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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 先週、うちの病院の院内セミナーで薬剤師さんから薬剤処方に関する疑義照会関連の発表があったのですが、うちでは処方全体の約3%の照会率だったそうです。

 デジタル大辞泉によると、疑義照会とは『医師の処方箋に疑問や不明点がある場合、薬剤師が処方医に問い合わせて確認すること。薬剤師法第24条に「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と規定されている。』とあります。


 昨年公表された厚生労働省がん対策推進協議会資料の中に、国立がん研究センター中央病院薬剤部長山本弘史先生による「がん医療における薬剤師の役割」の11ページに『処方箋の疑義紹介等状況調査との比較』というのがあるのですが、この報告によると疑義照会率は図のように徐々に増加していて、全体の3%以上とのことです(つまりうちの病院はほぼ全国平均ですね)。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002f210.html
 処方変更割合はその約2/3(全体の2%)で、およそ医師1日50人の処方で1回は処方の変更をしている単純計算になります。さらに健康被害(どの程度なのかは不明ですが)が推測されるのは約20%と、(50x20%=)250人に1人は薬剤師さんのチェックが入らないと医療事故が起きる可能性が潜在していることになります。少なからず前回同様の処方というのもあるはずなのに、これって多すぎ?

 ちなみにパチンコをしたことのある方ならわかっていただける(不謹慎な?)例えですが、3%≒1/30の確率というのは確率変動=「超大当たり」モード状態に該当します。またアクシデントの起こりうる誤処方確率1/250というのも通常モードレベルで、全く当たる気のしない数億円の宝くじとは全然違い1回転目で当たる可能性はそれなりにあるものです。また毎月通院していたら 20年に1度(250≒年12回x20年)、つまり誰しも人生で1度は危険な誤処方をされる可能性があることになります。

 全国の病院で電子カルテ化が進んでますし、医者の処方箋入力もコンピュータ管理で負担軽減、ミスも軽減では?と思っていたのですが、どうもそう簡単なことではないらしいです。その辺に詳しい某先生からお聞きししたのですが、コンピュータでガチガチに処方チェックをすると警告や制限が出まくって業務が滞るし、甘めにすると今度は医者がメッセージを見て見ぬふりをするらしく、なかなかうまくいかないとのこと。結局、人による確認に頼らざるを得ない部分が多いらしいのです。

 院外のお知り合いの薬剤師さんたちにも実情をお伺いしたのですが、印象としては特に違和感なく、しかもそのほとんどがやはり医者の薬剤的内容の不注意だそうです。ある薬剤師さんの話では、「分包数の間違いぐらいであればまだ良いですが、薬品名間違いも結構ある」とのことでした。
 また、ある薬剤師さんからは、「疑義照会はあまりしたくないのが本音。医師によっては電話をするだけで不機嫌な応対をされることがあるので・・。 忙しいのはわかっているので、こちらも電話したくはないのですが、間違っている以上しょうがないですよね。」なんていうお話も伺いました。たしかに外来などは忙しいとはいうものの(私を含めて)医者って横柄ですからね…。でも、患者さんと我々誤処方した医者を救ってくださっているわけですから、どうぞ遠慮なくこれからもお電話をくださいませ。


 しかし、『薬剤師のほうでも、調剤後別の薬剤師が監査をしても間違いが起こることがある』らしいですが、正直それは想像したくありませんね。間違ったお薬が患者さんに手渡されるわけですから…。

 患者さん自身も自衛手段を持たなければいけないということになるのかなぁ?


(2012.8.xx facebookより加筆修正)


疑義照会
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【2013/02/19 23:48】 | 医療全般
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