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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 明日からゴールデンウィークですね。

 今年は連休の真ん中に平日が3日もあって、現在放射線治療を受けられている患者さん(や我々)にとっては例年より治療休止期間が少なく済みそうでやや都合の良い日程です。
 その3日間も休みとして大型連休化している企業も多々あることでしょう。なんとなく羨ましい気もしますが、私は人混みへわざわざ外出するのはあまり好きなほうではないですし、子供たちもそれぞれ予定があるので、個人的には「まあ、いいか」と思っています。


 うちの病院では以前から、大型連休対策として院内各部門のご協力を賜り、必要に応じて臨時休日照射日を設けています。また、主治医や患者さんご本人と相談して病状的に許容と判断し連休明けから照射を開始することにしたり、逆に連休前に終了できるような照射法を採用したりしています。
 全国の放射線治療施設でも、大型連休の時には施設毎に様々な対応がとられていると聞きます。


 現広島大学放射線治療科教授の永田靖先生が研究班代表者として2004年の日本放射線腫瘍学会(JASTRO)誌にご発表された『休日照射に関するJASTROガイドラインの作成』という論文があります。公表から数年が経過しましたが、今でも日本の休日照射に関する唯一の目安だと思います。
 ちなみに、ある先生から伺いましたが、この論文はJASTRO公式のガイドラインにはなっていないようです。まあ、そもそもガイドライン自体が自主基準であり、法的な強制力を持つものではないらしいのですが。

 この報告でも記されていますが(添付写真)、扁平上皮癌(主な頭頚部癌を代表として肺癌、食道癌、子宮頸癌など)を放射線治療だけで根治治療を行った場合に、予定の照射期間が延びると治療効果が低下する恐れがあることが知られています。総治療期間に2週間以上の違いがあると生存率にも差が出るという信頼性の高い海外の報告もあります。

休日照射

 ここで気をつけたいのは、2週間で差があるからといっても13日間の休止なら大丈夫で14日間だと駄目ということではなく、2週未満と2週以上で治療患者さんの集団を分けたら「統計学的な数字の差が出た」だけのこと。13日間と14日間の休止の比較というのは1日だけ休止と予定通り治療の差と(およそ)同じ1日の違いであり、集団として見ると日に日に少しずつ影響が出る可能性があるということのようです(個々について厳密なことはわかりません)。

 これは他の治療成績を評価する際も同様で、最近では福島原発の低線量被曝でも似たような議論がなされています(○○ベクレル以上とか)。抗がん剤と一緒に放射線治療を行うとその差ははっきりしなくなり、逆に治療中の副作用が増強される影響を緩和するために、放射線治療を途中で1-2週休止するメニューをあえて選択している臨床試験すらあります。

 一方で、乳がんの術後予防照射や前立腺がんなどは連休による治療中断の影響が出にくいので対応は「施設に委ねる」(事実上許容)、となっています。とはいえ、前立腺がんでも1日遅延するだけでホンの少しですが治療効果(生存率ではなく腫瘍マーカー)に影響が出るかもしれない、とする報告も最近ではみられます。

 大型連休による放射線治療効果の影響を考慮して、連休期間中に休日照射日を設ける施設があり、また放射線治療に限らず病院全体で大型連休期間中に平日体制を何日か採用する施設もあります。通常でも土曜日を平日診療としている施設もあります。


 頑張って何日か休止日を減らせば問題ないのか。休日照射を1日追加努力するだけでも許容できるものか。中途半端な連休をはさんだ治療を避けるために、年明けから治療を開始するほうがよいとも聞きますが、逆に治療開始が遅くなることに関してどこまで許容されるものなのか。私の知る限りこれらもあまり明確ではありません(ちなみに、乳がん術後照射の開始目安時期に関してはガイドラインに記載があります)。


(まだ続くので、Part2へ…後日)

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【2013/04/26 00:23】 | 放射線治療:一般
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