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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 私はまもなく医者になって4半世紀になろうとしていますが、これまで放射線治療装置を新規導入したばかりの施設のお手伝いをすることが何度かありました。

 1月に書いたブログ「放射線治療は病院の看板になる?」でも触れましたが、放射線治療装置というのは初期導入費用が何億円もかかる代物です。通常、公立病院では税金の使い方の都合上で一括払いが多いようですが、民間病院では銀行からの借り入れやリースでの分割払いの利用が多いかもしれません。民間は赤字になれば経営破たんに即つながりますから、患者さん確保を含めて「機器代の回収」におのずと力が入りますし、スタッフの給与にも反映することがあります。
 もちろん公立病院でも経営改善・集客を職員に呼び掛けますが、はっきり言えば患者数が増えようが減ろうが、新しい技術を取り入れようが今まで通り「普通の」ことをしていようが、公務員なので給料への反映はほとんどありません。かえって忙しくなるだけで「損」と思うスタッフも少なくないという話も、現場では時に耳にします。

 以前、ある公立病院で特殊放射線治療システムを新規導入したことがあったのですが、その病院の当時の開設者が導入に積極的で、私の医局の元上司らと機種選定を進めていました。しかし、現場のスタッフ(の一部)にその情報があまり伝わっていなかったことや公立病院にありがちな仕事が増えることに対する「損」の意識があったことで、装置稼働前から上層部と現場の温度差がありました。
 私は新しい装置が導入されてから診療支援をさせていただくことになったのですが、一部の放射線技師スタッフの意欲が乏しく、それだけならいいのですが向上心あふれる若手放射線技師たちの意欲・希望すら摘んでいました。私は何度かキレ(そうになり)ましたが若手のやる気に支えられてその最新装置を使った放射線治療を提供してきました。
 しかし、新たな医師が着任するや装置稼働率がとたんに低下し、せっかくの高精度装置もほぼ「遺跡」と化してしまいました。

 新規導入したはいいけれど予算の都合できちんとした保守契約(毎年の機器メンテナンス代)が結べなくなったり、常勤医がいなくなったりやる気のない医者が着任したりしてせっかくの装置が宝の持ち腐れになってしまうケースは少なくありません。装置そのものがないとどうにもなりませんが、機器を購入した時点から体制が代わっても運用可能な人的・金銭的環境整備も同じように重要です。まあ、道路などの公共事業に比べればもしかするとたいしたことない無駄遣いなのかもしれませんが、私の知る限りでももったいない事例は少なくありません。血税を使ってですから。
 今後、普及が期待される公的な粒子線施設計画も同じことが起きなければいいのですが。。。

 また、隣の病院に凄い放射線治療装置や備品が埋もれているのがわかっていても、自分の施設では使えず指をくわえてみているしかない(借りられない)なんてこともありました。転院して治療を受けてもらえばいいのですが、その施設での受け入れ態勢が必ずしも整っているわけではなかったりすることもあります。
 公私施設に関係なく、装置の共用が可能となる方法・手続きってあるのかな?どなたかご存じでしたら教えてください。


 実は現在、うちの病院では新しい放射線治療装置を増設中です。つまり、私はまた立ち上げ屋です(笑)。

 そして一昨年に着任する以前から遺跡化している設備や機器がいくつかあり、まだ再生可能なものが少なくありません。マシンタイムやスタッフ数など利用したくてもその時その時に様々な制約があったり、担当されていた諸先生方、放射線技師さんたちの諸般の事情があったりして、だんだん遺跡化してしまったようです。正直、たしかに現在の照射件数と機器台数では、フル稼働は困難かもしれません。
 人命を預かる高度な医療システムなので、精度を維持するにも当然お金がかかります。保守契約や維持管理費やマンパワーなどが整わず今後も潜在能力を充分に発揮できない可能性もあります。
 ただ、新しい治療装置が入るとともにスタッフの増員が決まっていますし、既存装置にも少し余裕ができそうなので、可能な限り復元できるよう関係部門といろいろな調整や確認作業をしているところです。

 新しい装置が稼働したり埋蔵文化財の復元が成功したら、可能な範囲でこのブログでもご紹介できればいいなと思っています。でも、そうすると私の所属が完全にバレますね…。


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【2013/03/04 00:43】 | 放射線治療:一般
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