だいぶ前のことになりますが、胸部への緩和的放射線治療を行う目的で70才代の〇さんがうちの科に入院しました。〇さんからお話を伺うと、最初の手術後から体重は少なかったそうですが、今回の入院時は食欲不振もあって体重30kg台とかなり痩せてきていました。
放射線治療が始まってまもなくの病室回診時、私が〇さんに食事の具合をお尋ねすると、「本当はエビチリが食べたいんだけど、からいものは(放射線治療の食道粘膜炎が強くなるから)ダメって言われていて…」と暗い表情でポツリ。
私、「〇さん、どうぞお食べください。主治医として許可いたします!」と即答いたしました。
〇さんの放射線治療内容、町医者的には食道粘膜に照射される範囲はたいしたことなかったですし、すでに別の部分で痛み止めの内服を開始されていましたし、「まあ大丈夫でしょう」って感じでしたから。
すると〇さん、パァーッと満面の笑みを浮かべられました。入院後、初めて拝見した笑顔でした。
後日、次の回診の時、〇さんにそれとなく「エビチリ、食べました?」と私が伺ってみました。
「美味しかった!許可してくれた時、先生に後光が差して見えました」と、また笑顔。
飲みこんだ時の胸の痛みはなかったそうです。
その後も笑いながら二人でエビチリ談義をしばし続けました。
胸部に放射線治療を行う患者さんに対し、いずれ食道粘膜炎が出てくる可能性があることから症状を悪化させないように「(放射線治療開始時から)からい食べ物は控えましょう」という食事指導が、医師や看護師から治療開始前や照射中に行われることがあります。風邪ひいてのどが荒れているときに辛い物を食べるのは痛くてしんどいでしょ?治療が進むとだんだんそんな感じになる(ような)ので刺激物は控えたほうがいいという理由で。
特に抗がん剤を同時併用している場合は、粘膜炎に関しても放射線増感効果が出てしまうので注意が必要です。
でも、緩和的放射線治療で照射範囲が小さかったり総線量が少なかったりする場合には、照射部位の粘膜炎は(そんなに)ひどくならないことが多いです。また、普通は照射開始数日くらいまでなら何の症状も感じませんし。
緩和的放射線治療でよく用いられる1回3Gy以上の小分割短期間照射法と抗がん剤や分子標的薬剤との「同時」併用も確立したメニューってあるようでなかなかないですから、私は副作用対策を優先して可能ならお薬を一旦お休みしていただくことが少なくありません。この辺は医師によって病状によって意見が分かれるところかもしれません。
ということで、緩和的放射線治療の場合、少なくとも粘膜炎が無症状のうちは食事制限で神経質になり過ぎなくて良いだろうと個人的には思っています。ぶっちゃけ、私の食事指導は甘いかもしれません。
もちろん、痛みなどの症状が出はじめた場合には気をつける時期であることをきちんとお伝えしていますし、何でもかんでも気にしなくていいと言っているわけではないのですが、時と場合により臨機応変な対応というのも大事なのではないかと。
食べることって人生の楽しみの一つですから。 (ね、勝亦社長!)
と、偉そうに書きましたが、〇さんに今回「エビチリだめ」を意識させたのは私(たち)でした…。
実際同じようなことをお伝えしているつもりでも、各医療者による説明の仕方やニュアンスが微妙に違って患者さんに伝わることも少なくありません。また、説明不足があったかもしれません。放射線治療前の私(たち)の説明の時なのか、その後の看護師さんたちの説明の時なのか、患者さん説明用の冊子かなにかを見た時なのかわからないのですが、〇さんにはしばらく「損」をさせてしまいました。
医師・看護師の連携や意志統一がなってない!というご批判、まことに申し訳ございません。
ところで、日本放射線腫瘍学会公認の「放射線治療を受けられる方へ」という放射線治療患者さん説明用の小冊子があります。うちの病院でも患者さんたちへ配布しています。
この冊子の食事指導上の注意点の所に、「のりやワカメ、トマトの皮」にオレンジ色の☓がついている部分があります。粘膜に放射線治療が周囲の粘膜に照射された場合に食べるのに気をつけたほうが良い食品類を紹介しています。もちろん、これ以外は何でも食べていいというわけでなく、代表的な食材の一部です。ちなみに、その上には禁止すべきとされるアルコールやタバコが赤☓をつけられています。絶対にダメ!という赤です(たぶん)。つまり、オレンジ☓は「絶対にダメ」というわけではありません。
実は(少しくらいの)アルコールも個人的にはオレンジ☓なのですが…
この冊子をご覧になった後で、「のりやワカメが好きなんですけど食べちゃダメですか?」と質問される乳房温存術後で胸壁のみに照射される患者さんが時々いらっしゃいます。部位的に粘膜には全く照射されないので、治療中の副作用として粘膜炎が出てくることはありません(つまり、のりやワカメを食べても何ら問題ないということです)。食道がんによる食道狭窄部に薄皮のような食材が蓋をしてしまう(≒詰まらせてしまう)心配もありません。でも、少なからず患者さんたちはそうは思わないようです。
これも、患者さんにきちんと伝わっていないという点で、私たちが気をつけなければいけない所です。
ただ、外来などで一度説明を受けても、その内容を覚えていらっしゃらない患者さんも実際にはいらっしゃいます。放射線治療科受診の時は(時も?)、何人もの医療者からいろいろな難しい説明をたくさん聞いたり、そうでなくても病状や不安で頭が真っ白になって、説明されたこと自体を覚えていない方もいらっしゃいます。
で、自宅に戻って説明書を熟読し、書いてあるから「(オレンジ☓の)のりやワカメ食べちゃダメなんだ…」と思い込んでしまわれるようなのです。もちろん、その方に合っていそうな各部位ごとの食事指導も(特に看護師さんたちが)丁寧に行っているつもりなのですが。
他にも気をつけなければいけない食材もありますが全部を記載するのはほぼ不可能ですし、何でもかんでも食べるのを控えるというのも(特に外来通院では)大変なことです。
患者さん全員が充分にご理解いただけるような放射線治療の副作用対策用の説明書を作成するのってなかなか簡単ではないような気がします…。
〇さん、無事に緩和的放射線治療が終了してからも飲みこんだ時の痛みは感じなかったそうです。よかったよかった。
(スーラータンメンへ続く)

放射線治療が始まってまもなくの病室回診時、私が〇さんに食事の具合をお尋ねすると、「本当はエビチリが食べたいんだけど、からいものは(放射線治療の食道粘膜炎が強くなるから)ダメって言われていて…」と暗い表情でポツリ。
私、「〇さん、どうぞお食べください。主治医として許可いたします!」と即答いたしました。
