先週もまた金曜夕方に、他の病院から緊急照射のご依頼がありました。悪性腫瘍(骨転移)による脊髄圧迫(Malignant Spinal Cord Compression:以下MSCC)疑いの患者さんでした。整形外科の先生の診察も仰いだあと、その日の夜に放射線治療を行いました。
うちの科ですが、通常は前日までに主治医の先生に放射線治療ご依頼の新規患者さん受診予約をしていただきます(新患予約枠を一部制限しているので、院内ですとうちの科に直接電話受付で、院外ですと地域医療連携室を通して予約をとることもあります)。そして、その予約内容を電子カルテでほぼ毎日行っている前日昼のカンファレンスで確認します。初診前に事前準備として、世に出ている各種がん診療ガイドラインや過去の論文報告やうちの病院の基本治療方針とのすり合わせ、あるいは主治医の先生方や画像診断の先生方などとの個別相談をし、あくまで医療者(≒うちの放射線治療科)としての立場「だけ」でその方の診療方針をおよそ確認し診察に臨むためです。もちろん最終的な診療方針は、患者さんの状態を直接確認し、ご本人やお付き添いの方々などのご希望や診察の場でお互いによく相談したうえで決定していています。
また、初診から初回の放射線治療開始までにも原則として丸1日は時間の余裕をいただいています。丁寧な放射線治療計画や精度検証などを行うためで、つまり事前に「きちんとした」下準備を行ってから実際の患者さんへ放射線治療をご提供させていただいています。
なお、遠方の外来患者さんご紹介などで、事前打ち合わせなしで飛び込み緊急新患診察をすることはよくあります。ただその場合も、この下準備期間に前述のスタッフ間の治療方針確認を同時進行で行い、必要であれば患者さんへの説明追加・修正は後日改めて行います。
美味しいごちそう料理を作るにはきちんとした下準備がとても大事だということと同じでしょうか。私の場合、自分でほとんど料理を作らないのでかなり説得力に欠けますが…
しかし、がんに関連した症状というのは体調が急に悪くなり、1-2日以内に救急治療が必要になることがあります(がん救急ともいいます)。
緊急照射すべきがんに関連した症状というのはそれほど多くありませんが、MSCCが緊急照射の対象として最も多いことは先月のブログでも簡単にご紹介いたしました。
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-92.html
脊椎の骨転移など悪性腫瘍によって脊髄神経が圧迫され傷つくと、下半身マヒなどがあっという間に進行しがん患者さんの生活の質を永久的に著しく低下させてしまうおそれがあるMSCC。マヒが急速に進行している場合は定型的な放射線治療の事前準備や丁寧さよりもまずは照射開始までの時間の速さが最優先されますので、(やむを得ず)他の患者さんたちの準備を先送りにしてスタッフ間の各種治療内容検証もシンプルに時間をかけず最短コースで緊急照射をめざします。ちなみにうちでは(スタッフが院内にさえいれば)初診から2時間以内に照射がなんとか可能です。だからといって無茶苦茶でひどい治療をしているわけではありませんよ。
例えるなら、突然帰宅して「腹が減ったよ、お母さん」と食べ物をせがむ息子(や私)に、家にある有りあわせの食材で私の妻が急きょ料理を作るのと似た感じでしょうか。急ぐからといって食べられない腐った食材を使うわけがありませんよね。
治療開始時に患者さんが歩ける状態だったかどうかで、その後の回復率が全然違うMSCC。下半身が不完全マヒの(自力では歩けないがまだそこそこ足が動く)状態では約50%の症例が緊急照射後に歩けるようになりますが、完全マヒにおちいってしまうと歩行可能例は緊急照射をしても10%程度に激減してしまうと報告されています。
(Loblaw DA, et al. JCO 1998; 16: 1613-1624、など)
そして、この論文を含め手術を行ったほうがMSCCによる下半身マヒが改善する割合は高いとする報告は多いです。しかし、MSCCを発症している患者さんというのは身体の他の部分にも転移が見つかってたり、全身状態が悪くて手術に耐えられない方が少なくありません。また、手術そのものも全身麻酔はもちろんのこと脊椎の場合は出血など身体の負担も大きいようで簡単ではありません。しかも緊急手術となると、手術室スタッフを呼び出さなければいけなかったり(ま、これは緊急照射でも同じですが)、可能な範囲でいろいろな術前検査をしなければいけなかったり、輸血の準備が必要だったりします。なので、予測予後(あとどのくらい生存されるかの予想)が明らかに3か月を超えない方だと手術対象にし難いようです。
以前ある講演会で、英論文報告やご講演を多くなさっている国内第1人者である静岡県立がんセンター整形外科の片桐先生のお話を伺う機会があったのですが、整形外科医が積極的にMSCC治療を行っておられる施設ですら手術適応は全体の数%しかないとのことでした。手術が実は簡単でない脊椎を専門にする整形外科医そのものがあまり多くなく、また脊椎転移を積極的に手術する施設というのはさらに限られるそうです。脊椎外科的に今後の大きな課題の一つだそうです。
たしかに一般総合病院にいらっしゃる整形外科の先生って、事故など良性の(=がんではない)骨折やけがの治療だけでもいつも引っ張りだこで、そうでなくても忙しくて大変そうですし。
