先週末、1年ぶりとなるトレイルランニング(トレラン)に出場してきました。私がエントリーしたのは強者揃いの山岳系トレイルレースではなく、某女性芸能人さんも参加されていた約15kmの山下り主体のノンビリトレランでしたけど。
とはいえ、標高1500m強のスタート地点から山頂までは酸素が薄く、スタートまでの待ち時間が長く身体がやや冷え気味だったこともあり、少し登っただけですぐ息切れ感を自覚。途中の絶景で記念撮影しながら山頂に到着したら、今度は天候が急に悪化してかなり冷たい雨。そして長くて細い急斜面の下り山道は雨と泥土でつるつるになり、何度も足を取られ衣服はドロドロ。根っこに指を取られて捻挫をしたり、手足をすりむいたりと、初心者の私にとってはなかなかタフなコースでした。
まあでも、某芸能人さんには負けなかったので少し安堵(笑)
アラ50の私、ハーフマラソンなんかも去年から参加しはじめていますが、トレランは平坦な市街地を走るのとはまた違った趣で、終わってみればなかなか楽しかったように思えます。そしてゴール直後に頂いたご当地汁ものは胃にしみわたって激美味でした。
去年はトレランにはまっている高校時代(30年以上前か...)の同級生に用具をいろいろお借りして、地元の別のトレラン(この時は登り下りで約17km)に初参加でしたが、今回は全て自前で装備用意したので、来年も準備だけは万端です。
あ、手袋は必要かも。
今回も一緒に、もちろん長距離トレイルレースで参加したその同級生は、以前のブログでも少しご紹介した2日間で富士山一周するUTMF(ULTRA-TRAIL Mt.FUJI)を去年今年と2年連続で見事完走した弁護士さん。
なんと先月は、日本初開催の7日間250キロのロングトレイルレース、第1回白山ジオトレイルでも完走したそうです。この大会、累積高度は8000m以上にも及び、すべての食料や衣類・寝袋を詰め込んだ15㎏ものバックパックを自分で背負ってひたすら走るというとんでもないレース!
そして来年は、ヨーロッパアルプスの最高峰モンブランを取り巻くフランス、スイス、イタリアにまたがる山岳地帯を走るトレイルランニングの大会であるウルトラトレイル・デュ・モンブラン(L'Ultra-trail du Mont-Blanc、UTMB)の参加も狙っているらしいです。
私なんてノンビリトレランにもかかわらず今日もまだ足がガクガクしているというのに...凄すぎ。「UTMFも楽しいから一緒に出ようよ!」って誘われてるけど、今の私ではさすがにね~
とりあえず私の次の目標は、まだ出たことないフルマラソンの完走です(笑)。できれば今度の東京マラソンで。しかし当選10倍強の競争か~。チャリティーランだと10万円も出せれば参加できるらしいけど、その後当面たまのゴルフ&飲み会禁止令が出そうな不安もあるし、そこまではしなくてもいいかな?
無理なくトレランなら、続けられそうです。 年に1回位で...ダメ?
とはいえ、標高1500m強のスタート地点から山頂までは酸素が薄く、スタートまでの待ち時間が長く身体がやや冷え気味だったこともあり、少し登っただけですぐ息切れ感を自覚。途中の絶景で記念撮影しながら山頂に到着したら、今度は天候が急に悪化してかなり冷たい雨。そして長くて細い急斜面の下り山道は雨と泥土でつるつるになり、何度も足を取られ衣服はドロドロ。根っこに指を取られて捻挫をしたり、手足をすりむいたりと、初心者の私にとってはなかなかタフなコースでした。
まあでも、某芸能人さんには負けなかったので少し安堵(笑)
アラ50の私、ハーフマラソンなんかも去年から参加しはじめていますが、トレランは平坦な市街地を走るのとはまた違った趣で、終わってみればなかなか楽しかったように思えます。そしてゴール直後に頂いたご当地汁ものは胃にしみわたって激美味でした。
去年はトレランにはまっている高校時代(30年以上前か...)の同級生に用具をいろいろお借りして、地元の別のトレラン(この時は登り下りで約17km)に初参加でしたが、今回は全て自前で装備用意したので、来年も準備だけは万端です。
あ、手袋は必要かも。
今回も一緒に、もちろん長距離トレイルレースで参加したその同級生は、以前のブログでも少しご紹介した2日間で富士山一周するUTMF(ULTRA-TRAIL Mt.FUJI)を去年今年と2年連続で見事完走した弁護士さん。
なんと先月は、日本初開催の7日間250キロのロングトレイルレース、第1回白山ジオトレイルでも完走したそうです。この大会、累積高度は8000m以上にも及び、すべての食料や衣類・寝袋を詰め込んだ15㎏ものバックパックを自分で背負ってひたすら走るというとんでもないレース!
