放射線治療担当技師さんの現状の休日体制について
ごく一部の大病院のように放射線治療部門と診断部門の技師さんたちがたくさんいて組織図上でも両所属が別れているならば、両方で病院夜間休日当番をそれぞれ組むのは比較的容易かもしれません。
しかし、普通の病院では一つの放射線技師部門として診断と治療をある期間固定しながらローテーションするのが一般的です。そして夜間や休日は交代で1~2人体制で出勤や待機をします。うちの病院もそうですが、放射線技師さんが全員で10~20数人程度しかいないので月に何回か時間外当番となります。
そして普通は救急外来や病棟患者さんの放射線検査業務で手一杯という状態が日常茶飯事です。そんな中で当番技師さんを緊急照射に駆り出すのはなかなか難しいものです。無理強いすれば様々なスタッフから非難ごうごう間違いなしです。下手をすれば医療事故の原因にもなり得ます。
治療部門の規模が小さな施設だと1-2名の放射線技師さんだけで治療装置を担当している所が結構あります。1-2名の治療担当技師さんだけで夜間休日当番態勢というのは現実的に厳しいです。診断部門と比べて明らかに不平等な待遇です。時間外待機料無しなんていうブラック系病院は、いまだにとても多いようですし。。。(病院から呼ばれて業務をしたらもちろん時間外手当はありますが)。
ちなみにうちの病院は数名の治療担当放射線技師さんがいらっしゃるので恵まれています。申し訳ございません。
前回ブログで休日照射を多数行っていると紹介したOdette Cancer Center (Canada)の休日体制は、なんと放射線腫瘍医1名、診療放射線技師2名、全員が治療専属です。日本の中規模一般病院の平日通常業務並みです!
こんなことを日本で普通に行っている施設ってあるのかなぁ?
前回ブログ投稿の後、他の科の先生から「某病院でのかつての経験では、休日緊急照射の装置操作は医師一人で行っていました。放射線科医って、MRI、CTも撮影できて、照射装置も一人でできるんだと、尊敬、感銘を受けました。」というお話を伺いました。たしかに医者は放射線機器の操作・撮影が法的に可能です。医師免許って(ほぼ)なんでもありです。
開業医さんでもご自身が放射線検査の撮影をなさっている所もありますね。看護師さんらしき人が撮影している診療所もあるらしいですが。。。駄目ですよ!
しかし昔と違って、医師がなんでも装置を扱える時代ではなくなってきています。システムが高度化しすぎていて、中途半端な操作はかえって危険です(前回も書きました)。
他の病院でがんによる緊急症状になった患者さんの対応について
うちの病院には、緊急照射を必要としそうなMSCC(悪性腫瘍による脊髄圧迫)疑いのため放射線治療機器を有しない他院から救急車などで緊急搬送される方が年に数例います。
手術の適応があるかどうかを含め、整形外科の先生方同士が連絡して転院という形をとっていただくことが多いのですが、在宅がん緩和ケアで療養中の方や状態的に明らかに全身麻酔手術は無理そうな方の場合、主治医の先生からうちの放射線治療科へ緊急照射の直接依頼が来ることもあります。もちろんそのような場合でも、MRIなどの検査結果を踏まえ来院後に整形外科の先生らにも相談をして手術か緊急照射か(経過観察か)を診断します。
うちの病院ではその後のリハビリを含めて暫定入院される場合もあれば、1回照射で当日そのままお帰りいただく(ご依頼元の病院・施設に戻る)場合もあります。整形外科などの先生がたのご尽力もあって受け入れ体制は整備されていると思いますが、放射線治療装置を有するどこの病院でもそうかというと私の知る限りそうではありません。
治療担当放射線技師さんのマンパワー問題と同様に、そもそも放射線腫瘍医がいない施設が少なからず存在することも大きな問題点です。がん診療連携拠点病院という各地域でがん医療の中心を担うべき中核施設ですら、常勤の放射線腫瘍医が不在という所がまだまだあります。
日本放射線腫瘍学会による2010 年定期構造調査報告(第1報)では、アンケートに協力した全国の放射線治療施設の半数近くが常勤の(必ずしも専門医ではない)放射線腫瘍医が不在か1人の常勤医しかいないと回答していました。残念ながら今もその状況は劇的に改善していないと思われます。
放射線腫瘍医不在の施設で緊急照射を行う体制をきちんと整えるのはなかなか難しいと思います。代わりに他科の先生が緊急照射の準備を行うことも不可能ではありませんが、中途半端な操作はかえって危険です(何度も繰り返して申し訳ございません)。
とはいえ、放射線治療装置がある施設から緊急照射を行っている別の施設へわざわざ転院というのも患者さんや身内の方がたからすれば素直にご納得しがたい部分はあるでしょうね。
慢性的なスタッフのマンパワー不足、放射線治療分野では緊急照射においても深刻な問題です。
(今回は現場の医療者側の目線中心に書いてしまいました…まだ終わりません)
