先日、がんのリハビリテーションをテーマにした院内研修会があり、エビデンスと多職種連携についていろいろな情報を教えていただきました。以前に紹介したがんのリハビリテーションガイドラインについてもわかりやすく解説していただきました。
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-117.html
うちの病院では月に1~2回くらいリハビリテーションを施行中の骨転移患者さんを主に骨転移カンファレンスを開催しています。リハビリ科の理学療法士・作業療法士さんや整形外科・外科・放射線治療科などの医者(いちおう私も)、がん専門看護師さんや緩和ケア対策室の看護師さん、医療ソーシャルワーカーさんなどが一同に会し、『患者さん・ご家族の希望や問題点の共有やリスクの確認(安静度の設定や外固定の必要性)、治療適応(手術や放射線治療など)、ケアの注意点、リハビリテーションの目標、退院調整について、など症例に合わせて様々な検討を行っています。』(研修会ハンドアウトから一部修正引用)
以前、ブログで次のようなことを書きました。
『キャンサーボードっていうと、臓器横断型という表現はしているものの、肺がんキャンサーボードとか胃がんキャンサーボードといった「臓器毎に分けた」多職種スタッフが個別症例の検討会をするイメージが私にはなんとなくあります。(…中略…)
ですが、骨転移ってすべてのがんから発症する可能性がある病状なので、各診療科主治医はもちろんですが、整形外科・リハビリ科・放射線腫瘍科&診断科・緩和科・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカーさんなどがそれぞれの立場で意見を出しやすいという点では、臓器横断型という趣旨に比較的合致したキャンサーボードかもしれません。
骨転移へ放射線治療後のリハビリテーションも病状や社会復帰などの目標により多様性に富んだ領域です。
社会復帰を含めた骨転移照射後のリハビリって個人差が大きく、また骨転移患者さんに対するリハビリスケジュールって全国的にもいまだに標準的されていないので、患者さんに骨転移緩和的放射線治療の説明をする時によく悩みます。患者さんのリハビリ方針決定も、骨転移キャンサーボードのほうが症例や専門意見の集約ができて検討会としての実りは大きいかもしれません。』
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-82.html
私がこれまで勤務した病院で初の多職種がきちんと集まる骨転移カンファレンス(キャンサーボード)、まさにこんな感じです。ちなみに私、複数の大学病院を含め常勤で8施設、非常勤を含めると数十施設で仕事をさせていただきましたが、他のカンファレンスで骨転移症例が提示されたり、少人数で相談することはもちろんこれまでもありました。
放射線腫瘍医は、痛みや神経まひなどを伴う多くの骨転移患者さんに対し症状緩和のための放射線治療を提供する機会が多くあります。がん臨床の先生方も骨転移患者さんを診療することは日常的なことだと思いますが、そんな「身近な」骨転移に対するリハビリテーションというのは、医療者側ですらきちんと把握されていないことが少なくないように感じています。
だんだん回復する他の疾患と違って、骨転移は経時的に回復にも悪化にも変化する(=病状に波がある)ことが少なくなく、また治療の目標は症例によって、いや同じ症例でもその時の状態によって大きく異なります。骨転移で骨折しそうな部分に放射線治療を行ったからといってすぐに骨が固くなるわけではなく、コルセットなどの装具が必要だったり車いすなどで荷重制限を数週間も課さなければならないケースも少なくありません。
生命予後が限られていると予測される方に対し、骨折予防に生活の制限をかけるのはとても辛いことです。もちろん骨折してしまうともっと辛い状況になってしまいますが…。
「もし骨折しても手術すればいい」とおっしゃる頼もしい整形外科の先生もおられますが実際には少なく、がんの病状が進んで手術そのものが困難な場合は少なくありませんし、3~6ヵ月の生命予後が期待されないと手術適応にはならないというのが一般的です。
骨転移のリハビリテーション方針決定にも、がんの縮小予測や生命予後予測は大変重要となります。しかし予測というのは簡単ではなく、ベテラン医師の経験というのも眉唾ものが少なくありません。「余命○○ヶ月の宣告」なんて当たらないことばかりですから、記憶の限り私は言ったことがありません(代わりに報告上の生存中央値をお伝えすることはあります)。
様々ながんの骨転移患者さんが何を望んでいるのかを引き出し、今後起きうる症状やリスクの管理をするには、サポートする医療者がチームとして多職種連携し情報共有することがとても大事です。
骨転移カンファレンス、(施設として余力があれば)お薦めです!