そして来年は、ヨーロッパアルプスの最高峰モンブランを取り巻くフランス、スイス、イタリアにまたがる山岳地帯を走るトレイルランニングの大会であるウルトラトレイル・デュ・モンブラン(L'Ultra-trail du Mont-Blanc、UTMB)の参加も狙っているらしいです。
私なんてノンビリトレランにもかかわらず今日もまだ足がガクガクしているというのに...凄すぎ。「UTMFも楽しいから一緒に出ようよ!」って誘われてるけど、今の私ではさすがにね~
とりあえず私の次の目標は、まだ出たことないフルマラソンの完走です(笑)。できれば今度の東京マラソンで。しかし当選10倍強の競争か~。チャリティーランだと10万円も出せれば参加できるらしいけど、その後当面たまのゴルフ&飲み会禁止令が出そうな不安もあるし、そこまではしなくてもいいかな?
無理なくトレランなら、続けられそうです。 年に1回位で...ダメ?
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筋層浸潤性膀胱がんの膀胱温存療法で投与される抗がん剤はシスプラチンがお薦めとなっています。
これまでいろいろな臨床試験が報告されていますが、最も系統的に研究を進めているのが世界的に有名な放射線腫瘍グループであるRTOG(Radiation Therapy Oncology Group)の一連の臨床試験でしょう。RTOGもシスプラチンが中心で、準備段階を含めると筋層浸潤性膀胱がんの温存療法だけで10以上の臨床試験が行われています。
シスプラチンに他の薬を足して効果がどうかという臨床試験も世界中でいろいろ行われていますが、どの組み合わせが一番かというのはまだ定まっていないようです。
なお、このRTOG試験を参考にする際、気をつけなければいけない点が二つあると思います。
一つは、同一グループなのにそれぞれの臨床試験が「かなり」違う治療内容に設定されていることです。ここでは詳細は省きますが、抗がん剤の投与法はもとより放射線治療の内容(分割照射法、総線量、照射野設定など)も相当なばらつきがあります。
もう一つは、抗がん剤+放射線治療同時併用の途中で2 - 4週程度もお休み期間があることです。その時に膀胱内視鏡を使った中間評価をして、もしがんが残っていた場合には救済手術(膀胱全摘術)に方針が変更されます。その割合はなんと全体の1/3近くにもなります。
シスプラチンという抗がん剤は尿といっしょに身体の外に出される薬なので、腎機能が悪い患者さんには投与困難です。そういう方には、最近イギリス(BC 2001試験)から報告されたマイトマイシンCと5-Fu(フルオロウラシル)の組み合わせが代役になりそうです。でもこれ、日本人での効果や副作用はまだよくわかりません。
James ND et al. N Engl J Med 366: 1477-1488, 2012
他にパクリタキセル、ジェムシタビン、トラスツズマブといった最近の薬を使った報告も出てきましたが、まだいずれも臨床試験での実験的な段階です。
そして、シスプラチンを中心とした抗がん剤と、シスプラチンを除く抗がん剤を比較した筋層浸潤性膀胱がん温存療法の第III相試験の論文報告もまだありません。
_______________________
【Weblio辞書より(勝手に改変)】
第I/II相(臨床)試験
【仮名】だい1/だい2そうりんしょうしけん
新しい治療の安全性、使う量、治療効果を調べる臨床試験。
第III相(臨床)試験
【仮名】だい3そうりんしょうしけん
新しい治療を受けたヒトの結果と、標準治療を受けたヒトの結果を比較する研究(例えば、どちらの結果で生存率が良いか、あるいは副作用が少ないか)。大部分の場合、第I相および第II相試験でも効果がみられると思われる治療のみ、第III相試験へと移行する。第III相試験は通常数百人レベルで行われる。
_______________________
日本では、カテーテル(細い管)を主に足の付け根の動脈から膀胱近くの血管まで挿入し直接がんへ集中的に抗がん剤を注射する、いわゆる動注化学療法と放射線治療の組み合わせが一部の施設で積極的に行なわれています。治療効果が良いという報告はいくつかでているのですが、治療内容はそれぞれかなり異なります。
