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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 パシフィコ横浜で6月21-22日に開催された第18回日本緩和医療学会学術大会に参加してきました。一番大事でいろいろな意味で緊張した口演発表もしてまいりました(笑)

 今回の学会における私のひとつのテーマは、自分がかかわる緩和ケアチームのあり方、特に放射線腫瘍医としての存在意義についてでした。具体的には、痛みを主とした症状緩和に対する放射線腫瘍医としての院内スクリーニング(該当患者さんの拾い上げ)、そして予後(残された余命予測)やその方々が置かれた様々な状況下におけるチームとしての放射線治療の適応判断について。

 緩和ケアチームとは ⇒ http://kanwaedu.umin.jp/baseline/index.html


 そんななか、第2日の朝一番で「End of lifeを考える〜日本人の和の心〜」というパネルディスカッションがありました。「和」という文字を昔から大切にしてきた私は、前夜の二日酔いにめげず何とか早起きをして聴講しました。
 座長の飛騨千光寺の大下大圓氏による基調講演の抄録に以下の文章がありましたので、(無断)引用させていただきます。
 『日本人が大切にしてきた心性を表す言葉として「和」がある。この言葉を大漢和辞典(1971)に解釈を尋ねると「こえを合せる、やわらぐ、かなう、あつまる、ゆるす、なかなおりをする」とあり、古字においては「龢」であり、(中略)この字を分解して考察すると、「家族単位で住む集落において、協同して社会を構成する」というコミュニティの在り方を示している。』

 大下大圓氏のご講演で個人的に一番印象に残ったのは「ただ仲良くではなく、みんなで力を合わせて目的に向かうプロセスが大切なのです」というお話でした。「和」はともすれば仲良し≒同業者同士の楽でなあなあな対応になりがちなリスクもあります。そうではないんだよ、というお話(私の解釈)を伺い、とても共感を得ました。
 このセッションでは、その他にもホスピスや在宅医療の最前線で活動されている先生や臨床宗教師という新たなご活動をなさっている先生から大変有意義なご講演を拝聴できました。


 少しそれますが、がん疼痛緩和で日本の第一人者の武田文和先生も、私が前夜に初参加させていただいた二日酔いの原因でもあるSCORE-G(医師と薬剤師を中心に全国の有志が集まって、緩和医療の現場で役に立つ共同研究や、わかりやすい情報提供を目指して設立された研究会)の懇親会で、『他の先進国と比べるといまだ少ないがん疼痛における医療用麻薬の年間消費量。海外のマスコミ関係者の中には、余りに少ない日本の年間消費量を知って、「日本人のがんは人種的に痛みを起こしにくいがんなのか」という解釈をした人すらあった。仲良く医療をするだけでなく、もっと適切に痛み止めを使用するようはっきりと議論しないと』といった趣旨のお話(私の解釈)をなさっていました。


 「仲間内は仲良くしないとうまくいかないよ」って言う方もいらっしゃいます。それはそれで一理あります。でもあくまで私の経験上ですが、表面上の『なあなあ』は中長期的にみるとたいてい組織の体質が澱む気がしています。前向きに意見がぶつかり合うのは、ある程度必要でしょ?
 もちろん(自戒を込めてですが)全く引かずに自論を押し付けるのもどうかとは思います。なんにも意見を言わないのも同レベルです。バランスなんでしょうけどね。

 そうそう、笑顔が大事ともいいますね。ただ、私の場合、無理に笑顔を作るとどうもしらじらしく表情が引きつった感じに見えてしまうようなのです…。悪気はない(つもりな)ので、スタッフの皆様、どうぞお許し下さい。


 以上、抽象的な表現でごまかして(?)申し訳ございませんが、うちの病院における緩和ケアチームのあり方、そして放射線腫瘍医としての関わり方が少し見えてきた今回の学会でした。



(第18回日本緩和医療学会印象記、その2へ続く…)

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【2013/06/24 01:01】 | 緩和医療
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