今年度はうちを含めて近隣で緩和ケア科関連の(たぶん)明るい話題が多いです。隣町の病院では新たに緩和ケア病棟が開業、別の病院では新しい緩和ケアの先生がご着任されました。大学病院も新しい体制になるようです。
そしてうちの病院でも、長年お仕事をなさってくださった緩和ケア科の科長先生が惜しまれながら昨年度いっぱいでご退職されてしまったのですが、代わりに新しい科長先生がまもなく着任されます。私と同じ職場でお仕事するのはおよそ1か月なのが残念です…
長年の間、緩和ケアの医師不足、病床不足だったうちの地域なので、緩和ケアを必要とするがん患者さんたちにとっていろいろ選択肢が広がるのはとても良いことだと思います。
一方で、ピースハウス病院という日本初の独立型ホスピスが経営不振で昨年度に閉鎖(休止)という悲しいニュースも少し前に報道されました。
http://www.peacehouse.jp/
ホスピスや緩和ケア病棟というのは総合病院に併設されている場合が多いようです。そして、以前は医療材料費などの高騰に比べ診療報酬の設定が厳しく、病院全体としては赤字採算部門で他の診療などから補てんすることが少なくなかったようです。
平成24年度からの診療報酬改定で緩和ケア病棟入院料(1日につき)が見直され、入院料の大幅アップとなりました。日本緩和医療学会の健保委員ら関係各位のご尽力のおかげです。
人件費や諸経費がかかる以上は経営をしなければならず、きれい事だけでは済まないお金の話は医療であっても同じです。
病院収益のお話を少し続けます。
一般的に、救急疾患も扱うような総合病院では、入院日数に応じた1日あたり定額報酬を算定するDPC制度を採用しています。
DPCとはDiagnosis Procedure Combinationの頭文字、つまり Diagnosis(診断)とProcedure(治療・処置)のCombination(組み合わせ)の略称で、日本語では診断群分類別包括制度といいます。
DPCは、「病名(診断)」と 「サービス(治療・処置)」の組み合わせによって、さまざまな状態の患者さんを分類する方法です。患者さんから請求できる診療報酬(支払額)が、病名によっていろいろなセット価格となっています。入院したときにのみ対象となり、外来治療は出来高払い(実施した分が全部売り上げになる)です。
出来高払いによる過度な診療漬けと医療費請求を避けるために平成15年度から国内で段階的に採用されてきた制度です。普通は「余計な」検査や治療さえしなければ、病院側が損をしないような料金設定になっています。
何やら難しい説明になってしまいましたが、DPCとはいろいろなセットメニューが定額で選べるバイキング料理みたいなイメージと思っていただければよいでしょうか?普通はお店(病院)が赤字を出しにくいような各種バイキング(DPC)の料金設定になっています。一部追加料金でオーダーできる料理(診療行為)も認められています。
ただ、例えば料理人のこだわりが強すぎて高価な食材をたくさん使ったりすると、経費がかさんでお店が損をしてしまうことがあります。
ピースハウス病院さん、こだわりもたくさんあったのでしょうね…
放射線科関連ですと、放射線の諸検査もDPC対象であり、多くの病院では(節度ある範囲で)なるべく入院前に外来で一通りの検査をします。特にPET検査は高額なので、入院中の多くの患者さんに行ってしまうと病院経営上はとても損失を被ります。
実は放射線治療というのはDPCの対象外、追加料金でオーダーできる出来高算定設定の特別治療です。つまり「一般病室に」入院していようが、外来通院であろうが、セットメニューとは別料金設定(つまり放射線治療を行った分だけDPC料金に上乗せ請求が可能)となっています。
一方で、「より高額な」緩和ケア病棟入院料が算定されている患者さんは一般病棟のDPCとは別扱いで、放射線治療も出来高算定ではなく包括化されています。
ということで(?)、緩和ケア病棟に入院の患者さんたちに対する緩和的放射線治療は「損をするから(なかなかできない)」という声を担当のお医者さんたちから伺ったり、わざわざ一般病室に再転科して「出来高払いになるように」緩和的放射線治療を行ったりする場合があるようです。
では、緩和ケア病棟の患者さんに緩和的放射線治療を行うことはそんなに「損をする」ものなのでしょうか?
