前回ブログで最後に触れた「初回の計画に追加プランをさらに作るなんて手間かかるし、きっと使わないプランだし、たぶん縮小するのに意味あるの?」について。
たぶん一番問題なのが「たぶん縮小するのに...」の『たぶん』のところ。
実際に放射線治療計画に携わったことのある方なら(きっと)全員分かることですが、最初のがんの大きさ・広がりで放射線治療を開始して、患者さんの望む通り、そして楽観的な医者の予測通りにがんが小さくなってくれればよいのですが、ほとんど変わらないということがあります。
まれですが、逆に大きくなってしまうこともあります。この場合は残念ですが放射線治療によるがん縮小は難しいかもしれません。
何となく初回の放射線治療計画をたてて治療を始め、いざ再治療計画CTを撮像してみると「う~ん、思ったよりもがんが小さくならなかったな~。追加治療でがんが照射範囲から外れたら治りが悪くなるし、(肺の副作用とか強くなりそうな)大きな照射範囲だけど仕方ないよね~」
そんな医療者の会話を耳にすることもあります。
放射線治療は一度始めてしまうと元には戻れません。『放射線治療開始時に』何となくではなく、具体的(=画像化)、客観的(=数値化)評価をし、さらにそれを踏まえて患者さんや担当医に説明できる情報を持っているかどうか、が大事だと思うのです。
たいていのがんの臨床試験では、その症例を試験登録するため放射線治療計画段階で(肺のV20のような)様々な基準をクリアできているかどうか客観的評価を事前にきちんと確認しておかなければなりませんし、そうしないと臨床試験としての治療が開始できません。
「普通の(=日常の)」放射線治療計画だって同じ。
おそらく放射線治療専門医の先生方の多くは、きちんとこういった予測シミュレーションを立てて、あるいは豊富なご経験のもとでおよその数値を予測して設定されているのだと思うのですが、後者に関してはやっぱり「何となく」になりがちです。
実際のところ、食道癌では合計予測シミュレーションをせずとも肺のV20はそこそこ無難な範囲に収まることが多いように思うのですが(心臓がうまく重なってくれることもありますが、最近は心臓被曝の後遺症も問題視されていますね)、右肺下葉の肺癌などは胸のリンパ節転移があったりすると「予想以上」に照射範囲がバカでかくなり(そのうえ呼吸性移動もあり。これも施設間格差が…いずれブログで)、予測合計プランを立ててみるといとも簡単に肺のV20が危険水域35%以上、下手すると超危険域40%に達してしまいます。
前回も触れましたが、もちろん肺臓炎の原因は照射範囲だけではありません。抗がん剤の投与内容・量や患者さんの体質などにも左右されるわけですが。
若い先生あるいは長年一人で業務を行っている地方病院の年配の先生の一部などは、最初から全体プランを具体的にシミュレーションしてみようかなどという「意識」そのものを持たれていない方も少なからずいらっしゃるのではないかと感じています。
頭頸部や胸部など、プランを合計してみると結構意外なことが見えてくるケースもあります。およそのシミュレーションだし、何時間もかけてこだわった線量分布なんて作る必要はなく、ざっくりとした合計プランで充分だと思います。「時間がないから、めんどくさ~い」とも言われそうですが、多くは1件10分前後の追加時間で可能…たぶん。
全例で途中変更するわけではありませんが、仮に変更を要する計画が1日6件あったら「1時間も」余計に業務時間が増えちゃいますか?
ちなみに、最近は放射線治療計画内容をコンピュータで自動合算シミュレーションできる装置もいくつか市販されています。腫瘍の縮小や体形の変化に対する歪み補正ができるハイテク技術も搭載されているようですが、基本的には治療途中か終了後(つまり後付)の照射内容確認装置かと思います。私は一部のデモ機しか見たことありませんが、勘違いだったらごめんなさい。
導入費用もかかりますので、ビンボー公立病院だとなかなかすぐに購入というわけにもいきません。
『最終ゴールを設定し、最悪の事態を含めいくつかのパターンを想定しながら、ゴールから逆算して全体の計画をすすめる。』
日本放射線腫瘍学会でははぐれ者の私が知る限りではございますが、学会や研究会などでこの辺を強調されているお話ってあまり聞いたことがありません…たぶん。
「IMRTならそんな心配はないでしょ?」って質問、今回は抜きにしてください。全例にIMRTができるなら苦労しません。でも、IMRTだろうと基本的考え方は同じでしょ?