臨床試験として動注化学療法の安全性や有効性を証明した報告はなく、また実は海外では動注化学療法そのものの報告が少ないです。今後、積極的に行っている日本の施設を中心に筋層浸潤性膀胱がんに対する動注化学療法+放射線治療をきちんと臨床試験として検証する必要があるように思います。
筋層浸潤性膀胱がんに対し放射線治療を始める前にがんを小さくするため、あらかじめ抗がん剤をしばらくの期間投与する導入化学療法という方法もあり、行うか否かを比べた第III相試験は2つあります。どちらもシスプラチン、メソトレキセート、ビンブラスチン3剤を組み合わせたCMV(進行膀胱がんに対する抗がん剤単独治療として代表的なM-VACからアドリアマイシンを除いたメニュー)なのですが、治療成績に差はでませんでした。そして、副作用が強かったため途中で中止になってしまった試験(RTOG 89-03)もありました。
また10年ほど前には、導入化学療法後の手術(膀胱全摘術)を含めた10の臨床試験、全2688症例の大規模な解析報告(メタアナリシス)が発表されました。全体としては導入化学療法群で行わない群と比し10年生存率が約5%改善していたのですが、放射線治療群にかぎってみると残念ながら有意差はみられませんでした。
Lancet 361: 1927-1934, 2003
ということで、筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱温存療法としての導入化学療法の有効性は現時点では確立されていません。
進行・転移性膀胱がんに対する代表的な抗がん剤治療として、国内外の診療ガイドラインでは先ほど示したM-VAC、近年ではGC(ジェムシタビン、シスプラチン)が推奨されています。しかし先に触れた通り、筋層浸潤性膀胱がんに対する抗がん剤と放射線治療の一般的な組み合わせはアドリアマイシンを省いたCMV、またはジェムシタビン単剤(これも実験的段階)などであり、M-VACまたはGCといった「抗がん剤単独での通常投与量」で放射線治療との同時併用が採用された「まともな」臨床試験の論文報告はありません。
どのがん治療においても共通することでしょうが、診療ガイドラインに「抗がん剤と放射線治療の同時併用が推奨」と書かれていても、『抗がん剤単独での治療内容を安易に放射線治療との同時併用に転用するのは良くありません』。
でも、学会などで報告を見聞きする限り、いまだに安易に(?)抗がん剤単独での治療内容(投与量はあまり根拠なく減らしているようですが)と放射線治療を同時併用している施設って稀ならずあります。
以上、まとめると
1.膀胱内視鏡切除(TURBT)後の放射線治療+シスプラチン(+α?)の同時併用がお薦め
2.腎機能低下例にはマイトマイシンC+5-Fuも選択肢(?) その他の薬はまだ研究段階
3.動注化学療法は臨床試験のエビデンスがない
4.導入化学療法の有効性は確立されていない
5.抗がん剤単独レジメを安易に放射線治療と同時併用するのは慎むべき
筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱温存療法に関連したきちんとした第III相試験はとても少なく(たぶん世界でこれまで5つ)、シスプラチン中心とはいえさまざまな膀胱温存療法が報告されていて、標準治療が定まっているとはいえません。また、日本では動注療法を行う施設も少なくなく、施設ごとに違う内容の抗がん剤と放射線治療の同時併用を実施しているのが現状のようです。
(さらに続く、放射線治療編…)
これまでいろいろな臨床試験が報告されていますが、最も系統的に研究を進めているのが世界的に有名な放射線腫瘍グループであるRTOG(Radiation Therapy Oncology Group)の一連の臨床試験でしょう。RTOGもシスプラチンが中心で、準備段階を含めると筋層浸潤性膀胱がんの温存療法だけで10以上の臨床試験が行われています。
シスプラチンに他の薬を足して効果がどうかという臨床試験も世界中でいろいろ行われていますが、どの組み合わせが一番かというのはまだ定まっていないようです。
なお、このRTOG試験を参考にする際、気をつけなければいけない点が二つあると思います。
一つは、同一グループなのにそれぞれの臨床試験が「かなり」違う治療内容に設定されていることです。ここでは詳細は省きますが、抗がん剤の投与法はもとより放射線治療の内容(分割照射法、総線量、照射野設定など)も相当なばらつきがあります。
