先月参加した第19回日本緩和医療学会学術大会で、「転移性骨腫瘍カンファレンス~転移性骨腫瘍チームアプローチ~」というシンポジウムがありました。口演の指定演題が94題、ポスターの一般演題に至っては1030題もある今回の(→今回も?)巨大発表会のなかで、私が狙いを定めていたセッションの一つでした。
諸事情あって、今頃ようやく学会印象記。
しかし、2日間だけの学会で1000を超える演題数、さすがにいささか多すぎませんか?ざっとポスターを眺めるだけでも疲れましたし、気になる一般発表で演者に質問をしたくてもそんな時間すらありませんでした。う~ん、残念!
学会の代議員会などでも問題にはなっているのでしょうけど、改善要望だけは出してみようかな?
本学術大会のメインテーマが天才バカボンの「これでいいのだ」ということで、休憩時間の会場内にBGMとしてボサノバ風バカボンのテーマ曲が流れ、ほんわかした雰囲気の中でシンポジウムが始まりました。整形外科・リハビリテーション科・放射線治療科・緩和医療科、それぞれの立場でご専門の先生方から骨転移に対するチーム医療としての取り組みに関する様々な視点からの発表でしたが、骨転移キャンサーボードという多職種カンファレンスの有用性や、がんによる脊髄圧迫症状などに対する診療体制の工夫の話題が、個人的な関心を引きました。
数年前から、がん診療連携拠点病院の指定要件として、「がん患者の病態に応じたより適切ながん医療を提供できるよう、キャンサーボードを設置し定期的に開催すること」 の一文が記されています。キャンサーボードとは、いろいろな科の医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどの多職種医療スタッフが一同に介し、『診療科・部門の垣根を越えて』個々の患者の今後の診療について検討しあうミーティングのことです。
ちなみに、がん診療連携拠点病院とは『全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、全国397箇所の病院を指定しています(平成25年4月1日現在)。専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の構築、がん患者に対する相談支援及び情報提供等を行っています。』と、厚生労働省のHPより説明がなされています。がん診療連携拠点病院の整備要件について、今年は放射線治療部門を含めて具体的な指定項目が増え、施設によっては条件クリアが大変になりました。
で、うちの病院なのですが、いまのところ骨転移キャンサーボードという形での開催はしていません。あ、ちなみにうちの病院もがん診療連携拠点病院です。放射線治療装置を有していることが必須条件になっています。
キャンサーボードっていうと、臓器横断型という表現はしているものの、肺がんキャンサーボードとか胃がんキャンサーボードといった「臓器毎に分けた」多職種スタッフが個別症例の検討会をするイメージが私にはなんとなくあります(間違ってたらごめんなさい)。もちろん原発不明がんとか多重がんとか診療科の区別がしにくい疾患・病態もありますし、各臓器別診療カンファレンスとはきちんと分離して、そういったものを中心にキャンサーボードをしている施設もあるようです。
あくまで私が伝え聞いた範囲でのお話ですが、原発臓器毎のキャンサーボードで別個に骨転移症例の検討会をしている施設が多いように思いますし、うちもそうです。
ですが、骨転移ってすべてのがんから発症する可能性がある病状なので、各診療科主治医はもちろんですが、整形外科・リハビリ科・放射線腫瘍科&診断科・緩和科・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカーさんなどがそれぞれの立場で意見を出しやすいという点では、臓器横断型という趣旨に比較的合致したキャンサーボードかもしれません(シンポジウムを聞いて、そう思いました…)。
骨転移キャンサーボードで個人的に思いついた課題を挙げてみるとすれば、がんの患者さんは骨転移「だけ」が問題ではないので、例えば症状のある脳転移も併発しているような骨転移以外の病状も含めた治療方針やリハビリテーションなどの検討を加える必要がある場合に、骨転移ばかりをまとめたキャンサーボードは「患者」横断型として少し扱いにくい側面も持ち合わせる可能性があるってことでしょうか?もちろん脳外科の先生も呼べばいいのでしょうけど…お忙しい先生方をその都度呼び集めるのって結構大変なのです。
(前回も触れましたが)骨転移へ放射線治療後のリハビリテーションも病状や社会復帰などの目標により多様性に富んだ領域です。
社会復帰を含めた骨転移照射後のリハビリって個人差が大きく、また骨転移患者さんに対するリハビリスケジュールって全国的にもいまだに標準的されていないので(「がんリハビリテーションガイドライン」より…日本リハビリテーション医学会ホームページで無料ダウンロード可)、患者さんに骨転移緩和照射の説明をする時によく悩みます。患者さんのリハビリ方針決定も、骨転移キャンサーボードのほうが症例や専門意見の集約ができて検討会としての実りは大きいかもしれません。
この辺は長くなりそうなので、また別の機会にします。
ちなみに、このガイドライン、(私にとっては)目から鱗の内容がたくさん書いてありました。まだご覧になってない同業者の方はご一読を。
はてさて、すでに骨転移キャンサーボードを実施している有名な専門施設では、具体的にはどんな感じで開催しているのだろう?近々、そんな某がんセンター放射線治療科の先生とお会いする機会があるので、今後のために直接お伺いしてみたいと思っています。
また、今月からはうちの病院で整形外科やリハビリテーション部の理学療法の先生方がもともと行っているリハビリカンファレンスというものに、遅ればせながら私も参加していろいろな意見交換をさせていただくことになりました。
うちの病院でも、いずれ骨転移キャンサーボードという形に発展すべきかどうかを視野に入れつつ…
「これでいいのだ」緩和学会のボサノバBGMシンポジウムでもう一つ話題にでていた、脊椎骨転移による脊髄圧迫症状などに対する診療体制の工夫については、秋に地元の某研究会でも主題に取り上げられるようですし、その時にでもブログにまとめてみようかと思っています。
(さらに続く予定…)
諸事情あって、今頃ようやく学会印象記。
しかし、2日間だけの学会で1000を超える演題数、さすがにいささか多すぎませんか?ざっとポスターを眺めるだけでも疲れましたし、気になる一般発表で演者に質問をしたくてもそんな時間すらありませんでした。う~ん、残念!
