リリカの添付文書に記載されている重大な副作用として、「めまい(20%以上)、傾眠(20%以上)、意識消失(0.3%未満)」とあります。眠気より強いうたたね状態を指す傾眠が20%以上もあるという調査結果が出ているリリカを内服後の車の運転は駄目、というのは誰しも納得かもしれません。
他の薬は?
風邪で鼻水がつらかったり花粉症がひどかったりすると、耳鼻科や内科の先生は抗ヒスタミン剤という薬を普通に処方します。いや、放射線治療科の医者だって精神科の医者だって処方しますし、医師免許を持っていれば誰でも薬を出せちゃいます。また、市販の風邪薬にも成分として混ざっていることがあります。
製薬会社から出ている病院薬剤師と保険薬局薬剤師のための情報誌GSKファーマシストジャーナル2012年3月号の「患者と向き合う抗ヒスタミン薬の上手な服薬指導を考える」からの引用を転載します。
『眠気の発現頻度については、添付文書では約2~7%と記載されている。しかし、今回の患者アンケート調査では、実際の服用経験では「毎回眠くなる」および「時々眠くなる」を合わせると約30~40%に達することが示された。「毎回眠くなる」、「時々眠くなる」、「以前は眠くなったが、今は眠くならない」と回答した患者に眠気の程度を尋ねた結果、全ての薬剤において「我慢できないほど」の眠気を感じる患者がいることがわかった。なお、こうした眠気の発現に年齢や服用期間による差は見られなかった。
眠気の発現頻度については、添付文書記載の数値と実際の服用経験による数値とでは乖離していることが示されたが、これは治験では軽度な症状よりも重篤な症状が評価されやすいことや、評価者の違い(医療者であるか患者本人であるか)にもよると考えられる。私たち薬剤師にとっては添付文書の記載情報は非常に重要であるため、患者への情報提供も“添文どおり”となりがちである。しかし、添付文書上の情報のみにとらわれることなく、どの薬剤についてもまず「抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなることがある」と伝えるべきだろう。』
つまりリリカ並み(以上?)の眠気出現率。副作用の強さは、薬の種類や投与量によって、また人によって異なりますが。
http://glaxosmithkline.co.jp/medical/e_library/bn/pdf/pj/35.pdf
他にも、眠気を引き起こす可能性がある薬は多々あり、「ときに」とか「まれに」というくくりで添付文書に載っています。一般に「ときに」は0.1~5%未満の頻度を指し、「まれに」は0.1%未満の頻度を指すそうです。
「ときに」程度だったら車の運転は許容されるものなのか?「まれに」は1000人に1人未満とごくわずかで、医者が得意の統計学的有意差が文句なく出るレベルだから大丈夫と見なせるのか?やっぱり副作用の記載があったら車の運転は全部駄目なのか(基本、そうだと思います)? その場合も、内服からどの程度時間がたてば許されるようになるのか?
飲酒と似たような話ですし、医薬品についても車の運転についてはっきりした基準を設けてもらったほうが対応しやすいと思います。ただ、あまり厳密に制限し過ぎると、今度は非常に多くの患者さんが車の運転ができないという事態になってしまいます。花粉症が大量発生している今の日本では甚大な社会問題になりそうです。リリカに似た系の薬に関しても、緩和ケアで重宝されている様々な鎮痛補助剤の使用の足かせになってしまう危惧もないとはいえません。
とはいえ、絶対に忘れていけないのは居眠り運転による交通事故は他人にも甚大な危害を加える心配がある、ゆゆしき問題なわけで…。
法的規制をかけようにも、アルコールと違って日本で認可されている薬だけでも山のようにあるから、簡便にドーピング検査ができるものではないのかもしれません。
難しい問題…。
(さらに続く。今度は放射線治療に関係して…長くてすみません)
【付記2013.6.14】
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」ができたのですね。
******************************
【Q10】睡眠薬を服用した翌朝に運転しても大丈夫ですか?
【勧告】
睡眠薬を服用した翌朝に自動車運転を行うことは推奨できない。
睡眠薬を処方する際には、運転をしないように適切に指導する必要がある。
【推奨グレードD】(以下、略)
【患者向け解説】
ほとんどの睡眠薬の説明書に共通して記載されている基本的注意事項として「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する」ことが上げられます。このことからも分かるように、睡眠薬を服薬した翌朝には自動車等の運転を控えていただく必要があります。(以下、略)
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130611.html
他の薬は?
