先日、地元のサイコオンコロジー研究会に参加し、某病院緩和科の先生が薬によるアカシジアの症例報告をなさっていました。YouTubeで公開されている海外の患者さんの典型的な症状を撮影した動画も供覧いただき、大変参考になりました。
アカシジア…静座不能症と訳されています。アカシジアなんて聞いたこともないって方、ごめんなさい。
精神科系の薬(とりわけ抗精神病薬)の服用中に起こることのある副作用で有名ですが、がん患者さんの吐き気止めとしてよく使う(そして夜間や休日などの臨時指示としても普通に第1選択にする)プリンぺラン(メトクロプラミド)やノバミン(プロクロルペラジン)という薬でも起こることがあります。
座ったままでじっとしていられず、そわそわと動き回るという特徴があるそうです。不眠や徘徊(はいかい)の原因の一つでもあるそうです。
平成22年に厚生労働省から「重篤副作用疾患別対応マニュアル アカシジア」ってPDFファイルが出ています。29ページもありますが、私が下手な解説をせずとも大変詳しくかつわかりやすく説明されています。他の鑑別なども書いてありますし、特に(詳しく知らない)医療従事者にはご一読をお勧めです。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j09.pdf
日本緩和医療学会のPEACE PROJECT(緩和ケア継続教育プログラム)の緩和ケア研修会資料スライドにもアカシジアについて触れられていますが、ここまで詳しくはありません。
アカシジアの診断の一つにマイヤーソン徴候というのがあります。私は神経内科医ではないので(笑)、参考までにWikipediaの記事を改変して以下引用しておきます…文責はとれませんので、真面目な先生は教科書なりを見直してください。
『眉間をハンマーや指で軽く叩くと、正常では両側眼輪筋の収縮(まばたきのこと)が起こる。これを眉間反射(glabellar reflex)という。これを何度も行ううちに眼輪筋の収縮は弱くなり、数回のうちに収縮しなくなるのが正常の反応である。アカシジア(やパーキンソン病など)の場合はこの反射が亢進し、何度叩いても瞬目が起こるようになる。これをマイヤーソン徴候と呼ぶ。』
結構簡単な検査ですが、患者さん自身ではなく、患者さんに見えないように他人が眉間を軽くトントンと叩くことがポイントらしいです。
その昔、抗がん剤に対する吐き気止めはプリンぺランとかノバミンの大量投与(+ステロイド)くらいしかなかったため、医療者がアカシジアを経験する機会はそれなりにあったようです。それをアカシジアの症状と知っていたかどうかは別として。残念ながら、肝心の吐き気にはそれほど効果がありませんでした。
最近は他の強力な吐き気止めがいろいろ出てきたので、プリンぺランの大量投与をする機会は(おそらく)なくなりましたね。
でも実は、少量投与でも点滴静注後などでアカシジアの症状に出くわす可能性があります(前述の厚労省マニュアルにも書いてあります)。
私も以前、脱水と吐き気がひどく仕事に支障が出るということでプリンぺランを混ぜた点滴をしている最中に、急性のアカシジアが強く疑われる症例を経験したことがあります。
たかが田舎の放射線腫瘍医なのになんでアカシジアをわざわざここまで書くかといいますと、実はその症例って私だったからなのです…。前夜の飲酒後の胃腸症状がひどく、(仕事が進まず?)みかねた上司が私のために処置してくださった時のことでした。
プリンぺラン入りの点滴の最中に急に身体全体の皮膚がサワサワしてきて、「身の置き所がない」という異常感がありました。あまりに気持ちが悪くて上司に内緒で点滴を勝手に自己抜去してしまいました。
なんとも不良患者の典型例でした…
(長いので、また次回に。いつものことですがタイトルと内容の不一致、申し訳ございません)
アカシジア…静座不能症と訳されています。アカシジアなんて聞いたこともないって方、ごめんなさい。
精神科系の薬(とりわけ抗精神病薬)の服用中に起こることのある副作用で有名ですが、がん患者さんの吐き気止めとしてよく使う(そして夜間や休日などの臨時指示としても普通に第1選択にする)プリンぺラン(メトクロプラミド)やノバミン(プロクロルペラジン)という薬でも起こることがあります。