もう一つは、抗がん剤+放射線治療同時併用の途中で2 - 4週程度もお休み期間があることです。その時に膀胱内視鏡を使った中間評価をして、もしがんが残っていた場合には救済手術(膀胱全摘術)に方針が変更されます。その割合はなんと全体の1/3近くにもなります。
シスプラチンという抗がん剤は尿といっしょに身体の外に出される薬なので、腎機能が悪い患者さんには投与困難です。そういう方には、最近イギリス(BC 2001試験)から報告されたマイトマイシンCと5-Fu(フルオロウラシル)の組み合わせが代役になりそうです。でもこれ、日本人での効果や副作用はまだよくわかりません。
James ND et al. N Engl J Med 366: 1477-1488, 2012
他にパクリタキセル、ジェムシタビン、トラスツズマブといった最近の薬を使った報告も出てきましたが、まだいずれも臨床試験での実験的な段階です。
そして、シスプラチンを中心とした抗がん剤と、シスプラチンを除く抗がん剤を比較した筋層浸潤性膀胱がん温存療法の第III相試験の論文報告もまだありません。
_______________________
【Weblio辞書より(勝手に改変)】
第I/II相(臨床)試験
【仮名】だい1/だい2そうりんしょうしけん
新しい治療の安全性、使う量、治療効果を調べる臨床試験。
第III相(臨床)試験
【仮名】だい3そうりんしょうしけん
新しい治療を受けたヒトの結果と、標準治療を受けたヒトの結果を比較する研究(例えば、どちらの結果で生存率が良いか、あるいは副作用が少ないか)。大部分の場合、第I相および第II相試験でも効果がみられると思われる治療のみ、第III相試験へと移行する。第III相試験は通常数百人レベルで行われる。
_______________________
日本では、カテーテル(細い管)を主に足の付け根の動脈から膀胱近くの血管まで挿入し直接がんへ集中的に抗がん剤を注射する、いわゆる動注化学療法と放射線治療の組み合わせが一部の施設で積極的に行なわれています。治療効果が良いという報告はいくつかでているのですが、治療内容はそれぞれかなり異なります。
臨床試験として動注化学療法の安全性や有効性を証明した報告はなく、また実は海外では動注化学療法そのものの報告が少ないです。今後、積極的に行っている日本の施設を中心に筋層浸潤性膀胱がんに対する動注化学療法+放射線治療をきちんと臨床試験として検証する必要があるように思います。
筋層浸潤性膀胱がんに対し放射線治療を始める前にがんを小さくするため、あらかじめ抗がん剤をしばらくの期間投与する導入化学療法という方法もあり、行うか否かを比べた第III相試験は2つあります。どちらもシスプラチン、メソトレキセート、ビンブラスチン3剤を組み合わせたCMV(進行膀胱がんに対する抗がん剤単独治療として代表的なM-VACからアドリアマイシンを除いたメニュー)なのですが、治療成績に差はでませんでした。そして、副作用が強かったため途中で中止になってしまった試験(RTOG 89-03)もありました。
また10年ほど前には、導入化学療法後の手術(膀胱全摘術)を含めた10の臨床試験、全2688症例の大規模な解析報告(メタアナリシス)が発表されました。全体としては導入化学療法群で行わない群と比し10年生存率が約5%改善していたのですが、放射線治療群にかぎってみると残念ながら有意差はみられませんでした。
Lancet 361: 1927-1934, 2003
ということで、筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱温存療法としての導入化学療法の有効性は現時点では確立されていません。
進行・転移性膀胱がんに対する代表的な抗がん剤治療として、国内外の診療ガイドラインでは先ほど示したM-VAC、近年ではGC(ジェムシタビン、シスプラチン)が推奨されています。しかし先に触れた通り、筋層浸潤性膀胱がんに対する抗がん剤と放射線治療の一般的な組み合わせはアドリアマイシンを省いたCMV、またはジェムシタビン単剤(これも実験的段階)などであり、M-VACまたはGCといった「抗がん剤単独での通常投与量」で放射線治療との同時併用が採用された「まともな」臨床試験の論文報告はありません。
