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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 すでにご存じの方は多いかと思いますが、4月からついに放射線治療が緩和ケア病棟の包括払いからの除外項目となります!

 とても長い文書ですが来年度の診療報酬改定項目で、p.202-203 「緩和ケア病棟における在宅療養支援の充実」に『入院中の放射線治療を別に算定できることとする』という文言が新設 されました。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000111307.pdf

 これで保険診療で認められている放射線治療は全て出来高算定となります(追記:転移性骨腫瘍に対するメタストロン®:ストロンチウム-89など核医学系の一部放射性同位元素治療を除く)。こんな大事な話題を発表から1ヵ月以上もブログの話題にせず放置していました。
 申し訳ございません。


 去年の今頃、『緩和ケア病棟で緩和的放射線治療を行うと「損をする」?』と題したブログを書いておりました。
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-126.html
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-127.html
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-132.html

 ブログ記載の繰り返しになりますが、
『放射線治療というのはDPCの対象外、追加料金でオーダーできる出来高算定設定の特別治療です。つまり「一般病室に」入院していようが、外来通院であろうが、セットメニューとは別料金設定(つまり放射線治療を行った分だけDPC料金に上乗せ請求が可能)となっています。
 一方で、「より高額な」緩和ケア病棟入院料が算定されている患者さんは一般病棟のDPCとは別扱いで、放射線治療も出来高算定ではなく包括化されています。』

 今月まで。
 

 以前、NPO法人HOPE★プロジェクト理事長である桜井なおみさんから、次のようなお話を伺ったことがありました。
 『緩和ケア病棟への入院に際し、化学療法や放射線治療の併用は行わない旨の同意書を提出するケースがあり、患者、家族から相談を受けます。診断時からの緩和ケアという言葉ばかりで、実際には患者さんや家族からツライ、ツライ決断でしたと涙されることが多々あります。ご遺族の声で一番トラウマになっているのです、この署名。』
 ちなみにHOPE★プロジェクトさんのビジョンは「私たちは、がんサバイバーのみならず、ハンディキャップを負う全ての人々を受け入れ、力づける一方、 それぞれが生きる意欲や能力を十分に発揮できる協働・共生型社会の建設に貢献します。」
 素晴らしいご活動だと思います。

 緩和ケア病棟への入院に際し、そのような同意書にサインをしなければ利用できないなどという明確な法的規制は(たぶん)なく、単に病院側の勝手なローカルルールでしょう。ですが、順番待ちでようやく転科転院できるようになった多くの方にとっては、やむを得ずその病棟の方針に従わざるを得ないのだろうと思います。

 その大きな理由の一つであっただろう月150万円の包括分からすればたった8万円の放射線治療代。4月からようやくその敷居が外されます。
 それでも放射線「治療」はしないと相変わらず考え続ける緩和の先生もいらっしゃるかもしれません…。緩和ケアの先生方が以前からよく言われていた「緩和と治療の間の線引き」というものを緩和ケアの先生方自身も是非しないでほしいものです。

 そして、この改定をご覧になってまさか「緩和ケア病棟の患者さんまで手を広げる(照射人数を増やす)のは自分の首を絞めるようなもの」みたいなご発言をなさる放射線腫瘍専門医はいらっしゃらないであろうと信じたい所です。

 
 いやしかし、(こんな遅れての投稿にはなりましたけど)個人的な念願の一つがついに叶いました。日本放射線腫瘍学会健保委員の先生方、本当にありがとうございました!
 

 PS:残念ながら私が現在所属する病院って緩和ケア病棟がないんですよね。

 ちょっと遠めなのですが、緩和ケア病棟はあるけど放射線治療設備のない病院からの緩和的放射線治療ご依頼を待つばかり。施設移動、やっぱり大変かなあ…?


20160321
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【2016/03/21 01:12】 | 緩和的放射線治療
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 がん放射線治療看護セミナー、無事終了しました。

 今回のメインテーマは緩和的放射線治療。前からセミナー開催要望の多かったテーマだったそうです。

 初の地方開催だったそうなのですが、なんと定員300名満員御礼!しかも、北は北海道から南は沖縄まで、熱心な看護師さんたちがご参加してくださったとのこと。中には会費を払って参加しているお知り合いのお医者さんまでいて、びっくりの盛況でした。