http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-117.html
うちの病院では月に1~2回くらいリハビリテーションを施行中の骨転移患者さんを主に骨転移カンファレンスを開催しています。リハビリ科の理学療法士・作業療法士さんや整形外科・外科・放射線治療科などの医者(いちおう私も)、がん専門看護師さんや緩和ケア対策室の看護師さん、医療ソーシャルワーカーさんなどが一同に会し、『患者さん・ご家族の希望や問題点の共有やリスクの確認(安静度の設定や外固定の必要性)、治療適応(手術や放射線治療など)、ケアの注意点、リハビリテーションの目標、退院調整について、など症例に合わせて様々な検討を行っています。』(研修会ハンドアウトから一部修正引用)
以前、ブログで次のようなことを書きました。
『キャンサーボードっていうと、臓器横断型という表現はしているものの、肺がんキャンサーボードとか胃がんキャンサーボードといった「臓器毎に分けた」多職種スタッフが個別症例の検討会をするイメージが私にはなんとなくあります。(…中略…)
ですが、骨転移ってすべてのがんから発症する可能性がある病状なので、各診療科主治医はもちろんですが、整形外科・リハビリ科・放射線腫瘍科&診断科・緩和科・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカーさんなどがそれぞれの立場で意見を出しやすいという点では、臓器横断型という趣旨に比較的合致したキャンサーボードかもしれません。
骨転移へ放射線治療後のリハビリテーションも病状や社会復帰などの目標により多様性に富んだ領域です。
社会復帰を含めた骨転移照射後のリハビリって個人差が大きく、また骨転移患者さんに対するリハビリスケジュールって全国的にもいまだに標準的されていないので、患者さんに骨転移緩和的放射線治療の説明をする時によく悩みます。患者さんのリハビリ方針決定も、骨転移キャンサーボードのほうが症例や専門意見の集約ができて検討会としての実りは大きいかもしれません。』
http://mccradonc.blog.fc2.com/blog-entry-82.html
私がこれまで勤務した病院で初の多職種がきちんと集まる骨転移カンファレンス(キャンサーボード)、まさにこんな感じです。ちなみに私、複数の大学病院を含め常勤で8施設、非常勤を含めると数十施設で仕事をさせていただきましたが、他のカンファレンスで骨転移症例が提示されたり、少人数で相談することはもちろんこれまでもありました。
放射線腫瘍医は、痛みや神経まひなどを伴う多くの骨転移患者さんに対し症状緩和のための放射線治療を提供する機会が多くあります。がん臨床の先生方も骨転移患者さんを診療することは日常的なことだと思いますが、そんな「身近な」骨転移に対するリハビリテーションというのは、医療者側ですらきちんと把握されていないことが少なくないように感じています。
だんだん回復する他の疾患と違って、骨転移は経時的に回復にも悪化にも変化する(=病状に波がある)ことが少なくなく、また治療の目標は症例によって、いや同じ症例でもその時の状態によって大きく異なります。骨転移で骨折しそうな部分に放射線治療を行ったからといってすぐに骨が固くなるわけではなく、コルセットなどの装具が必要だったり車いすなどで荷重制限を数週間も課さなければならないケースも少なくありません。
生命予後が限られていると予測される方に対し、骨折予防に生活の制限をかけるのはとても辛いことです。もちろん骨折してしまうともっと辛い状況になってしまいますが…。
「もし骨折しても手術すればいい」とおっしゃる頼もしい整形外科の先生もおられますが実際には少なく、がんの病状が進んで手術そのものが困難な場合は少なくありませんし、3~6ヵ月の生命予後が期待されないと手術適応にはならないというのが一般的です。
骨転移のリハビリテーション方針決定にも、がんの縮小予測や生命予後予測は大変重要となります。しかし予測というのは簡単ではなく、ベテラン医師の経験というのも眉唾ものが少なくありません。「余命○○ヶ月の宣告」なんて当たらないことばかりですから、記憶の限り私は言ったことがありません(代わりに報告上の生存中央値をお伝えすることはあります)。
様々ながんの骨転移患者さんが何を望んでいるのかを引き出し、今後起きうる症状やリスクの管理をするには、サポートする医療者がチームとして多職種連携し情報共有することがとても大事です。
骨転移カンファレンス、(施設として余力があれば)お薦めです!

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