どのがん治療においても共通することでしょうが、診療ガイドラインに「抗がん剤と放射線治療の同時併用が推奨」と書かれていても、『抗がん剤単独での治療内容を安易に放射線治療との同時併用に転用するのは良くありません』。
でも、学会などで報告を見聞きする限り、いまだに安易に(?)抗がん剤単独での治療内容(投与量はあまり根拠なく減らしているようですが)と放射線治療を同時併用している施設って稀ならずあります。
以上、まとめると
1.膀胱内視鏡切除(TURBT)後の放射線治療+シスプラチン(+α?)の同時併用がお薦め
2.腎機能低下例にはマイトマイシンC+5-Fuも選択肢(?) その他の薬はまだ研究段階
3.動注化学療法は臨床試験のエビデンスがない
4.導入化学療法の有効性は確立されていない
5.抗がん剤単独レジメを安易に放射線治療と同時併用するのは慎むべき
筋層浸潤性膀胱がんに対する膀胱温存療法に関連したきちんとした第III相試験はとても少なく(たぶん世界でこれまで5つ)、シスプラチン中心とはいえさまざまな膀胱温存療法が報告されていて、標準治療が定まっているとはいえません。また、日本では動注療法を行う施設も少なくなく、施設ごとに違う内容の抗がん剤と放射線治療の同時併用を実施しているのが現状のようです。
(さらに続く、放射線治療編…)
5月連休明けのことですが、なぜか田舎の町医者あてに放射線科関連の某雑誌から「筋層浸潤性膀胱がんの化学放射線治療」の総説執筆依頼状が届きました。これまでそんなものを書いたことはございません。
尿を一時的にためる臓器である膀胱粘膜の外壁にある平滑筋にまでがんが及んでしまった状態を「(筋層)浸潤性膀胱がん」といいます。膀胱にがんがとどまってはいるものの、残念ながら早期がんの扱いにはなりません。
一昨日が最初の原稿提出締切日でしたが、なんとか間に合いました。この後、専門の先生方による厳しいチェックがきっとたくさん入った修正原稿がそのうち私の所に戻ってきて、何回かのダメ出しを食らいつつ、数か月後にはめでたく医学雑誌に掲載となるはずです(たぶん)。
同業者の方々におかれましては、もし私の拙文をご覧になる機会がございましたらどうか暖かい目でお読みいただければ幸いです。もちろん日本語です。
しかし、締切日の直前までなかなかやる気がわいてこない性格は昔から変わらずで、我ながら困ったものです。
ということで、筋層浸潤性膀胱がんの放射線治療についてせっかくいろいろ調べたし、(かなり修正して)ブログ風に書き直してみることにしました。
****************************
筋層浸潤性膀胱がんに対する第一選択の治療は、手術で膀胱を全部取ってしまうこと(膀胱全摘術)とされます。膀胱温存療法といって抗がん剤+放射線治療で膀胱を残したまま治す方法もあるのですが、現時点では「有効ではあるけれど手術に勝るわけではなく、また再発した後の治療で困ることもあるので、治りそうな患者さんに限定しましょう」というのが世界中の膀胱がん専門医たちの意見です。
で、膀胱内視鏡でがんをなるべく切除(低侵襲手術)をしたあとに抗がん剤+放射線治療を同時併用するのが膀胱温存療法の一番のお勧め方法とされます。
しかし実は、筋層浸潤性膀胱がんに対する抗がん剤+放射線治療(膀胱温存療法)を膀胱全摘手術と「きちんと比べた」臨床試験というのはこれまで一度も報告されていません。
他のがんでも同じで、手術と(抗がん剤+)放射線治療の治療効果を「きちんと」比べた臨床試験の報告って、世の中にびっくりするくらい存在しないんです。
例えば手術可能な子宮頸がんの抗がん剤+放射線治療。国内外から手術に匹敵する治療効果が数多く報告され、がんが治ったかどうかを評価するうえで最も信頼度が高い『生存率に実質上は差がありません』。しかし、手術とのきちんとした比較試験がほとんど無いため「日本のガイドライン」では過去の治療件数やガイドライン担当委員が多い手術のほうが優先順位の高い書き方になっています。
ちなみに日本で最近、早期食道がんや早期肺がんで手術と(抗がん剤+)放射線治療をきちんと比較するという臨床試験が進められています。これはかなり画期的な臨床試験だと思います。
はたして今後どのような結果が出てくる。。。結果、出るだろうか?
