お腹に大きな腫瘍があって腰の神経を圧迫し足のしびれや痛みを訴えていた患者さんが、先月うちの科に紹介となりました。採血やCTの結果で悪性リンパ腫を疑ってはいたのですが、まだ正式な結果が出ていませんでした。
症状が悪化していたので、整形外科や血液内科の先生方と相談した結果、神経を圧迫したところに限定して1回4グレイだけの照射を直ちに行ったら、症状がすぐ改善しました。後日MRIを撮像したら、神経の圧迫は問題にならないくらいに縮小していました。
その後、確定診断がなされて化学療法開始とのこと。
患者さんは「先生、良くなりました!」と笑顔でした。
悪性リンパ腫のような放射線の効きが良い腫瘍だと、(腫瘍が縮小しすぎなければ)後遺症は出ないたった1回の少量の放射線治療だけで巨大腫瘍でも凄く良くなるんですよ~。ご存じでした?
実は、昨年の日本緩和医療学会学術大会に参加した後のFacebookに***以下の印象記を書いていました(一部修正)。今回の症例は、そこで学んだことも活きたと思います。
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(昨年の)日本緩和医療学会総会では、放射線治療がらみの演題がいくつかありました。個人的には、ある大学病院の先生のご発表「化学療法抵抗性で巨大腫瘤を形成した悪性リンパ腫の緩和的放射線治療」が印象的でした。
限局性の悪性リンパ腫はちょっと前まで放射線とがセットで標準治療とされていたのですが、最近の化学療法だけでも生命予後が変わらないというセンセーショナルな臨床試験の結果を理由に、皮膚表面の腫瘍が崩れて悪臭が出るくらい本当に馬鹿デカクなるまで抗がん剤で引っ張り続け、手に負えなくなったところで放射線治療「でも(北海道がんセンター名誉院長の西尾正道先生が嘆いて常に表現される決め台詞)」というケースがまた増えつつあるような気がします(うちの病院は違います…よね?)。
その先生のご発表もそんなやつを3例ご提示いただき、照射により腫瘍の縮小や患者さんのQOL(Quality of life: 生活の質)が非常に改善したというものでした。写真もお見せしたいくらいですが著作権&グロいので…。
悪性リンパ腫は放射線の効きがすごく良いので、(抗がん剤も効きにくい一部を除いて)たった数回副作用はまず出ないレベルの放射線を本当にちょろっと照射するだけで巨大な腫瘍でも数日で劇的に縮小するなんてことは普通の放射線腫瘍医なら常識です(逆に、急激にがん細胞がぶっ壊れすぎて腎不全などにならないよう気をつけないといけませんが…)。
腫瘍が小さければ標準治療通りで無理に照射をすることはないと思いますが、なぜ腫瘍が崩れて悪臭漂い、QOLが著しく悪い状態になって困っている患者さんを放射線治療という有効なアプローチも使って早く改善してあげようとしないのか、全く理解に苦しみます。
また、このご発表にはさらに考えさせられる事例がありました。(放射線腫瘍医からすれば予想通りに)放射線治療で腫瘍が小さくなった患者さんが元気になり年明けに主治医を受診すると、その先生が患者さん本人に対し「正月を迎えられないと思ってたんだけどね」と一言。その患者さんは「この先生は私の病状をそんな風に見ていたの…」とショックを受けたそうでした。
そんな先生にこれからも自分の病気を診てもらわなければならない患者さんの心情はつらいものがあります。これは私にとって決して他人事ではなく、何気ない(と思っている)医療者のたった一言(されど一言)で信頼関係が大きく変化してしまう恐れがあることを、改めて教えていただきました。
口演スライドはポスター展示にもなるので、正直一番印象に残ったこの一言スライドをみようとブースに行ったのですが、ご発表の先生がいろいろとカドがたつかもと心配されたからでしょうか、省かれていました。
ちょっと残念でした。
**********************************
あ~俺、ブログなんか書いてる前に、再来週の日本緩和医療学会用の発表スライド作らなければいけないだろ!
