたりCT上で乳房にみえる部分を囲んだりして放射線治療を行う範囲や放射線の分布図を作成します。
乳房や周囲リンパ節領域のCTにおける囲み方・境界の定義は、RTOGという有名な放射線治療グループとしての合意指針が具体的な画像を含めて公開されていて、大変参考になります。
http://www.rtog.org/LinkClick.aspx?fileticket=vzJFhPaBipE=
とはいえ、乳腺を「厳密に」囲もうとするとあいまいな点がいろいろあるような…。
例えば、乳腺って画像上の端っていったいどこ? とか。
形がしっかりした乳房だと体表での境でわかるのですが、かなりやせ形の方とかふくよかな方のようないわゆる皮下脂肪との境界が不明瞭な乳房の患者さんだとわかりにくい。以前、乳腺が得意な放射線診断の先生といっしょに調べたこともあるのですが、厳密な境界はよくわからない、という結論でした。きちんと示した論文があったら是非教えてください。
もちろん、ガイドラインではその辺の曖昧さをふまえての範囲設定を規定しているし、昨日のユーザーミーティングでもあえて乳腺組織を囲まずに放射線治療計画を行っているという先生もいらっしゃるようでしたし(一つの目安としてあえて私は囲っていますが、もしかして希少?)、なんら問題はないわけですが。
手術で摘出したがんの近くを腫瘍床といいます。この腫瘍床に顕微鏡レベルでがんの根っこが残ってしまったり、切除部位近傍までがん細胞があった場合などには、腫瘍床へ追加照射をしたほうが良いと言われています。
腫瘍床の定義も乳房同様で厳密な範囲規定は難しく、通常は手術や診察・画像所見などを踏まえた担当医の総合判断で決定されます。施設によっては手術中に腫瘍床へ小さな金属マーキングを置いたりしています。
温存術後照射を行う場合、目に見えるがんは手術で取り切れているので、ガイドライン上では「GTVは存在しない」とあります。しかし個人的には腫瘍床はがんがある(か極めて疑わしい)からGTVに相当するくらい危険な部分だと思っています。ちなみに全体の乳腺は領域なのでCTVです。
GTVやCTVについては以前の拙ブログ「放射線治療計画のターゲットで思うこと (1)」もご参考にしていただければ…
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-26.html
乳房への領域照射であり、たいていの場合はあえて腫瘍床の設定をしなくても大丈夫です。ただ、がんの局在が身体の正中寄りだったり外側縁(腋窩中線近く)だったりした場合の照射野設定時に「腫瘍床」としてある程度囲んでいた(=「見える化」した)ほうが、照射野辺縁に近すぎないか(照射野内にちゃんと含まれているか)をより正確に確認できると思っています。心配な場合は、照射野を微調整します。
まあ、放射線腫瘍専門医なら腫瘍床をあえて「見える化」しなくてもきっと意識していらっしゃることだろうと思いますが(?)、『若い先生や学生さんなどに治療計画をしてもらうと、治療計画アニメーション画像だけになった段階でGTVもCTVもPTVも全て「横一線の意識」となってしまい、「がんが確実に存在する一番重要なGTV(ここでは腫瘍床)」が照射範囲から外れそうだったり線量分布(放射線の量)が一部甘かったりしてもあまり気にしなかったり』(以前の拙ブログ「放射線治療計画のターゲットで思うこと (1)」より引用)ということが時におきます。
ということで、私は乳房温存照射の治療計画でも腫瘍床(や乳腺)を囲む派です。心臓や胃袋をなるべく照射野外にするのにも大変参考になりますし。
2時間もあったので、放射線治療の線量分布についての設定やら体動やらの意見交換もできて、大変有意義なワークショップでした。私も(つらい二日酔いでしたが気力を振りしぼって)軽快な発言を心がけました。
臨床試験やガイドラインなどのマクロ的検討が重要な点は論を待たないですが、多施設による個別の照射内容検討(各施設のやり方:工夫、お作法、治療方針、癖の比較)といったミクロ的検討会もやっぱり大事だなと、改めて感じた次第です。
他の地域ではやっているのかな? 例えば、ネットを使った多地点放射線治療計画検討会とか。
今回の企画、新しい放射線治療計画装置の使用体験会を兼ねたワークショップがなかなか面白かったです。私が以前ご厄介になったことのある施設からのご発表も多く、ぶっちゃけ参加しないわけにはいかない感もありましたが、それはそれとして(笑)。
もちろん、うちの病院にも某社関連の放射線治療関連機器が導入されています。
主催者側から事前に用意されていた乳がん温存手術症例に対する乳房への術後照射について、輪郭描出や計画作成などの大まかなシナリオに基づき代表の先生方が実際の使用感を確認し、他の参加者は前方スクリーン上の操作PC画面を見ながらリアルタイムで放射線治療計画プロセスの確認をするという、検討時間がたっぷり2時間近くも確保されたワークショップでした。「どうぞいつでも遠慮なく質問やコメントをどうぞ」という司会者の冒頭挨拶でスタートしました。
