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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 4月からうちの病院に放射線治療担当の新人医学物理士さんが1人着任しました。

 なんと医学物理士さん2人体制となります!しかも、2人とも診療放射線技師兼務ではなく、医学物理士「専従」です。うちの病院の組織図では医師や診療放射線技師とは別に独立した医療安全管理部の所属となります。
注:専従=就業時間の少なくとも8割以上、当該療法に従事していること

 昨年度、医学物理士常勤増員枠についてご理解・ご尽力いただきました上層部の先生方、事務系の担当者の方々、この場をお借りして改めて御礼申し上げます。


 医学物理士とは、『放射線を用いた医療が適切に実施されるよう、医学物理学の専門家としての観点から貢献する医療職のことです。(京都大学医学部放射線治療科さんのHPから引用)』

 欧米の放射線治療業務の現場では、放射線腫瘍医は治療範囲や放射線量の決定(と大事な患者さんの診察)を行い、放射線治療計画の作成や検証は医学物理士さんが、そして毎日の照射は診療放射線技師さんが担当する、というのが一般的のようです。医者が「ここにあるがんにこのくらいの量を照射してね」とお願いし、医学物理士さんがコンピュータで最適なシミュレーションを作ってくださったのを医者と一緒に「これがいいね」って確認し、放射線技師さんが患者さんにばっちり正確に毎日放射線をあてていただき、医者や看護師さんが「体調はいかがですか?」と定期的に診察、といった感じでチーム診療を行います。
 特にIMRT(強度変調放射線治療)や定位放射線治療といった高精度放射線治療は専門職種としての医学物理士さんの存在なくして実施してはダメ、と書いても過言ではありません(ですよね?)。私もすっかり頼りにしています。

 でも日本では医学物理士さんが行うべき業務を、放射線腫瘍医や診療放射線技師さんたちが兼務している施設がまだまだ多いのが現状だと思います。過重労働の面でもこのような職場環境は好ましくないのですが、いろいろな課題があり、なかなか…


 医学物理士発祥の地アメリカでは、医者と対等に共に放射線治療計画内容を検討しあう、医療の本質にかかわる重要な役割・責務を担っているそうなので、待遇面(≒収入)も良いらしいです。中には独立開業して多施設の放射線治療検証を(遠隔などで)支援している方々もいらっしゃいます。また、放射線治療分野の医療機器系の研究・開発も医学物理士さんたちが中心になって、いろいろな最先端放射線治療技術を世に送り出しています。

 残念ながら日本では医学物理士はまだ国家資格にはなっていません。医学物理士認定機構など専門家の諸先生方のご尽力により諸外国同様に修士以上の学位保持者に受験資格が引き上げられ、健保委員の諸先生方のご尽力により病院の診療報酬上も優遇されるようになってきて、徐々にその立場や存在価値は認知されてきています。でも、いざ病院常勤枠での雇用となると、特に公的機関では「前例がない」というお役所側の決まり文句が厚い壁として立ちはばかります。他の交渉事でもよくあることですが…
 うちの施設ではその厚い壁をご理解ある上層部の先生方のおかげで見事に打ち破れました(3年くらい前)。そして今回は「常勤増員枠」を新たに獲得していただきました。
 本当にありがとうございます。

 ついでに書くと、ポストだけでなく待遇面(≒お給料)でも「前例がない」という壁があります。(諸事情で具体的には書けませんが)これはうちではまだ解決しきれていない案件です。
 しかし先日、某有名公的病院では医学物理士さんとしての別枠給与体系を確立されたという耳寄り情報を知りました。私もお知り合いになれた先生方が診療されている病院ですので、今後の待遇改善のためにその辺のお話はいずれゆっくりお伺いしたいな~と思っております。
 できればプロ野球観戦でもしながら…


 専従の新人医学物理士さん、うちの病院へようこそ!

 より安全で安心な、そしてがん患者さんにとって心身とも優しい良質な放射線治療をご提供できるよう、ともに精進いたしましょう。


(今回の投稿はJASTRO Newsletter vol.108「病院における医学物理士のポストについて」を参考・一部引用させていただきました)


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【2014/04/04 20:02】 | 放射線治療:一般
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