〇さんの放射線治療内容、町医者的には食道粘膜に照射される範囲はたいしたことなかったですし、すでに別の部分で痛み止めの内服を開始されていましたし、「まあ大丈夫でしょう」って感じでしたから。
すると〇さん、パァーッと満面の笑みを浮かべられました。入院後、初めて拝見した笑顔でした。
後日、次の回診の時、〇さんにそれとなく「エビチリ、食べました?」と私が伺ってみました。
「美味しかった!許可してくれた時、先生に後光が差して見えました」と、また笑顔。
飲みこんだ時の胸の痛みはなかったそうです。
その後も笑いながら二人でエビチリ談義をしばし続けました。
胸部に放射線治療を行う患者さんに対し、いずれ食道粘膜炎が出てくる可能性があることから症状を悪化させないように「(放射線治療開始時から)からい食べ物は控えましょう」という食事指導が、医師や看護師から治療開始前や照射中に行われることがあります。風邪ひいてのどが荒れているときに辛い物を食べるのは痛くてしんどいでしょ?治療が進むとだんだんそんな感じになる(ような)ので刺激物は控えたほうがいいという理由で。
特に抗がん剤を同時併用している場合は、粘膜炎に関しても放射線増感効果が出てしまうので注意が必要です。
でも、緩和的放射線治療で照射範囲が小さかったり総線量が少なかったりする場合には、照射部位の粘膜炎は(そんなに)ひどくならないことが多いです。また、普通は照射開始数日くらいまでなら何の症状も感じませんし。
緩和的放射線治療でよく用いられる1回3Gy以上の小分割短期間照射法と抗がん剤や分子標的薬剤との「同時」併用も確立したメニューってあるようでなかなかないですから、私は副作用対策を優先して可能ならお薬を一旦お休みしていただくことが少なくありません。この辺は医師によって病状によって意見が分かれるところかもしれません。
ということで、緩和的放射線治療の場合、少なくとも粘膜炎が無症状のうちは食事制限で神経質になり過ぎなくて良いだろうと個人的には思っています。ぶっちゃけ、私の食事指導は甘いかもしれません。
もちろん、痛みなどの症状が出はじめた場合には気をつける時期であることをきちんとお伝えしていますし、何でもかんでも気にしなくていいと言っているわけではないのですが、時と場合により臨機応変な対応というのも大事なのではないかと。
食べることって人生の楽しみの一つですから。 (ね、勝亦社長!)
と、偉そうに書きましたが、〇さんに今回「エビチリだめ」を意識させたのは私(たち)でした…。
実際同じようなことをお伝えしているつもりでも、各医療者による説明の仕方やニュアンスが微妙に違って患者さんに伝わることも少なくありません。また、説明不足があったかもしれません。放射線治療前の私(たち)の説明の時なのか、その後の看護師さんたちの説明の時なのか、患者さん説明用の冊子かなにかを見た時なのかわからないのですが、〇さんにはしばらく「損」をさせてしまいました。
医師・看護師の連携や意志統一がなってない!というご批判、まことに申し訳ございません。
ところで、日本放射線腫瘍学会公認の「放射線治療を受けられる方へ」という放射線治療患者さん説明用の小冊子があります。うちの病院でも患者さんたちへ配布しています。
この冊子の食事指導上の注意点の所に、「のりやワカメ、トマトの皮」にオレンジ色の☓がついている部分があります。粘膜に放射線治療が周囲の粘膜に照射された場合に食べるのに気をつけたほうが良い食品類を紹介しています。もちろん、これ以外は何でも食べていいというわけでなく、代表的な食材の一部です。ちなみに、その上には禁止すべきとされるアルコールやタバコが赤☓をつけられています。絶対にダメ!という赤です(たぶん)。つまり、オレンジ☓は「絶対にダメ」というわけではありません。
実は(少しくらいの)アルコールも個人的にはオレンジ☓なのですが…
この冊子をご覧になった後で、「のりやワカメが好きなんですけど食べちゃダメですか?」と質問される乳房温存術後で胸壁のみに照射される患者さんが時々いらっしゃいます。部位的に粘膜には全く照射されないので、治療中の副作用として粘膜炎が出てくることはありません(つまり、のりやワカメを食べても何ら問題ないということです)。食道がんによる食道狭窄部に薄皮のような食材が蓋をしてしまう(≒詰まらせてしまう)心配もありません。でも、少なからず患者さんたちはそうは思わないようです。
これも、患者さんにきちんと伝わっていないという点で、私たちが気をつけなければいけない所です。
ただ、外来などで一度説明を受けても、その内容を覚えていらっしゃらない患者さんも実際にはいらっしゃいます。放射線治療科受診の時は(時も?)、何人もの医療者からいろいろな難しい説明をたくさん聞いたり、そうでなくても病状や不安で頭が真っ白になって、説明されたこと自体を覚えていない方もいらっしゃいます。
で、自宅に戻って説明書を熟読し、書いてあるから「(オレンジ☓の)のりやワカメ食べちゃダメなんだ…」と思い込んでしまわれるようなのです。もちろん、その方に合っていそうな各部位ごとの食事指導も(特に看護師さんたちが)丁寧に行っているつもりなのですが。
他にも気をつけなければいけない食材もありますが全部を記載するのはほぼ不可能ですし、何でもかんでも食べるのを控えるというのも(特に外来通院では)大変なことです。
患者さん全員が充分にご理解いただけるような放射線治療の副作用対策用の説明書を作成するのってなかなか簡単ではないような気がします…。
〇さん、無事に緩和的放射線治療が終了してからも飲みこんだ時の痛みは感じなかったそうです。よかったよかった。
(スーラータンメンへ続く)

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サザンオールスターズ LIVE TOUR 2015 「おいしい葡萄の旅」、関東で一人暮らしの息子と行ってきました。
先週末、10年ぶりのサザン東京ドームの初日でした。マスコミ報道もされていましたね。
サザンオールスターズのLIVEって10才代(未満っぽいお子さんも)から80才代まで幅広い年齢層が集う所がすごいです。ちなみにうちの息子も20才です(前に書きましたね)。
そういえば、息子が幼いころ、物心ついて買ったCDが「TSUNAMI」でした…今やライブで聴けなくなってしまった(かもしれない)あの名曲。
世代に関係なく受け入れられる楽曲の数々、さすがサザンオールスターズです。
今回は、ほぼ正面一塁側スタンド二階席前から七列目、ステージからは遠い位置でした。でも、そんなの関係なし。ドーム特有の音響効果もあって、周りも最初から盛り上がりっぱなしでした(オジサンは途中で少し休憩着席しました…)。2階(天上)から眺めるアリーナ(地上)のイルミネーションや数多くのライトも美しかったです!