ごく一部の大病院のように放射線治療部門と診断部門の技師さんたちがたくさんいて組織図上でも両所属が別れているならば、両方で病院夜間休日当番をそれぞれ組むのは比較的容易かもしれません。
しかし、普通の病院では一つの放射線技師部門として診断と治療をある期間固定しながらローテーションするのが一般的です。そして夜間や休日は交代で1~2人体制で出勤や待機をします。うちの病院もそうですが、放射線技師さんが全員で10~20数人程度しかいないので月に何回か時間外当番となります。
そして普通は救急外来や病棟患者さんの放射線検査業務で手一杯という状態が日常茶飯事です。そんな中で当番技師さんを緊急照射に駆り出すのはなかなか難しいものです。無理強いすれば様々なスタッフから非難ごうごう間違いなしです。下手をすれば医療事故の原因にもなり得ます。
治療部門の規模が小さな施設だと1-2名の放射線技師さんだけで治療装置を担当している所が結構あります。1-2名の治療担当技師さんだけで夜間休日当番態勢というのは現実的に厳しいです。診断部門と比べて明らかに不平等な待遇です。時間外待機料無しなんていうブラック系病院は、いまだにとても多いようですし。。。(病院から呼ばれて業務をしたらもちろん時間外手当はありますが)。
ちなみにうちの病院は数名の治療担当放射線技師さんがいらっしゃるので恵まれています。申し訳ございません。
前回ブログで休日照射を多数行っていると紹介したOdette Cancer Center (Canada)の休日体制は、なんと放射線腫瘍医1名、診療放射線技師2名、全員が治療専属です。日本の中規模一般病院の平日通常業務並みです!
こんなことを日本で普通に行っている施設ってあるのかなぁ?
前回ブログ投稿の後、他の科の先生から「某病院でのかつての経験では、休日緊急照射の装置操作は医師一人で行っていました。放射線科医って、MRI、CTも撮影できて、照射装置も一人でできるんだと、尊敬、感銘を受けました。」というお話を伺いました。たしかに医者は放射線機器の操作・撮影が法的に可能です。医師免許って(ほぼ)なんでもありです。
開業医さんでもご自身が放射線検査の撮影をなさっている所もありますね。看護師さんらしき人が撮影している診療所もあるらしいですが。。。駄目ですよ!
しかし昔と違って、医師がなんでも装置を扱える時代ではなくなってきています。システムが高度化しすぎていて、中途半端な操作はかえって危険です(前回も書きました)。
他の病院でがんによる緊急症状になった患者さんの対応について
うちの病院には、緊急照射を必要としそうなMSCC(悪性腫瘍による脊髄圧迫)疑いのため放射線治療機器を有しない他院から救急車などで緊急搬送される方が年に数例います。
手術の適応があるかどうかを含め、整形外科の先生方同士が連絡して転院という形をとっていただくことが多いのですが、在宅がん緩和ケアで療養中の方や状態的に明らかに全身麻酔手術は無理そうな方の場合、主治医の先生からうちの放射線治療科へ緊急照射の直接依頼が来ることもあります。もちろんそのような場合でも、MRIなどの検査結果を踏まえ来院後に整形外科の先生らにも相談をして手術か緊急照射か(経過観察か)を診断します。
うちの病院ではその後のリハビリを含めて暫定入院される場合もあれば、1回照射で当日そのままお帰りいただく(ご依頼元の病院・施設に戻る)場合もあります。整形外科などの先生がたのご尽力もあって受け入れ体制は整備されていると思いますが、放射線治療装置を有するどこの病院でもそうかというと私の知る限りそうではありません。
治療担当放射線技師さんのマンパワー問題と同様に、そもそも放射線腫瘍医がいない施設が少なからず存在することも大きな問題点です。がん診療連携拠点病院という各地域でがん医療の中心を担うべき中核施設ですら、常勤の放射線腫瘍医が不在という所がまだまだあります。
日本放射線腫瘍学会による2010 年定期構造調査報告(第1報)では、アンケートに協力した全国の放射線治療施設の半数近くが常勤の(必ずしも専門医ではない)放射線腫瘍医が不在か1人の常勤医しかいないと回答していました。残念ながら今もその状況は劇的に改善していないと思われます。
放射線腫瘍医不在の施設で緊急照射を行う体制をきちんと整えるのはなかなか難しいと思います。代わりに他科の先生が緊急照射の準備を行うことも不可能ではありませんが、中途半端な操作はかえって危険です(何度も繰り返して申し訳ございません)。
とはいえ、放射線治療装置がある施設から緊急照射を行っている別の施設へわざわざ転院というのも患者さんや身内の方がたからすれば素直にご納得しがたい部分はあるでしょうね。
慢性的なスタッフのマンパワー不足、放射線治療分野では緊急照射においても深刻な問題です。
(今回は現場の医療者側の目線中心に書いてしまいました…まだ終わりません)
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