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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 先日、福島県郡山市の総合南東北病院さんを見学させていただける機会がありました。

 国内で民間初となる粒子線治療施設として平成20年10月に開院した併設の南東北がん陽子線治療センターさんは以前にも一度見学させていただいたことがあるのですが、今回は噂のホウ素中性子補足療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)装置を設置したホウ素中性子補足療法研究センターさんの施設見学もちらっと兼ねて。

 南東北病院さんのHPからBNCTの説明文を『』内に引用させていただきます。
『BNCTはエネルギーの低い中性子とがん細胞・組織に集積するホウ素化合物の反応を利用して、がん細胞をピンポイント で破壊する、身体への負担が少ない最先端の放射線がん治療法です。正常な細胞への影響を極力抑えつつ、外科手術や既存のX線治療では難しい再発がんや進行 がんにも有効とされています。当財団では、京都大学と住友重機械工業株式会社(東京都品川区)が共同開発し、間もなく京都大で実際の患者を対象とする臨床 試験(以下、治験)を開始する段階にある、「サイクロトロン」という加速器を用いたBNCT装置を導入することとしています。
 今年度(=平成24年度)中に建屋の建設とBNCT装置の設置を開始し、装置の安全性や性能向上試験を経て、平成26年度後半より治験を開始する予定です。そして平成30年度には厚生労働省の認定する先進医療として治療の開始を目指します。計画が実現すると、病院でBNCT治療を行うのは世界で初めてとなります。』
http://www.minamitohoku.or.jp/infobox/bnct.html

 BNCT装置のすごさはもとより、研究センター内には温泉も付いた格安宿泊施設やレストランも併設されていて、利用者さんにも快適そうな環境だと思いました。


 お隣にある陽子線治療センターさんも民間施設として初導入の陽子線装置はもちろんCT、MRI、PET装置などが勢ぞろいでした。陽子線治療センター内には19床の温泉付き入院施設や広々したラウンジなどがあるうえ、総合病院の一般病室やBNCTセンターの宿泊施設も利用できるそうです。
http://www.southerntohoku-proton.com/

 陽子線+BNCT…あまり詳しくありませんが、最先端の粒子線装置を両方兼ね備えた施設は世界的にも(ほとんど)ないのではないでしょうか?すごすぎます。


 さらにお隣の南東北医療クリニックさんには、頭部のピンポイント放射線治療として有名なガンマナイフ装置や、個人的には昔からとても気になっているがん治療の一つである局所温熱療法装置(サーモトロンRF-8)が2台もありました。
 温熱療法は20年近く前に某病院で私も治療にたずさわった経験があり、その時の治療効果などは今でも忘れられません。その時の経験談や思い出話はまた改めて別のブログにしようと思います。

 クリニックさんの正面玄関前には温泉の足湯もあり、これもかなり気になりました(笑)
http://www.minamitohoku.or.jp/up/news/minamitouhoku/topnews/200512/topic.htm


 もちろん総合南東北病院さんの本院にも通常のX線治療装置などがあり、そちらでIMRTをはじめとする高精度放射線治療を積極的に行われていました。本院にも放射線治療科としての入院患者さんが20名以上いて、クリニックさんの19床と合わせてなんと常時40床以上も放射線治療科で入院患者さんを診ていらっしゃるとのことでした。

 スタッフは非常勤を含めると総勢10名を超える放射線腫瘍医が在籍され、若くて元気そうな先生も多いようでした。放射線治療科で40床越えというのは全国の大学病院ですらほとんどありません。中央管理部門ということで病床を持たないことがなぜか正当化されつつある全国の放射線腫瘍医さんたちの傾向・風潮の中で珍しいご施設さんだと思いました。特に若い先生方には貴重な経験の時期だろうなと、その点も感心してきました。