風邪で鼻水がつらかったり花粉症がひどかったりすると、耳鼻科や内科の先生は抗ヒスタミン剤という薬を普通に処方します。いや、放射線治療科の医者だって精神科の医者だって処方しますし、医師免許を持っていれば誰でも薬を出せちゃいます。また、市販の風邪薬にも成分として混ざっていることがあります。
製薬会社から出ている病院薬剤師と保険薬局薬剤師のための情報誌GSKファーマシストジャーナル2012年3月号の「患者と向き合う抗ヒスタミン薬の上手な服薬指導を考える」からの引用を転載します。
『眠気の発現頻度については、添付文書では約2~7%と記載されている。しかし、今回の患者アンケート調査では、実際の服用経験では「毎回眠くなる」および「時々眠くなる」を合わせると約30~40%に達することが示された。「毎回眠くなる」、「時々眠くなる」、「以前は眠くなったが、今は眠くならない」と回答した患者に眠気の程度を尋ねた結果、全ての薬剤において「我慢できないほど」の眠気を感じる患者がいることがわかった。なお、こうした眠気の発現に年齢や服用期間による差は見られなかった。
眠気の発現頻度については、添付文書記載の数値と実際の服用経験による数値とでは乖離していることが示されたが、これは治験では軽度な症状よりも重篤な症状が評価されやすいことや、評価者の違い(医療者であるか患者本人であるか)にもよると考えられる。私たち薬剤師にとっては添付文書の記載情報は非常に重要であるため、患者への情報提供も“添文どおり”となりがちである。しかし、添付文書上の情報のみにとらわれることなく、どの薬剤についてもまず「抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなることがある」と伝えるべきだろう。』
つまりリリカ並み(以上?)の眠気出現率。副作用の強さは、薬の種類や投与量によって、また人によって異なりますが。
http://glaxosmithkline.co.jp/medical/e_library/bn/pdf/pj/35.pdf
他にも、眠気を引き起こす可能性がある薬は多々あり、「ときに」とか「まれに」というくくりで添付文書に載っています。一般に「ときに」は0.1~5%未満の頻度を指し、「まれに」は0.1%未満の頻度を指すそうです。
「ときに」程度だったら車の運転は許容されるものなのか?「まれに」は1000人に1人未満とごくわずかで、医者が得意の統計学的有意差が文句なく出るレベルだから大丈夫と見なせるのか?やっぱり副作用の記載があったら車の運転は全部駄目なのか(基本、そうだと思います)? その場合も、内服からどの程度時間がたてば許されるようになるのか?
飲酒と似たような話ですし、医薬品についても車の運転についてはっきりした基準を設けてもらったほうが対応しやすいと思います。ただ、あまり厳密に制限し過ぎると、今度は非常に多くの患者さんが車の運転ができないという事態になってしまいます。花粉症が大量発生している今の日本では甚大な社会問題になりそうです。リリカに似た系の薬に関しても、緩和ケアで重宝されている様々な鎮痛補助剤の使用の足かせになってしまう危惧もないとはいえません。
とはいえ、絶対に忘れていけないのは居眠り運転による交通事故は他人にも甚大な危害を加える心配がある、ゆゆしき問題なわけで…。
法的規制をかけようにも、アルコールと違って日本で認可されている薬だけでも山のようにあるから、簡便にドーピング検査ができるものではないのかもしれません。
難しい問題…。
(さらに続く。今度は放射線治療に関係して…長くてすみません)
【付記2013.6.14】
「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」ができたのですね。
******************************
【Q10】睡眠薬を服用した翌朝に運転しても大丈夫ですか?
【勧告】
睡眠薬を服用した翌朝に自動車運転を行うことは推奨できない。
睡眠薬を処方する際には、運転をしないように適切に指導する必要がある。
【推奨グレードD】(以下、略)
【患者向け解説】
ほとんどの睡眠薬の説明書に共通して記載されている基本的注意事項として「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作に従事させないように注意する」ことが上げられます。このことからも分かるように、睡眠薬を服薬した翌朝には自動車等の運転を控えていただく必要があります。(以下、略)
http://www.ncnp.go.jp/press/press_release130611.html
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