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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 若かりし頃、私はパチンコに(少~しだけ)ハマっていました。

 その時の経験を活かし、患者さんへの副作用の説明の時にパチンコ大当たり確率を引用することがあります。いつものことではありません。


 私の新患外来を受診される患者さんには、事前に主治医から放射線治療に対する1%あるかないかの副作用のお話をいろいろ聞いてきたことがズシッと心の重荷になって来られる方も少なくありません。

 1%であっても「副作用」という説明を受ければ、多くの方は深刻に受け止めないはずがありません。医療者目線では確率的に「たった」100人に1人であっても、「されど」患者さんの立場からは不幸にして自分がその1人に該当してしまえば他の99人のことなど関係なく生涯悩まされる事態に陥ってしまうかもしれないわけですから、当然のことだと思います。
 まして、それより低い確率である「命に係わる重篤な後遺症」のお話をいくつも説明されたら、「放射線治療を受けたら私はいったいどんな身体になってしまうのだろう…?」と恐れおののいてしまう方は少なくないと思います。傍から聞くと脅迫そのものです。

 とはいえ、治療をしなければそれよりも高い確率で病気そのものによって命を脅かす状態になる可能性があります。その違いをパチンコ大当たり確率に例えてみたりします。

 なお、事前に詳しくない方のために補足しておきますと、最近のパチンコホールでは、10万円くらい連続投資しても(私ではありません)全く当たらないことも普通にある300-400分の1の低い当選確率モードに通常設定された一方で一旦突入すると大当たりしやすい確変モード(5~20分の1くらいの当選確率)がいつまでも続くギャンブル性の高い爆裂台や、それよりはずっと低予算で遊戯できる最初から100分の1程度の大当たり確率に設定された遊パチ台が大半を占めています。

 雰囲気的に大丈夫そうな患者さんに対して普段パチンコをされていると確認した上で、「遊パチであってもなかなか1発目で当たる気はしないでしょ?重篤な副作用なんて爆裂台の大当たり確率みたいなもの。で、治療をしないで病気が悪くなるのは確変モード以上。もちろん副作用が出ないよう最大限の配慮はいたしますので…(これは必須)」などと例えてお話をすると、とてもご納得いただけることがあります。

 私がパチンコホールに行って、打ち初めの1発目で大当たりしたことがあるのは過去にたった2回だけしかありません。最近はめったに行きませんが、昔はよく通いました…。当たるじゃん!と言われれば、まあその通りです…
 ちなみに当たった台の確率は約1/400と 1/280、どちらも単発終了、球はその後すべて飲み込まれました。約1/100台で1回転目に当たったことはありません。
 
 そして「1/100なら1発目でよく当たる」と患者さんから言われたこともまだありません。


 医療者側も100%治り、100%副作用がないがん治療をしたいと思って診療をしている(はず)ですが、残念ながら医学はまだそこまで至っていません。確率というものを含めてなるべく正確に治療の選択判断をしていただければと思います。



 今日の内容は、おそらく不謹慎と思われる方も少なくないかと思います。あくまで、わかりやすい(?)例えの一つとして(冗談半分で)受け入れていただけそうな方々に対してのみ個人的にご説明しているものでございますので、ご容赦いただければ幸いです。

 なお、話す頻度は少ないですが、患者さんやご家族からまだ怒られたことはございません。私が勤務した地域の住民がやさしいだけ?
 
 いろんな病院で話をしましたけど…


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【2013/06/19 21:10】 | 放射線治療:よもやま話
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