ということで、治る率がやや悪くてもMSCCは緊急照射が対象になる患者さんがとても多いです。
(タイトルの理由はその2で…)
うちの科ですが、通常は前日までに主治医の先生に放射線治療ご依頼の新規患者さん受診予約をしていただきます(新患予約枠を一部制限しているので、院内ですとうちの科に直接電話受付で、院外ですと地域医療連携室を通して予約をとることもあります)。そして、その予約内容を電子カルテでほぼ毎日行っている前日昼のカンファレンスで確認します。初診前に事前準備として、世に出ている各種がん診療ガイドラインや過去の論文報告やうちの病院の基本治療方針とのすり合わせ、あるいは主治医の先生方や画像診断の先生方などとの個別相談をし、あくまで医療者(≒うちの放射線治療科)としての立場「だけ」でその方の診療方針をおよそ確認し診察に臨むためです。もちろん最終的な診療方針は、患者さんの状態を直接確認し、ご本人やお付き添いの方々などのご希望や診察の場でお互いによく相談したうえで決定していています。
また、初診から初回の放射線治療開始までにも原則として丸1日は時間の余裕をいただいています。丁寧な放射線治療計画や精度検証などを行うためで、つまり事前に「きちんとした」下準備を行ってから実際の患者さんへ放射線治療をご提供させていただいています。
なお、遠方の外来患者さんご紹介などで、事前打ち合わせなしで飛び込み緊急新患診察をすることはよくあります。ただその場合も、この下準備期間に前述のスタッフ間の治療方針確認を同時進行で行い、必要であれば患者さんへの説明追加・修正は後日改めて行います。
美味しいごちそう料理を作るにはきちんとした下準備がとても大事だということと同じでしょうか。私の場合、自分でほとんど料理を作らないのでかなり説得力に欠けますが…
しかし、がんに関連した症状というのは体調が急に悪くなり、1-2日以内に救急治療が必要になることがあります(がん救急ともいいます)。
緊急照射すべきがんに関連した症状というのはそれほど多くありませんが、MSCCが緊急照射の対象として最も多いことは先月のブログでも簡単にご紹介いたしました。
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-92.html
脊椎の骨転移など悪性腫瘍によって脊髄神経が圧迫され傷つくと、下半身マヒなどがあっという間に進行しがん患者さんの生活の質を永久的に著しく低下させてしまうおそれがあるMSCC。マヒが急速に進行している場合は定型的な放射線治療の事前準備や丁寧さよりもまずは照射開始までの時間の速さが最優先されますので、(やむを得ず)他の患者さんたちの準備を先送りにしてスタッフ間の各種治療内容検証もシンプルに時間をかけず最短コースで緊急照射をめざします。ちなみにうちでは(スタッフが院内にさえいれば)初診から2時間以内に照射がなんとか可能です。だからといって無茶苦茶でひどい治療をしているわけではありませんよ。
例えるなら、突然帰宅して「腹が減ったよ、お母さん」と食べ物をせがむ息子(や私)に、家にある有りあわせの食材で私の妻が急きょ料理を作るのと似た感じでしょうか。急ぐからといって食べられない腐った食材を使うわけがありませんよね。
治療開始時に患者さんが歩ける状態だったかどうかで、その後の回復率が全然違うMSCC。下半身が不完全マヒの(自力では歩けないがまだそこそこ足が動く)状態では約50%の症例が緊急照射後に歩けるようになりますが、完全マヒにおちいってしまうと歩行可能例は緊急照射をしても10%程度に激減してしまうと報告されています。
(Loblaw DA, et al. JCO 1998; 16: 1613-1624、など)
そして、この論文を含め手術を行ったほうがMSCCによる下半身マヒが改善する割合は高いとする報告は多いです。しかし、MSCCを発症している患者さんというのは身体の他の部分にも転移が見つかってたり、全身状態が悪くて手術に耐えられない方が少なくありません。また、手術そのものも全身麻酔はもちろんのこと脊椎の場合は出血など身体の負担も大きいようで簡単ではありません。しかも緊急手術となると、手術室スタッフを呼び出さなければいけなかったり(ま、これは緊急照射でも同じですが)、可能な範囲でいろいろな術前検査をしなければいけなかったり、輸血の準備が必要だったりします。なので、予測予後(あとどのくらい生存されるかの予想)が明らかに3か月を超えない方だと手術対象にし難いようです。
以前ある講演会で、英論文報告やご講演を多くなさっている国内第1人者である静岡県立がんセンター整形外科の片桐先生のお話を伺う機会があったのですが、整形外科医が積極的にMSCC治療を行っておられる施設ですら手術適応は全体の数%しかないとのことでした。手術が実は簡単でない脊椎を専門にする整形外科医そのものがあまり多くなく、また脊椎転移を積極的に手術する施設というのはさらに限られるそうです。脊椎外科的に今後の大きな課題の一つだそうです。
たしかに一般総合病院にいらっしゃる整形外科の先生って、事故など良性の(=がんではない)骨折やけがの治療だけでもいつも引っ張りだこで、そうでなくても忙しくて大変そうですし。
ということで、治る率がやや悪くてもMSCCは緊急照射が対象になる患者さんがとても多いです。
(タイトルの理由はその2で…)
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