長くなりました。
なにやら偉そうに書きましたが、実は私も最初からやっていたわけではありません。そして、いろいろな先生方から教えていただいたお話や業務を自分なりにまとめたに過ぎません。
いろいろなご意見があろうかとお察しいたしますが、非公式で日記みたいな思いつきブログです。どうかご容赦くださいませ。
人生も一緒…私、逆算して考えるようになってきた年令です。
たぶん一番問題なのが「たぶん縮小するのに...」の『たぶん』のところ。
実際に放射線治療計画に携わったことのある方なら(きっと)全員分かることですが、最初のがんの大きさ・広がりで放射線治療を開始して、患者さんの望む通り、そして楽観的な医者の予測通りにがんが小さくなってくれればよいのですが、ほとんど変わらないということがあります。
まれですが、逆に大きくなってしまうこともあります。この場合は残念ですが放射線治療によるがん縮小は難しいかもしれません。
何となく初回の放射線治療計画をたてて治療を始め、いざ再治療計画CTを撮像してみると「う~ん、思ったよりもがんが小さくならなかったな~。追加治療でがんが照射範囲から外れたら治りが悪くなるし、(肺の副作用とか強くなりそうな)大きな照射範囲だけど仕方ないよね~」
そんな医療者の会話を耳にすることもあります。
放射線治療は一度始めてしまうと元には戻れません。『放射線治療開始時に』何となくではなく、具体的(=画像化)、客観的(=数値化)評価をし、さらにそれを踏まえて患者さんや担当医に説明できる情報を持っているかどうか、が大事だと思うのです。
たいていのがんの臨床試験では、その症例を試験登録するため放射線治療計画段階で(肺のV20のような)様々な基準をクリアできているかどうか客観的評価を事前にきちんと確認しておかなければなりませんし、そうしないと臨床試験としての治療が開始できません。
「普通の(=日常の)」放射線治療計画だって同じ。
おそらく放射線治療専門医の先生方の多くは、きちんとこういった予測シミュレーションを立てて、あるいは豊富なご経験のもとでおよその数値を予測して設定されているのだと思うのですが、後者に関してはやっぱり「何となく」になりがちです。
実際のところ、食道癌では合計予測シミュレーションをせずとも肺のV20はそこそこ無難な範囲に収まることが多いように思うのですが(心臓がうまく重なってくれることもありますが、最近は心臓被曝の後遺症も問題視されていますね)、右肺下葉の肺癌などは胸のリンパ節転移があったりすると「予想以上」に照射範囲がバカでかくなり(そのうえ呼吸性移動もあり。これも施設間格差が…いずれブログで)、予測合計プランを立ててみるといとも簡単に肺のV20が危険水域35%以上、下手すると超危険域40%に達してしまいます。
前回も触れましたが、もちろん肺臓炎の原因は照射範囲だけではありません。抗がん剤の投与内容・量や患者さんの体質などにも左右されるわけですが。
若い先生あるいは長年一人で業務を行っている地方病院の年配の先生の一部などは、最初から全体プランを具体的にシミュレーションしてみようかなどという「意識」そのものを持たれていない方も少なからずいらっしゃるのではないかと感じています。
頭頸部や胸部など、プランを合計してみると結構意外なことが見えてくるケースもあります。およそのシミュレーションだし、何時間もかけてこだわった線量分布なんて作る必要はなく、ざっくりとした合計プランで充分だと思います。「時間がないから、めんどくさ~い」とも言われそうですが、多くは1件10分前後の追加時間で可能…たぶん。
全例で途中変更するわけではありませんが、仮に変更を要する計画が1日6件あったら「1時間も」余計に業務時間が増えちゃいますか?
ちなみに、最近は放射線治療計画内容をコンピュータで自動合算シミュレーションできる装置もいくつか市販されています。腫瘍の縮小や体形の変化に対する歪み補正ができるハイテク技術も搭載されているようですが、基本的には治療途中か終了後(つまり後付)の照射内容確認装置かと思います。私は一部のデモ機しか見たことありませんが、勘違いだったらごめんなさい。
導入費用もかかりますので、ビンボー公立病院だとなかなかすぐに購入というわけにもいきません。
『最終ゴールを設定し、最悪の事態を含めいくつかのパターンを想定しながら、ゴールから逆算して全体の計画をすすめる。』
日本放射線腫瘍学会でははぐれ者の私が知る限りではございますが、学会や研究会などでこの辺を強調されているお話ってあまり聞いたことがありません…たぶん。
「IMRTならそんな心配はないでしょ?」って質問、今回は抜きにしてください。全例にIMRTができるなら苦労しません。でも、IMRTだろうと基本的考え方は同じでしょ?
長くなりました。
なにやら偉そうに書きましたが、実は私も最初からやっていたわけではありません。そして、いろいろな先生方から教えていただいたお話や業務を自分なりにまとめたに過ぎません。
いろいろなご意見があろうかとお察しいたしますが、非公式で日記みたいな思いつきブログです。どうかご容赦くださいませ。
人生も一緒…私、逆算して考えるようになってきた年令です。
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