全36曲、なんと3時間半。マンキツしました!アラ還サザン、メンバー皆さん元気ですね。
強いて書くなら「天国オン・ザ・ビーチ」も聴きたかったかな(定番マンピーはありましたけどw)
実は4月の LIVE TOURにも行ってきました(妻と)。
その時はアリーナ席3列51-52席、なんと前から3列目のほぼ真ん中。室内でなければ間違いなく得意の放水でびしょびしょのベストポジションでした!
こんな良い場所、そうありません。
眼前ドアップの桑田さんと何度も目があいました。ま、彼には私は視界に映っていた程度でしょうけれど…(笑)
でも、ステージってたくさんの照明があってとても暑いのですね。
ステージ最前列の炎の熱い演出もいつも以上で、前夜の同級会(と昼の朋友)飲み&はじけたカラオケ+早朝二日酔いラン+迎えビールも飲んじゃってしまった私は、途中軽い脱水症状をおこし、いささかヘバってしまいました…。
その反省を踏まえ、ドームは禁酒で挑みました。もっとも、東京ドームの空調はスーパーアリーナよりはましでした(し、後ろだった)ので結果的には飲んでも大丈夫そうでしたけど。
ともあれ、どちらも最高でした!
あ~あ、楽しいLIVEが終わっちゃいました。
8月の武道館は平日夜だし、ちょっと厳しいかな…。
LIVE TOUR、来年(か今年の年末)もやってほしいなぁ。
(画像はサザンオールスターズ2015 official siteより無料画像ダウンロード)
http://special.sas-fan.net/special/sas2015/

先週末、10年ぶりのサザン東京ドームの初日でした。マスコミ報道もされていましたね。
サザンオールスターズのLIVEって10才代(未満っぽいお子さんも)から80才代まで幅広い年齢層が集う所がすごいです。ちなみにうちの息子も20才です(前に書きましたね)。
そういえば、息子が幼いころ、物心ついて買ったCDが「TSUNAMI」でした…今やライブで聴けなくなってしまった(かもしれない)あの名曲。
世代に関係なく受け入れられる楽曲の数々、さすがサザンオールスターズです。
今回は、ほぼ正面一塁側スタンド二階席前から七列目、ステージからは遠い位置でした。でも、そんなの関係なし。ドーム特有の音響効果もあって、周りも最初から盛り上がりっぱなしでした(オジサンは途中で少し休憩着席しました…)。2階(天上)から眺めるアリーナ(地上)のイルミネーションや数多くのライトも美しかったです!
全36曲、なんと3時間半。マンキツしました!アラ還サザン、メンバー皆さん元気ですね。
強いて書くなら「天国オン・ザ・ビーチ」も聴きたかったかな(定番マンピーはありましたけどw)
実は4月の LIVE TOURにも行ってきました(妻と)。
その時はアリーナ席3列51-52席、なんと前から3列目のほぼ真ん中。室内でなければ間違いなく得意の放水でびしょびしょのベストポジションでした!
こんな良い場所、そうありません。
眼前ドアップの桑田さんと何度も目があいました。ま、彼には私は視界に映っていた程度でしょうけれど…(笑)
でも、ステージってたくさんの照明があってとても暑いのですね。
ステージ最前列の炎の熱い演出もいつも以上で、前夜の同級会(と昼の朋友)飲み&はじけたカラオケ+早朝二日酔いラン+迎えビールも飲んじゃってしまった私は、途中軽い脱水症状をおこし、いささかヘバってしまいました…。
その反省を踏まえ、ドームは禁酒で挑みました。もっとも、東京ドームの空調はスーパーアリーナよりはましでした(し、後ろだった)ので結果的には飲んでも大丈夫そうでしたけど。
ともあれ、どちらも最高でした!
あ~あ、楽しいLIVEが終わっちゃいました。
8月の武道館は平日夜だし、ちょっと厳しいかな…。
LIVE TOUR、来年(か今年の年末)もやってほしいなぁ。
(画像はサザンオールスターズ2015 official siteより無料画像ダウンロード)
http://special.sas-fan.net/special/sas2015/

では、緩和ケア病棟における他の医療費はどうでしょうか?
サンドスタチンという注射薬があります。「進行・再発がんの緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器症状の改善」という適応症。腸閉塞症状をやわらげる薬というのは少ないので、サンドスタチンは現場でよく使用されています。
この薬、とっても高額で1日1万円前後も使います。症状が安定しなければ継続して投与しなければいけませんから、1ヶ月間毎日投与すればサンドスタチンのお薬代だけで月30万円くらい確実に「損」をします。緩和ケア病棟入院料は月総額150万円ですから、全体の20%です。
今の消費税率よりはるかに高いです!
鎮痛剤の医療用麻薬だって安くはありません。投与量にもよりますが、1日数千円以上することはざらですから、麻薬だけで1か月だと数万円以上となります。それ以外の鎮痛補助薬のお薬代も上乗せされてきます。
では、緩和的放射線治療における病院の「損」って何でしょうか?ちなみに一連の治療で8万円なので月総額150万円の5%強となります。
今より安い一昔前の消費税率くらいです。
ようやく本題です!
緩和的放射線治療でかかる諸経費は以下の3つだと思います。
1.初期設備投資
放射線治療装置は超高額です。が、そもそも一般病室や外来患者さん用にすでに買ってあるものだから緩和ケアへの特別な影響はありません。サンドスタチンや鎮痛剤みたいに全ての患者さんで確実に病院から製薬会社他へ高額な薬代が病院外へ出ていくこともありません。
2.日々の装置稼働費用
(お薬みたいにむちゃくちゃ高くない)電気代は少しだけかかります。他は、たま~に使うかもしれない身体の固定具や身体につけるインク代くらいでしょうか(これらも通常照射で使用する物品です)?