さらに書くと、手術または放射線療法(つまり何らかの西洋医療を施す)をする群となにも治療しない(有名な近藤某先生が勧めるがん放置療法のような)群をきちんと比べた臨床試験というのも私が知っているかぎりですが無さそうです。筋層浸潤性膀胱がんもしかり。
あえて比べるまでもなくその差歴然で治療したほうが優っている、人体実験である臨床試験がそもそも成り立たない、などというのが大多数の専門医の意見のようです。ただ、その辺をきちんと示さない限り、「〇✕と闘うな」「△□不要論」といった反西洋医療派を納得させることはできないのかもしれません。もっとも、データの解釈についてもいろいろな見解があり、結局はこれまで通り平行線の議論をたどるかもしれません。
いや、もしかして(普通の西洋医学者にとって)非常識でびっくりするような結果が出たりして??
これ以上はここで深入りしないことにしておきます。
さて、筋層浸潤性膀胱がんに対する抗がん剤+放射線治療と放射線治療単独の治療成績を比較した最も信頼度が高いとされる第III相試験報告というものは過去に2つだけあります。いずれも骨盤内無病生存率、つまり放射線治療を行った部分からのがんの再発は抗がん剤+放射線治療群のほうが統計学的に有意に少なく優れた治療と評価されています。
1) Coppin CM et al. J Clin Oncol 14: 2901-2907, 1996
2) James ND et al. N Engl J Med 366: 1477-1488, 2012
でも、実はこの2つの第III相試験、どちらの報告も抗がん剤上乗せ効果による生存率の改善は示されませんでした。そして、どちらも副作用は多めでした。
しかしそれ以外の多くの報告で、放射線治療単独は生存率を含めた治療成績が劣っているため標準的な膀胱温存療法としては推奨されないと国内外の膀胱がん診療ガイドラインには明記されています。
これは抗がん剤と一緒にしない治療が全く効果ないという結果というわけでは決してありません。両者を比べたら何人かに一人くらいの差で抗がん剤+放射線治療のほうが数字上は良さそうだったということにすぎません。もちろん、その数字の差は大きいのですけれど。
そして、実際に個々の患者さんに当てはめる場合は、副作用がどうかとか、年齢や体調がどうかとか、身体を傷つける治療を患者さんがどこまで希望されるかとか、別のいろいろな問題も加えて検討する必要がでてきます。
どんながんの治療でも共通することですけどね。
(長いので今日はとりあえずここまでにします)
尿を一時的にためる臓器である膀胱粘膜の外壁にある平滑筋にまでがんが及んでしまった状態を「(筋層)浸潤性膀胱がん」といいます。膀胱にがんがとどまってはいるものの、残念ながら早期がんの扱いにはなりません。
一昨日が最初の原稿提出締切日でしたが、なんとか間に合いました。この後、専門の先生方による厳しいチェックがきっとたくさん入った修正原稿がそのうち私の所に戻ってきて、何回かのダメ出しを食らいつつ、数か月後にはめでたく医学雑誌に掲載となるはずです(たぶん)。
同業者の方々におかれましては、もし私の拙文をご覧になる機会がございましたらどうか暖かい目でお読みいただければ幸いです。もちろん日本語です。
しかし、締切日の直前までなかなかやる気がわいてこない性格は昔から変わらずで、我ながら困ったものです。
ということで、筋層浸潤性膀胱がんの放射線治療についてせっかくいろいろ調べたし、(かなり修正して)ブログ風に書き直してみることにしました。
****************************
筋層浸潤性膀胱がんに対する第一選択の治療は、手術で膀胱を全部取ってしまうこと(膀胱全摘術)とされます。膀胱温存療法といって抗がん剤+放射線治療で膀胱を残したまま治す方法もあるのですが、現時点では「有効ではあるけれど手術に勝るわけではなく、また再発した後の治療で困ることもあるので、治りそうな患者さんに限定しましょう」というのが世界中の膀胱がん専門医たちの意見です。
