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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 今日、某製薬会社の担当者の方のプレゼンによる睡眠薬の説明会が院内でありました。私は睡眠薬の専門医ではありませんが、最初に少しだけ…

 患者さんが眠れないと訴えると比較的気軽にお医者も睡眠薬を処方しがちですが、ベンゾジアゼピン系など実際は決して安全とは言いきれない薬ばかりのようです。他のいろいろな薬との相互作用(増強効果や減弱効果)が指摘されていたり、依存性が指摘されていたり。依存性についてははっきりした証拠がありませんと製薬会社さんからは説明を受けるのですが…?
 すぐ効果が薄れる短時間作用型の睡眠薬でも、特にご高齢者など代謝の低下した人では、数時間後までは血中濃度でそれなりの量が身体に残るようです。つまり翌朝起きてからも、まだ睡眠薬の効果が続いているわけです。アルコールを飲もうものなら、その効果(脳の活動低下)はさらに上乗せされます。寝れないからお酒も飲んじゃえってなんとなくありがちですが、それなりに危険のようです。

 では、朝、車の運転って大丈夫?

 実は、製薬会社さんから出ている(たぶん)全ての睡眠薬の使用上の注意には、『小さな文字で』重要な基本的事項として『本剤の影響で翌朝以降に及び、眠気、注意力、集中力、反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること』とさりげなく書いてあります。
だから、睡眠薬を飲んだら翌朝は自動車の運転はしてはいけないのです。

 飲酒に関しては、十分にアルコールが身体から抜けていない「二日酔い」状態の取り締まりも最近はなされます。しかし睡眠薬による眠気などの影響については、簡易的に血中濃度を測れる仕組みはまだないようです。警察などによる運転の取り締まりは(たぶん)なく、不幸な暴走事故があった時にマスコミ報道されるくらいかもしれません。

 ちなみに日本は世界でも傑出した睡眠薬大量処方国です。


 昨年、厚生労働省から「リリカという帯状疱疹後の痛み改善用の薬で2年間に10人が車の事故を起こしたので、内服中は運転しないでください」という勧告が(珍しく)あり、マスコミ報道もされました。この薬、基本的に脳や脊髄以外の末梢神経に関係する痛みに効くようなので、麻薬が効きにくいがんによる神経痛やしびれの治療にも用いられます。主な副作用は眠気やふらつき、めまいです。

 がんの疼痛緩和でWHOが推奨するモルヒネなどの麻薬は、過量投与になると眠気が出ることはよく知られています。また、リリカ以外にも他の抗けいれん薬や抗精神病薬など、がんの鎮痛補助薬(麻薬の効きにくい痛みに用いられる薬群)の多くは、眠気やふらつき、めまいが主たる副作用になっています(いずれもかなり高頻度のよう)。ざっくり言うと、神経の電気信号伝達をマヒさせるからボーっとしたり眠くなったりするようです。
 鎮痛補助薬の中で不眠(興奮作用)で困るのはステロイドくらいでしょうか。しかしこれも、まれですが副作用として眠気があるらしいです。

 リリカだけが突出して眠気が出る頻度が多いのか、たまたま調査したら多かった(つまり、他の薬との違いはよくわかっていないだけな)のか。

 たぶん後者だろうな…?
 

(まだ続くのですが、本日はとりあえずここまでにします…)

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【2013/02/05 21:58】 | 医療全般
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