もちろん、何万円もしません。
3.人件費他
医療者の労働も滅多に依頼がないボランティアだと思えばタダで…入院費がそもそもお高い包括代金設定だし(ダメですか?)。
つまり、月に8万円する緩和的放射線治療における病院の実質的な「損」(病院の持ち出し=自腹)というのは日々の電気代くらいなのです。
中には日本緩和医療学会ご所属の放射線腫瘍専門医でも、「緩和ケア病棟の患者さんまで手を広げる(照射人数を増やす)のは自分の首を絞めるようなもの」みたいなご発言をなさる方もいらっしゃいます。
しかし、私が知っている地域では、緩和ケア病棟から週に何人も毎週照射依頼されるご施設さんを知りません。日本の他の地域でもそんな噂を聞いた施設はございません(あるのかもしれませんが、ごく稀でしょう)。
常勤の緩和ケア医師がいらして、毎週のように院内緩和ケアチームのカンファレンスで緩和的放射線治療の適否を相談させていただいているうちの病院も、緩和ケア病棟から緩和的放射線治療患者さんのご依頼があるのは年に数例程度です(少なすぎますか…?)。私個人の経験からすれば、放射線治療新患年数百例のうちの緩和ケア病棟数例で自分の首を絞めるほどのつらさを感じたことはまずございませんでした。
むしろ、辛い症状が治療後にやわらいで患者さんたちから「ありがとう」と感謝されることが多いのは緩和的放射線治療で、診療放射線技師さんや看護師さんたちを含めとてもやりがいを感じます(のはず)。
そして幸いなことに、ご理解ある今の病院上層部から「損をするから緩和ケア病棟の患者さんの照射を止めるように」という指令を受けたことを私は一度もございません。ご依頼患者さんがあまりに多くなったらわかりませんけど…
「緩和ケア病棟だけ放射線治療包括問題」を数年前に知った私は、この保険請求の件について有名な日本緩和医療学会の某先生に質問をさせていただいたことがありました。
某先生からのご回答では『平成24年度(前々回)の診療報酬改定に際し、緩和ケア病棟入院中患者の放射線治療に関わる診療報酬を包括外にとの提言も含めていろいろな交渉が行われ、その結果として包括入院料の大幅アップが実現した』(改変一部引用)とのことでした。
つまり、診療報酬改定で包括全体の大幅増収となったし、放射線治療も改めて交渉しなくても包括のままで良さそう、という見解のようなのです。とても大変であろうお役人さんたちとの診療報酬改定の交渉の場に立たれている緩和関係の健保委員さんたちのお立場なら普通の見解だろうと思います。
しかし、実際の緩和ケア病棟の現場では、こういった診療報酬改定の交渉経緯が充分に反映されていないように感じました。私が意識して見聞きする限りでは「今だに」緩和的ケア病棟での放射線治療は損とか、一般病室に再転科は?という話が出てきますので…。
また同じような時期に、日本放射線腫瘍学会の何人かの有名な先生方にも、緩和ケア病棟入院患者の放射線治療包括問題について質問したことがあります。すると、健保委員の某先生を含め緩和ケア病棟入院患者の放射線治療包括問題をご存じの方はいらっしゃらず、口々に「一般病棟と同じDPC包括外の出来高算定では?」と勘違いしておられました。
その後、健保委員の先生らのご尽力のおかげで緩和ケア病棟入院患者の放射線治療包括問題も健保委員会の議題の一つとなり、平成26年度(前回)の診療報酬改定では日本医学放射線学会と日本放射線腫瘍学会からの要望「緩和ケア病棟入院料の包括から放射線治療が除外されること」が正式に要望される運びとなりました。
残念ながら前回改定での要望実現とはなりませんでしたが、日本放射線腫瘍学会の健保委員の先生方も継続課題の一つと認識してくださっていて、次の診療報酬改定に向けて今もいろいろな情報収集や議論が行われているようです。
次回の診療報酬改定で「緩和ケア病棟入院料の包括から放射線治療が除外されること」が実現するよう、町医者として陰ながら切に願っております。
健保委員の先生方、頑張ってくださ~い!

サンドスタチンという注射薬があります。「進行・再発がんの緩和医療における消化管閉塞に伴う消化器症状の改善」という適応症。腸閉塞症状をやわらげる薬というのは少ないので、サンドスタチンは現場でよく使用されています。
この薬、とっても高額で1日1万円前後も使います。症状が安定しなければ継続して投与しなければいけませんから、1ヶ月間毎日投与すればサンドスタチンのお薬代だけで月30万円くらい確実に「損」をします。緩和ケア病棟入院料は月総額150万円ですから、全体の20%です。
今の消費税率よりはるかに高いです!
鎮痛剤の医療用麻薬だって安くはありません。投与量にもよりますが、1日数千円以上することはざらですから、麻薬だけで1か月だと数万円以上となります。それ以外の鎮痛補助薬のお薬代も上乗せされてきます。
では、緩和的放射線治療における病院の「損」って何でしょうか?ちなみに一連の治療で8万円なので月総額150万円の5%強となります。
今より安い一昔前の消費税率くらいです。
ようやく本題です!
緩和的放射線治療でかかる諸経費は以下の3つだと思います。
1.初期設備投資
放射線治療装置は超高額です。が、そもそも一般病室や外来患者さん用にすでに買ってあるものだから緩和ケアへの特別な影響はありません。サンドスタチンや鎮痛剤みたいに全ての患者さんで確実に病院から製薬会社他へ高額な薬代が病院外へ出ていくこともありません。
2.日々の装置稼働費用
(お薬みたいにむちゃくちゃ高くない)電気代は少しだけかかります。他は、たま~に使うかもしれない身体の固定具や身体につけるインク代くらいでしょうか(これらも通常照射で使用する物品です)?
もちろん、何万円もしません。
3.人件費他
医療者の労働も滅多に依頼がないボランティアだと思えばタダで…入院費がそもそもお高い包括代金設定だし(ダメですか?)。
つまり、月に8万円する緩和的放射線治療における病院の実質的な「損」(病院の持ち出し=自腹)というのは日々の電気代くらいなのです。
中には日本緩和医療学会ご所属の放射線腫瘍専門医でも、「緩和ケア病棟の患者さんまで手を広げる(照射人数を増やす)のは自分の首を絞めるようなもの」みたいなご発言をなさる方もいらっしゃいます。
しかし、私が知っている地域では、緩和ケア病棟から週に何人も毎週照射依頼されるご施設さんを知りません。日本の他の地域でもそんな噂を聞いた施設はございません(あるのかもしれませんが、ごく稀でしょう)。
