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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 放射線治療科には、脳転移を発症した患者さんや治療を受けた患者さんも受診されます。

 てんかん患者さんによる交通事故が報道されることがありますが、一部の脳転移の患者さんもてんかん(≒けいれんや意識消失)発作を起こすことがあります。そのような脳転移患者さんに対しても、てんかん発作を抑えたり予防するために抗けいれん剤が投与されます。しかし、抗けいれん剤を使ったからといっててんかん発作を完全に抑えることができるとは限りません。

 私のお知り合いのてんかんご専門の先生方にお話を伺ったりする限り、脳転移の患者さんに脳波検査などの精密検査をしても、必ずしもてんかん発症を予見できるわけではないようです。また不幸にして他の脳転移が出現したりして病状が変化する可能性がありますから、検査当時は異常がなかったからといってその後に発作が出てこない保証はありません。脳転移に対する放射線治療を行ったからといって完全に再発を防げるかというと、残念ながらそうではありません。

 ピンポイント治療として知られる脳の定位照射では、てんかん発作が数%ですが治療後の副作用(?)にあり、予防するために抗けいれん剤の適正な投与が考慮されます。定位照射後数日以内の発症が多いと報告されています。非侵襲的で短期間入院(施設によっては外来治療も)というのが売りの定位照射ですが、治療1-2日後に患者さん自らが自家用車で帰宅、というのは時期的に危険を伴う恐れがあります。

 一方、(たぶん全部の)抗けいれん剤の添付文書にも、「重要な基本的注意」として「眠気、めまい、注意力低下で運転をさせないよう注意すること」と記載があります(禁忌とは別枠)。うちの施設では原則として入院で脳転移の放射線治療を行いますが、たまに外来通院を希望される患者さんや主治医がいらっしゃいます。その場合、私からも患者さん自らの運転による通院照射をしないようには指導しますが、本当にしていないかの確認というのはなかなか難しい部分があります。

 てんかん患者さんの自動車運転については、日本てんかん学会から「てんかんのある人の運転適性について」の学会意見表明がでています。しかし、てんかん発作を起こすかどうかはっきりしない脳転移患者さんに対する運転許可に関しては明確な指針が(たぶん)ないようです。MRIを撮影して脳転移が消えていれば大丈夫なのか、脳波を調べて異常なければ大丈夫なのか?学会表明のある期間に発作がなければいいのか?

 自家用車がないと移動もままならない田舎の患者さんには大変な問題です…これは他のてんかん患者さんも同じでしょうけれど。もちろん交通事故は相手にも危害を加える心配がありますから、第一にそこを忘れてはいけないわけで…繰り返しですが。「永久に駄目」と確定診断するなら、医療者側はすっきりしますけれど…。

 こちらも難しい問題です。


 今回の投稿内容は、学会などでの共通認識では(たぶん)なく、あくまで地方の町医者である私がただ勉強不足、確認不足なだけかもしれません。不透明な部分が少なからずあるところです。何とぞご容赦いただけますと幸いです。また、ここをご覧になって情報やご意見をお持ちのご専門の方がいらっしゃったら、なんなりとご教示お願い申し上げます。


(2012.8.xx facebookから加筆修正)

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【2013/02/13 21:58】 | 放射線治療:一般
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