(続く)
【2015.5.19修正】
緩和ケア病棟入院料(1日につき)が見直された診療報酬改定は前回(平成26年度)からではなく前々回の平成24年度からで、修正いたしました。前回も増額変更はありました。
そしてうちの病院でも、長年お仕事をなさってくださった緩和ケア科の科長先生が惜しまれながら昨年度いっぱいでご退職されてしまったのですが、代わりに新しい科長先生がまもなく着任されます。私と同じ職場でお仕事するのはおよそ1か月なのが残念です…
長年の間、緩和ケアの医師不足、病床不足だったうちの地域なので、緩和ケアを必要とするがん患者さんたちにとっていろいろ選択肢が広がるのはとても良いことだと思います。
一方で、ピースハウス病院という日本初の独立型ホスピスが経営不振で昨年度に閉鎖(休止)という悲しいニュースも少し前に報道されました。
http://www.peacehouse.jp/
ホスピスや緩和ケア病棟というのは総合病院に併設されている場合が多いようです。そして、以前は医療材料費などの高騰に比べ診療報酬の設定が厳しく、病院全体としては赤字採算部門で他の診療などから補てんすることが少なくなかったようです。
平成24年度からの診療報酬改定で緩和ケア病棟入院料(1日につき)が見直され、入院料の大幅アップとなりました。日本緩和医療学会の健保委員ら関係各位のご尽力のおかげです。
人件費や諸経費がかかる以上は経営をしなければならず、きれい事だけでは済まないお金の話は医療であっても同じです。
病院収益のお話を少し続けます。
一般的に、救急疾患も扱うような総合病院では、入院日数に応じた1日あたり定額報酬を算定するDPC制度を採用しています。
DPCとはDiagnosis Procedure Combinationの頭文字、つまり Diagnosis(診断)とProcedure(治療・処置)のCombination(組み合わせ)の略称で、日本語では診断群分類別包括制度といいます。
DPCは、「病名(診断)」と 「サービス(治療・処置)」の組み合わせによって、さまざまな状態の患者さんを分類する方法です。患者さんから請求できる診療報酬(支払額)が、病名によっていろいろなセット価格となっています。入院したときにのみ対象となり、外来治療は出来高払い(実施した分が全部売り上げになる)です。
出来高払いによる過度な診療漬けと医療費請求を避けるために平成15年度から国内で段階的に採用されてきた制度です。普通は「余計な」検査や治療さえしなければ、病院側が損をしないような料金設定になっています。
何やら難しい説明になってしまいましたが、DPCとはいろいろなセットメニューが定額で選べるバイキング料理みたいなイメージと思っていただければよいでしょうか?普通はお店(病院)が赤字を出しにくいような各種バイキング(DPC)の料金設定になっています。一部追加料金でオーダーできる料理(診療行為)も認められています。
ただ、例えば料理人のこだわりが強すぎて高価な食材をたくさん使ったりすると、経費がかさんでお店が損をしてしまうことがあります。
ピースハウス病院さん、こだわりもたくさんあったのでしょうね…
放射線科関連ですと、放射線の諸検査もDPC対象であり、多くの病院では(節度ある範囲で)なるべく入院前に外来で一通りの検査をします。特にPET検査は高額なので、入院中の多くの患者さんに行ってしまうと病院経営上はとても損失を被ります。
実は放射線治療というのはDPCの対象外、追加料金でオーダーできる出来高算定設定の特別治療です。つまり「一般病室に」入院していようが、外来通院であろうが、セットメニューとは別料金設定(つまり放射線治療を行った分だけDPC料金に上乗せ請求が可能)となっています。
一方で、「より高額な」緩和ケア病棟入院料が算定されている患者さんは一般病棟のDPCとは別扱いで、放射線治療も出来高算定ではなく包括化されています。
ということで(?)、緩和ケア病棟に入院の患者さんたちに対する緩和的放射線治療は「損をするから(なかなかできない)」という声を担当のお医者さんたちから伺ったり、わざわざ一般病室に再転科して「出来高払いになるように」緩和的放射線治療を行ったりする場合があるようです。
では、緩和ケア病棟の患者さんに緩和的放射線治療を行うことはそんなに「損をする」ものなのでしょうか?
(続く)
【2015.5.19修正】
緩和ケア病棟入院料(1日につき)が見直された診療報酬改定は前回(平成26年度)からではなく前々回の平成24年度からで、修正いたしました。前回も増額変更はありました。
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