でも、ブログはあんまり苦にならないんだよな…
PS:よっしゃー、ワールドカップサッカー本大会出場!(私、大学医学部ではサッカー部でした)
ブラジルへ応援に行きたいなぁー
症状が悪化していたので、整形外科や血液内科の先生方と相談した結果、神経を圧迫したところに限定して1回4グレイだけの照射を直ちに行ったら、症状がすぐ改善しました。後日MRIを撮像したら、神経の圧迫は問題にならないくらいに縮小していました。
その後、確定診断がなされて化学療法開始とのこと。
患者さんは「先生、良くなりました!」と笑顔でした。
悪性リンパ腫のような放射線の効きが良い腫瘍だと、(腫瘍が縮小しすぎなければ)後遺症は出ないたった1回の少量の放射線治療だけで巨大腫瘍でも凄く良くなるんですよ~。ご存じでした?
実は、昨年の日本緩和医療学会学術大会に参加した後のFacebookに***以下の印象記を書いていました(一部修正)。今回の症例は、そこで学んだことも活きたと思います。
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(昨年の)日本緩和医療学会総会では、放射線治療がらみの演題がいくつかありました。個人的には、ある大学病院の先生のご発表「化学療法抵抗性で巨大腫瘤を形成した悪性リンパ腫の緩和的放射線治療」が印象的でした。
限局性の悪性リンパ腫はちょっと前まで放射線とがセットで標準治療とされていたのですが、最近の化学療法だけでも生命予後が変わらないというセンセーショナルな臨床試験の結果を理由に、皮膚表面の腫瘍が崩れて悪臭が出るくらい本当に馬鹿デカクなるまで抗がん剤で引っ張り続け、手に負えなくなったところで放射線治療「でも(北海道がんセンター名誉院長の西尾正道先生が嘆いて常に表現される決め台詞)」というケースがまた増えつつあるような気がします(うちの病院は違います…よね?)。
その先生のご発表もそんなやつを3例ご提示いただき、照射により腫瘍の縮小や患者さんのQOL(Quality of life: 生活の質)が非常に改善したというものでした。写真もお見せしたいくらいですが著作権&グロいので…。
悪性リンパ腫は放射線の効きがすごく良いので、(抗がん剤も効きにくい一部を除いて)たった数回副作用はまず出ないレベルの放射線を本当にちょろっと照射するだけで巨大な腫瘍でも数日で劇的に縮小するなんてことは普通の放射線腫瘍医なら常識です(逆に、急激にがん細胞がぶっ壊れすぎて腎不全などにならないよう気をつけないといけませんが…)。
腫瘍が小さければ標準治療通りで無理に照射をすることはないと思いますが、なぜ腫瘍が崩れて悪臭漂い、QOLが著しく悪い状態になって困っている患者さんを放射線治療という有効なアプローチも使って早く改善してあげようとしないのか、全く理解に苦しみます。
また、このご発表にはさらに考えさせられる事例がありました。(放射線腫瘍医からすれば予想通りに)放射線治療で腫瘍が小さくなった患者さんが元気になり年明けに主治医を受診すると、その先生が患者さん本人に対し「正月を迎えられないと思ってたんだけどね」と一言。その患者さんは「この先生は私の病状をそんな風に見ていたの…」とショックを受けたそうでした。
そんな先生にこれからも自分の病気を診てもらわなければならない患者さんの心情はつらいものがあります。これは私にとって決して他人事ではなく、何気ない(と思っている)医療者のたった一言(されど一言)で信頼関係が大きく変化してしまう恐れがあることを、改めて教えていただきました。
口演スライドはポスター展示にもなるので、正直一番印象に残ったこの一言スライドをみようとブースに行ったのですが、ご発表の先生がいろいろとカドがたつかもと心配されたからでしょうか、省かれていました。
ちょっと残念でした。
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あ~俺、ブログなんか書いてる前に、再来週の日本緩和医療学会用の発表スライド作らなければいけないだろ!
でも、ブログはあんまり苦にならないんだよな…
PS:よっしゃー、ワールドカップサッカー本大会出場!(私、大学医学部ではサッカー部でした)
ブラジルへ応援に行きたいなぁー
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