 私の担当は、緩和的放射線治療の基礎知識。実は1か月前に提出した配布資料では放射線生物関係のお話まで触れると時間的に厳しいかなと省いていたのですが、講師間での打ち合わせで「ぜひ分割照射についても触れて」というご意見があり、急遽スライドを追加することになりました。ということで、なんだかんだで合計100枚近くに…制限時間50分(笑)。
 でも、2日前に自分の病院で病棟の看護師さんたちと予行演習をさせていただいたおかげで事前に課題がいくつか抽出でき、なんとか制限時間内に終了することができました。

 緩和ケア関連の看護師さんが結構参加なさっているという情報もいただいていたので、特に放射線治療の基礎部分に関してなるべくわかりやすく理屈でなく「イメージ」を大切に…という点を意識してお話をさせていただきました。
 普通にやったらスライド1枚30秒の講演。絶対に終わらないので、配布資料はあくまで参考に追加スライド中心の講演になってしまいました。申し訳ございません。このブログをご覧いただければ書いてある内容を中心にお話はしたのですが、放射線生物関係は(私があまり得意でないこともあり)まだほとんど書いていません。

 ということで、(間に合わなくて)半分以上配付テキストに載せてなかった放射線生物関係のお話は、近いうちにブログでまとめてみようと思います。

 まだセミナーのアンケート結果を伺ってはいないのですが(楽しみでもあり不安でもあり…)、ありがたいことに「それなりにわかりやすかった」というご感想を何名かの方からいただき、初の看護セミナーでしたがとりあえず安堵しています。


 懇親会では地元のスタッフの方々といろいろな情報交換ができました。後日「二次会」を開催しましょうというお約束もできました。始まるまでは緊張のセミナーでしたが、終わってみるとけっこう楽しい一日でした。


 私、看護師さんや学生さんへの講義はけっこう好きかもしれません。一般市民公開講座も好きです。お声がかかれば是非喜んでまた担当させていただきたいものです。
 お医者さん向けのお堅いえびでんす講義はそんなに好きじゃありません…

 来年度は久しぶりに職場近くの看護学校の講義も担当させていただくことになっています。せっかく作った今回のスライド、活用させていただきます。

20160313

【2016/03/13 22:25】 | 緩和的放射線治療
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お疲れ様でした
浅見
新潟から参加させていただきました。放射線治療外来での勤務を続けたいと思い、一つも聞きのがものかと1番前で聞いていましたが、ずっと笑っていたように思います。先生のブログを教えていただいてよかったです。ゆっくりと読ませてもらいます。ありがとうございました。

Re: お疲れ様でした
JIN
浅見さん、セミナーの内容は(放射線生物以外)ほとんどこのブログのパクリです(笑)。他にもお話したいパクリはいろいろあったのですが、時間がありませんでした。どうぞお暇な時にご一読くださいませ。

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 来年度早々にうちの施設でサイバーナイフが稼働します。現在、頭の定位放射線治療は隣の部屋にあるガンマナイフが稼働中ですが、サイバーナイフに移行したら運用停止する予定です。

 でも、装置そのものは設置したままです。つまり、うちの施設へいらしていただければサイバーナイフとガンマナイフが同時に見物できます。実はリニアック(=ライナック)も増設で最新のTrueBeam™がそのうち入ります。他にもいろいろな放射線治療装置があります。
 MRリニアックもいずれ??


 今年に入って私もサイバーナイフの座学研修と施設研修をしてきました。座学研修は東京駅近くの研修室で連続5日間(私は病院業務で1日抜けましたが…)、施設研修は神戸低侵襲がん医療センターさんで2日間でした。

 『サイバーナイフシステムとはロボットマニピュレータと軽量の小型直線加速器を用いて設計され、高線量をサブミリメートルの精度で照射することができる初のロボット放射線手術システムとして世界的に認知されています。…以下、略』という説明文が、座学研修をさせていただいた日本アキュレイ社さんHPに掲載されています。
http://www.accuray.co.jp/products-overview-cyberknife

 専門用語が羅列した説明文って自分の専門分野でないと医療者でも何のことかわかりにくいことって少なくありません。定位放射線治療とサイバーナイフってどう違うの?といったご質問を受けることも稀ならずあります。
 ちなみに、定位放射線治療は高精度放射線治療「技術」の一つ、サイバーナイフやガンマナイフは定位放射線治療(やIMRT)を行える高精度放射線治療「装置」です。

