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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 私が放射線腫瘍医になって間もない頃のこと。

 今ではちょっと難しい「大胆な」放射線治療を実践されていた上司の先生がいらっしゃいました。そして、その影響が疑われる合併症を抱えた方を何人か病棟や在宅で診たこともあります。
 やはり後遺症というのは患者さんにとって心身ともにとてもつらいものです。医者もつらいです。


 しかし、ある日の往診のこと、おそらく後遺症で寝たきりになってしまったある患者さんが、若かりし頃の私にこうおっしゃってくださったことがあります。「今、私は放射線治療の後遺症で大変ですが、そのおかげでがんが治って生きているわけですから、治療してくれた(上司の)先生にはとても感謝しています」

 最近では、晩期障害(後遺症)を極力出さないような臨床試験の結果などを元にした標準治療が、いろいろな診療ガイドラインに記されています。それを逸脱することはタブーとして絶対にしない先生もおられます。たぶん、それが普通なのかもしれません。

 しかし、患者さんによっては後遺症覚悟の標準治療を超える選択を希望される場合もありえます。

 もちろん、思いつきの何となく医療はよろしくないです。「診療ガイドラインというのは、主流からはずれて我流になりがちな治療にブレーキをかける役割が大きい」という意見は、全くその通りです。
 この患者さんのような綺麗事で終わらないケースも当然あります。不幸にして寿命を縮める結果となった場合などにはご遺族から訴訟のリスクはもちろんあるわけで、決して薦められるものではないと思います。


 でも、その方と出会って以来、患者さんご本人が充分ご納得いただけるのならそういう治療も選択肢の一つになるのかもしれないとも意識するようになりました。もちろん、お互いの信頼関係をある程度は築いた上で。


 その設定限度(さじかげん)が医者によってかなり異なるため、ある病院では非常に苦慮しましたが…



(2012.5.xx Facebookより改変引用)

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【2013/07/16 23:59】 | 放射線治療:よもやま話
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