乳房温存術後照射は日本の乳がん診療ガイドラインでも推奨と明記されている標準的治療法です。前立腺がんの根治照射と同様に、全国多くの施設で放射線治療症例のかなりの割合を占めています。標準的な放射線治療計画方法も放射線治療計画ガイドラインなどに記載されていて、患側乳房の四方に体表マークなどをつけたりCT上で乳房にみえる部分を囲んだりして放射線治療を行う範囲や放射線の分布図を作成します。
乳房や周囲リンパ節領域のCTにおける囲み方・境界の定義は、RTOGという有名な放射線治療グループとしての合意指針が具体的な画像を含めて公開されていて、大変参考になります。
http://www.rtog.org/LinkClick.aspx?fileticket=vzJFhPaBipE=
とはいえ、乳腺を「厳密に」囲もうとするとあいまいな点がいろいろあるような…。
例えば、乳腺って画像上の端っていったいどこ? とか。
形がしっかりした乳房だと体表での境でわかるのですが、かなりやせ形の方とかふくよかな方のようないわゆる皮下脂肪との境界が不明瞭な乳房の患者さんだとわかりにくい。以前、乳腺が得意な放射線診断の先生といっしょに調べたこともあるのですが、厳密な境界はよくわからない、という結論でした。きちんと示した論文があったら是非教えてください。
もちろん、ガイドラインではその辺の曖昧さをふまえての範囲設定を規定しているし、昨日のユーザーミーティングでもあえて乳腺組織を囲まずに放射線治療計画を行っているという先生もいらっしゃるようでしたし(一つの目安としてあえて私は囲っていますが、もしかして希少?)、なんら問題はないわけですが。
手術で摘出したがんの近くを腫瘍床といいます。この腫瘍床に顕微鏡レベルでがんの根っこが残ってしまったり、切除部位近傍までがん細胞があった場合などには、腫瘍床へ追加照射をしたほうが良いと言われています。
腫瘍床の定義も乳房同様で厳密な範囲規定は難しく、通常は手術や診察・画像所見などを踏まえた担当医の総合判断で決定されます。施設によっては手術中に腫瘍床へ小さな金属マーキングを置いたりしています。
温存術後照射を行う場合、目に見えるがんは手術で取り切れているので、ガイドライン上では「GTVは存在しない」とあります。しかし個人的には腫瘍床はがんがある(か極めて疑わしい)からGTVに相当するくらい危険な部分だと思っています。ちなみに全体の乳腺は領域なのでCTVです。
GTVやCTVについては以前の拙ブログ「放射線治療計画のターゲットで思うこと (1)」もご参考にしていただければ…
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-26.html
乳房への領域照射であり、たいていの場合はあえて腫瘍床の設定をしなくても大丈夫です。ただ、がんの局在が身体の正中寄りだったり外側縁(腋窩中線近く)だったりした場合の照射野設定時に「腫瘍床」としてある程度囲んでいた(=「見える化」した)ほうが、照射野辺縁に近すぎないか(照射野内にちゃんと含まれているか)をより正確に確認できると思っています。心配な場合は、照射野を微調整します。
まあ、放射線腫瘍専門医なら腫瘍床をあえて「見える化」しなくてもきっと意識していらっしゃることだろうと思いますが(?)、『若い先生や学生さんなどに治療計画をしてもらうと、治療計画アニメーション画像だけになった段階でGTVもCTVもPTVも全て「横一線の意識」となってしまい、「がんが確実に存在する一番重要なGTV(ここでは腫瘍床)」が照射範囲から外れそうだったり線量分布(放射線の量)が一部甘かったりしてもあまり気にしなかったり』(以前の拙ブログ「放射線治療計画のターゲットで思うこと (1)」より引用)ということが時におきます。
ということで、私は乳房温存照射の治療計画でも腫瘍床(や乳腺)を囲む派です。心臓や胃袋をなるべく照射野外にするのにも大変参考になりますし。
2時間もあったので、放射線治療の線量分布についての設定やら体動やらの意見交換もできて、大変有意義なワークショップでした。私も(つらい二日酔いでしたが気力を振りしぼって)軽快な発言を心がけました。
臨床試験やガイドラインなどのマクロ的検討が重要な点は論を待たないですが、多施設による個別の照射内容検討(各施設のやり方:工夫、お作法、治療方針、癖の比較)といったミクロ的検討会もやっぱり大事だなと、改めて感じた次第です。
他の地域ではやっているのかな? 例えば、ネットを使った多地点放射線治療計画検討会とか。
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