常勤の緩和ケア医師がいらして、毎週のように院内緩和ケアチームのカンファレンスで緩和的放射線治療の適否を相談させていただいているうちの病院も、緩和ケア病棟から緩和的放射線治療患者さんのご依頼があるのは年に数例程度です(少なすぎますか…?)。私個人の経験からすれば、放射線治療新患年数百例のうちの緩和ケア病棟数例で自分の首を絞めるほどのつらさを感じたことはまずございませんでした。
むしろ、辛い症状が治療後にやわらいで患者さんたちから「ありがとう」と感謝されることが多いのは緩和的放射線治療で、診療放射線技師さんや看護師さんたちを含めとてもやりがいを感じます(のはず)。
そして幸いなことに、ご理解ある今の病院上層部から「損をするから緩和ケア病棟の患者さんの照射を止めるように」という指令を受けたことを私は一度もございません。ご依頼患者さんがあまりに多くなったらわかりませんけど…
「緩和ケア病棟だけ放射線治療包括問題」を数年前に知った私は、この保険請求の件について有名な日本緩和医療学会の某先生に質問をさせていただいたことがありました。
某先生からのご回答では『平成24年度(前々回)の診療報酬改定に際し、緩和ケア病棟入院中患者の放射線治療に関わる診療報酬を包括外にとの提言も含めていろいろな交渉が行われ、その結果として包括入院料の大幅アップが実現した』(改変一部引用)とのことでした。
つまり、診療報酬改定で包括全体の大幅増収となったし、放射線治療も改めて交渉しなくても包括のままで良さそう、という見解のようなのです。とても大変であろうお役人さんたちとの診療報酬改定の交渉の場に立たれている緩和関係の健保委員さんたちのお立場なら普通の見解だろうと思います。
しかし、実際の緩和ケア病棟の現場では、こういった診療報酬改定の交渉経緯が充分に反映されていないように感じました。私が意識して見聞きする限りでは「今だに」緩和的ケア病棟での放射線治療は損とか、一般病室に再転科は?という話が出てきますので…。
また同じような時期に、日本放射線腫瘍学会の何人かの有名な先生方にも、緩和ケア病棟入院患者の放射線治療包括問題について質問したことがあります。すると、健保委員の某先生を含め緩和ケア病棟入院患者の放射線治療包括問題をご存じの方はいらっしゃらず、口々に「一般病棟と同じDPC包括外の出来高算定では?」と勘違いしておられました。
その後、健保委員の先生らのご尽力のおかげで緩和ケア病棟入院患者の放射線治療包括問題も健保委員会の議題の一つとなり、平成26年度(前回)の診療報酬改定では日本医学放射線学会と日本放射線腫瘍学会からの要望「緩和ケア病棟入院料の包括から放射線治療が除外されること」が正式に要望される運びとなりました。
残念ながら前回改定での要望実現とはなりませんでしたが、日本放射線腫瘍学会の健保委員の先生方も継続課題の一つと認識してくださっていて、次の診療報酬改定に向けて今もいろいろな情報収集や議論が行われているようです。
次回の診療報酬改定で「緩和ケア病棟入院料の包括から放射線治療が除外されること」が実現するよう、町医者として陰ながら切に願っております。
健保委員の先生方、頑張ってくださ~い!

今週末、母校の昭和○年入学・平成✕年卒業医学部同窓会があり、私も参加いたしました。
例年よりかなり多いらしい60名以上が参加して旧交を温めました。例年といっても医学部全体でその年の当番幹事学年があり、うちの学年での幹事はたぶん初めて。そして私は特に準備係でもなく幹事学年のお気楽メンバー、ごめんなさい。
ということで、久しぶりに再開した同級生もたくさんいました。
アラ50にもなると、教授になられた方やら、海外を拠点に仕事をされている方やら、講演をしまくっていらっしゃる方やら、すっかり偉くなられた先生方も結構いらっしゃいます。勤務医やら開業医やら研究者やら行政医やらフリーター医やら、お仕事は種々様々な(医療系)職種がいましたが、学生時代の性格や雰囲気というのはどうやらアラ50になっても基本的には変わらないようでした。
まあ、こういう席に参加すると、気分だけは学生時代に戻るのでしょう。
外見は学生時代と見違えるように変貌してしまった方も少なくなかったですが…。アラ50ですし、仕方ありませんかね?
いろいろ大変な準備をしてくださった幹事の先生方のご挨拶の後、各自の近況報告となりました。
「あの人が教授になるなんて大丈夫なのかしら?」
「ろくに勉強しなかった自分が今大学で学生指導の中心、申し訳ない」
「10億円の借金をしました」
お酒の力も手伝って言いたい放題、みんなで爆笑するような話もいろいろ出ましたが、なんだかんだ言ってみなさん真面目にお仕事なさっていらっしゃるようでした。もっとも、同窓会に参加されるような方というのは、比較的順風に生きていらっしゃる方が多いのだろうとは想像しますが…。
「子供が医学部に通っていまして」と嬉しそうに話される方もいたりして、そういう年頃になったんだなあという感じも改めてしました。次に会う時は「孫が…」でしょうか?(笑)
個人的には7月からの新しい仕事に関係した偶然でびっくりするようなご縁もありました。正直、少し敷居が高い部分もあったのですが、とりあえず参加してよかったようです。
しかし、医学部教授というのは必ずしも学生時代にガリ勉君だった方がなるわけではないのですね。教授になられる方、アラ50になってなんとなくわかるような気がしてきました。
「わかる」、そのかっこたる根拠はなく、またあえて理由も書きませんが…。社会人になっていろいろな面で頑張ってこられたのだろうと思います。
PS:(その3)はそのうち投稿します。

例年よりかなり多いらしい60名以上が参加して旧交を温めました。例年といっても医学部全体でその年の当番幹事学年があり、うちの学年での幹事はたぶん初めて。そして私は特に準備係でもなく幹事学年のお気楽メンバー、ごめんなさい。
ということで、久しぶりに再開した同級生もたくさんいました。
アラ50にもなると、教授になられた方やら、海外を拠点に仕事をされている方やら、講演をしまくっていらっしゃる方やら、すっかり偉くなられた先生方も結構いらっしゃいます。勤務医やら開業医やら研究者やら行政医やらフリーター医やら、お仕事は種々様々な(医療系)職種がいましたが、学生時代の性格や雰囲気というのはどうやらアラ50になっても基本的には変わらないようでした。
まあ、こういう席に参加すると、気分だけは学生時代に戻るのでしょう。
外見は学生時代と見違えるように変貌してしまった方も少なくなかったですが…。アラ50ですし、仕方ありませんかね?
