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放射線治療にたずさわっている赤ワインが好きな町医者です。緩和医療や在宅医療、統合医療にも関心があります。仕事上の、医療関係の、趣味や運動の、その他もろもろの随想を不定期に更新する予定です。
 緊急照射はスタッフがそれなりにいるがん拠点病院のうちでも大変です。まして、そうでない地方施設での対応は至難かもしれません。私、そういう施設でも何年も仕事をさせていただきました。ただ、単なる綺麗ごとのボランティアやスタッフの時間を搾取する半強制労働では長期間続きがたいものがあります。
 患者さんのためにという理想論やべき論を書籍やネットや講演などで語る都会の大学病院やがんセンターでしか常勤で仕事をしたことない偉い先生方がいますが、実感としてどこまでわかっているのかなと思うことがままあります。ま、これは緊急照射に限った話ではありませんね。

 とはいえ、何らかの対応策を検討し、無理なく可能な範囲から始めることが求められる時代になってきているのも確かなようです。何を今ごろ、普通の企業では当たり前だ!という反論も出そうです。

 施設内の既存のメンバーで調整対応が可能ならそれで頑張る(もちろん代休やお手当などの待遇改善付きで)というのはもちろん一つの手です。

 それ以外に個人的に思いつく対策案を以下に挙げてみます。他にもいろいろな意見はあると思いますので、機会がありましたら是非ご教示くださいませ。スタッフの給与や代休に関してもとても大事な課題ですが施設毎に方針が様々ありそうなので、あくまで労働としてどう対応するといいだろうという点に絞らせていただきます。

1.各地域で緊急照射病院の輪番制をとる。あるいはがん拠点病院が代表して地域患者さんを受け入れる。
  ただし、がん緊急の患者さんを他施設まで搬送するというのはかなりハードルが高いです。しかも放射線治療が可能な施設なのに他の病院までわざわざ緊急搬送するのは心情的に…というのは前回も書きました。  

 その後の患者さんの全身管理をどうするかという課題はあります。当日に緊急1回照射したらまたお戻りいただくという手もありますが、何時間もかけて来院された後にまた同じ時間かけて戻るというのはたしかに大変です。
 現在、厚生労働省からがん拠点病院に緊急緩和ケア病床を推進という話が出ています(平成25年9月5日 緩和ケア推進検討会第二次中間とりまとめ(報告書))。ここが受け皿になるという手はありそうですが、やはり各施設・診療科間や患者さんサイドとの連携が課題です。これも緊急照射だけの問題ではありません。

2.各地域で決めた休日当番の放射線腫瘍医や放射線技師さんが該当病院まで出張支援する。
 あるいはネットを使い放射線腫瘍医が遠隔で放射線治療計画を行うという方法もあります。その施設の主治医や救急担当医が診察をし、情報共有しながら放射線治療を施行すればいい。
 常勤の放射線腫瘍医がおらず週に1-2回非常勤出張支援でやりくりしている病院、常勤医が1人(以上)いても学会出張などで不在となる日がある病院では、平日日中ですら緊急照射対応が難しくなります。

 しかし、少なくとも放射線技師さんはその施設の担当の方が行ったほうが良いでしょうね。放射線技師さんは機械の操作は使い慣れた施設のスタッフでないと事故のもとです。ただ、そうなると前回も触れたとおりで院内での業務不平等が発生しがちです。

3.標準的な対応の参考になるよう緊急照射ガイドラインを作成する。一つの目安があると現場としては助かる部分もあります。
 緊急照射は治療精度より時間との戦いが重要です。基本、後遺症が出るような総線量ではないので、(多少)広めでアバウトな治療設定は許容されます。むしろ下手に時間をかけすぎるとデメリットの方が大きくなる恐れが高まります。

 対象疾患や治療法を具体的にどう規定するか、世界的に見てもなかなかエビデンスといえるものがまだない領域です。また、対応力に地域間・施設間格差がありすぎます。文書化は簡単ではないかもしれません。
 もちろん放射線治療以外の緊急治療もあり、整形外科や脳外科など他学会との共同検討も必要なのでしょう。


 さしあたりこんな所でしょうか。


 先日の「休日照射・緊急照射」を主題とした研究会では、3つのカテゴリーに分けた課題がおよそ明確になりました。

1.緊急照射:他職種連携を含めた時間の勝負
2.休日照射:長期連休の対応
3.平日早朝夜間照射:就労支援対策

 いずれもスタッフの人員整備が一番の課題で、個人的に思いつく対応策はこれまでにあげた課題を含め重複する部分もありますが、休日照射や平日早朝夜間照射についてはまた別に話題に取り上げてみたいと思います。お国や上司などからがん拠点病院として試行を打診されていることもありまして、休日・平日早朝夜間照射も前向きな検討が求められる時代になってきました。

 今回の研究会では時間的制約もあり「どこもなかなか大変だよね」という問題抽出で終了し、いささか物足りなさを感じました。「はてさて、ではどうしたら?」という『具体的な対策』を日本放射線腫瘍学会あたりでいろいろ検討しないといけなさそうな内容かもしれません。

 もしかして私は平社員だから知らないだけで、すでに検討されてます??


 このあと研究会の発表報告文書を提出しないといけないのですが、このブログを使って書けそうです(笑)。ただ、今回の3つと以前の休日照射2つ、全部で5つのブログ約10000字(+α)を指定の2000字程度に減量しなければいけません…

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【2014/10/26 23:48】 | 放射線治療:一般
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