 多く在籍しておられる医学物理士さんや診療放射線技師さんたちも治療部門専属だそうです。これも多くの大学病院レベルを超える規模ですね。


 田舎の放射線腫瘍医にとって、月並みですがとにかく「すごい」の一言でした。

 2年前に都立駒込病院さんを見学した時の様々な放射線治療装置やスタッフの充実度はすごかったですが、南東北病院さんも。

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【2015/03/22 13:32】 | 放射線治療:機器・技術
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 先週末、東京の慶応義塾大学信濃町キャンパス東校舎で開催された「第7回JKがんリハビリフォーラム」に出席してきました。このフォーラム、順天堂大学さんと慶応大学さんのクローズの会(JuntenとKeioの頭文字をとってJK)として当初はスタートしたそうなのですが、がん患者さんの治療やリハビリに関する多職種オープンカンファレンスとして今に至るそうです。

 (私は初参加でしたが)今回は2つの特別講演のあと、各施設から症例検討を主としたいろいろな演題発表がありました。


 最初のご講演は、奈良県立医科大学整形外科の城戸先生による「骨転移キャンサーボードの取り組み」と題した5年間の運用経験について。骨転移診療に限定した国内で先駆的で積極的なご施設からの報告でした。

 骨転移というのは、つらい痛みへの対応はもちろんのこと、一生治らないかもしれない病的な骨折を起こす危険性やだんだん悪化する可能性がある全身の病状など、治療法の選択やリハビリをはじめとする心身のケアが難しいことが少なくありません。骨という部分だけを診て姑息的に対応できるものではなく、主治医はもとより整形外科医、放射線科医、緩和ケア医、看護師さん、リハビリなどの療法士さん、心理士さん、在宅療養を見据えたソーシャルワーカーさんやケアマネさんなど、多職種の関与が大変重要になります。また、骨転移というのはがんを診療する可能性があるほとんどすべての診療科でかかわる可能性がある病態でもあります。
 限られた診療科メンバーで構成される臓器別のキャンサーボードよりも、はるかに多くの医療従事者が参加しうるのが骨転移キャンサーボードなのかもしれません。

 などと偉そうに書いたものの、実は私もまだ骨転移キャンサーボードを自施設で行った経験はありません。多職種をまじえた院内全体でのキャンサーボードというものを昨年からはじめたうちの施設にとって(臓器別は以前から行っていました)、今後のために大変参考になったご講演でした。


 2つ目のご講演は、東大宮訪問看護ステーション作業療法士の佐治先生による「地域におけるリハビリテーション」、在宅での骨転移患者さんへのリハビリ対応を中心としたお話でした。

 医療者により様々な制限や拘束を余儀なくされる入院生活と違って、骨転移治療後などで筋力低下したり、骨折などの危険が心配されコルセットなどの装具や歩行器などが必要だったりしても、自宅に戻るとそんなことお構いなしの生活をしてしまう方が(私の予想通り)少なくなく、リスクがあってもなかなか止められない状況があるそうです。
 「自分でできるかぎり自分でしたい」…ご本人の自立した生活とご家族の介護が中心となる在宅。地域におけるがんのリハビリテーション啓蒙はまだ始まったばかりだそうですが、病診連携の大切さを改めて教えていただきました。

 私を含めた病院スタッフも在宅診療の現場を直接経験する機会をつくるべきかもしれません。


 このフォーラムの存在、facebookお友達の先輩Drからの情報で知りました。ありがとうございました。放射線腫瘍医の参加ってこれまで何人くらいいたのだろう?機会があったら、また参加してみたいものです。

 たまたまなのですが慶應大の某先生と緩和医療系の打ち合わせ会をする必要があったこともあり、ついでと言ってはなんですが慶応大学病院さんをざっくりですがはじめて見学しました。慶応大さんでは放射線治療装置のことを「リナック」って呼ぶのですね。
 病院はこれからいろいろな新築工事が予定されているそうです。なかなか風情のある歴史ありそうな建造物が多い病院でした。

 その後は新宿まで散歩して、以前から気になっていた新宿眼科画廊さんにちょっと立ち寄りました。なんとも不思議な雰囲気の画廊でしたが、また興味深い催しがあったら立ち寄ってみたいものです。

 で、〆は東京駅で電車の最終まで朋友と飲み会。あっという間に時間が過ぎ、私も話足りなかったです。また、よろしくね~。

 楽しい一日でした。


 ここ1か月、いろいろあってブログ投稿が滞ってしまいましたが、いろいろあってまた少し滞るかもしれません…


【2015/03/10 22:19】 | 緩和医療
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