いろいろ大変な準備をしてくださった幹事の先生方のご挨拶の後、各自の近況報告となりました。
「あの人が教授になるなんて大丈夫なのかしら?」
「ろくに勉強しなかった自分が今大学で学生指導の中心、申し訳ない」
「10億円の借金をしました」
お酒の力も手伝って言いたい放題、みんなで爆笑するような話もいろいろ出ましたが、なんだかんだ言ってみなさん真面目にお仕事なさっていらっしゃるようでした。もっとも、同窓会に参加されるような方というのは、比較的順風に生きていらっしゃる方が多いのだろうとは想像しますが…。
「子供が医学部に通っていまして」と嬉しそうに話される方もいたりして、そういう年頃になったんだなあという感じも改めてしました。次に会う時は「孫が…」でしょうか?(笑)
個人的には7月からの新しい仕事に関係した偶然でびっくりするようなご縁もありました。正直、少し敷居が高い部分もあったのですが、とりあえず参加してよかったようです。
しかし、医学部教授というのは必ずしも学生時代にガリ勉君だった方がなるわけではないのですね。教授になられる方、アラ50になってなんとなくわかるような気がしてきました。
「わかる」、そのかっこたる根拠はなく、またあえて理由も書きませんが…。社会人になっていろいろな面で頑張ってこられたのだろうと思います。
PS:(その3)はそのうち投稿します。

東北大学緩和ケア看護学分野の先生方が、最近の緩和ケア(病棟)の現状について興味深い2つの論文報告をなさっています。
1つ目はタイトル「本ホスピス緩和ケア協会の調査データからみた緩和ケア病棟の現況」という佐藤一樹先生の論文で、『緩和ケア病棟の平均在院日数の中央値は年々徐々に少なくなってきていて2009年度で39日だった』という記載(一部改変)があります。つまり、半数近くの方がおよそ1か月以内の入院期間(で多くの方々がお亡くなりになってしまう)ということです。
http://www.hospat.org/assets/templates/hospat/pdf/hakusyo_2012/2012_2_1.pdf
このようなデータもおそらく参考にして、(その1)でも書いた通り日本緩和医療学会の健保委員ら関係各位のご尽力のおかげで、平成26年度の診療報酬改定で緩和ケア病棟入院料が見直されました。施設基準を満たした病棟なら最初の30日間は1日49260円、入院継続した翌月の30日間は1日44120円、以降は1日33840円の診療報酬を請求できるようになり、以前より入院料の大幅アップが実現しました。
https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_1_2_3/a310.html
2つ目はタイトル「データでみる日本の緩和ケアの現状」という宮下光令先生の論文で、『緩和ケア病棟の苦痛症状として多いのが有痛性骨転移で入院患者さん全体の66.5%(約3人中2人)を占めていた』という記載(一部改変)があります。
http://www.hospat.org/assets/templates/hospat/pdf/hakusyo_2013/2013_2_1.pdf
1か月以内に寿命をお迎えになられるかもしれないと(何らかの推測を理由に医療者側が勝手に予後)予測する終末期の方々に対しては、以下の点で有痛性骨転移に対する緩和的放射線治療を行う事そのものの意義が問われるような場合が少なからずあると思います。
1. 緩和ケア病棟に入院される段階ですでに何らかの発症があり、放射線治療を行うことそのものが時間や苦痛など様々な負担を逆にかけてしまう恐れがあること
2. 全身状態があまり良くないことが多く、治療終了後1~2週までに放射線宿酔(悪心嘔吐)や皮膚炎や粘膜炎といった急性期の副作用を「元気な」患者さんたちと比べ強めに自覚される、あるいは体調そのものを悪化させてしまうかもしれないこと
3. 除痛効果が出始める数週後は、病状そのものの進行で全身状態がかなりまいってしまい照射部分だけの症状の問題ではなくなる時期になってしまうかもしれないこと
もちろん、悪性腫瘍による脊髄圧迫で下半身マヒが急速に進行したり、腫瘍出血による強い貧血がすすんだりといった緊急的な治療を要する方々にとっては、仮に残された予後が数日~数週と予測されていても、他に適した治療選択肢がなく「今」とても困っている症状を和らげるために緩和的放射線治療を行うのは、これまた治療行為そのものがデメリットにならなければ実施する意義は大いにあります。
緩和的放射線治療というのは個々の放射線腫瘍医の考え方・経験による違い(腕の差)がとても出てくる分野だと私は思っていますが、一方で誰が設定しても多少なりとも緩和的放射線照射後の副作用が出てしまうこともあります。
さすがご専門の緩和ケア科の先生方はそのあたりをよくご存じです。また、麻薬をはじめとする多種多様な鎮痛剤の調整もお上手です。「無理に」緩和的放射線治療を行わず身体的・精神的苦痛をやわらげることができればそれが一番です。
とはいえ、専門の緩和ケア医だとしても進行がん患者さんの予後予測をピタリと当てるなどということは今の医学では不可能であり、またおこがましいことでもあると思います。
また、麻薬をはじめとする痛み止めの薬は決して安くなく、一般によく処方される徐放製剤の麻薬(1日1~2回で済むタイプ)だけで安くても月に万円単位の薬価になります。既出の通り、緩和ケア病棟の平均在院日数は1か月強ですが、数か月単位で経過するかもしれない患者さんにとって毎月の、しかも痛みが強いときは大量になってしまう鎮痛剤その他のお薬代はチリも積もれば、でバカになりません。そして、除痛目的の緩和的放射線治療で鎮痛剤などを減量できれば、包括請求である緩和ケア病棟入院料に占める中長期的なお薬代の節約にもつながります。
そんなことを書きつつ、緩和的放射線治療だって短期的にはお安い治療ですよとはなかなか言えません。(以前のブログでも書きましたが)日本の放射線腫瘍医が大好きな10回分割照射だと余裕で総額10万円以上はかかってしまいます。
でも、痛みを和らげることが主目的の1回照射なら全部で8万円ですみます(それでも安くはないですが…)。
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-121.html
前回ブログ(その1)でも触れましたが、緩和ケア病棟入院料は例外的に放射線治療も含まれた1日定額お高め設定となっています。
緩和ケア病棟に1か月間入院され1回の緩和的放射線治療を行った方の場合は、1か月総額150万円≒49260円x30日の保険請求額(バイキング料金)の中に最低で一連8万円もの緩和的放射線治療代金(シェフこだわり食材費)が含まれることになります。
一部緩和ケア科の先生方がおっしゃっているように、ここまで読むと緩和ケア病棟入院患者さんに緩和的放射線治療を行うのは病院として何となく「損をする」気分になってしまいそうですよね。
だからといって、緩和ケア病棟に入院の患者さんたちに対する緩和的放射線治療は8万円「損をするから(なかなかできない)」と思ったり、わざわざ一般病室に再転科して8万円分「出来高払いになるように」緩和的放射線治療を行ったりするのには、個人的にはやっぱり違和感があります。
まあ、人件費や諸経費がかかる以上は病院経営をしなければならず、きれい事だけでは済まないお金の話なのですけれど…その1でも、似たようなことを書きました。
(さらに続く…その3はちょっとデリケートなお話に)
