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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 12月12~13日に山口市で第19回日本統合医療学会が開催され、私も学会員なので遠路参加してきました。今年で4度目でした。せっかく山口に行ったので有名だという瓦そばを食べるのも楽しみにしていたのですが、訪れたお店に2件ともふられ(土曜で貸切、日曜なのに定休)がっかりでした。


 統合医療…聞き慣れない方も少なくないでしょうから、学会HPに掲載されている紹介文を以下に引用させていただきます。

 『疾病を治療し症状を緩和する方法には「対症療法」と「原因療法」があります。
これまで多くの医療機関などで実践されてきた医療は、「対症療法」を中心とした近代西洋医学を根本としてきました。しかし昨今、国際的な医療の趨勢(すうせい)は、単に病だけではなく、人間の心身全体を診る「原因療法」を中心とした伝統医学や相補・代替医療も必要であるという考え方に急速に移行しています。統合医療とは、二つの療法を統合することによって両者の特性を最大限に活かし、一人ひとりの患者に最も適切な『オーダーメイド医療』を提供しようとするものです。
 実際に、救命救急や外科手術などの臨床現場では近代西洋医学でしかなしえない治療が施されます。しかし一方で、慢性疾患の治療や予後の療養、さらには近代西洋医学では治療不可能と言われた症状に対して、伝統医学や相補・代替医療の有効性が数多く報告されています。また、超高齢社会が進み行く現代社会においては、治療としての医療だけではなく、疾病予防領域も重要視されており、統合医療への期待度は益々高まると予想されています。
 このように、治療と予防医療の両面から対症療法・原因療法を相互発展・連携させていく統合医療の推進が、日本にとっても急務となっております。』
http://imj.or.jp/intro


 ざっくり書くと、病院で提供するいわゆる西洋医学だけでなく、漢方薬(これは保険でも認められていますが)や鍼灸といった東洋・中医学、ヨーガ・アーユルヴェーダなどのインド医学を代表とする伝統医学、サプリメントやマッサージといった補完代替医療、などを統合させてより全人的な医療を構築しましょうというのを目指した学会です。

 もっとも、この領域は西洋医学のような科学的報告がきちんとなされていない施術も多数あり、似非医学やプラセボ効果と揶揄されることも少なくなく、(ぼったくり)商売とみなされるものもいろいろあります。

 とはいえ、現実にはがん患者さんの半数くらいが何らかの保険診療外の医療にも期待しているとの報告もあり、西洋医学者目線だけでそういったものを全否定するのも問題あるように思っています。

 また、西洋医学に比べると科学性に乏しいとはいえ、定量化といった方法がまだないために実証されていないものも少なくありません(たぶん)。そこが、心身・金銭面での被害も発生しやすい似非医療との区別がつけにくい部分ではあるわけですが…。

 西洋医学も、推論と経験と統計学が中心なので厳密に科学といえるかは疑問ですけど…精神医学とか。

 ということで、私は寛容かつ公平な目線(のつもり)でいろいろな情報収集のため数年前から日本統合医療学会にほぼ毎年参加しております。


 そして今回の学会もいろいろな立場の方々からご発表がありました。あやしげなのも含まれております。

 で、私が参加前に学術大会抄録を眺めて一番関心を引いていたのが、『標準的ではない癌治療の最前線』というシンポジウムにあった『「がんが自然に治る生き方」を探して――治った人々がしていたこと』というジャーナリスト長田美穂さんのご講演抄録でした。

 「がんが自然に治る生き方」という書籍は2014年11月に日経プレジデント社から翻訳本が出版され、今もAmazonで売り上げ上位を占めているそうです。米国では原著がベストセラーになったらしく、ご存じの方も多いかと思います。私も(和訳版の)発売と同時に購入し、拝読しておりました。
 一般の方々が少なからず読んでいることを踏まえ、臨床の先生方も一度は目を通しておいた方がいい書籍だと私は思います。

 この書籍は著者のケリーターナーさんがハーバード大の学生だった時にがんの自発的寛解(原著タイトルはRadical Remission)という現象に関心を持たれ、研究した結果をまとめたものだそうです。

 長田さんの学会抄録を以下に一部改変引用させていただきます。
『医師にさじを投げられた患者の中に、10年がかりで1000本の医学論文を読破、世界10か国を旅して患者や治療者100人超へのインタビューを重ねました。そして寛解をとげた人々のほとんどが、次の9つのことを実践していたと明らかにしました。
1.抜本的に食事を変える。2.治療法は自分で決める。3.直感に従う。4.ハーブとサプリメントの力を借りる。5.抑圧された感情を解き放つ。6.より前向きに生きる。7.周囲の人の支えを受け入れる。8.自分の魂と深くつながる。9.「どうしても生きたい理由」を持つ』

 実は学会当日のご講演、長田さんの同僚でこの書籍の出版にも関わられた中島愛さんがピンチヒッターとしてご登壇されました。中島さんの冒頭のご説明によると、講演予定だった長田美穂さんは残念ながら今年の10月に病気でお亡くなりになられたとのことでした。
 この場をお借りして長田さんのご冥福をお祈り申し上げます。

 ケリーターナーさんが指摘されたこの9つの項目はあくまでもアンケート調査から抽出した仮説ではあるものの、そのうち7つが心の持ちように関係した項目であったことには驚きです。医療者関係の項目はありませんね…。

 故長田さんの抄録を再び引用すると、『がん患者や彼らに寄りそう人々は、劇的な寛解の減少にはがんの問題を超えた、人間の命、健康の本質を探る鍵が潜んでいるということに気が付き始めているということです。その本質とは、そんな状況おいても人は変わりうる、そしてその変化を後押しするのは「希望」だ、ということです。』


 これまで自発的生き方の本質的な部分を変える(≒本来の自分を盛り戻す)ことが大事というのは、どうも奇跡的に(?)自発的寛解を達成されたという方々が口を揃えて強調されています。自発的寛解を自然治癒(力)と表現されている方々もいらっしゃいますが、同義語のようです。

 ただ、彼らからの情報をいろいろ読んでみると、生き方の本質的な部分を変えるというのは決して簡単なことではなさそうです。また、私から見ると実は何らかの西洋医学が施されているケースもそれなりにあるようです。

 この話題は改めてまた私なりにまとめてみたいと思います。


 がんの自発的寛解(自然治癒力)、とても気になっています。

 似非ではないような気がします。理論的根拠はありません。



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【2015/12/21 21:44】 | 医療全般
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