今年の日本緩和医療学会学術大会でも、先日ご紹介したN先生以外に何人かの放射線腫瘍や緩和の先生方(とついでに私)の緩和照射に関する発表がいろいろありました。
恥ずかしながら私、諸事情でここ最近3年の学術大会しか参加していないのですが(それ以前は演題抄録しか知らないペーパー学会員…)、放射線治療関連の発表演題を見ると、たぶん誰でも知っている有名な骨転移による痛みや脳転移に対する緩和照射以外に、腫瘍からの出血や圧迫閉塞、悪臭など多岐症状にわたる緩和照射の有効性についてもいろいろと報告がなされています。ただ、口演発表もポスター発表も放射線治療セッションがひとまとめになっていて、放射線腫瘍関連学会でも見覚えのある先生方ばかりのような気が。つまり会場内が日本放射線腫瘍学会の部会のような雰囲気なのです。
本当は、他の科の先生方にこそ同席していただきたい、知っていただきたい所ではあるのですが…。それを狙ったかのような一部の先生の工夫された演題はあるのですが単発で、大変失礼な表現ですが埋もれている感も少しだけあり…?
一つの手として、多くの他の科の先生方に意識していただくため、みんながポスター発表に切り替えて緩和照射の演題をしつこいくらいにずらずら並べるというのは見た目のインパクトがありそうです。「すごいな、まだ続くのか~」っていう確変爆裂連チャンモードのような感じで。
学会事務局にバランスをとられて口演発表に強制移動される恐れもあるでしょうか。あと食道学会とか頭頸部学会とかも近い時期にあるし、「治す」ことに重きを置く先生方は参加が難しいかなぁ。
そもそも、緩和照射の演題ってそんなに出ないか…?
緩和照射の多様性や適応の広さは、全国の医療者にまだまだきちんと知られていない部分がおそらく多々あります。「がん早期からの緩和ケア」がうたわれ始めた昨今、除痛だけでなく、狭窄・閉塞や出血などに対する終末期以外を含めた緩和照射の適応に関する客観評価、そして地域間格差の是正(均てん化)というのは、今後の課題だと思います。
先日のブログ「May I help you?(1)」で取り上げた緩和ケアチームも、「May I help you?(2)」で取り上げたN先生のご発表もそうなのですが、緩和照射が選択肢になりそうな心身で病む患者さんたちをどのようにスクリーニングする(拾い上げる)か、が一つの大きなポイントになるのでしょう。
少し前のことなのですが、某施設の先輩女性放射線腫瘍医が私とのあるやりとりの中で、『「良好なスタッフ間のコミュニケーションを図る」ことは重要で、それが(緩和照射の)選択肢を広げることに繋がると思っています。…(中略)…ただ、スタンスとして「あなた方、これ知らないでしょ」というより、「May I help you? 」という方が、おそらく最終的には相手に浸透できると思っています。』というコメントをされていました。
他の医療者に対する我々放射線腫瘍医側の接し方として「May I help you? 」は確かに大事な部分です。しかし主治医側が緩和照射を意識しなければ、我々はただ照射依頼が来るのを待っているだけでは、下手をすると緩和医療の選択肢として照射は候補にも上がらない。先日も触れましたが、お医者さんが大好きなガイドラインに書いてないと、完全に選択外にするケースが少なくありません。
『患者が本当に希望された時には…』という意見もあるようですが、患者さんがそれを医療者側に要求するのはそこそこ調べていない限り、正直かなり難しい。
もちろん麻薬をはじめとする鎮痛剤は、ここ10年ほどで種類・投与法など様々な進歩がみられますし(それでも世界的にみると先進国で最低レベルらしいですが)、神経ブロックなど他にもいろいろな緩和的施術があります。
また、日本の放射線腫瘍医の数は諸外国と比べて桁外れに少ないのが現状で、一部には『現場の疲弊を考えると戦線拡大みたいな緩和照射普及の話をするのはいささかナンセンスでは?』とか、『忙しい放射線治療の現場で、むりくり照射するより、ほかの治療の方が短期的にはいいんじゃない?』という意見もあります。医療者目線だよな…。
でも、やっぱり苦痛のあるがん患者さんにとって、症状緩和のいろいろな診療手段があるっていうのは大事なことですよね。
『緩和照射が選択肢としてあるか?』
何度も書きますが、今回の学会(そしてこのブログ)での私のポイントはここでした。決して緩和照射を強制するつもりではありません。何もしないという選択肢も当然あります。
放射線腫瘍医をはじめとする医療者側からの「押し付け」医療にならぬよう、緩和照射普及・啓蒙に向けた具体的な活動をもっとしてみよう、そんな風に思う今日この頃です。
田舎のオヤジ町医者が今更ながら偉そうに、なんですけどね~
恥ずかしながら私、諸事情でここ最近3年の学術大会しか参加していないのですが(それ以前は演題抄録しか知らないペーパー学会員…)、放射線治療関連の発表演題を見ると、たぶん誰でも知っている有名な骨転移による痛みや脳転移に対する緩和照射以外に、腫瘍からの出血や圧迫閉塞、悪臭など多岐症状にわたる緩和照射の有効性についてもいろいろと報告がなされています。ただ、口演発表もポスター発表も放射線治療セッションがひとまとめになっていて、放射線腫瘍関連学会でも見覚えのある先生方ばかりのような気が。つまり会場内が日本放射線腫瘍学会の部会のような雰囲気なのです。
本当は、他の科の先生方にこそ同席していただきたい、知っていただきたい所ではあるのですが…。それを狙ったかのような一部の先生の工夫された演題はあるのですが単発で、大変失礼な表現ですが埋もれている感も少しだけあり…?