で、膀胱内視鏡でがんをなるべく切除(低侵襲手術)をしたあとに抗がん剤+放射線治療を同時併用するのが膀胱温存療法の一番のお勧め方法とされます。
しかし実は、筋層浸潤性膀胱がんに対する抗がん剤+放射線治療(膀胱温存療法)を膀胱全摘手術と「きちんと比べた」臨床試験というのはこれまで一度も報告されていません。
他のがんでも同じで、手術と(抗がん剤+)放射線治療の治療効果を「きちんと」比べた臨床試験の報告って、世の中にびっくりするくらい存在しないんです。
例えば手術可能な子宮頸がんの抗がん剤+放射線治療。国内外から手術に匹敵する治療効果が数多く報告され、がんが治ったかどうかを評価するうえで最も信頼度が高い『生存率に実質上は差がありません』。しかし、手術とのきちんとした比較試験がほとんど無いため「日本のガイドライン」では過去の治療件数やガイドライン担当委員が多い手術のほうが優先順位の高い書き方になっています。
ちなみに日本で最近、早期食道がんや早期肺がんで手術と(抗がん剤+)放射線治療をきちんと比較するという臨床試験が進められています。これはかなり画期的な臨床試験だと思います。
はたして今後どのような結果が出てくる。。。結果、出るだろうか?
さらに書くと、手術または放射線療法(つまり何らかの西洋医療を施す)をする群となにも治療しない(有名な近藤某先生が勧めるがん放置療法のような)群をきちんと比べた臨床試験というのも私が知っているかぎりですが無さそうです。筋層浸潤性膀胱がんもしかり。
あえて比べるまでもなくその差歴然で治療したほうが優っている、人体実験である臨床試験がそもそも成り立たない、などというのが大多数の専門医の意見のようです。ただ、その辺をきちんと示さない限り、「〇✕と闘うな」「△□不要論」といった反西洋医療派を納得させることはできないのかもしれません。もっとも、データの解釈についてもいろいろな見解があり、結局はこれまで通り平行線の議論をたどるかもしれません。
いや、もしかして(普通の西洋医学者にとって)非常識でびっくりするような結果が出たりして??
これ以上はここで深入りしないことにしておきます。
さて、筋層浸潤性膀胱がんに対する抗がん剤+放射線治療と放射線治療単独の治療成績を比較した最も信頼度が高いとされる第III相試験報告というものは過去に2つだけあります。いずれも骨盤内無病生存率、つまり放射線治療を行った部分からのがんの再発は抗がん剤+放射線治療群のほうが統計学的に有意に少なく優れた治療と評価されています。
1) Coppin CM et al. J Clin Oncol 14: 2901-2907, 1996
2) James ND et al. N Engl J Med 366: 1477-1488, 2012
でも、実はこの2つの第III相試験、どちらの報告も抗がん剤上乗せ効果による生存率の改善は示されませんでした。そして、どちらも副作用は多めでした。
しかしそれ以外の多くの報告で、放射線治療単独は生存率を含めた治療成績が劣っているため標準的な膀胱温存療法としては推奨されないと国内外の膀胱がん診療ガイドラインには明記されています。
これは抗がん剤と一緒にしない治療が全く効果ないという結果というわけでは決してありません。両者を比べたら何人かに一人くらいの差で抗がん剤+放射線治療のほうが数字上は良さそうだったということにすぎません。もちろん、その数字の差は大きいのですけれど。
そして、実際に個々の患者さんに当てはめる場合は、副作用がどうかとか、年齢や体調がどうかとか、身体を傷つける治療を患者さんがどこまで希望されるかとか、別のいろいろな問題も加えて検討する必要がでてきます。
どんながんの治療でも共通することですけどね。
(長いので今日はとりあえずここまでにします)
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