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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 一昨日から今日まで3日間、日本放射線腫瘍学会第26回学術大会が青森市で開催されました。大会長である弘前大放射線科学講座 高井良尋教授のご高配で学会前日の会長招宴(前夜祭)から参加させていただき、諸事情で昨日まで青森に滞在しました。
 前夜祭会場の「ねぶたの家ワ・ラッセ」の大展示場には大型ねぶたが多数飾られていました。私ははじめて実物をみましたが、それはそれは壮観でした!

 で、今回の学会で私が注目した分野(?)の一つが「看護師さん」でした。


 看護の資格を持つ個人が自主的に加入し運用する日本最大の看護職能団体である(←そのままHPより引用)日本看護協会では、国民への質の高い医療の提供を目的に専門看護師・認定看護師などの資格認定制度も運営されています。
 放射線治療分野でも、がん放射線療法看護認定看護師という放射線治療を受ける患者さんの看護に特化した分野が平成22年に新しく制定されました。うちの病院にも1名優秀な認定看護師さんがいらっしゃいます(ごまはすってません)。放射線治療の効果を最大限に得るために、放射線療法の治療中に生じる患者さんの身体、心理、社会的問題の解決を支援し、長期にわたる治療を患者さんが主体的に継続しながら完遂できるよう専門的知識と技術でサポートしてくださるので、私たち放射線腫瘍医も日頃大変助けてもらっています(ごまはすってません)。


 学会初日のアフタヌーンセミナーでは、「放射線治療におけるチーム医療―東北大学病院の現状と今後の展望」と題した医師、認定看護師双方の立場からの報告がありました。 
 演者の看護師さんは耳鼻科病棟所属だそうで、頭頸部がん患者さんを入院看護している立場からのご発表でした。頭頸部がんでは治療効果を高めるために抗がん剤と放射線治療を同時に行うことが標準ですが、皮膚・粘膜炎やそれに伴う栄養低下、唾液分泌障害など、患者さんによってはかなりつらい副作用も伴ってしまいます。
 さすがは東北大らしく、医師・看護師だけでなく歯科処置・胃ろうなどからの栄養管理・嚥下などのリハビリ・精神ケアなど、多職種チーム医療として頭頸部がん治療の支援をなされているというご発表を拝聴し、いろいろな面で参考になりました。

 ただ最後に認定看護師さん自身が「放射線治療がどこにどのように照射されているのかがわかりにくい」という問題提起もされていました。


 昨日の2日目は午前に看護系のポスター発表がありました。
 今回の学会では、以前と比べて客観的な評価・解析を交えた心身のケアサポートに関するご発表が多くなってきた印象を持ちました。やはり認定看護師制度の効果が出てきているのかな?看護セッションの座長を勤められた某先生も「看護師さん達が堂々と質疑応答を繰り広げるようになったのは目から鱗でした。」とおっしゃっていました。フロアでは皮膚炎や粘膜炎、唾液腺障害などの身体的影響に対する処置についても積極的な意見交換がなされていました。
 ただ、ここでも同じように「放射線治療がどこにどのように照射されているのかがわかりにくいのが身体的処置で悩むところ」との意見が出ていました。○×大学とか△□がんセンターといった有名な施設の(おそらく認定)看護師さんから。
 ある看護師さんからは「きちんとしたCT読影の教育を受けてないから、(治療計画)CT画像を見た瞬間に引いちゃいます」という意見もでていました。


 昨今の複雑化した高精度放射線治療(IMRTやらIGRTやら粒子線治療やら)は他科の医者にもわかりにくいという話を耳にすることが少なくありません。いや、以前から病巣設定や線量分布図など放射線治療計画自体が一部ブラックボックス化していて、放射線腫瘍医(や診療放射線技師・医学物理士さん)以外の医療者にはわかりにくい環境にある施設が実は多いだろうと思っています。がん放射線療法看護認定看護師さんですら…
 「放射線治療計画なんて放射線腫瘍医に全部お任せ」っておっしゃる他科の先生も少なくないでしょうが…?

 うちの病院でも医者同士の治療検討会、医者と看護師を含めたコメディカルとのカンファレンスなどは行っていますが、他科の先生や看護師さんたちと放射線治療計画上の照射野や線量分布を「きちんと」確認できているとは正直断言できません。今回の学会では、看護師さんたちともさらに一歩踏み込んだ診療・ケアができるような仕組み・教育体制を改めて見直すべきだと教えていただきました(もちろん他科のお医者さんに対しても)。


 本当は今日最終日の午後にあったシンポジウム「放射線治療における看護職の役割と今後の展望」も参加してみたかったのですが、私が病棟待機番でやむなく断念。うちの認定看護師さんにどんなシンポジウムだったのか、明日(以降)聞いてみたいと思っています。



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【2013/10/20 19:27】 | 放射線治療:支持療法・アメニティ
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