 ガンマナイフ(もどんな装置かご存じない?)しかなかった時代は頭の定位放射線治療「技術」=ガンマナイフ「装置」が同じ意味(表現)でもまあよかったのですが、今はいろいろなタイプの装置が登場してきましたのでそうはいかなくなってきました。一昔前、Xナイフという定位放射線治療専用製品がありました。ガンマナイフとネーミングが似ていたから覚えやすかったのでしょうか、201個の小さなコバルト線源から焦点を合わせてガンマ線を照射するガンマナイフでなくX線を照射するリニアックで行う定位放射線治療のことをXナイフと誤表現していた脳外科の先生が多数いた時期もありました。
 そのXナイフも今や販売されておらず、過去の産物となりつつあります(まだ稼働しているご施設はある様ですが…)。

 ガンマナイフって息の長い装置ですよね。


 一般の方にとっては医学用語が並んだだけで難しく感じられてしまうことが少なくないと思います。そんな時は、こちらがわかりやすい言葉にしたつもりの普通の説明よりも、例え話の方が相手の方に「なるほど」と納得していただけることが多いようです。

 ということで、今回はいろいろな放射線治療装置をあの有名なウルトラマンシリーズの必殺技で例えてみることにします。画像があると視覚的によりわかりやすいと思うので、以下のサイトをご参照いただければと思います。
http://middle-edge.jp/articles/I0000218
 ところでこのサイト、円谷プロさんから画像使用許諾は得ているのだろうか…?
http://m-78.jp/

 世に普及している通常のリニアック装置から繰り出されるX線は、やっぱり初代ウルトラマンの腕から出される超有名なスペシウム光線ってイメージでしょうね。

 装置の先端から細いビームを発射するサイバーナイフは、ウルトラセブンの額から首を振りながら狙いを定めて出される極細のエメリウム光線って感じでしょうか。頭上に装着しブーメランのように攻撃するアイスラッガーとともにウルトラセブンの代表的な必殺技です。ちなみにエメリウム光線には、両手でピースサインを額につけるAタイプと左手を水平に折り曲げてあごの下に置く(志村けんさんのアイーン光線の鏡像のようなポーズの)Bタイプがあるそうです。ご存じでしたか?
 ちなみに新しいタイプのサイバーナイフ(M6)は小型マルチリーフコリメータ(MLC)も付くそうです。というか、実はそれが売りらしいです。エメリウム光線がスペシウム光線のように少し広がってウルトラセブンの口から出てくるといったイメージでしょう。

 他にもいろいろな高精度放射線治療装置がありますが、いずれもウルトラマンシリーズの必殺技で例えることができそうなものばかりです。
 1.ガンマナイフはウルトラマン80のバックルビーム。
 2.トモセラピーはウルトラマンのウルトラアタック光線。
 3.陽子線はウルトラマンレオのエネルギー光球。
 4.重粒子線はウルトラマンタロウのウルトラダイナマイト。

 ウルトラマンシリーズの必殺技での例え話って結構使えると思いませんか!?私の思い込みですか…? 私は決してウルトラマンマニアではない(つもり)です。

 なお、これらのウルトラマンシリーズ例え話はあくまで一般の方々向けにこんな感じとしているものなので、同業のご専門の先生方におかれましては「それって正確な表現といえるの?」などという厳しいツッコミはぜひ不問でお願いしたく存じます。私個人的には先ほど例に出したXナイフでもイメージさえつかんでいただけるならばそれで良しとするスタンスの医療者なもので…。

 まあ課題があるとすれば、そもそもウルトラマンシリーズを知らない方々(若い世代とか女性とか)にはやっぱりわからない例え話なのだろうなということでしょうか?(私の子供世代だと)セーラームーンとかのほうがいいのかも…。参考までに北斗の拳がご専門の先生もいらっしゃいます(笑)

 来週の看護セミナーでも紹介してみようと思っています。


 今回のサイバーナイフ座学研修ですが、正直いって5日間は長かったです。以前は外国に行っての研修だったそうです。英語で聴講したら放射線腫瘍医でも難しすぎる放射線物理を含めた専門用語ばかりですし、ゆっくり説明を受けないとなかなかわからないかもしれませんが(5日かけてもわからないかも…?)、今回は日本語での研修でしたし内容的にはテキパキと半分の日程でも良かったような気がします。

 先日の神戸実地研修では先生方から貴重な(裏)情報をいろいろ伺えましたし、かゆい所に手が届いた部分もいくつかありました。忙しい通常診療の最中をご指導いただき、どうもありがとうございました。


 利用者さんたちの病状やご要望も踏まえ、いろいろな放射線治療装置をこれからどのように上手く使い分けさせていただくか、これからの課題ではありますが楽しみでもあります。


エメリウム光線

【2016/03/09 00:25】 | 放射線治療:機器・技術
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