1つ目はタイトル「本ホスピス緩和ケア協会の調査データからみた緩和ケア病棟の現況」という佐藤一樹先生の論文で、『緩和ケア病棟の平均在院日数の中央値は年々徐々に少なくなってきていて2009年度で39日だった』という記載(一部改変)があります。つまり、半数近くの方がおよそ1か月以内の入院期間(で多くの方々がお亡くなりになってしまう)ということです。
http://www.hospat.org/assets/templates/hospat/pdf/hakusyo_2012/2012_2_1.pdf
このようなデータもおそらく参考にして、(その1)でも書いた通り日本緩和医療学会の健保委員ら関係各位のご尽力のおかげで、平成26年度の診療報酬改定で緩和ケア病棟入院料が見直されました。施設基準を満たした病棟なら最初の30日間は1日49260円、入院継続した翌月の30日間は1日44120円、以降は1日33840円の診療報酬を請求できるようになり、以前より入院料の大幅アップが実現しました。
https://clinicalsup.jp/contentlist/shinryo/ika_1_2_3/a310.html
2つ目はタイトル「データでみる日本の緩和ケアの現状」という宮下光令先生の論文で、『緩和ケア病棟の苦痛症状として多いのが有痛性骨転移で入院患者さん全体の66.5%(約3人中2人)を占めていた』という記載(一部改変)があります。
http://www.hospat.org/assets/templates/hospat/pdf/hakusyo_2013/2013_2_1.pdf
1か月以内に寿命をお迎えになられるかもしれないと(何らかの推測を理由に医療者側が勝手に予後)予測する終末期の方々に対しては、以下の点で有痛性骨転移に対する緩和的放射線治療を行う事そのものの意義が問われるような場合が少なからずあると思います。
1. 緩和ケア病棟に入院される段階ですでに何らかの発症があり、放射線治療を行うことそのものが時間や苦痛など様々な負担を逆にかけてしまう恐れがあること
2. 全身状態があまり良くないことが多く、治療終了後1~2週までに放射線宿酔(悪心嘔吐)や皮膚炎や粘膜炎といった急性期の副作用を「元気な」患者さんたちと比べ強めに自覚される、あるいは体調そのものを悪化させてしまうかもしれないこと
3. 除痛効果が出始める数週後は、病状そのものの進行で全身状態がかなりまいってしまい照射部分だけの症状の問題ではなくなる時期になってしまうかもしれないこと
もちろん、悪性腫瘍による脊髄圧迫で下半身マヒが急速に進行したり、腫瘍出血による強い貧血がすすんだりといった緊急的な治療を要する方々にとっては、仮に残された予後が数日~数週と予測されていても、他に適した治療選択肢がなく「今」とても困っている症状を和らげるために緩和的放射線治療を行うのは、これまた治療行為そのものがデメリットにならなければ実施する意義は大いにあります。
緩和的放射線治療というのは個々の放射線腫瘍医の考え方・経験による違い(腕の差)がとても出てくる分野だと私は思っていますが、一方で誰が設定しても多少なりとも緩和的放射線照射後の副作用が出てしまうこともあります。
さすがご専門の緩和ケア科の先生方はそのあたりをよくご存じです。また、麻薬をはじめとする多種多様な鎮痛剤の調整もお上手です。「無理に」緩和的放射線治療を行わず身体的・精神的苦痛をやわらげることができればそれが一番です。
とはいえ、専門の緩和ケア医だとしても進行がん患者さんの予後予測をピタリと当てるなどということは今の医学では不可能であり、またおこがましいことでもあると思います。
また、麻薬をはじめとする痛み止めの薬は決して安くなく、一般によく処方される徐放製剤の麻薬(1日1~2回で済むタイプ)だけで安くても月に万円単位の薬価になります。既出の通り、緩和ケア病棟の平均在院日数は1か月強ですが、数か月単位で経過するかもしれない患者さんにとって毎月の、しかも痛みが強いときは大量になってしまう鎮痛剤その他のお薬代はチリも積もれば、でバカになりません。そして、除痛目的の緩和的放射線治療で鎮痛剤などを減量できれば、包括請求である緩和ケア病棟入院料に占める中長期的なお薬代の節約にもつながります。
そんなことを書きつつ、緩和的放射線治療だって短期的にはお安い治療ですよとはなかなか言えません。(以前のブログでも書きましたが)日本の放射線腫瘍医が大好きな10回分割照射だと余裕で総額10万円以上はかかってしまいます。
でも、痛みを和らげることが主目的の1回照射なら全部で8万円ですみます(それでも安くはないですが…)。
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-121.html
前回ブログ(その1)でも触れましたが、緩和ケア病棟入院料は例外的に放射線治療も含まれた1日定額お高め設定となっています。
緩和ケア病棟に1か月間入院され1回の緩和的放射線治療を行った方の場合は、1か月総額150万円≒49260円x30日の保険請求額(バイキング料金)の中に最低で一連8万円もの緩和的放射線治療代金(シェフこだわり食材費)が含まれることになります。
一部緩和ケア科の先生方がおっしゃっているように、ここまで読むと緩和ケア病棟入院患者さんに緩和的放射線治療を行うのは病院として何となく「損をする」気分になってしまいそうですよね。
だからといって、緩和ケア病棟に入院の患者さんたちに対する緩和的放射線治療は8万円「損をするから(なかなかできない)」と思ったり、わざわざ一般病室に再転科して8万円分「出来高払いになるように」緩和的放射線治療を行ったりするのには、個人的にはやっぱり違和感があります。
まあ、人件費や諸経費がかかる以上は病院経営をしなければならず、きれい事だけでは済まないお金の話なのですけれど…その1でも、似たようなことを書きました。
(さらに続く…その3はちょっとデリケートなお話に)
今年度はうちを含めて近隣で緩和ケア科関連の(たぶん)明るい話題が多いです。隣町の病院では新たに緩和ケア病棟が開業、別の病院では新しい緩和ケアの先生がご着任されました。大学病院も新しい体制になるようです。
そしてうちの病院でも、長年お仕事をなさってくださった緩和ケア科の科長先生が惜しまれながら昨年度いっぱいでご退職されてしまったのですが、代わりに新しい科長先生がまもなく着任されます。私と同じ職場でお仕事するのはおよそ1か月なのが残念です…
長年の間、緩和ケアの医師不足、病床不足だったうちの地域なので、緩和ケアを必要とするがん患者さんたちにとっていろいろ選択肢が広がるのはとても良いことだと思います。
一方で、ピースハウス病院という日本初の独立型ホスピスが経営不振で昨年度に閉鎖(休止)という悲しいニュースも少し前に報道されました。
http://www.peacehouse.jp/
ホスピスや緩和ケア病棟というのは総合病院に併設されている場合が多いようです。そして、以前は医療材料費などの高騰に比べ診療報酬の設定が厳しく、病院全体としては赤字採算部門で他の診療などから補てんすることが少なくなかったようです。
平成24年度からの診療報酬改定で緩和ケア病棟入院料(1日につき)が見直され、入院料の大幅アップとなりました。日本緩和医療学会の健保委員ら関係各位のご尽力のおかげです。
人件費や諸経費がかかる以上は経営をしなければならず、きれい事だけでは済まないお金の話は医療であっても同じです。