座ったままでじっとしていられず、そわそわと動き回るという特徴があるそうです。不眠や徘徊(はいかい)の原因の一つでもあるそうです。
平成22年に厚生労働省から「重篤副作用疾患別対応マニュアル アカシジア」ってPDFファイルが出ています。29ページもありますが、私が下手な解説をせずとも大変詳しくかつわかりやすく説明されています。他の鑑別なども書いてありますし、特に(詳しく知らない)医療従事者にはご一読をお勧めです。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j09.pdf
日本緩和医療学会のPEACE PROJECT(緩和ケア継続教育プログラム)の緩和ケア研修会資料スライドにもアカシジアについて触れられていますが、ここまで詳しくはありません。
アカシジアの診断の一つにマイヤーソン徴候というのがあります。私は神経内科医ではないので(笑)、参考までにWikipediaの記事を改変して以下引用しておきます…文責はとれませんので、真面目な先生は教科書なりを見直してください。
『眉間をハンマーや指で軽く叩くと、正常では両側眼輪筋の収縮(まばたきのこと)が起こる。これを眉間反射(glabellar reflex)という。これを何度も行ううちに眼輪筋の収縮は弱くなり、数回のうちに収縮しなくなるのが正常の反応である。アカシジア(やパーキンソン病など)の場合はこの反射が亢進し、何度叩いても瞬目が起こるようになる。これをマイヤーソン徴候と呼ぶ。』
結構簡単な検査ですが、患者さん自身ではなく、患者さんに見えないように他人が眉間を軽くトントンと叩くことがポイントらしいです。
その昔、抗がん剤に対する吐き気止めはプリンぺランとかノバミンの大量投与(+ステロイド)くらいしかなかったため、医療者がアカシジアを経験する機会はそれなりにあったようです。それをアカシジアの症状と知っていたかどうかは別として。残念ながら、肝心の吐き気にはそれほど効果がありませんでした。
最近は他の強力な吐き気止めがいろいろ出てきたので、プリンぺランの大量投与をする機会は(おそらく)なくなりましたね。
でも実は、少量投与でも点滴静注後などでアカシジアの症状に出くわす可能性があります(前述の厚労省マニュアルにも書いてあります)。
私も以前、脱水と吐き気がひどく仕事に支障が出るということでプリンぺランを混ぜた点滴をしている最中に、急性のアカシジアが強く疑われる症例を経験したことがあります。
たかが田舎の放射線腫瘍医なのになんでアカシジアをわざわざここまで書くかといいますと、実はその症例って私だったからなのです…。前夜の飲酒後の胃腸症状がひどく、(仕事が進まず?)みかねた上司が私のために処置してくださった時のことでした。
プリンぺラン入りの点滴の最中に急に身体全体の皮膚がサワサワしてきて、「身の置き所がない」という異常感がありました。あまりに気持ちが悪くて上司に内緒で点滴を勝手に自己抜去してしまいました。
なんとも不良患者の典型例でした…
(長いので、また次回に。いつものことですがタイトルと内容の不一致、申し訳ございません)
- 関連記事
-
- G-CSFと放射線治療って本当に相性悪いの?(その2) (2015/01/11)
- G-CSFと放射線治療って本当に相性悪いの?(その1) (2015/01/08)
- 「筋層浸潤性膀胱がんの化学放射線治療」総説執筆依頼(その2) (2014/09/11)
- 「筋層浸潤性膀胱がんの化学放射線治療」総説執筆依頼(その1) (2014/09/04)
- セツキシマブ(商品名:アービタックス)と放射線治療(4):第38回日本頭頸部癌学会印象記 (2014/07/09)
- セツキシマブ(商品名:アービタックス)と放射線治療(3) (2014/05/07)
- セツキシマブ(商品名:アービタックス)と放射線治療(2) (2014/05/02)
- アカシジアと放射線宿酔(2) (2014/03/09)
- アカシジアと放射線宿酔(1) (2014/03/08)
- 抗がん剤と放射線治療の併用で気をつけたほうがいいと思ってること(2) (2013/03/12)
- 抗がん剤と放射線治療の併用で気をつけたほうがいいと思ってること(1) (2013/03/11)
- セツキシマブと放射線治療 (2013/02/03)
スポンサーサイト
| ホーム |