学会の代議員会などでも問題にはなっているのでしょうけど、改善要望だけは出してみようかな?
本学術大会のメインテーマが天才バカボンの「これでいいのだ」ということで、休憩時間の会場内にBGMとしてボサノバ風バカボンのテーマ曲が流れ、ほんわかした雰囲気の中でシンポジウムが始まりました。整形外科・リハビリテーション科・放射線治療科・緩和医療科、それぞれの立場でご専門の先生方から骨転移に対するチーム医療としての取り組みに関する様々な視点からの発表でしたが、骨転移キャンサーボードという多職種カンファレンスの有用性や、がんによる脊髄圧迫症状などに対する診療体制の工夫の話題が、個人的な関心を引きました。
数年前から、がん診療連携拠点病院の指定要件として、「がん患者の病態に応じたより適切ながん医療を提供できるよう、キャンサーボードを設置し定期的に開催すること」 の一文が記されています。キャンサーボードとは、いろいろな科の医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどの多職種医療スタッフが一同に介し、『診療科・部門の垣根を越えて』個々の患者の今後の診療について検討しあうミーティングのことです。
ちなみに、がん診療連携拠点病院とは『全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、全国397箇所の病院を指定しています(平成25年4月1日現在)。専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の構築、がん患者に対する相談支援及び情報提供等を行っています。』と、厚生労働省のHPより説明がなされています。がん診療連携拠点病院の整備要件について、今年は放射線治療部門を含めて具体的な指定項目が増え、施設によっては条件クリアが大変になりました。
で、うちの病院なのですが、いまのところ骨転移キャンサーボードという形での開催はしていません。あ、ちなみにうちの病院もがん診療連携拠点病院です。放射線治療装置を有していることが必須条件になっています。
キャンサーボードっていうと、臓器横断型という表現はしているものの、肺がんキャンサーボードとか胃がんキャンサーボードといった「臓器毎に分けた」多職種スタッフが個別症例の検討会をするイメージが私にはなんとなくあります(間違ってたらごめんなさい)。もちろん原発不明がんとか多重がんとか診療科の区別がしにくい疾患・病態もありますし、各臓器別診療カンファレンスとはきちんと分離して、そういったものを中心にキャンサーボードをしている施設もあるようです。
あくまで私が伝え聞いた範囲でのお話ですが、原発臓器毎のキャンサーボードで別個に骨転移症例の検討会をしている施設が多いように思いますし、うちもそうです。
ですが、骨転移ってすべてのがんから発症する可能性がある病状なので、各診療科主治医はもちろんですが、整形外科・リハビリ科・放射線腫瘍科&診断科・緩和科・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカーさんなどがそれぞれの立場で意見を出しやすいという点では、臓器横断型という趣旨に比較的合致したキャンサーボードかもしれません(シンポジウムを聞いて、そう思いました…)。
骨転移キャンサーボードで個人的に思いついた課題を挙げてみるとすれば、がんの患者さんは骨転移「だけ」が問題ではないので、例えば症状のある脳転移も併発しているような骨転移以外の病状も含めた治療方針やリハビリテーションなどの検討を加える必要がある場合に、骨転移ばかりをまとめたキャンサーボードは「患者」横断型として少し扱いにくい側面も持ち合わせる可能性があるってことでしょうか?もちろん脳外科の先生も呼べばいいのでしょうけど…お忙しい先生方をその都度呼び集めるのって結構大変なのです。
(前回も触れましたが)骨転移へ放射線治療後のリハビリテーションも病状や社会復帰などの目標により多様性に富んだ領域です。
社会復帰を含めた骨転移照射後のリハビリって個人差が大きく、また骨転移患者さんに対するリハビリスケジュールって全国的にもいまだに標準的されていないので(「がんリハビリテーションガイドライン」より…日本リハビリテーション医学会ホームページで無料ダウンロード可)、患者さんに骨転移緩和照射の説明をする時によく悩みます。患者さんのリハビリ方針決定も、骨転移キャンサーボードのほうが症例や専門意見の集約ができて検討会としての実りは大きいかもしれません。
この辺は長くなりそうなので、また別の機会にします。
ちなみに、このガイドライン、(私にとっては)目から鱗の内容がたくさん書いてありました。まだご覧になってない同業者の方はご一読を。
はてさて、すでに骨転移キャンサーボードを実施している有名な専門施設では、具体的にはどんな感じで開催しているのだろう?近々、そんな某がんセンター放射線治療科の先生とお会いする機会があるので、今後のために直接お伺いしてみたいと思っています。
また、今月からはうちの病院で整形外科やリハビリテーション部の理学療法の先生方がもともと行っているリハビリカンファレンスというものに、遅ればせながら私も参加していろいろな意見交換をさせていただくことになりました。
うちの病院でも、いずれ骨転移キャンサーボードという形に発展すべきかどうかを視野に入れつつ…
「これでいいのだ」緩和学会のボサノバBGMシンポジウムでもう一つ話題にでていた、脊椎骨転移による脊髄圧迫症状などに対する診療体制の工夫については、秋に地元の某研究会でも主題に取り上げられるようですし、その時にでもブログにまとめてみようかと思っています。
(さらに続く予定…)
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