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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 先日、静岡がんセンター緩和医療科の大坂巌先生による特別講演「フェンタニルレスキュー製剤による突出痛治療」を拝聴する機会がありました。
 レスキュー製剤とは一過性の痛み増強に対して使用する短時間作用型麻薬のことで、フェンタニルレスキュー製剤は海外ではすでに多くの国で臨床使用されていましたが国内でも最近ようやく認可されました。

 大坂先生のご講演は、がんの突出痛(BTcP)について最新の知見がふんだんに盛り込まれ大変整理された内容でとても勉強になりました。ご講演内容について(私なりの)簡易要約を自分用の備忘録として『 』に記録させていただきます。
 スライド全部まるまるコピペではありませんよ!

 『BTcPは10分以内にピークに達することが多く、1時間程度で自然に収まることが多い。従来のレスキュー(モルヒネやオキシコドンなどのあへん系麻薬)は効果発現が遅く眠気などが遷延する。最近ようやく国内承認されたフェンタニルレスキュー製剤は効果発現が早い、眠気・便秘などの副作用が起きにくい、消化器系通過障害や注射に難があるなどの(=飲めなくてもOKな)患者さんで有用である。』
 ただ、投与量の調整(=ベース量とレスキュー有効容量は相関しない)や閾値(=眠気と呼吸抑制の間)の狭さといった使用にあたっての難しさもあるようで、『患者選択は適切に行う必要がある』とも。

 前回紹介した照射そのものによる「意図的BTcP」というのは、(私が書くのもなんですが)やっかいな副作用(?)です。毎回の放射線治療というのは事前におよその治療時間が決まっていて、照射30分くらい前にレスキューを使用していただくのが通常かと思うのですが、(本当はあってはならないのでしょうが)多忙な現場で連絡するタイミングがうまくあわなかったりすると適切な鎮痛効果が現れる前にBTcPを誘発してしまうおそれがあります。
 その点、フェンタニルレスキューは効果発現の速さや投与法の利便性など、放射線治療時にも役立ちそうに思います。私はまだ実際に使用したことはないので、とりあえず慣れるまでうちの緩和ケアチームを積極活用させていただこうと考えています。

 一番の(?)問題はお値段が高いことかも?一番安くても痛み止め1回分の薬価が600円くらいするそうです(3割負担で200円くらい)。しかし、麻薬って総じて高価ですよね…
 WHOはがんの痛みに対する麻薬の積極的投与を推奨してますが、価格も何とかならないものでしょうか?関係各位への謝礼も含めた研究・開発費にどれだけお金がかかっているのだろう?ってつい妙な勘繰りをいれてしまいたくなります。

 外来でレスキューを処方する時など、きちんとお値段のことも相談しないと「びっくりした。なんで値段が高い薬ってきちんと説明してくれなかったの?」と苦情を申し立てられるかもしれません。

 カイトリルと同じです。


 どうでもいいことですが(?)、正式にはレスキュー「ドース」(Rescue dose)と読むそうです。数日前にも製薬会社さんから薬の説明を受けたのですが、そこでは「ドーズ」って明記されてました(MRさんに教えておきました:笑)。もちろん日本緩和医療学会のThe PEACE Projectテキストでは「ドース」になってました。

 ま、現場で意味が通じれば別にいいのでしょうけど…(どこかで書きました?)

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【2014/03/22 23:32】 | 緩和的放射線治療
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