一つの手として、多くの他の科の先生方に意識していただくため、みんながポスター発表に切り替えて緩和照射の演題をしつこいくらいにずらずら並べるというのは見た目のインパクトがありそうです。「すごいな、まだ続くのか~」っていう確変爆裂連チャンモードのような感じで。
学会事務局にバランスをとられて口演発表に強制移動される恐れもあるでしょうか。あと食道学会とか頭頸部学会とかも近い時期にあるし、「治す」ことに重きを置く先生方は参加が難しいかなぁ。
そもそも、緩和照射の演題ってそんなに出ないか…?
緩和照射の多様性や適応の広さは、全国の医療者にまだまだきちんと知られていない部分がおそらく多々あります。「がん早期からの緩和ケア」がうたわれ始めた昨今、除痛だけでなく、狭窄・閉塞や出血などに対する終末期以外を含めた緩和照射の適応に関する客観評価、そして地域間格差の是正(均てん化)というのは、今後の課題だと思います。
先日のブログ「May I help you?(1)」で取り上げた緩和ケアチームも、「May I help you?(2)」で取り上げたN先生のご発表もそうなのですが、緩和照射が選択肢になりそうな心身で病む患者さんたちをどのようにスクリーニングする(拾い上げる)か、が一つの大きなポイントになるのでしょう。
少し前のことなのですが、某施設の先輩女性放射線腫瘍医が私とのあるやりとりの中で、『「良好なスタッフ間のコミュニケーションを図る」ことは重要で、それが(緩和照射の)選択肢を広げることに繋がると思っています。…(中略)…ただ、スタンスとして「あなた方、これ知らないでしょ」というより、「May I help you? 」という方が、おそらく最終的には相手に浸透できると思っています。』というコメントをされていました。
他の医療者に対する我々放射線腫瘍医側の接し方として「May I help you? 」は確かに大事な部分です。しかし主治医側が緩和照射を意識しなければ、我々はただ照射依頼が来るのを待っているだけでは、下手をすると緩和医療の選択肢として照射は候補にも上がらない。先日も触れましたが、お医者さんが大好きなガイドラインに書いてないと、完全に選択外にするケースが少なくありません。
『患者が本当に希望された時には…』という意見もあるようですが、患者さんがそれを医療者側に要求するのはそこそこ調べていない限り、正直かなり難しい。
もちろん麻薬をはじめとする鎮痛剤は、ここ10年ほどで種類・投与法など様々な進歩がみられますし(それでも世界的にみると先進国で最低レベルらしいですが)、神経ブロックなど他にもいろいろな緩和的施術があります。
また、日本の放射線腫瘍医の数は諸外国と比べて桁外れに少ないのが現状で、一部には『現場の疲弊を考えると戦線拡大みたいな緩和照射普及の話をするのはいささかナンセンスでは?』とか、『忙しい放射線治療の現場で、むりくり照射するより、ほかの治療の方が短期的にはいいんじゃない?』という意見もあります。医療者目線だよな…。
でも、やっぱり苦痛のあるがん患者さんにとって、症状緩和のいろいろな診療手段があるっていうのは大事なことですよね。
『緩和照射が選択肢としてあるか?』
何度も書きますが、今回の学会(そしてこのブログ)での私のポイントはここでした。決して緩和照射を強制するつもりではありません。何もしないという選択肢も当然あります。
放射線腫瘍医をはじめとする医療者側からの「押し付け」医療にならぬよう、緩和照射普及・啓蒙に向けた具体的な活動をもっとしてみよう、そんな風に思う今日この頃です。
田舎のオヤジ町医者が今更ながら偉そうに、なんですけどね~
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