病院収益のお話を少し続けます。
一般的に、救急疾患も扱うような総合病院では、入院日数に応じた1日あたり定額報酬を算定するDPC制度を採用しています。
DPCとはDiagnosis Procedure Combinationの頭文字、つまり Diagnosis(診断)とProcedure(治療・処置)のCombination(組み合わせ)の略称で、日本語では診断群分類別包括制度といいます。
DPCは、「病名(診断)」と 「サービス(治療・処置)」の組み合わせによって、さまざまな状態の患者さんを分類する方法です。患者さんから請求できる診療報酬(支払額)が、病名によっていろいろなセット価格となっています。入院したときにのみ対象となり、外来治療は出来高払い(実施した分が全部売り上げになる)です。
出来高払いによる過度な診療漬けと医療費請求を避けるために平成15年度から国内で段階的に採用されてきた制度です。普通は「余計な」検査や治療さえしなければ、病院側が損をしないような料金設定になっています。
何やら難しい説明になってしまいましたが、DPCとはいろいろなセットメニューが定額で選べるバイキング料理みたいなイメージと思っていただければよいでしょうか?普通はお店(病院)が赤字を出しにくいような各種バイキング(DPC)の料金設定になっています。一部追加料金でオーダーできる料理(診療行為)も認められています。
ただ、例えば料理人のこだわりが強すぎて高価な食材をたくさん使ったりすると、経費がかさんでお店が損をしてしまうことがあります。
ピースハウス病院さん、こだわりもたくさんあったのでしょうね…
放射線科関連ですと、放射線の諸検査もDPC対象であり、多くの病院では(節度ある範囲で)なるべく入院前に外来で一通りの検査をします。特にPET検査は高額なので、入院中の多くの患者さんに行ってしまうと病院経営上はとても損失を被ります。
実は放射線治療というのはDPCの対象外、追加料金でオーダーできる出来高算定設定の特別治療です。つまり「一般病室に」入院していようが、外来通院であろうが、セットメニューとは別料金設定(つまり放射線治療を行った分だけDPC料金に上乗せ請求が可能)となっています。
一方で、「より高額な」緩和ケア病棟入院料が算定されている患者さんは一般病棟のDPCとは別扱いで、放射線治療も出来高算定ではなく包括化されています。
ということで(?)、緩和ケア病棟に入院の患者さんたちに対する緩和的放射線治療は「損をするから(なかなかできない)」という声を担当のお医者さんたちから伺ったり、わざわざ一般病室に再転科して「出来高払いになるように」緩和的放射線治療を行ったりする場合があるようです。
では、緩和ケア病棟の患者さんに緩和的放射線治療を行うことはそんなに「損をする」ものなのでしょうか?
(続く)
【2015.5.19修正】
緩和ケア病棟入院料(1日につき)が見直された診療報酬改定は前回(平成26年度)からではなく前々回の平成24年度からで、修正いたしました。前回も増額変更はありました。
そしてうちの病院でも、長年お仕事をなさってくださった緩和ケア科の科長先生が惜しまれながら昨年度いっぱいでご退職されてしまったのですが、代わりに新しい科長先生がまもなく着任されます。私と同じ職場でお仕事するのはおよそ1か月なのが残念です…
長年の間、緩和ケアの医師不足、病床不足だったうちの地域なので、緩和ケアを必要とするがん患者さんたちにとっていろいろ選択肢が広がるのはとても良いことだと思います。
一方で、ピースハウス病院という日本初の独立型ホスピスが経営不振で昨年度に閉鎖(休止)という悲しいニュースも少し前に報道されました。
http://www.peacehouse.jp/
ホスピスや緩和ケア病棟というのは総合病院に併設されている場合が多いようです。そして、以前は医療材料費などの高騰に比べ診療報酬の設定が厳しく、病院全体としては赤字採算部門で他の診療などから補てんすることが少なくなかったようです。
平成24年度からの診療報酬改定で緩和ケア病棟入院料(1日につき)が見直され、入院料の大幅アップとなりました。日本緩和医療学会の健保委員ら関係各位のご尽力のおかげです。
人件費や諸経費がかかる以上は経営をしなければならず、きれい事だけでは済まないお金の話は医療であっても同じです。
病院収益のお話を少し続けます。
一般的に、救急疾患も扱うような総合病院では、入院日数に応じた1日あたり定額報酬を算定するDPC制度を採用しています。
DPCとはDiagnosis Procedure Combinationの頭文字、つまり Diagnosis(診断)とProcedure(治療・処置)のCombination(組み合わせ)の略称で、日本語では診断群分類別包括制度といいます。
DPCは、「病名(診断)」と 「サービス(治療・処置)」の組み合わせによって、さまざまな状態の患者さんを分類する方法です。患者さんから請求できる診療報酬(支払額)が、病名によっていろいろなセット価格となっています。入院したときにのみ対象となり、外来治療は出来高払い(実施した分が全部売り上げになる)です。
出来高払いによる過度な診療漬けと医療費請求を避けるために平成15年度から国内で段階的に採用されてきた制度です。普通は「余計な」検査や治療さえしなければ、病院側が損をしないような料金設定になっています。
何やら難しい説明になってしまいましたが、DPCとはいろいろなセットメニューが定額で選べるバイキング料理みたいなイメージと思っていただければよいでしょうか?普通はお店(病院)が赤字を出しにくいような各種バイキング(DPC)の料金設定になっています。一部追加料金でオーダーできる料理(診療行為)も認められています。
ただ、例えば料理人のこだわりが強すぎて高価な食材をたくさん使ったりすると、経費がかさんでお店が損をしてしまうことがあります。
ピースハウス病院さん、こだわりもたくさんあったのでしょうね…
放射線科関連ですと、放射線の諸検査もDPC対象であり、多くの病院では(節度ある範囲で)なるべく入院前に外来で一通りの検査をします。特にPET検査は高額なので、入院中の多くの患者さんに行ってしまうと病院経営上はとても損失を被ります。
実は放射線治療というのはDPCの対象外、追加料金でオーダーできる出来高算定設定の特別治療です。つまり「一般病室に」入院していようが、外来通院であろうが、セットメニューとは別料金設定(つまり放射線治療を行った分だけDPC料金に上乗せ請求が可能)となっています。
一方で、「より高額な」緩和ケア病棟入院料が算定されている患者さんは一般病棟のDPCとは別扱いで、放射線治療も出来高算定ではなく包括化されています。
ということで(?)、緩和ケア病棟に入院の患者さんたちに対する緩和的放射線治療は「損をするから(なかなかできない)」という声を担当のお医者さんたちから伺ったり、わざわざ一般病室に再転科して「出来高払いになるように」緩和的放射線治療を行ったりする場合があるようです。
では、緩和ケア病棟の患者さんに緩和的放射線治療を行うことはそんなに「損をする」ものなのでしょうか?
(続く)
【2015.5.19修正】
緩和ケア病棟入院料(1日につき)が見直された診療報酬改定は前回(平成26年度)からではなく前々回の平成24年度からで、修正いたしました。前回も増額変更はありました。
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